コラム

白衣高血圧、仮面高血圧と24時間ABPM測定検査

2011.10.01

循環器内科 医師 藤田 悦子

 「白衣高血圧」という言葉は、どこかで耳にされたことのある方も多いのではないでしょうか。
 「白衣高血圧」とは、降圧薬による治療をしていない人で、通常の日常生活では正常血圧であるのに、病院、診療所、または健診の場において、医師・看護師などによって血圧が測定される時には、繰り返し高血圧を示すものをいいます。すなわち、診察室血圧の平均が140/90mmHg以上で、家庭血圧や昼間血圧の平均が135/85mmHg未満、または24時間の平均が130/80mmHg未満が、「白衣高血圧」と診断されます。「白衣高血圧」は、持続性高血圧と比べれば、長期的には心血管疾患を発症しにくいと考えられていますが、一部は、将来持続性高血圧に移行し、心血管疾患のリスクになることがあるという報告もされています。従って、「白衣高血圧だから大丈夫!」と安心してしまわずに、減塩など生活習慣の修正はした方が良く、持続性高血圧への移行や臓器障害の発症を早期に発見するために、注意深く経過を観察することは必要です。

 また、逆に、診察室では正常血圧であるのに、家庭や職場などで測定した血圧が高い、という「仮面高血圧」というものもあります。昼間の活動中に血圧が上がるタイプと、夜間睡眠中に血圧が上がるタイプがあり、いわゆる「早朝高血圧」も、これに分類されます。「仮面高血圧」は持続高血圧と同じくらい心肥大や動脈硬化を起こします。特に「早朝高血圧」は、心血管疾患のリスクになることが知られており、治療を考える必要があります。既に降圧薬治療中であっても見られることがあり、この場合は、服薬の内容や時間帯を工夫する必要が出てきます。

 しかし、ほとんど自覚症状がない状態で、いつ血圧が上がっているのかを判断することは難しいですよね。朝から晩まで血圧計を持って歩いて、測り続けるなんて簡単にはできませんし、まして寝ている間の血圧を測るなんて、どうすればいいのか…?
 そんな時に役に立つのが、「24時間ABPM(自由行動下血圧)測定検査」です。
 携帯型の自動血圧計を取り付け、24時間の血圧を昼間は15分置き、夜間は30分置きに測定して、24時間の平均血圧を含め、詳細な血圧の評価を行えます。
 「白衣高血圧」、「仮面高血圧」の診断をするだけでなく、降圧治療が十分に行われているか、血圧が下がりすぎていないかなども、評価することができます。

 診察室または家庭での血圧が大きく変動する方、白衣高血圧と言われている方、早朝だけ血圧が高いが1時間もすると自然に下がる、など仮面高血圧が疑われる方、降圧剤を色々服用しているのに中々血圧が下がらないという方、降圧剤を服用中の方で、立ちくらみがしょっちゅう起こるなど、低血圧を疑う症状が見られる場合は、一度、24時間ABPM測定検査をしてみることをお勧めします。