コラム

スギ花粉症の季節を迎えて

2014.02.01

耳鼻咽喉科 講師 岡村玲子

 春は誰もが心待ちにする季節ですが、スギ花粉症患者さんにとっては憂鬱な季節の到来です。年々スギ花粉症患者さんは増加の一方で花粉飛散情報は今では一般的になり、またドラッグストアでも様々な花粉症対策グッズが店先に並ぶようになりました。

 スギ花粉症はスギ花粉を抗原として発症するアレルギー性鼻炎のひとつです。日本では3000万人近くがスギ花粉症に罹患していると推定されていて国民病とも呼ばれています。スギ花粉症有病率の推移は東京都の行った調査では東京都全体の推計有病率が1985年10.0%、1986年19.4%、2006年28.2%と20年間で約3倍に増加しました。

 スギは戦後の国土復興のための木材需要により植林が盛んに行われ、次に植林が行われたのがヒノキです。日本のスギ人工林は約450万ヘクタール、ヒノキ人工林は約250万ヘクタールとそれぞれ全人工林面積の43%、25%を占めます。林業産業の後退や二酸化炭素対策、天災防止の面から伐採が出来ず,スギ林は樹齢30~40年の花粉産生の活発な成長木が中心となっています。同様の理由で今後はヒノキの花粉も増加してくると考えられます。スギとヒノキは花粉の抗原性が似ているためスギ花粉症患者さんの7~8割がヒノキ花粉症を併せ持っていると言われています。

 花粉症の三大症状と言えばくしゃみ、鼻漏、鼻閉です。より強い症状により花粉症はくしゃみ・鼻漏型と鼻閉型と2つの病型に分類できます。花粉症の治療には、レーザー療法などの外科的治療や特異的免疫療法(減感作療法)などがありますが主流は薬物療法です。スギ花粉の回避と初期療法が最も効果的であり,スギ花粉の飛散前(約2~3週間前)から予防薬を内服することで、花粉飛散後の内服治療と比較して花粉症の重症化がより抑制されます。また、くしゃみ・鼻漏型と鼻閉型では効果を期待できる薬剤が異なり、症状の程度に合わせて効能の異なる薬剤を併用するカクテル療法も行われています。

 スギ花粉症の根治は困難ですが、いかにつらい花粉症症状を和らげ3~4ヶ月にも及ぶ花粉症の季節をより快適に生活できることが大切です。花粉症の重症化を防ぐために耳鼻咽喉科では鼻粘膜の状態を観察し症状の程度を把握して、患者さんひとりひとりに合った治療に心がけています。

スギ花粉の回避

1) 花粉情報に注意する
2) 飛散の多い時は外出を控える。外出時にマスク、メガネを使う
3) 表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける
4) 帰宅後、衣服や髪をよく払ってから入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ
5) 飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。換気の窓は小さく開け、短時間にとどめる
6) 飛散の多い時の布団や洗濯物の外干しは避ける
7) 掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除する
(鼻アレルギー診療ガイドライン、2009年版より)