コラム

乳がんについて

2016.02.16

乳腺科 医師 青山圭

Ⅰ.乳がんについて

 日本でも乳がんの発生率は年々増加し、女性のかかるがんのトップになりました。欧米では閉経後の乳がん症例が多いですが、日本では閉経前・後の40代~50代でかかる方が多いです。その後は次第に減少しますが、閉経後の60歳代前半で再度ピークを迎える傾向にあります。かつて日本の乳がんは、欧米と異なり閉経前が多い特徴でしたが、近年は欧米のように閉経後も増加しています。
 2014年には乳がんで13,240人が亡くなっています。一生のうちおよそ12人にひとりが乳がんと診断されています。一方で死亡数は第5位を示しております。
 乳がん増加の背景には、ライフスタイルの欧米化が指摘されています。高カロリー・高脂肪の食生活による思春期女性の初潮の低年齢化や肥満、晩婚・少子化による初潮から第1子出産までの期間の長期化などが危険因子として上げられます。

乳がんの危険因子は?

 多くの乳がんの発生、増殖には女性ホルモンのエストロゲンが重要な働きをしています。そのため、体内のエストロゲンレベルに影響を与えるようなものがリスク要因となります。近年、日本女性の乳がんが増加した理由として、食生活の欧米化や、女性の社会進出があると考えられています。乳がんの原因ははっきりと解明されていませんが、女性ホルモンの1つであるエストロゲンは乳がんのがん細胞を増殖させることが知られています。食生活の欧米化に伴い、高タンパク・高脂肪の食事が増えて体格が良くなった結果、初潮が早く閉経は遅い人が増えました。さらに、女性の社会進出の増加によって、妊娠・出産を経験する人が減少し、女性が生涯に経験する月経の回数が多くなりました。月経中はエストロゲンが多量に分泌されるため、この回数が増えたことが、乳がんの発生と進行に影響を及ぼしている可能性があります。

Ⅱ.乳がんの予防

 現在のところ、乳がんの決定的な予防方法はありませんが乳がんリスクを下げることが報告されているものがあります。

  • 閉経後の肥満と過体重を避ける
  • 定期的な運動をする
  • アルコール摂取を減らす
  • 禁煙をする
  • (食事や栄養素に関しては、脂質が危険要因として、野菜、果物食物繊維、イソフラボン等が予防要因として注目されていますが、現時点で十分な根拠のあるものはありません。)

 検診の普及は乳がんの早期治療を可能として、乳がん死亡数の減少につながると期待されています。欧米では乳がん発生率が増加しているにも関わらず、乳がん死亡率は減少しています。多くの先進国ではマンモグラフィによる乳がん検診が推奨されており、欧米では検診受診率が60~80%ですが、我が国の検診受診率は約20%前後と極めて低いのが現状です。日本では乳がん発生率の増加とともに、乳がん死亡率も上昇しています。乳がん死亡率を減らすためにも、検診受診率向上の必要性が指摘されています。乳がんは早期発見であるほど治る率の高い病気です。早期発見につなげるためにもセルフチェックや定期検診を心がけましょう。

セルフチェックについて

 乳がんの症状でいちばん多いのが、乳房にできるしこりや気になる硬さです。

その他の症状は
  • 皮膚のひきつれ
  • 乳頭がひっこむ
  • 乳頭から分泌物が出る
  • 乳頭にびらんができるなどです
こんなふうに調べましょう
  • 毎月1回、日を決めて自己検診を心がけましょう
    月経が終わり乳房のはりがおさまった頃(3~5日後位)乳房に張りや痛みが少なく最適です。閉経後の人は毎月、日を決めて行うとよいでしょう。
  • 毎回同じ体位で調べましょう。仰臥位になり親指を除く3~4本の指を乳房にあてます。乳房全体をのの字を書くように動かして、調べます。(入浴時に、乳房に石鹸をつけて座位で行う方法もあります)
  • 身につけている下着に色が付いていないかチェックしましょう。ついている様であれば乳頭からの分泌物の有無をチェック しましょう。
  • 鏡のまえで左右の乳房の違いがないか見てみましょう。ひきつれや皮膚の色の変化などをチェックするために両手を上げたり、下げたりするのもよいでしょう。

乳がん検診について

 視・触診検査とマンモグラフィ検査、超音波検査があります。
 マンモグラフィ検査:乳房X線撮影のことです。乳房を2枚の板に挟んで圧迫して撮影します。長所はしこりがあると白っぽいかたまりに、石灰化があると白い点状に写り、その両方を発見できることです。一方で、乳腺組織自体も白く写るため、乳腺組織が発達している人や閉経前の若い世代ではしこりを見つけにくいこと、また少量ですが放射線被曝をするので、妊娠中や妊娠の可能性がある人は受けられないことが短所です。この検査では視・触診では発見できない小さなしこりや、特に石灰化のある乳がんの発見に適しています。マンモグラフィによる放射線被ばくは主に乳房だけで、白血病の発生など骨髄への影響はほとんどありません。一般の人が1年間に受ける自然放射線量の50分の1程度で、マンモグラフィによる健康影響は、ほとんどないと考えてよいと思われます。
 乳房超音波検査:超音波により乳房内の病変を検査する方法です。視・触診だけでは発見できない小さなしこりや、しこりの形状の診断に用いられます。乳腺組織の発達した人や、若年者の検査に適しています。一方で、石灰化を発見することは難しく、検査を行う医師や技師の技術が高くないと見落とす可能性があること、良性のしこりも検出してしまうことなどの短所があります。
 乳がんの早期発見のための検査方法としては、マンモグラフィ検査と超音波検査の併用を強くお勧めしています。

 当院では、乳がん専門医が診察のうえ、マンモグラフィ検査と超音波検査の所見を総合的に判断し診断致します。早期発見のためにもマンモグラフィ検査や超音波検査を使った乳がん画像検診を受診されることをお勧め致します。気になる症状がある場合には一度専門の医療機関で検査することが必要です。不安を抱えるよりもしっかり検査をして安心されることをお勧め致します。
*受診の際には女性医師・検査技師・スタッフが対応致します。