尿路結石

Urinary stone

治療と再発予防

治療方法

疝痛発作の対応

救急外来で対応することが多く、鎮痙剤、鎮痛剤の静注、筋注、座剤などによって痛みを抑えます。
尿量を増加させることも発作の軽減に有効なため、輸液を行う場合もあります。
発作を繰り返したり、消化器症状のある場合には入院治療も適応となります。

自然排石の促進

画像診断で、自然排石が可能と判断される結石については、水分を多量摂取して尿量を増加させたり、体動によって結石の尿管内下降を図ります。
内服薬による尿管の緊張緩和も併用します。
アルコールや刺激物は、発作を励起することもあり、摂取はすすめられません。

砕石治療

画像診断で、自然排石が困難と判断される場合は各種外科的処置の適応となります。

体外衝撃波結石破砕術(装置)(Extracorporeal shock wave lithotripsy: ESWL)、また細径尿管鏡による内視鏡下結石破砕術(TUL)、経皮的破砕術(PNL)などによって治療します。
現在、開放手術による切石術(結石摘除術)が行われることはほぼ皆無となっています。大きな尿管結石に対しては、最近、鏡視下(後腹膜腔鏡下)の切石術(結石摘除術)が適応されることもあります。

ESWL:体外衝撃波結石破砕療法

体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)とは体外から衝撃波を発し体内の結石を破砕するもので、1980年に実用化され全世界に拡がりました。尿路結石症は繰り返す疾患であるため低侵襲な治療が望まれます。ESWLは、TUL(経尿道的結石破砕術)、PNL(経皮的腎結石破砕術)などの内視鏡手術と同様、結石治療には無くてはならない手段です。

当院でのESWL治療風景

ESWLの原理は主に以下のように考えられています。衝撃波は、生体内をほぼ水と同じ程度に容易に通過しますが、結石は通過し難く、そのため衝撃波は結石に当たると牽引力、圧縮力を発します。これを収束することにより結石は破砕できます。
腎尿管結石のほとんどはSWLの対象となりえます。しかし、結石の成分や位置、周囲との癒着の有無などにより破砕されやすさは異なります。
当院では、ESWL治療は原則として、外来通院にて行っています。術前に、尿路の評価、一般全身検査を行ったのち、適応であればESWLを予約しています。外来でESWLを行ったのち、治療翌日以降に効果判定し、結石が完全に排出されるまで経過を確認します。必要であれば再度のESWLやその他の内視鏡的手術(TU LやPNLなど)も考慮されます。

当院での治療の実際

外来を受診していただき、治療方針を検討します。その結石に対し、ESWLが治療方法としてふさわしいか、破砕された後に排泄され得るか、危険はないかなどをチェックするため必要な検査を受けていただきます(予約)。そのうえで、ESWLの予定をたてます。

当日、原則として朝食はとらずに来院します。(降圧剤などは通常通り内服していただくことが多いので、あらかじめご確認ください)レントゲンを撮影したのち、フィルムを持って結石破砕室へ来ていただきます。
レントゲンフィルムで結石を確認したのち、鎮痛坐剤を入れ、楽な衣服で治療室へ入ります。結石の場所により、あおむけ、うつぶせなどの体位をとります。

治療中は、血圧、心電図などをモニターし、点滴を行います。疼痛コントロールのために、点滴の横から鎮痛鎮静剤を使うこともあります。
結石に対する焦点合わせののち、治療を開始します。治療に要する時間や衝撃波を当てる回数は結石の場所や破砕の状況によって異なりますが、約1時間程度かかります。治療の間がリラックスして過ごせるよう、音楽をかけていますので、好みの音楽テープ、CDなどがありましたらご持参ください。治療時間は30~40分です。

破砕治療終了後、ベッドで横になってしばらく休み、術後の経過を観察します。そののち、様子をみて帰宅となります。治療後の内服薬も処方されます。
治療当日は、なるべく安静にし、飲酒や刺激物の摂取は控え、入浴もシャワー程度としてください。水分摂取を充分行うようにしてください。
治療後、下記のような合併症がみられることがあります。どのような場合は連絡していただきたいかが記載してありますので、よく読んで、当てはまる場合には女子医大まで連絡をしてください。平日17時(土曜日は13時)までは泌尿器科外来へ、17時以降夜間、第3土曜および日祝日は泌尿器科当直が対応いたします。
数日の間に外来を受診していただき、全身状態、結石の破砕効果などを検討し、今後の予定を相談します。

