大学院・研究施設

先端工学外科学分野

概要

 本研究室では、よりクオリティの高い医療を実現するための研究・開発を行なっている。研究の核となるインテリジェント手術室における画像誘導下手術は、2000年3月の術中MRI導入から2016年7月までに1,623症例を数え、Image-guided surgeryの創始期から普及期を支えてきた。これからは情報誘導手術(Information-guided surgery)の時代を迎え、これまでの術中MRI・アップデートナビゲーションシステムに加え、MRスペクトロスコピー、覚醒下開頭術、術中言語機能検査(IEMAS)、術中迅速病理診断、フローサイトメトリーを用いた悪性度術中診断、光線力学診断・治療、非接触インタフェース(Opect)、自動追従型手台ロボット(iArmS)、高次脳機能検査、等々の術前・術中・術後を一気通貫に支援する様々なモダリティを追加し、集学的なクオリティの向上を目指している。そして、これらの技術を統合したSmart Cyber Operating Theater (SCOT)の実現に向けて、医工連携(融合)・産官学連携(融合)の研究開発体制を展開している。
 また、がん治療における手術・放射線・化学療法に次ぐ第4の治療法として、集束超音波治療および音響活性薬剤を併用した音響化学療法の実現に向けた取り組みを進めている。単なる技術開発だけではなく、国際規格取得にむけた活動にも注力している。
 基礎研究から臨床応用・製品化まで各プロセスを担当するスタッフにより集学的なアプローチがなされ、これらの取り組みは次世代の医工連携(融合)研究、そしてその橋渡し研究、ビジネス化のモデルとなりうる。

研究可能テーマ

(1)脳神経外科における手術戦略システム 
外科手術,特に脳神経外科手術ではさまざまな検査機器・診断機器・治療機器の導入が進み,システムが極めて複雑化している.それらの情報から最適な手術計画を立案しつつも,手術経過に応じて計画を修正し,手術を最適化することこそが手術成功の要である。本研究では術前の手術計画の立案、術中情報の可視化による進行状況の確認、ならびにその結果検出される問題に対する手術の修正を系統化・効率化する方法とそれを実現するソフト・ハードウエアを開発する。
なお、研究発表の指導のため、研究進捗報告を学会発表形式で行う(年2回)

(2)手術リスクマネージメントのための手術フライトレコーダ・シミュレータ 
手術における危機管理の効率化・最適化のためには術中の麻酔管理情報・患者生理情報(ウェラブル機器データ)と手術情報(術野映像データ)を経時的デジタル情報として記録・保存するための「手術フライトレコーダ」が必要となる。また不測の問題発生に対する分析と評価のためには、フライトデータの蓄積に基づくフライトシミュレータシステムが不可欠である。本研究ではフライトレコーダならびにフライトシミュレータを開発し、手術過程を安全に導く技術の確立を図る。
なお、研究発表の指導のため、研究進捗報告を学会発表形式で行う(年2回)

(3)増強現実に基づく低侵襲脳神経外科手術システム
外科領域では手術侵襲の最小化のため、狭い術野操作を支援する手術ナビゲーション技術が重要視されている。基盤技術である増強現実(augmented reality: AR)は術者が現在の手術位置の確認や操作状況の把握を経験や勘に頼らず、一定精度で継続的かつ客観的に支援するリアルタイム総合情報を提供する。本研究ではこの増強現実を高度利用した脳神経外科領域の低侵襲手術システムを構築するとともに本システムを用いた手技の確立を目指す。
なお、研究発表の指導のため、研究進捗報告を学会発表形式で行う(年2回)

(4)外科手術支援ロボット・デバイス 
術者の「新しい手」の技術として、機械/電子/情報/工学・コンピュータ外科学の技術を応用した人間の手を超えた精密さ・作業分解能・操作性を実現するレーザ手術ロボットや超音波やレーザを用いた新たな手術デバイスの開発研究を行う。脳神経外科、腹部外科、胸部外科を始めとする様々な診断・治療を支援する機器の概念設計、実現方法、機能・効用について医工学的アプローチによる研究を行う。
なお、研究発表の指導のため、研究進捗報告を学会発表形式で行う(年2回)

(5)細胞シート移植ロボット・デバイス 
温度応答性ポリマーを利用した細胞シート自動培養・積層システムにより作成された再生細胞組織を清潔環境で低侵襲・簡便に生体内に移植するデバイスの開発研究を行う。特に心筋・繊維芽細胞シートを移植するためのデバイス開発研究を行う。
なお、研究発表の指導のため、研究進捗報告を学会発表形式で行う(年2回)

(6)医療機器におけるレギュラトリーサイエンス 
国産医療機器産業は、開発はするが上市はできないという開発と実用化の乖離がおこり、特に治療機器はほとんどが海外治験、海外製品と危機的状況にある。国民、開発者、経営陣、審査機構、すべてのプレーヤーのリスク回避が原因であり、この状態を打破するためにはリスク低減が必要である。また開発時から認可実用化というゴールをみすえたデータパッケージングと、効果や安全性を評価できる科学を自ら提案しなければいけない。このような科学-レギュラトリーサイエンス-を開発機器に応じて検討する。
なお、研究発表の指導のため、研究進捗報告を学会発表形式で行う(年2回)

(7)定位機能放射線外科手術(Stereotactic and Functional Micro-Radiosurgery)
ガンマナイフ治療では、周囲正常脳組織を傷つけることなくガンマ線を用い、脳病変をナイフで切り取るかのごとく根治を目指している。ガンマナイフ装置は、192個のコバルト(Co60)が同心円状かつ半円球状に敷き詰められ、一箇所に集中するよう設計され、標的病変に高線量一括照射が可能となっている。現在は、頭頸部移行部病変を含む全ての脳内ターゲット位置へ自動的に0.1mmの精度で位置決めすることが可能である。本精密放射線外科治療装置を用い、定位機能放射線治療の治療精度、臨床成績について検討を行う。
なお、研究発表の指導のため、研究進捗報告を学会発表形式で行う(年2回)

スタッフ紹介

教授 村垣善浩 正宗賢
准教授 南部恭二郎
講師 田村学 チェルノフマイケル 岡本淳 林基弘(兼任)丸山隆志(兼任)
助教 生田聡子 仁木千晴 小西良幸 堀瀬友貴 楠田佳緒 新田雅之(兼任)

脳神経外科との共同臨床試験・研究

脳神経外科と共同実施している臨床試験、臨床研究 - より良い標準治療を目指して 

・神経膠腫(グリオーマ)に対する臨床試験(試験の内容詳細は東京女子医大脳外科URL2参照のこと)

Grade 2 JCOG1303試験参加施設 術後残存腫瘍に対して実施中
Grade 3 JCOG1016試験:(SANTA)提案、参加施設として東京女子医大に事務局を置き、実施中
Grade 4 JCOG1308C試験参加施設 再発神経膠芽腫に対し実施予定
自家腫瘍ワクチン療法:AFTV これまで実施された3試験を経て、東京女子医大に事務局を置いたランダム化第IIb/III相の臨床研究を実施中
光線力学的療法:PDT 東京女子医大が主導した、日本で最初の医師主導治験の結果を受けて実施されている。レザフィリン(タラポルフィンナトリウム)、PDレーザーを用いた前向き比較の臨床研究として実施中
免疫療法 PD-1抗体を用いた臨床治験を実施中

・脳神経外科領域に対する臨床研究
脳腫瘍治療を取り巻く様々な医療について、大学院生とテーマを共同作成した臨床研究を含め、数多く実施中である。

医学研究科