コラム

医食同源3 脂肪のはなし

2013.02.01

健康管理科 講師 坂井理映子

 血液中のコレステロールが高く、「食事を見直しましょう」といわれたことはありませんか?今回は、食事から摂る脂肪の基礎知識をご紹介いたします。

脂肪と健康

 脂肪は、炭水化物やたんぱく質よりも大きなエネルギーを持ち、1gあたり9kcalの熱を産生します。つまり、脂肪の多い食品はエネルギーの摂りすぎになりやすいので注意が必要です。とりすぎたエネルギーは体の脂肪として蓄積され、肥満やメタボリックシンドロームの原因となります。また一方で、脂肪の摂取が少なすぎると、脂溶性ビタミンの吸収が悪くなったり、たんぱく質やエネルギーの不足がおこります。このため「日本人の食事摂取基準」として目標量の上限と下限が定められています。脂肪の摂取量は重量(g)ではなく、総エネルギーに占める割合(脂肪エネルギー比率、%)で示しますが、30歳以上の成人では20-25%が目標量とされています。

血液中のコレステロールに影響する因子

 血液中のコレステロール値は、食べ物から摂取したコレステロールの量がそのまま反映されるわけではありません。血液中のコレステロールの増加には、コレステロール摂取量のほかに飽和脂肪酸の摂取量などが関わっています(表1)。

表1、血液中のコレステロールに影響する因子

上げる
  コレステロールの摂取
  飽和脂肪酸の摂取
  肥満
下げる
  食物繊維の摂取
  多価不飽和脂肪酸の摂取
  運動
① コレステロール

表2 コレステロールは、細胞膜やホルモンを作るのに不可欠な材料です。体のコレステロールの2/3以上は肝臓で作られ、食事から摂取するコレステロールの影響は多くても1/3程度です。私たちが、どの食品からコレステロールを摂取しているか(寄与率)をみると、全体の約半分が卵からの摂取であることがわかります(表2)。卵1個には、コレステロールが約250 mg含まれています。食事摂取基準では1日のコレステロール摂取量は男性750mg未満、女性600mg未満に定められていますが、脂質異常症がある場合には200-300㎎以下に制限します。

② 飽和脂肪酸

 私たちが食べる脂肪は脂肪酸からできており、脂肪酸は構造式の違いにより分類されています(表3)。
 脂肪酸の中でも、飽和脂肪酸の過量な摂取は血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の増加と関連することが知られています。どの食品から飽和脂肪酸を摂取しているか(寄与率)をみると、肉類と乳製品で全体の半分を占めているのがわかります(表4)。
 摂取目標量は脂肪エネルギー比率4.5-7.0%ですが、さらに飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の比が3:4:3になるように摂取することが推奨されています。一価不飽和脂肪酸はオリーブ油やなたね油などに多く含まれています。

表3、表4

③ 多価不飽和脂肪酸

 多価不飽和脂肪酸には、n-6系(エヌ・マイナス・ロクケイ)不飽和脂肪酸とn-3系(エヌ・マイナス・サンケイ)不飽和脂肪酸があります。
 日本人が食品から摂取するn-6系脂肪酸の98%はリノール酸で、主な摂取源は植物油(大豆、コーン、サフラワーなど)です。リノール酸は生体内で合成することができない必須脂肪酸のため食事から摂取する必要がありますが、過量摂取による安全性が危惧されており、10g程度の摂取が目安とされています。
 n-3系脂肪酸には、α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)があります。主な摂取源として、α-リノレン酸は植物油(亜麻、キャノーラ、エゴマなど)、EPAやDHAは魚介類があげられます。EPAやDHAは冠動脈疾患だけでなく脳梗塞や加齢黄斑変性症に対しても予防効果を示す可能性が高く、EPA+DHAを1 g/日以上(魚に換算すると約90 g/日以上)を摂取することが推奨されています。

 食事を見直す時には、まず現在の食事内容を詳細に把握することが大事です。
 そのためには、できるだけ正確な食事調査を行う必要があります。当センターでも「3日間食事記録」や「食習慣調査(BDHQ)」を行っていますので是非ご利用ください。
 また、東京女子医科大学青山病院の予防医療科(火曜日午後)では、食事療法に重点をおいた外来診療を行っています。お気軽にお問い合わせください。

参考資料:
日本人の食事摂取基準
(2010年版、厚生労働省、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/sessyu-kijun.html
脂質による健康影響
(農林水産省、http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_eikyou/fat_eikyou.html