コラム

紫外線は百害あって一利なし!?

2010.08.01

皮膚科 非常勤講師 大江麻里子

 いよいよ夏本番です。紫外線が気になる季節になりましたね。
 でも、ちょっと待って下さい。皆さんは、これから紫外線予防を始めるのですか?
 もちろん、これからは一番注意しなければいけない時期ですが、紫外線の影響は夏だけだと思っていると、それは大変な誤解です!
 今回は、ぜひ紫外線についての正しい知識と、紫外線によって起こる皮膚のトラブル、紫外線に対する予防や対策法をお話しましょう。

紫外線とは

 まず簡単に紫外線についての基礎的なお話をします。
 紫外線には、波長の長い順にA波(UVA)、B波(UVB)、C波(UVC)の3種類があります。
 UVCはオゾン層で吸収されるため、地表に届くのは、UVAとUVBです(図1)。年間の紫外線量は、UVBは4-9月にかけて強くなりますが、UVAはこの時期だけでなく、実は冬でも夏の1/2から1/3もあります(図2)。また、一日の紫外線量は、UVBは朝9時から急速に増え、正午前後がピークになりますが、UVAは、朝から夕方の5時ぐらいまで、じりじりと残っています。ましてやUVAは「生活紫外線」とも言われ、窓ガラスや薄いカーテンを通しても室内へも差し込みますので、日常生活の中で、知らず知らずのうちに浴びてしまいやすいのが特徴です。お天気に応じての紫外線量も、晴れを100%とすると、曇りは約65%、雨でも約20%とありますし、紫外線が上からだけ降り注いでいると思っていると、壁や地面に当たって反射しますので、下からの紫外線も要注意です。

紫外線による皮膚トラブル(図3)

 まず皆さんが思い浮かべるのは日焼けですね。日焼けは主にUVBにより起こります。
 UVBは、中波長のため、皮膚の表面にしか到達しませんが、皮膚に直接的にダメージを与え、炎症を起こさせます。急に日焼けをすると、赤くなったりヒリヒリしたり、水疱になったりするのはこのためです。
 その他、皮膚は紫外線を浴びると、紫外線の害から皮膚を守ろうとしてメラニン色素を大量に作ります。ところが、加齢により新陳代謝が衰えてくると、その大量のメラニン色素が排除されにくくなり、シミの原因になります。シミは、時に隆起していぼや腫瘍のようになる(脂漏性角化症)ことがあります。
 またUVAは、エネルギーは少ないですが、皮膚の最も深い部分にまで侵入して、長期には、皮膚の弾力を保つ線維のエラスチンやコラーゲンを破壊して、しわやたるみを作ります。最近言われている「光老化」とは、加齢による皮膚の老化とは別の、長期間の紫外線によるダメージの蓄積による老化のことです。よってこの光老化は、日常生活の中で紫外線防御によって防ぐことができるのです。

紫外線予防と対策

 今まで述べたように、7、8月はもちろんのこと、実は紫外線は、1年中、曇りでも雨でも、そして室内でも降り注いでいます。
 まずは、1年中紫外線は遮光することを考えましょう。そのためには、朝の洗顔後のお手入れのあとに、日焼け止めをしっかり塗る習慣をつけましょう。この時の日焼け止めのSPF値は、15‐20位で十分です。このSPF値とは、UVBを防止する効果を示す値で、数字が高いほど、防止効果は長続きしますが、数値が高いものには、かぶれをおこしやすい紫外線吸収剤などが入っていることがあるので、使用シーン、目的に合わせて数値を選びましょう(図4)。また、数値通りの効果を期待するためには、量をしっかり塗ることが大切です。伸びがいいからと薄く塗ったり、ムラ塗りしないようにしましょう。できれば、夏の暑い時期は2‐3時間おきにつけ直すことをお薦めします。日焼け止めの塗り直しが難しい場合は、ファンデーションの塗り直しでも有効です。また最近、PAというUVAを防止する効果を示す値の表示もされるようになりましたが、PA(++)以上を選びましょう。男性の方は、普段日焼け止めを塗る習慣がないので、無防備に紫外線を浴びがちですが、特にゴルフなど戸外でスポーツをされる方は、ぜひ使用をお薦めします。
 もちろん、日焼け止めだけに頼らず、帽子や日傘なども上手に使いましょう。厚手で、濃い色の素材の方が紫外線をよりカットしてくれますが、最近はUVカットの素材などもありますので、白地や薄手のものでもある程度効果は期待できます。また、うっかりしやすいのが、目からの紫外線です。目から吸収される紫外線で、目の老化、白内障のリスクはもちろんのことながら、目の周りの皮膚のシミにも影響しますので、必要なシーンでは、サングラスも必要です。但し、色の濃いレンズを選ぶと、瞳孔が開き、紫外線の吸収が悪いサングラスだと、かえって目に入る紫外線の照射量が増えてしまうので、注意して下さい。
 からだの内側からもケアしましょう。そのためには、ビタミンCを毎日の食事で、積極的に取りましょう。日焼け後の早期回復にも効果的です。ビタミンCを多く含む食品は、トマト・ブロッコリー・ピーマンなどの緑黄色野菜や芋類、またレモンなどの柑橘類や柿・イチゴなどの果物にも多く含まれます。ただ、熱に弱く、水に溶けやすい性質があるので、調理法に工夫して下さい。また、皮膚の構築の元であるタンパク質(コラーゲン)や、抗酸化作用や抗加齢作用のあるビタミンEの摂取も有効です。
 万が一もし、うっかり日焼けをしてしまったら、まず日焼け後のヒリヒリ痛い時は、火傷をしたのと同じですから、しっかり水や氷で冷やして下さい。また日焼けした皮膚は、乾燥しやすいので、刺激のないもので保湿して下さい。痛みがひどいときは、無理せず皮膚科を受診することをお薦めします。
 ぜひ、上手に紫外線対策をして、美しい肌で、毎日を過ごして下さい。