コラム

生活習慣病外来について
~本当に治療すべきは日々の生活の中にある!?~

2011.12.01

糖尿病内科 医師 大澤真里

 成人医学センターでは、今年の夏から生活習慣病外来をスタートさせました。

我々日本人の敵は動脈硬化である
 1981年以来、日本人の死因で一番多いとされているのは悪性新生物(がん)です。続く第二位、第三位には心疾患、脳血管疾患と、いわゆる「動脈硬化による病気」が並びますが、実は、この二つを合計すると、第一位の癌を抜く勢いとなります。総合的に見て、日本人の死因の上位であろう、脳梗塞や心筋梗塞を含めた「動脈硬化」を退治していくことが、我々の健康を維持するにあたって、重要であると考えられます。

糖尿病が増えている!同じく増えているのは○○と○○。
 日本では、糖尿病が増えています。実は、日本で糖尿病が増えてきた背景に、同じように、増加している二つのことがあります。なんだかおわかりでしょうか?日本人の「脂肪摂取量」と「車の所有台数」です。一日の摂取総カロリーは変わらないのに、脂肪を沢山とるようになりました。また、多くの方が車を所有するため、歩かなくなり、運動量が減ったといわれています。

「沖縄クライシス」という言葉
 沖縄といえば、長寿、というイメージがあるかと思います。しかし一方で、沖縄の若い人たちでは、脂肪を沢山取る、欧米と似たライフスタイルが浸透していて、いわゆる生活習慣病の増加が社会問題となっています。 2000 年の都道府県別平均寿命では、女性は1 位を堅持しましたが、男性は、なんと、20 年近く守った1 ~ 5 位の座を一気に26 位まで下げてしまっているのです。これを、「沖縄クライシス」と呼んでいます。

欧米型ライフスタイルの浸透と肥満の増加
 1963年、沖縄に、東京より8年早く、ファーストフードが登場しました。日本におけるファーストフード第1 号店です。沖縄県は回りを海に囲まれているにもかかわらず、お魚を食べる量が少なく、代わりに肉類の摂取が全国平均を3 ~ 4 割上回っていることが知られています。沖縄県の脂肪摂取量は、1993 年以降は米国で暮らす、日本人並みであると言われているのです。また、交通手段として、沖縄には電車が発達していません。アメリカのように車社会です。一日平均歩数も、少ないと言われています。
 このような欧米型ライフスタイルの結果、沖縄県の平均コレステロール値は毎年上昇を続け、男性で約5mg/dl、女性で約10mg/dl 全国平均を上回っていますし、肥満率も増加しています。
 沖縄男性の3人に1人がメタボリックシンドロームであるというショッキングな報告もあります。今後、沖縄の若い世代は、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病などといった、メタボリックシンドロームで起きやすい、命に関わる怖い病気をより早く発症する可能性があり、心配されるところです。
 しかし、この、欧米型ライフスタイルに伴うメタボリックシンドロームの増加は、沖縄県のみではなく、今後、わが国全体の重大な問題となることが危惧されます。

日本人は肥満に弱い!?
 海外で、ものすごく肥満した外国人を見かけて、驚かれた方も少なくないかと思います。地域によっては、すれ違う人、皆、超肥満という場所もありますよね。日本で、同じように、ものすごく肥満した人をよく見かけますか?答えはノーです。実は、日本人は「肥満に弱い」と考えられています。欧米で見かける、極端な肥満になる前に、糖尿病などの代謝障害の病気が出てくる、ということが言われています。

ハンバーガーで脳卒中?~ファーストフード店の多い地域は危険!~
 アメリカで、面白い研究を報告した人がいます。ファーストフード店が多い地域では、脳卒中が増える、と言うのです。ファーストフード店が1店増えると、脳卒中が1%増える、というデータもあります。実は最近、一日三食ファーストフード、という方を拝見しました。奥様が出産直後でお忙しく、負担をかけないよう、御自分で、毎食ファーストフードを食べて済ませていました。奥様思いだなぁ、と思いましたが、反面、その方の血液検査は、ものの見事に、さまざまな異常を来していました。これではいけないと思い、「このままでは、脳梗塞まっしぐらですよ。」と、厳しい表現を使って、生活習慣の改善をして頂きました。その方の努力の甲斐もあり、さまざまな異常が今では素晴らしく改善していて、私もホッと一安心しているところです。奥様の皆さま、どんなにお忙しくても、旦那様のお食事、是非気をつけてあげてくださいね。最近は、お子様の肥満、糖尿病の若年齢化も問題です。今後の日本を背負っていく、お子様の食事も、気をつけてあげることが大人の大事な使命ですよね。

どんな事を改善すべきか~生活習慣病外来でのアドバイス~
 生活習慣病外来ではまず、皆さまのライフスタイルの聞き取りから行います。医師・栄養士・看護師がタッグを組み、そこから問題点を見つけ出し、適切なアドバイスをさせていただきます。そして、血液検査結果や、心疾患・動脈硬化の進行度などを見て、必要な治療の介入も行っていきます。残念ながら、巷には、嘘の情報が溢れています。良かれと思ってなさっていることでも、意外に間違っていることも多いのです。プロの知識をフル活用して、より細やかに、専門的に、皆さまの生活をより健康的なものに仕上げていきたいと思います。
 動脈硬化が心配な方、メタボリックシンドロームや心筋梗塞・脳梗塞が気になる方、その他にも、一度、生活習慣を見直してみたいな、と思った方でも、お気軽に、御相談ください。