コラム

雑穀の魅力

2015.06.01

管理栄養士 福永琴路

 現代の日本の食生活は豊かになったといわれています。食べたいものを食べられる飽食の時代へと移り変わった一方で、食生活の欧米化・インスタント食品や加工食品の普及等の影響により、ビタミン・ミネラル・食物繊維などは不足しがちとなり生活習慣病やアレルギー体質の増加などが問題となってきています。

 日本雑穀協会では、『雑穀』とは「日本人が主食以外に利用している穀物の総称」と定義しています。現在の日本人の主食は白米であり、アワ・ヒエ・キビ・モロコシ・ハトムギ・オオムギなどのイネ科作物の他、イネ科以外のソバ・アマランサス・キノア・ゴマに加え、ダイズやアズキなどのマメ類、普段食される機会が少ない玄米や発芽玄米も広く雑穀に含めています。

 『雑穀』は、現代人に不足している栄養素をバランス良く補える穀物として、近年大変注目されている食材です!種類にもより異なりますが、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で、抗酸化性に優れたポリフェノールも含んでいます。さらに、病害虫に強く農薬がいらない、寒冷地や荒地などの厳しい環境でも容易に作れるなど、環境にやさしい食物としても期待がもたれています。

雑穀の種類と特徴

粟(アワ)
 縄文時代から栽培されたヒエと並ぶ日本最古の穀物で、日本全国で広く栽培されている。温暖で乾燥した土地を好み、高地でも栽培できる。表面の色素はポリフェノールで抗酸化性に優れている。ビタミンB群の一種であるパントテン酸の含有量が雑穀の中では特に多い。もちもちした食感でチーズに似た上品で癖のない淡い甘味が特徴。
稗(ヒエ)
 アワと並んで日本最古の穀物と見られている。寒くてやせた土地でも良く育つ。含有たんぱく質には、血中のHDLコレステロール値を高める作用があるといわれている。ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、カリウム、リン、亜鉛を含む。パラパラとした食感が特徴。
黍(キビ)
 生育期間が短く、乾燥にとても強く荒地でも育ち、日本全国で栽培されている。ビタミンB1、ビタミンB6、亜鉛、ナイアシンが豊富で、黄色い色素はポリフェノールである。小粒な雑穀で深みとコクのある濃いめの味でやや甘味が強く、もちもちした食感が特徴。
高きび(モロコシ)
 ポリフェノール、カリウム、リン、ビタミンB1、B6を含む。赤みを帯びた色、弾力のある噛み応え、コクのある味わいがあり、ひき肉と食感が似ていることが特徴。ミートミレットと呼ばれる雑穀。
大麦(オオムギ)
 縄文時代後期から弥生時代に伝来した。食物繊維が白米の19倍と、特に水溶性繊維の含有量がとても多いのが特徴。精麦した大麦を「丸麦」、丸麦を蒸してローラーで押しつぶして食べやすくしたものを「押麦」、米のような形状に加工したものを「米粒麦」と呼んでいる。ほっくりとした食感が特徴的。
はと麦(ハトムギ)
 江戸時代に中国から薬用として渡来。日本でも薬用、食用、健康茶用など小規模に栽培されてきた。美肌効果、新陳代謝の促進、利尿作用、解毒作用がある。雑穀の中でも独特の粉っぽく硬めの噛み応えで素朴な雑穀らしさが特徴。短めに茹でて弾力や歯応えを出したり、長めに茹でてプルプル食感を楽しむことが出来る。
蕎麦(ソバ)
 中国から朝鮮を経て8世紀までに渡来したとされる。たんぱく質やビタミンB群、ミネラルのほか、ポリフェノールの一種であるルチン(ビタミンP)を含む栄養価の高い食品。ダッタンソバのルチンやカルシウム、マグネシウム、ビタミンB2含有量は、雑穀の中でもかなり高い。プルンとした食感が特徴。

雑穀の食べ方

 お米に混ぜて炊くだけといたってシンプルに楽しめます。雑穀の分量はお好みに合わせて白米に1~3割混ぜるだけ。種類は1種類でも、数種類を自分で好きな物をブレンドしても良し、あらかじめブレンドされたものを選ぶのも良し。もちもち・ぷちぷち感が楽しめ、噛む回数が自然と増えます。

 ご飯に混ぜるのが苦手な方は、茹でたものをお料理に混ぜるだけでシンプルに楽しめます。味噌汁やスープ類に入れて充実感のある美味しさに。高きびはハンバーグやコロッケ、麻婆豆腐などひき肉の替わりに混ぜて使うとヘルシーに。アワやキビは料理のとろみ付けとして使うこともでき、どれも美味しくいただけます。もちろん、デザートにも活用できます。

 『雑穀』、昔お米が食べられなかった時代の食べ物?いやいや健康的な食べ物、天然のサプリメントといっても過言ではありませんね。小さな粒に秘めたパワー。ぜひ食卓にとり入れてみませんか!