コラム

骨粗鬆症の予防と治療

2013.08.23

婦人科 准講師 東舘 紀子

益々増える骨粗鬆症・・・

 日本は老年人口の占める割合が年々高まっていますが、それとともに骨粗鬆症患者が増加し、約1300万人に上ると推定されています。いったん大腿骨骨折や椎体骨折が起こると、治癒は難しいので著しくQOLを損なうばかりでなく、介護が必要となることも少なくありません。特に女性は骨粗鬆症になりやすく、しかも長命なので注意しましょう。

予防が大事です・・・

 学童~思春期に骨密度が一番増加しますが、その時期に骨密度が正常域まで達していないと、中年期以降、病的領域までに骨密度が低下するのが早くなってしまいますので、思春期に骨密度を高めることがまず第一です。それにはカルシウム摂取を中心としたバランスのよい食生活と運動がもっとも重要で、それは成人してからも心がける必要があります。また、女性は閉経期以降の急激な骨減少を防ぐことも重要であり、それにはまず自分の骨密度を知っておくことが重要です。

 中年以降の予防法として、適正体重の維持(やせの防止)、カルシウム摂取をはじめとするバランスのよい食事、運動(専門家による強度の運動が望ましいが自己管理の歩行運動でもよい)、禁煙は言うまでも無く、過度のアルコール摂取を避けるなどの注意が必要です。

 高齢者にできる予防法としては、骨折の原因となる転倒防止が重要で、運動(筋力・バランス・歩行・柔軟などの訓練)や運動以外の栄養食事・服薬・環境などの整備が必要です。

骨粗鬆症予防のための食事療法

 カルシウムは骨の成分の多くを占めるため、1日700~800g摂取が必要ですが、他にもよい食品と避けたい食品がありますので、注意しましょう。

摂取が勧められる食品
  • カルシウムを多く含む食品;
    牛乳・乳製品、小魚(わかさぎ・ししゃも・干海老・・・)
    緑黄色野菜(小松菜・チンゲンサイ・・・)
    大豆・大豆製品
  • ビタミンDを多く含む食品;
    きのこ類、魚類(鮭・うなぎ・秋刀魚・ひらめ・かれい・・・)
  • ビタミンKを多く含む食品;
    納豆、緑色野菜(ほうれん草・小松菜・ブロッコリー・・・)
  • 果物と野菜
  • たんぱく質;肉、魚、卵、豆、穀類など
控えたほうがよい食品
  • リンを多く含む食品;加工食品、一部の清涼飲料水
  • 食塩
  • カフェインを多く含む食品;コーヒー、紅茶
  • アルコール

治療に使われる薬剤

 現在使用されている薬剤は、次のようなものがあり、組み合わせて使われています。

  • カルシウム剤
  • ビタミンD剤
  • ビタミンK剤
  • ビスフォスフォネート製剤
  • カルシトニン剤
  • 副甲状腺ホルモン剤
  • 女性ホルモン剤
  • SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)

 この中でもビスフォスフォネート製剤が現在もっとも使われていますが、空腹時にコップ1杯の水で服用し、服用後すくなくとも30分は横にならず、飲食や他の薬剤の服用を避ける必要があります。このようなわずらわしさのない、より効果的な、6ヶ月に1回の注射薬がこの6月に発売されましたので、さらに治療効果が高まるのではと期待されています。(当センターでも治療が始まりました。)注射後は、低カルシウム血症の副作用(カルシウムが骨に集まるため起こります)を防ぐため、専用のカルシウムとビタミンD製剤の服用を併用することになっています。