消化器内科学分野
概要
消化器内科学分野は、1965(昭和40)年に開設された消化器病センターの内科部門として始まりました。消化器病センターの基本概念は、消化器病の患者さんに診療科の垣根を超え最良の診療を提供することであり、消化器外科・消化器内視鏡科と協力して「患者さん中心の医療」を実践しています。
消化器疾患は、消化管、肝臓、胆道、膵臓と幅広く、またその病態も発がん、炎症、感染、免疫など多岐にわたるため、消化器内科医として幅広い知識を習得しつつ、各専門分野のエキスパートを育成しています。
本邦で増加する悪性腫瘍の中でも多くを占める消化器がんでは、術前後補助化学療法や免疫療法など新たな治療戦略も開発されており、病期および患者さんの状態に応じて内視鏡治療、抗腫瘍療法、外科切除から最適な治療を選択する必要があります。内科・外科の垣根がない消化器病センターとして開設された特性を生かした診療を行います。
消化管領域では、特に炎症性腸疾患に注力して、生物学的製剤・顆粒球吸着療法などの内科的治療を担当し、近年注目されている高齢発症の炎症性腸疾患や原発性硬化性胆管炎との関連について研究しています。肝臓領域では、抗ウイルス薬の進歩によりウイルス性肝炎関連疾患は減少していますが、脂肪性肝疾患は大きく増加しているほか、自己免疫性肝疾患、うっ血性肝疾患など課題も多く残されています。胆膵領域では、難治がんの代表ともいえる膵臓がんに対して超音波内視鏡(EUS)を用いた早期診断に外科と協力しながら取り組んでいます。総胆管結石・閉塞性黄疸などに対する内視鏡治療、自己免疫性膵炎・慢性膵炎の診療を積極的に行っています。
各領域の専門医・指導医が専門的な診療を提供しているのに加えて、診療ガイドライン委員として診療の標準化・均てん化に努めています。さらに多施設共同の臨床研究を行うことで、新たな診断・治療の開発、基礎研究による病態の解明など、将来の消化器診療を変えるための新たな試みにも取り組んでいます。
教育内容
卒前教育
多様な消化器疾患に対応するため病態・疾患の両面からの講義を行うとともに、臨床実習では指導医のもとで診療技術・態度を学ぶ病棟参加型実習を行います。臨床実習では、消化器内視鏡科とも連携し、消化器疾患に対するさまざまな検査・治療の現場を経験しつつ、知識の習得・整理のために各種クルズスも行っています。
卒後教育
初期研修では、病棟医として消化器疾患の基本的な診療に対応するための知識・技術の習得をするとともに、内視鏡治療など専門的診療の現場にも参加することで最先端の医療にも触れる機会があります。後期研修では消化器内科医として必要な知識・技術を習得するとともに、関連研修施設・消化器内視鏡科とも連携し、幅広く臨床を経験することで専門的診療の習熟を図ります。
研修後には専門的な知識・経験を増やし専門医取得を目指すとともに、指導医のもとで自身の経験をもとにしたClinical Questionに対する研究を行い、学会発表・論文執筆を通じて、研究者として自立することを目指します。
消化器内科では、学外からの国内留学による研修、海外医師の見学も広く受け入れ、学外との交流を積極的に行っています。また当科から学外施設への見学、研修や留学も推奨しています。
研究内容
1)潰瘍性大腸炎の重症化の病態解明と治療
2)炎症性腸疾患類縁疾患の病態の検討
3)胃・食道静脈瘤の血流動態と治療
4)MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の病態と予後の解析
5)肝疾患の遺伝的バックグランドの解析
6)フォンタン関連肝疾患の肝線維化・肝がんリスク因子・治療の検討
7)膵臓がんの早期診断のためのサーベイランスの確立とバイオマーカーの検討
8)自己免疫性膵炎の再発リスク因子と長期予後の解析
9)胆道・膵臓疾患に対する内視鏡を用いた新規診断・治療の開発
大学院
医学研究科内科系専攻消化器内科学分野ホームページ
積極的に大学院生を募集しています。大学院生に対しては、上記の研究テーマに基づき、臨床にfeedbackできる基礎研究とローバルな臨床研究を立案・指導してまいります。指導方針は、指導医からの一方向性の指導でなく、双方性の議論をして、自主性を重んじてまいります。