大学院・研究施設

麻酔科学分野

概要

麻酔科学教室は、手術室における全身管理を中心として集中治療、ペインクリニックなどへもその守備範囲を拡大してきている。臨床面では、特に年間8000例という日本最大級の症例数を誇る全身麻酔管理が特色であり、その中で、心臓・大血管手術の麻酔、脳神経外科麻酔、産科麻酔、小児麻酔、開胸・肺外科麻酔などのサブスペシャリティの確立を目指している。

研究可能テーマ

1.循環器麻酔の研究
「経食道心エコーによる3次元解析」
指導者:野村 実 構成員:深田智子、長沢千奈美、吉田啓子、岩出宗代、向井詩保子

 開心術における経食道心エコー(TEE)の有用性は多く報告されており、麻酔科医が手術診断の一端を担う施設が増加している。現在、臨床応用可能cl3D TEEは、フィリップス社製の胸壁エコーからのリアルタイムなものと、ATL社やフィリップス社などの心エコー装置cm3D解析用のロジックボードを装着してオムニプレーンプローブからの解析画像をMOに保存し、3次元解析装置(日本光電;トムテック)で処理するものがある。我々の施設においては、トムテック社のものを使用している。TEEからの画像を麻酔導入後に処理して、僧帽弁形成術、生体弁置換、大動脈弁狭窄症、ROSS手術、先天性疾患などの手術評価など使用している。とくに僧帽弁形成術においては術中TEE画像による単なる3次元解析を行うだけではなく、画像を任意に回転してsurgeon viewにすることが出来るため、手術方法決定の最終診断としている。本プロジェクトでは3D TEEの機能を最大限に活かし、手術評価、詳細な心機能解析を行う。 

「心室圧容量曲腺による心機能解析」
指導者:野村 実
構成員:岩出宗代、芦刈英理、長沢千奈美

 左室圧容量曲線は心収縮能、後負荷、収縮効率などを知ることができ有用であり、心収縮のgold standardと言われている。さらに、この解析からは左心系収縮力の指標とされているpreload recuitable stroke work や心室エネルギーの解析は詳細な血管拡張薬や麻酔薬の生理機能を明らかにすることができる。雑種成犬を使用して本プロジェクトによりさまざまな薬物動態が明らかになったが、今後は経食道心エコーを利用して左室拡張能や右心機能の解析を更に進めていく。
 

2.微小循環と血管新生
「各種ショックモデルにおける微小循環」 「血管新生」
構成員:高田勝美、小森万希子(麻酔科)、冨澤康子(循環器外科)

 これまで我が実験班は、約20年間、開心術で不可欠の人工心肺回転中の微小循環動態や種々のショックモデルを使って、いろいろな微小循環動態の観察を行ってきました。

 私達は、兎の耳に透明窓を装着し、そのなかに再生した新生血管を使って、微小循環動態を観察しています。直視下でショック時の微小循環動態をリアルタイムに観察できることが、本研究の特徴です。現在、科学研究費補助金の交付を受けて、NF-κBおよび接着分子のショック時の関与(機序解明と治療法の開発)をテーマに研究をすすめています。

 5年程前からは、循環器外科の先生と血管新生に影響を及ぼす因子の実験も行っています。直視下で観察した血管新生を定量的に解析する方法を開発し、麻酔および外科関連学会で血管成長因子の血管新生に及ぼす影響を調べています。最近は虚血部位の血管再生療法に臨床応用がされ始めているbFGFの血管新生速度に与える影響を直視下で初めて定量化することができ、国際学会で発表した内容を現在論文にまとめているところです。

3.慢性疼痛の病態と治療効果の研究
指導者:福内 明子 <構成員:前 知子、小高桂子

1)ペインクリニック外来の概要
施設外来は155.5・で、治療室の神経ブロック処置台は10台、第一、第2の診察室の各一台、ストレッチャ-2台を含め計14台である。1日患者数は35~70名、依頼の入院患者数は1日7~10名。神経ブロックを中心とした診療をしているが、同時に物理療法にも力を注いでいる。レントゲン透視下での治療は放射線室のC-armで放射線技師のもとで1ケ月に25~30名施行。サ-モグラフィ-、ノイロメタ-などの検査は、麻酔科の臨床検査技師2人に対応できるようになっている。

