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統合医科学分野

概要

統合医科学分野では主として分子情報解析を基盤に基礎医学研究と臨床医学研究を有機的に統合し、疾患の分子メカニズム解析とそれに基づく疾患の予防・診断・治療法の開発を推進する研究を行います。医学研究においてはこれまで多くの基礎的研究が積み重ねられていますが、それら基礎研究の成果が臨床医療に効率よく生かされているとは必ずしも言いがたい状態となっています。基礎医学研究と臨床医学のギャップは「the valley of death(死の谷)」とも呼ばれ、医学研究全体の大きな課題と認識されており、近年はそれを橋渡しするトランスレーショナルな視点が強調されています。一方で、医学研究の原点は臨床での問題点を基礎的に解析する、臨床から基礎へのフィードバック的なアプローチにあり、よって、基礎,臨床双方向の有機的かつ高度な統合的アプローチが医学研究には極めて重要となります。本分野では統合医科学研究所(TIIMS)を主たる研究の場として、同研究所の持つゲノム、染色体の網羅的かつ精密な解析力を基盤に、がん、生活習慣病、先天性疾患等、身近であるにも関わらず未だに克服されていない難病について基礎、臨床の垣根を取り去った双方向性の統合的な視点に基づく研究を推進します。

研究可能テーマ

(1) がんの分子病態解明を基盤とする分子診療法の開発
がんの病態は複雑な分子機構で成り立っている。その病態を主として担うのは信号伝達経路の異常であるが、幾重にも重なった制御機構とクロストークにより極めて複雑なネットワークを形成しており、未解明の部分が大きい。がんの分子病態を詳細に解析することによりがん発生 進展の分子機構を解明し,がんの予防,診断,治療に有用な情報を明らかにして,それを応用した分子診療法を開発する。

(2) 大規模ゲノム解析による疾患分子機構の解明
疾患感受性遺伝子の同定はこれまでは主として連鎖解析や構造異常領域を指標としたポジショ ナルクローニング法や候補遺伝子アプローチ法により行われてきた。ごく最近になり次世代型シーケンサーと呼ばれる超ハイスループットなDNA塩基配列解析装置が開発され、1施設におけるヒトゲノムの全塩基配列解明が現実的に可能となった。本分野ではこのような機器を利用した最先端のゲノム解析技術に基づく疾患分子機構の解明をすすめ、臨床診療に有用な情報を明らかにする。

(3) 多因子疾患の遺伝的感受性に関する研究
脳卒中などの生活習慣病に代表される多因子疾患は、複数の環境要因や遺伝要因が発症に関与していると考えられている。近年では次世代型シーケンサーの登場により、疾患発症に大きな効果で寄与する低頻度な機能的バリアントの解析に注目が集まっている。本研究では、このような低頻度バリアントに注目した疾患との関連解析、さらにそのバリアントによりもたらされる病態の解析を行う。

スタッフ紹介

准教授 赤川 浩之
医学博士/脳神経外科専門医
研究テーマ: 脳血管障害を中心に多因子疾患の遺伝的感受性について研究を行っている。

大学院希望者へのメッセージ

統合医科学分野は臨床医学マインドに富み,かつ、分子生物学的解析力に長けた研究集団です。最先端の高度分子解析機器を駆使しながら,少人数ラボで研究者の自主性を重んじた研究・教育を展開しています。私達と是非一緒に病気を防ぐ・見つける・治す研究をしましょう。
 
※研究業績については東京女子医科大学研究業績データベースをご覧下さい。
 

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