以下の場合にもESWL以外の処置や手術を検討します。

結石片による尿管閉塞が強い場合

多数の破砕片が尿管を閉塞しストーンストリート(結石の道)を形成することがあります。長期に停滞すると腎機能低下につながるため、再度のESWLやダブルJステント留置、TULなどを検討する場合があります。

結石片による尿流の停滞に加え、尿路感染を伴う場合

破砕片が尿管を閉塞していると、尿路の感染症が各種抗菌剤に反応し難いことがあります。その場合には、再度のESWLやダブルJステント留置、TULなどを検討する場合があります。

ダブルJステントとは

腎臓内、膀胱内でJ型に巻いた形をとる留置型尿管カテーテル。内部がストロー状に中空となっており、腎臓から膀胱までの間に結石や狭窄部位がある場合に尿の流れを確保し、腎盂内圧の上昇を防ぎ、腎機能を保護する役割をはたします。
局所麻酔で膀胱鏡を使用しレントゲンで場所を確認しながら留置します。
体内に留置するため、日常生活に支障はありません。
留置後ときに残尿感、頻尿などを認める場合がありますが、多くの場合徐々に軽快します。

TUL:経尿道的結石破砕術

尿道から逆行性に内視鏡を膀胱、尿管や腎盂に挿入して結石を破砕、除去する治療を経尿道的結石破砕術(Transurethral Lithotripsy, TUL)といいます。細径尿管鏡やその他の光学機器の開発により、経尿道的に腎、尿管、膀胱、尿道すべての結石に対して結石の破砕が施行可能となりました。しかし、結石のサイズや位置によっては、ESWLやPNLと併用します。
使用する尿管鏡には硬性と軟性の二種類があり、レーザーや空圧式破砕機などを使用し結石を細かくし、除去します。
麻酔は、膀胱、尿管結石では仙骨部からの硬膜外ブロックや腰椎麻酔を用いることが多く、腎結石に対してはほとんどが全身麻酔下に行われます。

当院での治療の実際

外来を受診していただき、治療方針を検討します。その結石に対し、TULが治療方法としてふさわしいか、危険はないかなどをチェックするため必要な検査を受けていただきます。そのうえで、TULの予定をたてます。

当院では、膀胱結石など下部尿路結石は外来治療で行うこともありますが、尿管結石は原則として一泊入院で施行しています。術前の検査を外来で行い評価をしたうえで、手術当日の午前中に入院し、午後にTULを行い、翌日特に問題が無ければ退院となります。上部尿管結石の一部や腎結石では、さらに数日の入院を要する場合もあります。

麻酔は、膀胱、尿管結石では仙骨部からの硬膜外ブロックや腰椎麻酔を用い、腎結石に対してはほとんどが全身麻酔下に行われます。
砕石方法としては、レーザーや空圧式破砕機などを使用し、結石を細かくし、除去あるいは自然排石を図ります。結石の移動を防ぎ、結石を摘出するために、各種バスケットカテーテルを使用することもあります。

腎尿管などの上部尿路結石に対しては、原則として結石破砕後に腎臓から膀胱に至るダブルJステントを留置します。破砕片による尿管の閉塞や操作後の粘膜浮腫による閉塞などを避けるためです。術後一週間以内にダブルJステントは抜去します。ダブルJステントにより、術後頻尿や残尿感などの膀胱刺激症状がみられることがあります。

また、術後膀胱にも、導尿ためのカテーテルが留置されますが、術翌日には抜去します。
術中術後、数日間にわたり抗生物質を静脈注射や内服で投与します。
結石周囲の状況や尿管の走行などにより結石を完全に破砕除去できない場合、あらためて別の治療を追加することもあります。