2)医療に従事するスタッフへの教育
基本的な医療技術をしっかりと学び、安全にかつ高度な技術を会得できるシステムをつくることが大切と考えている。当ペインクリニックでは、他施設のスペッシャリストの指導を受けたり、他施設の見学、学会、院内、院外の研究会への発表、参加を積極的に行うよう努めている。 

3)慢性疼痛の病態と治療効果の研究
複雑化している慢性疼痛に対する痛みの病態とその治療効果をevidenceをもって明確にすること。すでにサ-モグラフィ-、ノイロメタ-などを駆使し、様々な痛みに対しその病態と治療効果を追従し、学会および誌上発表をしている。

4.肺高血圧の研究
指導者:上園晶一 
構成員:堀田有香子、山家安子

 肺高血圧(pulmonary hypertension, PH) は、原発性にしても、二次性にしても、治療困難な病態です。PHの病態の本質は、肺血管を構築する細胞の筋性化、肥大、増殖、さらには3次元構築の改変(リモデリング)にあるという考えに基づき、肺血管拡張をめざす治療法でなく、細胞の炎症や増殖を抑えることを目標にした治療開発を目標にしています。具体的には、臓器リモデリングに関わる遺伝子発現を制御する転写因子に注目し、転写因子レベルでの遺伝子発現制御を行い、それを治療に活かすいわゆるデコイ型核酸医薬の治療法の可能性を検討しています。現在、ヒトゲノムプロジェクトが完了し、病気の遺伝子レベルでの治療法、いわゆるゲノム創薬に期待が集まっていますが、本研究で用いる核酸医薬は、ゲノム創薬の一つであり、今後の発展が予想される領域です。この研究室は、本院第2病理学教室、大阪大学、東京医科歯科大学とも共同で研究を進めています。また、来年から、ハーバード大学麻酔科のZapol教授のラボへ、リサーチフェローを送る予定です。

研究可能テーマ:
実験的肺高血圧モデルの開発、肺循環の炎症に関する研究、核酸医薬の肺高血圧症に対する効果検討
 
5.疼痛認知脳内機構の機能的脳画像法による研究
指導者:倉田二郎 
構成員:赤嶋夕子、三浦まり

 近年の機能的脳画像法の進歩により、疼痛認知がヒト脳内の複数の部位(第一次・第二次感覚皮質・島皮質・前帯状皮質・前頭皮質など)で行われることが解ってきました。私たちはfMRI (functional magnetic resonance imaging)を用いて、疼痛の性質・情動的要素の脳内機構をさらに詳細に調べています。具体的には、健康被験者が1.5テスラMRIスキャナー中で疼痛刺激を受ける間に、高速エコープラナー法で全脳の撮影を行い、局所脳血流の変化によるMRI信号変化を行動学的疼痛測定に関連づけて解析します。さらに、慢性疼痛患者での疼痛関連脳活動を解析し、hyperalgesiaやallodyniaなど病的疼痛の脳内機構とその診断法を研究する計画があります。  fMRIを中心とする脳機能画像法は、近年著しい発達と普及を遂げており、ポストゲノム時代における神経科学の中心的手法になりました。私たちのラボでは、その基礎技術となる精神物理学的行動解析、実験パラダイム構成、画像データの数理統計解析などを身につけることが出来ます。

研究可能テーマ:
1. 鎮痛薬・麻酔薬作用機序の機能的脳画像法による研究(体性感覚・聴覚などの感覚情報処理過程のイメージングを基礎として、麻薬などの鎮痛薬が疼痛を抑制する脳内機構や、麻酔薬が意識や記憶を抑制するメカニズムを解明します。)

2. 脳梗塞後機能回復・中枢性疼痛のmulti-modality MRIによる研究 (脳梗塞後機能回復過程での皮質再構成現象や、中枢性疼痛成立に関わる脳可塑性変化を、fMRI、灌流MRI、拡散強調MRIなど複数の撮像技術を併用して捉え、その病態生理学的メカニズムに迫ります。脳神経外科研究者との共同研究を行います。

主な就職先

・たくさんの関連病院麻酔科(お問い合わせください
・海外留学(欧米の麻酔科学・薬理学研究室など)
・麻酔科、ペインクリニック開業など

医学研究科