医学部

麻酔科学分野

概要

東京女子医科大学では各診療科が一体となって最先端医療を推進し、臨床、教育、研究そして新しい医療技術・治療の開発に取り組んでおります。
東京女子医科大学麻酔科は1965(昭和40)年7月に故・藤田昌雄教授を主任教授として設立されました。藤⽥昌雄先生は、北海道⼤学を卒業されたのちに、1946年に聖路加国際病院インターンを修了した後、在日⽶国陸軍病院を経て1952年に⽶国に留学し、アルバニー医科⼤学、ボストン⼩児病院などを経て帰国し、東京女子医科大学麻酔科にわが国で極めて早い時期より北米型の麻酔トレーニングのシステムを取り入れました。折しも当時心臓外科の泰斗であった榊原 仟教授と、わが国で最初に食道癌手術に成功した消化器外科中山恒明教授が本院へ赴任した頃で、急増する外科手術の周術期診療の一端を担いました。この流れを継承し2020年からは米国Harvard大学マサチューセッツジェネラルホスピタル(MGH)における北米型の麻酔科診療のスタイルを日本に取り入れ、安全で質の高い麻酔科診療を目指しています。

教育内容

東京女子医科大学麻酔科では、現在のより良い医療を提供する努力だけでなく、未来の麻酔専門医の育成と卒後教育に鋭意取り組んでいます。優秀な麻酔専門医の育成には、
①豊富で重症度の高い症例数
②教育に燃える先輩麻酔科医師
③切磋琢磨し一生涯の友情を分かち合う仲間
の3要素が必須と考え、以下の体制で取り組んでいます。
 
症例と診療体制:東京女子医科大学病院の手術部は、日本でも有数の麻酔科管理症例数(年間症例数約6,800例、2023年度)を有し、大学病院特有の希少で重症な症例を通し病態生理に基づいた指導を行っています。特徴的なのは、外科執刀医らが、自らを最後の砦として難易度の高い症例の手術を率先して行い、麻酔科が集中治療科と連携して術前から術後までの周麻酔期に患者のアウトカムに貢献する体制を整えていることです。
 
知識と教育:私たちは臨床研修に注力し、オールラウンドな麻酔科医の育成を目指しています。同時に、知識の廓大のために世界一流の演者を招請し、開催する「東京女子医科大学麻酔科グランドラウンド」や、年間を通した英文原書の通読、折々のハンズオンセミナーなどの開催で、「文武両道」たる麻酔科医の育成のため尽力しております。東京女子医科大学麻酔科専攻医(後期研修医)のプログラムは、日米両国の麻酔科レジデント制度の良い点をブレンドし、麻酔専門医への道のりとして質の高い教育を望む若い医師のために、きめの細かい内容を提供しています。
 
「患者を診ずに本だけで勉強するのは、まったく航海に出ないに等しいと言えるが、半面、本を読まずに疾病の現象を学ぶのは、海図を持たずに航海するに等しい」 内科医の父ウィリアム・オスラー博士のことば(日野原重明・訳)
To study the phenomenon of disease without books is to sail an uncharted sea, while to study books without patients is not to go to sea at all. –Sir William Osler, “Books and Men” in Boston Medical and Surgical Journal, 1901.
 
切磋琢磨し、互いを助け、己を磨く経験を通して、優秀な麻酔の指導医と良き仲間とともに歩む研修期間は生涯忘れ得ない貴重な時間となることでしょう。ぜひ、一度見学に訪れてください。一同でお待ちしています!
 
取得できる資格
・麻酔科標榜医(厚生労働省認可):後期研修2年終了時に申請
・日本麻酔科学会麻酔科認定医:後期研修2年終了時に申請
・日本麻酔科学会麻酔科専門医:後期研修4年目に受験(認定医取得後2年目)
・日本麻酔科学会麻酔科指導医:専門医取得後4年以上の専従
 
関連領域(麻酔科専門医を取得した希望者)
・日本心臓血管麻酔学会専門医:日本周術期経食道心エコー認定医(JB-POT)を取得し、研修施設における研修5年以上で受験
・日本集中治療医学会集中治療専門医:研修施設における研修5年以上うち1年間集中治療領域の診療に携わること
・日本ペインクリニック学会ペインクリニック専門医:研修施設における研修5年以上
・日本小児麻酔認定医
・日本区域麻酔学会認定医:日本区域麻酔検定試験(J-RACE)
・日本呼吸療法医学会呼吸療法専門医
・米国経食道エコー認定(Advanced PTE eXAM)
・ヨーロッパ区域麻酔認定医(EDRA)

