透析療法-腹膜透析

1.導入基準

透析の導入基準は血液透析と同様です。腹膜透析に際しては日本透析学会から腹膜透析ガイドラインが出されております。

  1. 腹膜透析導入に際しては,血液透析,腹膜透析,さらに腎移植に関する十分な情報の提供を行い,同意のもと決定する。
  2. 腹膜透析の有用性を生かすために,患者教育を行い,計画的に導入する。
  3. CKD ステージ5(糸球体濾過量15.0 mL/min/1.73 m2未満)の患者で,治療に抵抗性の腎不全症候が出現した場合,透析導入を考慮する。
  4. 糸球体濾過量が6.0 mL/min/1.73 m2未満の場合は透析導入を推奨する。

2.原理

透析の装置として、自分の体の腹膜を使う方法です。腹膜は胃や腸などの臓器を覆っている薄い膜です。表面積は体表面積ほどあり、毛細血管が表面に網の目のように分布しています。この膜を透析膜として使用します。 おなかの中に管(カテーテル)を通して透析液を入れておくと、血液中の老廃物や不要な尿毒素、電解質などが透析液の中に移動します(拡散)。 また、透析液と血液の浸透圧の差(透析液は糖などの浸透圧物質のため、浸透圧が血液より高くなります)で体の余分な水分を除去します(浸透)。

腹膜透析

3.方法・スケジュール

腹膜透析はご自宅や職場で患者さんご自身が行う治療です。自宅での治療状況をノートに記録していただき、月1-2回病院を受診します。 方法は、CAPD(持続携帯式腹膜透析)と夜に機械(自動腹膜透析装置)を使って自動的に腹膜透析を行うAPDがあります。

(1)CAPD

CAPDの透析液のバック交換は6~8時間ごと、1日4回程度(朝、昼、夕方、寝る前)行います。交換の時にバックとカテーテルをつなげます。まず、おなかの中に入っていた透析液をカテーテルから空の袋に排出します。その後、新しい透析液の入ったバックからカテーテルを通して透析液1.5~2Lをおなかの中に入れます。バック交換には30分くらいかかります。それ以外の時間はカテーテルを腹帯などにしまって、普通に生活を送ります。

腹膜透析
(2)APD

1日1回、夜寝ている間に機械(自動腹膜透析装置)を使って自動的に腹膜透析を行います。

腹膜透析

4.合併症

腹膜透析に特有の合併症として、カテーテル位置異常、カテーテル閉塞、カテーテル出口部感染、皮下トンネル感染、腹膜炎、腰痛(腰椎ヘルニア)、横隔膜交通症、被嚢性腹膜硬化症があります。 腹膜炎などの合併症によって、カテーテルを入れ替えたり、腹膜透析を中止する場合があるので、注意が必要です。さらに被嚢性腹膜硬化症は長期間腹膜透析を行っている人に頻度が高いので、腹膜透析は長期間継続せず5-7年程度で別の治療(腎臓移植や血液透析)に移行していきます

血液透析と腹膜透析の比較
病 期 項 目 血液透析(HD) 腹膜透析(CAPD)
治療方法 透析をする場所 医療施設 自宅・会社など
透析に必要な時間 4~5時間/回 連続に24時間
透析による拘束時間 4~5時間/回+ 通院時間/回 交換時 (約30分/回、4~5回/日)
透析を操作する人 医療スタッフ 患者さん本人、ご家族
通院回数 2~3回/週 1~2回/月
手術 シャントを造る カテーテルを植え込む
抗凝固剤 必要あり 必要なし
症  状 透析による自覚症状 穿刺痛、血圧低下や 頭痛、吐き気など お腹が張る
合併症 不均衡症候群
シャント閉塞
腹膜炎
被嚢性腹膜硬化症(EPS) 発症のおそれがある
日常生活 社会復帰 可能(夜間透析) 可能(会社でバック交換)
透析中の活動 拘束される 活動出来る
感染症 必要(アクセス感染) 必要(カテーテル感染)
入 浴 透析のない日に入浴 カテーテルのケアが必要
スポーツ できる できる
旅行 長期の場合は 透析施設の予約が必要 透析液、器材の手配
バックアップ施設が必要
食事制限 タンパク・カリウム制限、塩分・水分制限 塩分・水分制限、 タンパク制限
その他 シャント管理 カテーテルの管理
費  用 自己負担 1-2万 1-2万
機材のレンタル料