医学部

薬理学分野

概要

 医療技術の発展は日進月歩であり、薬を用いた医療においては、従来の低分子化合物だけでなく、核酸医薬や細胞医薬など開発が著しく、多くの疾患において治癒が期待できるまでに至っています。また、手術やデバイス留置などを伴う侵襲的な治療においても、薬物治療による補助が不可欠です。そのような観点から、薬理学は、治療の基盤である「薬」を通して病を癒やし、治すことを目指すものであり、またその対象はゲノムから臓器・個体までを包含する大変広い領域であることから、今後も一層発展が期待される学問分野です。
   教育においては、薬を用いて治療するために必要な知識の習得はもちろんのこと、先人の不断の努力によって開発された薬物治療の魅力についても理解してもらうことを大切にしています。これは、医師として医学を学び・実践するだけでなく、自ら新たな医学を創出する人材に育ってほしいという思いからです。医療安全教育も大変重要だと考えています。薬物治療は、患者さんにとってとても身近な治療法です。したがって、薬を処方・投与する医師となる責任を理解してもらえる教育も実践してまいります。
   研究においては、新たな薬物治療を開発し臨床応用されるまでが目標です。私たちは、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の大量培養技術を基盤としたヒト心筋シートによる再生医療開発、ヒト心筋組織モデルや機能評価系の開発を基盤とする疾患・創薬研究、さらにはさまざまな組織・臓器に存在する線維芽細胞の臓器特異性に着目した血管新生治療法開発を行っています。組織の中には多様な細胞が存在し、それらが相互に影響しあった結果が組織の機能につながることから、組織内の細胞間相互作用を一つの切り口にさまざまな生命現象を明らかにしたいと思います。さらに、そのゆがみの原因となる機序と疾患との関係性を明らかにすることで、治療薬開発につなげていきたいと考えています。さらに薬理学分野では、がんの発生や浸潤、転移の機序解明に向けた研究も盛んに行っています。

教育内容

講義は、医学部第1学年の(1)「生体と微生物」の<化学療法薬>と<薬剤耐性>、「遺伝と遺伝子」の<遺伝子診断と分子標的薬>、医学部第2学年においては(2)「治療の基礎」の科目責任者である他に、「腎尿路系」、「循環器系」、「妊娠と分娩」、(3)他学年の臓器別授業での薬理学各論、第3学年の「消化器系」、「加齢と老化・臨終」、「脳神経系」、「精神系」、第4学年の「血液・リンパ系」、「免疫・アレルギー・膠原病」、「基本的治療法」(4)大学院の<臨床薬理学総論>、(5)先端生命医科学研究所「バイオメディカルカリキュラム」の<薬理学>、(6)看護学部「薬理学」の科目責任者、(7)看護学部大学院「臨床薬理学」の科目責任者を担当する。実習は、医学部第2学年の(1)末梢神経作用薬と腸管および血管薬理学、(2)中枢神経作用薬とマウス行動薬理学、(3)コンピューターを用いた薬物動態学、(4)二重盲検法など、および第3学年の「研究プロジェクト」のグループワークを担当する。
 

研究内容

1. 組織工学技術を用いた心筋組織作製技術の開発(移植組織・創薬モデル)
2. 疾患iPS細胞を用いた心筋症の病態解明研究
3. 組織特異的線維芽細胞の機能特性解析
4. がんの転移におけるレクチン様酸化LDL受容体-1(LOX-1)の役割に関する研究
5. 腫瘍細胞-微小環境のPAR-2を介した腫瘍増悪メカニズムの解明
6. ABCトランスポーター制御因子による抗がん剤薬剤耐性発現メカニズムの解明

スタッフ紹介

教授・基幹分野長
松浦 勝久
専門領域
循環器内科学
心不全
心血管組織工学

医学部