コラム

頚髄症

2012.11.01

整形外科 講師 和田 圭司

 頚髄症とは、様々な原因で頚椎部の脊髄を圧迫する病気です。症状は手指の痺れで始まり、徐々に手指で細かい作業がしにくくなってきます。具体的には箸が使いにくい、字が書きにくい、小さいボタンがかけにくい等の症状が出現します。症状が進行すると歩行障害、排尿障害が出現してきます。治療せずに放置をしていると、症状が進行し寝たきりになる人もいます。主な原因は、頚椎が年齢と共に変形する頚椎症、椎間板ヘルニア、頚椎の靭帯が骨化する後縦靭帯骨化症です。頻度は頚椎症によるものが最多です。後縦靭帯骨化症は国の難病に指定されている病気で、糖尿病患者さんによく起こります。また後縦靭帯骨化症を含む靭帯骨化症は頚椎だけでなく、胸椎、まれに腰椎にも起こります。頚髄症はその特徴的な症状、X線、CT、MRI等の画像検査により容易に診断できます。また頚髄症とよく似た症状を起こす疾患として、肘の部分で神経が圧迫される肘部管症候群、手首の部分で神経が圧迫される手根管症候群があります。両疾患とも同様に手のしびれ、手の使いにくさで発症します。これらの疾患は、神経伝導速度という検査で鑑別できます。それ以外にも、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症等の疾患でも、頚髄症とよく似た症状を起こすことがあり注意が必要です。これらの疾患は神経内科で治療します。頚髄症の治療法はビタミンB12製剤の内服・点滴、リハビリ等ですが、重症例では手術的に治療します。手術方法は、その病態により主に2つあります。つまり頚椎前方除圧固定術、頚椎椎弓形成術です。前者は、頚部の前方から頚椎に到達し、狭くなった脊髄の通り道(脊柱管)を拡げ、骨盤から採取した骨を移植する方法です。後者は、頚部の後ろから頚椎に到達し、椎弓という部分を拡大します。両手術法とも手術時間は全身麻酔で約2時間、輸血なしで済むことが多いです。手術により症状の約7割は改善します。また一度脊柱管を拡大する手術をすれば、症状が再発することは稀です。入院期間は約3から4週間です。上記症状がある方は一度、当院で整形外科を受診し、検査を受けることをお勧めします。