大学院・研究施設

顎口腔外科学分野

概要

歯科口腔外科学は、歯・顎・口腔顔面領域の疾患の診断と治療および予防、さらに口腔の機能と形態の回復を目指す学問分野である。摂食、咀嚼、嚥下という生命の維持のみならず、審美的にも重要な部位であり、よりよい疾病の予防・治療法、機能と形態の回復のため、医学の諸分野と共同研究を行っており、さらなる研究の拡大が期待できる。特に、近年注目を集める再生医療において、歯科・口腔外科では骨再生などが古くから試みられていることや口腔内に幹細胞ソースが多く存在することなどから、分野としての親和性が高く、当科でも積極的に研究を行っている。またその他にも、臨床他科や基礎医学系分野、附属研究所および他大学の医学部、歯学部、研究施設などと幅広く共同研究を行うことができ、領域にとらわれずさまざまな研究を行うことができる。研究を通して英語文献の検索や抄読、国内学会や国際学会での発表の仕方などの指導を受ける。

研究可能テーマ

(1)細胞シート工学を応用した歯・顎・口腔顔面組織の再生
歯科口腔外科では先端生命医科学研究所(TWIns)と共同で細胞シートの研究を実施している。歯周病に対して、2011年より10例の臨床研究による自己培養歯根膜細胞シートの移植が完了し、これまでにその安全性と治療効果の長期的な安定性を確認してきた。また、薬剤関連顎骨壊死に対して間葉系幹細胞シートによる治療法の検討を行っており、臨床研究の実施を目指している。その他、口腔粘膜シートや種々の幹細胞を利用した口腔軟組織の再建、細胞シートのインプラントへの応用など、特に細胞シート等の組織工学を利用した歯・顎・口腔顔面領域の再生治療について探索している。基礎研究で終わらず、実際に患者さんへ新しい医療を届けることを目的として研究に臨んでいる。

(2)歯髄細胞を用いた末梢神経再生
Schwann細胞や神経前駆細胞を含んでいる「歯髄」を細胞ソースとした末梢神経再生研究を行っている。ラットやブタの歯髄細胞を組み込んだハイブリッド型の人工神経を作製し、ラットおよびブタの顔面神経欠損に移植を行いその再生について研究している。

(3)口腔顔面痛診断のための新しい感覚検査器の開発
顔面領域の感覚変化や神経障害、痛みの評価に有用な定量的感覚検査(QST)を口腔内でも適応できるように新しい検査器を開発した。健康な被験者に対し良好な再現性を報告しており、今後は口腔顔面痛患者の痛みや感覚変化の程度を検査、評価し、診断や治療効果判定に利用について検討を行う。

(4)ダーモスコピーの口腔粘膜疾患への応用
無侵襲で色素性皮膚病変を観察するルーペであるダーモスコープを使用し、扁平苔癬、天疱瘡、黒毛舌、またメラノーマを含む口腔内色素斑などの口腔粘膜病変、白板症、紅板症などの前がん病変、初期扁平上皮がんの所見に関しての研究を行っている(附属足立医療センター皮膚科との共同研究)。

スタッフ紹介

教授・基幹分野長 岡本 俊宏
講師       貝淵 信之(日本大学、医博)
講師       佐々木 亮

医学研究科