コラム

食欲の秋

2013.09.01

管理栄養士 福永琴路

 少しずつ秋の訪れを感じるようになってきましたね。今年の梅雨明けは平年より2週間も早く厳しい夏の始まりでしたが、朝夕はようやく涼しくなり夏の暑さも終わりを告げようとしています。

 さて、秋といえば「スポーツの秋」・「読書の秋」、そしてなんといっても「食欲の秋」ではないでしょうか。夏の暑さが和らぎ涼しくなると共に夏で疲れた消化器官の機能も回復し、美味しく食べられるようになります。そして気温が下がり、体温を維持する為にもエネルギーが必要となり、寒い冬に備えて内臓脂肪を蓄えていこうとするのもこの時期です。

 旬の食材は栄養価も高く、市場に出回る量も増え値段も安価になります。積極的に旬の食材をとり入れ、季節を満喫したいですね。秋の食材は胃の働きを活発にし、胃腸の調子を整えてくれるものも多く、夏の疲れを癒してくれます。また抗酸化作用や風邪の予防、感染症予防に働きかけ、寒い冬に備えてくれる栄養素がたっぷりです。

9月が旬の食材

魚類:さんまいわしかつおさけなど
脂が乗ってとても美味しくなります。魚の脂には多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれ、その中でもDHA・EPAなどは血液をサラサラにし、血栓予防、認知症予防効果があると言われています。注目すべき栄養素は優れたたんぱく質です。他にもビタミン・ミネラルが豊富に含まれ、胃腸の疲れや夏の疲労を回復させる働きもあります。特にさんまは秋を代表する魚とも言えますね。さんまのたんぱく質は牛肉やチーズに比べると質が優れているとも言われています。おしゃれに創作された料理も良いですが、シンプルに塩焼きにして、たっぷりの大根おろしとすだちで丸ごと味わいたいものですね。
芋類:さつまいもさといもなど
食物繊維が豊富に含まれ、胃腸の働きを助けてくれます。さつまいもは熱に強いビタミンCやβカロテンも豊富で消化器系の働きを高めてくれます。じっくりと時間をかけて蒸したり焼いたりすると、甘味が増してより美味しくいただけます。切って調理する時には水にさらしてアクを抜くと仕上がりの色が良くなります。また、調味料が染み込みやすく、うす味でも美味しく仕上がります。芋類の中でもさといもはエネルギーが少なく、さつまいもの半分以下のエネルギーです。カリウムも豊富で高血圧予防効果があり、ぬめりの成分ムチンは消化を助け胃腸の調子を整えてくれます。シンプルに衣かつぎなどでいかがでしょうか。またご飯と一緒に炊き込んでいただくのもエネルギーを減らす1膳となりますね。
野菜:かぼちゃチンゲンサイなすなど
ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれます。かぼちゃチンゲンサイはβカロテンやカリウムも多く、特にチンゲンサイにはカルシウムも多く含まれています。風邪の予防や高血圧予防、骨粗鬆症予防効果があると言われています。この時期のなすは肉質が緻密になってより美味しくなります。水分が多いので体を冷やしてしまいますので食べすぎには注意が必要です。焼きなすや田楽、しぎ焼などで楽しみたいですね。
果物:ぶどうなしかきりんごなど
ビタミンCや食物繊維が豊富に含まれています。かきはビタミンAやカリウム、食物繊維なども多く含み、動脈硬化予防や高血圧予防効果があります。みずみずしさをそのまま食べるのが一番良いですが、かきりんごはサラダや酢の物などの料理にも合いますね。ぶどうりんごの皮には抗酸化作用のあるポリフェノールも含みますので、洗って皮ごと食べるのもお勧めです。しかし、果物の糖は吸収されやすく、エネルギーのとり過ぎにもつながります。また、水分も多く含まれていますので、たくさん食べると体を冷やしてしまいますので注意が必要です。
きのこ:まつたけしいたけまいたけなど
エネルギーが少なく、食物繊維やビタミンB群、ビタミンDが豊富に含まれます。食物繊維はコレステロールを吸着して排泄する働きもあります。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けてくれ骨粗鬆症の予防にもなります。さっと火を通して、歯ごたえと香り、うまみを楽しみましょう。エネルギーが少ないので、お料理のボリュームアップにどんどん活用しましょう。
種実:ぎんなんくりくるみなど
ビタミン・ミネラルが豊富に含まれます。ぎんなんは特にカリウムやβカロテンを多く含みますが、生で食べると中毒を起こします。火を通してあっても多量に食べるのはお勧めできません。茶碗蒸しや煮物に数粒入っている程度にされておくと良いですね。くりは食物繊維や熱に強いビタミンCが多く含まれて、代謝を整えたり、整腸作用があります。くるみには特に多価不飽和脂肪酸も含まれ、脂質異常症や高血圧予防効果があると言われています。
穀類:そば
炭水化物が中心で体を温める働きがあります。は光沢があり、粘り気の多い新米は最高ですね。秋の旬の食材を一緒に炊き込んだ、秋刀魚ご飯、さつま芋ご飯、里芋ご飯、きのこご飯、栗ご飯などで季節を感じながら味わいたいですね。そばには食物繊維も多く含まれ、整腸作用があります。特にそば粉だけに多く含まれるルチンはビタミンの吸収を助け、血管を強くし、血行を良くする働きもあります。

 「食欲の秋」ばかり堪能していると太ってしまうのも心配です。涼しくなった今、ウォーキングやジョギングなど始めるチャンスでもあります。仲間と共にスポーツを楽しんだりするのも良いですね。寒い冬を迎える前に運動で基礎代謝を上げておきましょう。ぜひ「スポーツの秋」も楽しんでみてはいかがでしょうか。

※ 疾患によっては注意が必要な栄養素もあります。
※ 疾患のある方は主治医の管理下で安全に身体活動・運動を行ないましょう。