PNL:経皮的結石破砕術

経皮的腎結石破砕術(Percutaneous Nephrolithotripsy ;PNL)とは、経皮的に腰背部より腎尿路にいたるルート(通り道)を作成し、ルートより内視鏡を挿入し腎尿管内の結石を砕石、除去する術式をいいます。ESWLのみでは治療が困難で、尿管からの排泄が不良と考えられる腎結石、結石長径2cmを超える大きな結石など、比較的治療に難渋するタイプの結石に対して、単独、あるいは他の治療と併用して行います。全身麻酔、硬膜外麻酔、あるいは局所麻酔下に行います。

結石は、空圧式砕石機、レーザー、超音波砕石機などにより破砕します。
合併症として、まれに腎血管の損傷による腎出血、腎盂や尿管の損傷などが生じます。出血が著しいときには輸血を要する場合もあります。

術後、数日間は血尿や発熱がみられることもありますが自然に軽快します。術後は1~2週間、腎ろうを留置します。また、腎尿管の通過を確保するために、腎臓と膀胱間にDJステントを留置することもあります。

1回の治療で結石が除去できない場合には、腎ろうを留置したままで繰り返しPNLを行う場合や、ESWLなど他の治療法と組み合わせて行うこともあります。腎ろうは、腎ろうカテーテルを抜去すると数日中に自然閉鎖します。

腹腔鏡、開腹手術

再発予防

尿路結石は再発率が高く、食事指導や生活指導が適切になされなければ80~90%が再発します。しかし、専門医に通院し、水分摂取の励行を指導されたのみで再発率が60%にまで低下することも報告されています(結石クリニック効果)。
そこで、自然排石後や破砕治療後にも継続した患者指導と病因評価に基づく治療が重要です。
また、解剖学的な原因による尿流停滞があれば、これを改善します。代謝異常が認められる場合には、食事療法や薬物治療によってそれぞれを是正します。

  • 再発を予防する治療

    高カルシウム尿症の場合

    タイプ診断とこれに基づく治療が重要です。
    腸管吸収型では、カルシウム制限がすすめられます。
    腎漏出型にはサイアザイド系利尿剤が投与されます。
    骨吸収型では、副甲状腺腺腫の存在が疑われ、その場合には腺種を手術的に摘除すると治癒します。

    高シュウ酸尿症の場合

    食事中のカルシウム摂取を増加させるよう、食事指導が行われます。
    その場合、カルシウム製剤や特殊食品を摂取すると逆に結石形成にいたる場合があるため、必ず通常の食品での摂取をすすめます。
    結石形成を抑制するために、クエン酸製剤が、ときにマグネシウム製剤やビタミンB6の投与も行われます。

    高尿酸尿症の場合

    高尿酸血症と同様、プリン体の多い食物を制限する食事指導が行われます。
    プリン体は、卵類、臓物類、肉類、ビールなどに多く、また、ビール以外のアルコール類摂取も薦められません。
    尿酸生成を抑制するアロプリノールと、尿をアルカリ化し尿中の尿酸の結晶化を抑制するクエン酸製剤が投与されます。
    高尿酸尿症により結石が生成された場合には、尿酸排泄促進剤(プロベネシド、ブコローム)は使用しません。

    低クエン酸尿症の場合

    クエン酸の摂取を促進するような食事指導と、クエン酸製剤の投与が行われます。

    低尿量の場合

    どの種類の結石であっても飲水による尿量の増加は重要で、1日尿量が1.5リットルから2リットル以上となることが望まれます。

  • 食事指導(ガイドライン)

    • 動物性蛋白質の過剰摂取制限(1.0g/kg/日)
    • シュウ酸過剰摂取の制限
    • 塩分過剰摂取の制限(1.0g/日以下)
    • 糖分過剰摂取の制限
    • 脂肪過剰摂取の制限
    • 一定量のカルシウム摂取(600~800mg/日)
    • 炭水化物の摂取(穀物摂取のすすめ)
    • クエン酸適量摂取のすすめ
  • 食生活指導(ガイドライン)

    • 朝昼夕3食のバランスをとる
      「夕食過食の是正、朝食欠食の是正」
    • 夕食から就寝までの間隔をあける
      「4時間程度の間隔を目標とする」