研究内容

東京女子医科大学麻酔科では、今ある医療に尽力することに加え未来の医療の扉をひらく医学の研究を行っています。
 
■単施設研究
・前向き研究(基礎と臨床研究)
テーマ:麻酔による血圧低下のメカニズムについて
厚労科研情報:https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24K12079/
・前向き研究(基礎研究・期間延長中)
テーマ:非脱分極性筋弛緩薬がマクロファージを介した炎症反応調節系に与える影響
厚労科研情報:https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09315/
・前向き研究(臨床研究) 
テーマ:人工心肺中の溶血に対するハプトグロビンの腎機能障害発生予防効果について
jRCT詳細情報:https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT1031190038
 
■多施設共同研究
テーマ:非心臓手術後の心筋傷害の発生状況の調査
UMIN:UMIN000053416     主幹:九州大学麻酔科
テーマ:クーデックエイミーPCAの術後痛に対する有効性を探索するオープンラベル多施設共同ランダム化並行群間比較研究
jRCT詳細情報:https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs062210006
 ・この他に後ろ向き研究として、当院の特色である先天性心疾患合併妊婦についての研究や、術後急性腎機能障害についての研究などさまざまなものがあります。
詳しくはお問い合わせください。
 
■海外留学
当分野には米国麻酔専門医を取得し、海外の病院で自らがレジデントを指導してきた経験がある医師や、海外で基礎研究の成果をあげてきた医師などが何名も在籍しており、豊富な知識と経験を生かして海外留学を希望される医局員を積極的にサポートしています。
臨床留学(麻酔科レジデンシー):海外で麻酔科医としての本格的なトレーニングを数年にわたって受けます。修了後にその国の麻酔専門医試験に挑戦でき、さらに海外で麻酔科医としての就職の道も開けます。
臨床留学(フェローシップ):海外で麻酔科の臨床医として、心臓麻酔、術中経食道超音波検査などを学びます。
基礎研究:動物や細胞を用いた研究を通し医学の発展に貢献します。
臨床研究:ボランティアや患者さんの検体を用いた研究をおこない、臨床医学の向上に貢献します。
 
主な海外留学先は以下の通りですが、希望があれば留学先を新たに増やすことも可能です。いずれの施設においても、国内では到底経験できないレベルの高い研究、臨床の修練の機会を得ることができます。海外に身を置いて生活することで、とかく近視眼的な考え方にとらわれがちな私たち医師の視野を広げるきっかけとなり、自らの価値観や考え方に多大な影響を与えてくれるでしょう。
 ・東京女子医科大学麻酔科ゆかりの海外拠点病院
米国:
ハーバード大学マサチューセッツ総合病院(マサチューセッツ州ボストン)
ハーバード大学ブリガムアンドウィメンズ病院(マサチューセッツ州ボストン)
ハーバード大学ボストン小児病院(マサチューセッツ州ボストン)
インディアナ大学病院(インディアナ州インディアナ)
ワシントン大学ハーバービュー病院(ワシントン州シアトル)
オクラホマ大学病院(オクラホマ州オクラホマシティ)
ノースキャロライナ大学メディカルセンター(ノースキャロライナ州チャペルヒル)
スタンフォード大学メディカルセンター(カリフォルニア州スタンフォード)ほか
ヨーロッパEU:
ドイツ エアランゲン大学病院(バイエルン州エアランゲン)
アジア:
シンガポール タントックセン病院(シンガポール タントックセン)
マレーシア クアラルンプル国立心臓病センター(マレーシア クアラルンプール)
その他多数施設と連携しています。

スタッフ紹介

教授・基幹分野長
長坂 安子
専門領域
心臓麻酔
産科麻酔
臨床研究
基礎研究

教授
黒川 智
専門領域
心臓麻酔
経食道心エコー
小児麻酔

准教授
笹川 智貴
専門領域
区域麻酔

准教授
岡野 龍介
専門領域

特任教授
椎名 恭子
専門領域

臨床卓越教授、特任准教授
鈴木 康之
専門領域
小児麻酔

名誉教授
野村 実
専門領域
心臓麻酔

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