コラム

夜間頻尿と排尿日誌-排尿日誌をつけてみましょう!-

2010.06.01

泌尿器科 講師 小林 裕

 夜間頻尿とは、夜間に排尿のため1回以上起きなければならないという訴えであり、そのことにより日常生活で困っている状態です。一般的に夜間の排尿回数が2回以上になると生活の質を低下させてしまう為に問題となり、治療の対象になることが多いと考えられております。ちなみに夜間頻尿は「本人または介護者が治療を希望している」ことが必要であり、患者本人のQOL障害になっていない場合は、医療上問題にはなりません。

 夜間頻尿の原因は大きく膀胱容量の減少によるもの、夜間尿量の増加によるもの、両者の混合型、その他に分類されます。

① 膀胱容量の減少によるもの
1)加齢に伴う膀胱機能(蓄尿機能)の低下。
2)前立腺肥大症:中年以降の男子に起こる疾患。下部尿路閉塞を来す。
3)過活動膀胱:尿意切迫感を必須とした症状症候群であり、通常頻尿と夜間頻尿を伴う事が多い。尿路に感染、炎症、結石、癌などの病変がないのにもかかわらず、突然に起こる耐え難い尿意(尿意切迫感)を自覚する。
4)間質性膀胱炎:特殊な膀胱炎で膀胱粘膜の知覚が亢進し、蓄尿量が減少し、典型的な自覚症状には充満時膀胱痛を伴う疾患。

② 多尿の原因
1)水分過剰摂取:心因性多飲と脳梗塞や心筋梗塞と言った虚血性疾患の予防の為の多飲。
2)薬剤性多尿:抗コリン薬、利尿剤、降圧剤(Ca拮抗剤)、アルコール摂取、カフェイン摂取など。
3)高血圧に伴う夜間多尿
4)糖尿病
5)心不全
6)腎不全
7)尿崩症:尿の再吸収障害

③ 睡眠障害に伴う夜間多尿
 高齢者では睡眠が浅く、分断されるため、夜間多尿になりやすい。うつ病やパーキンソン病、睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿の関連も指摘されている。

 これらの様々な夜間多尿の原因を調べる上で、排尿日誌をつけて頂くことが大変役に立ちます。

 排尿日誌(見本を図1と、記載例を図2に示します)には、排尿時間とその時の尿量、また、その時の尿意の程度、尿失禁(尿もれ)の有無、飲水時間とその量を24時間にわたり、少なくとも3日記録して頂くものです。これに加え就寝、起床時刻も記載して頂くと、より有用なデーターとなります。食事からも水分は体内に摂取されますが、なかなか正確な水分量は計れませんので、味噌汁などのお椀ものだけでも結構です。

 排尿日誌は、日本排尿機能学会のホームページ(http://www.luts.gr.jp/)からダウンロード可能です。

 この日誌をつけて頂き病院に受診して頂くと、あなたの頻尿の原因が初回よりかなり推察することができ、今後の検査法の選択にも重要なデーターとなります。

この日誌のデーターをもとに、さらに以下の検査を行なう可能性があります。
1)尿検査;尿路感染症や血尿などがないか。
2)超音波検査;腎臓、膀胱、前立腺などに形態学的異常がないかどうか。
3)尿流量検査;尿の勢い、排尿時間、残尿量などの測定。
4)膀胱鏡検査;膀胱内の腫瘍や間質性膀胱炎の診断。
5)膀胱尿道造影検査;女性の尿失禁の検査や性器脱(膀胱脱や子宮脱)の診断。
6)膀胱尿道内圧検査;膀胱の収縮力や尿道括約筋圧を測定。

 さあ夜間頻尿でお困りの方、年だからと諦めずに、是非排尿日誌をお付け頂き病院を受診することをお勧めいたします。