コラム

大腸ポリープ切らなきゃダメ?

2011.09.01

消化器内科 医師 鈴木 亜夢

 大腸内視鏡検査は受けられたことありますか?
 数日前からの食事制限、検査当日の2リットルの下剤、さらに、ポリープが見つかり切除すると、検査後2週間の飲酒や旅行、運動の制限と、負担や制限の多い検査・治療ですよね。大腸のポリープは、そんなにも切除しないといけないのでしょうか。せめて、検査後の生活制限だけでも、免れると楽ですよね。

 大腸は長さ1.5mの筒状の臓器です。大腸ポリープや大腸がんは、幸いにも大腸の内側にできるので、大腸内視鏡検査などで発見できます。
 大腸の内側に、イボのような出っ張りができているものを、大腸ポリープといいます。大腸ポリープの約8割は大腸腺腫あるといわれています。腺腫は、後から説明しますが、大腸がんと関連があるので、切除治療の対象となります。その他、過形成ポリープや炎症性ポリープ、その他特殊なポリープがあります。

 大腸腺腫は、切除し、顕微鏡で検査すると、癌細胞が見つかることが、しばしばあります。80年代までは、大腸腺腫が大腸がんになると考えられていました。そのため、腺腫をすべて切除していました。本当に、大腸腺腫はすべて切除しなければならないのでしょうか。

 大腸腺腫にどのくらいの頻度で、癌が見つかるか調べたものが、担癌率といいます。担癌率は腺腫の大きさとともに上昇し、20mmを超える腺腫では30%以上の報告がほとんどです。反対に、5mm以下の大腸腺腫の担癌率は、1%以下の報告がほとんどで、0.5%を下回る報告もたくさんあります。仮に担癌率が1%としても、100個切除すると1個くらい癌がみつかる程度ということがわかってきました。
 また、同時に、腺腫がなくて、全体が癌細胞でできている腫瘍(つまり早期癌)も見つかってきました。これは、多くは平坦(平らな形)で、陥凹(くぼみ)をもつことが多いということがわかってきました。この場合は、大きさは関係ありません。小さくても、全部が癌ですから、見つけたらすぐに切除します。このような癌を、デノボ癌と呼んでいます。小さなものは、多くが早期癌で、内視鏡で十分に切除できます。

 すべてのポリープが、がんになるわけではないとわかってきてから、小さなポリープは切除せず、経過観察とすることが多くなりました。そうすると、数年、大きさも形も変わらないポリープのすぐ近くに、大腸がんがみつかることも、時々見られるようになりました。毎日、同じように使っている大腸の一部は正常で、1部にポリープができて、1部に大腸がんができる。不思議ですよね。新しい細胞ができるときに、遺伝子異常が起こることが原因と考えられていますが、なぜ、そうようなことが、起こるところと起こらないところがあるのかは、まだわかっていません。ただ、手術治療を必要とする大腸がんの多くが、大腸腺腫を伴わないことから、大腸がんがデノボ癌が進行したものではないかと推測されています。

 ここまでで、平坦型でない小さなポリープは、大腸腺腫であっても必ずしも切除しなくていいということが、わかりました。(もちろん、1%以下ですが、この確率が心配な方は、切除しましょう。)しかし、だからと言って、ポリープが小さかったから、検査は数年後でいいということにはなりません。大腸腺腫がある、またはあった人は、大腸腺腫が見つかったことのない人と比べて、大腸がんになる確率が高くなります。ハイリスクグループに入ります。また家族歴がある方も、このハイリスクグループに入ります。

 余談になりますが、最近、メタボリックシンドロームと大腸腺腫の関連が、いろいろ報告されています。メタボリックシンドロームとそうでない人を比べると、大腸腺腫の頻度が増えるということが、たくさん報告されています。原因として、少しわかってきたことは、メタボになるとインスリンという糖尿病に関連するホルモンがたくさん作られるようになります。このインスリンというホルモンに細胞を増殖させる作用があるため、この影響を受けるのではないかと考えられています。

 大腸検査、そして、メタボ予防。これで、安心ですね。