前立腺がん

Prostate cancer

前立腺がんとは

前立腺癌とは前立腺の中に癌細胞が発見される病気です。これは前立腺の細胞が正常に増殖する働きを失って、異常な細胞が修正されることなく増殖してしまうことによって発生します。癌は周囲の正常組織を破壊して広がり、進行すると転移といって他の臓器にも癌が広がる現象がおこります。転移をしやすい臓器は癌の種類によって違いますが、前立腺癌の場合はリンパ節と骨が挙げられます。

前立腺は尿道に近い部分の内腺(みかんにたとえると実の部分)と外側の外腺(みかんにたとえると皮の部分)にわけられます。前立腺肥大症という病気は内腺が大きくなって、おしっこが出にくくなる病気です。これに対して前立腺癌の7割以上は外腺にできます。

前立腺の位置と働き

前立腺は男性にだけある臓器で生殖器の一部です。膀胱の下にあって、膀胱から出た尿道の周りを取り囲むように存在し、栗の実に似た形をしています。前立腺の前には恥骨と呼ばれる骨盤の骨があり、後ろには直腸があります。前立腺は精液の一部を作っていて、一回の射精量の3分の1位が前立腺から分泌されます。発生から増殖・成長まで男性ホルモンに依存しており、加齢にともない多くの男性で肥大します。

前立腺がんの疫学

頻度

前立腺がんは欧米では男性の癌の中で最も頻度の高いものの一つで、癌死亡者の約20%を占めるといわれています。日本においても近年、男性のがんにおける前立腺がんの罹患率は上昇傾向が続いており、2011年における罹患率は胃がんに次いで第2位(人口10万人あたり127人)となり、2015年の罹患率はついに第1位になると予想されています。一方で2013年における死亡率は10万人あたり19人で第6位でした。(出典:国立がん研究センターがん対策情報センター)

原因

前立腺癌の原因はまだ明確にはなっていませんが、動物性脂肪を多く摂ることや、緑黄色野菜の摂取不足は、前立腺癌の発生頻度を高くする原因の一つと考えられています。日本でも、食事の欧米化や高齢化社会となっていることから、前立腺癌の発生頻度と死亡率は年々増加しています。また近親者に前立腺癌の人がいる場合、前立腺癌にかかる確率が高くなり、近親者が父親や兄弟の場合はその頻度が2倍以上になると言われています。

スクリーニング

最近では前立腺特異抗原(PSA)という癌のマーカーが使われるようになって、前立腺癌が早期に発見される数も増えています。地域や施設によっては検診の項目にPSAが加えられるようになって来ています。

症状

早期の症状

全く症状がないことが多い

よくある症状

癌が大きくなって尿道が圧迫されるようになってくると、主に排尿に関連した症状が出現します。

  • 排尿困難(尿が出にくくなる)
  • 頻尿(尿の回数が多くなる)
  • 残尿感(尿が出きらない感じがする)
  • 尿意切迫(尿意を感じると我慢できなくなる)
  • 尿閉(尿道が強く圧迫されると尿が出なくなる)
  • 下腹部の違和感

これらの症状は前立腺肥大症に似ていますし、前立腺肥大症も高齢者の病気なので、前立腺肥大症と前立腺癌が両方起こっていることもあります。しかし両者は別の病気であり、前立腺肥大症が前立腺癌になることはありません。

進行したときの症状

癌が尿道や膀胱に広がると、排尿に関連した症状に加え、排尿以外の種々の症状が出現します。

  • 血尿(尿に血液が混じる)
  • 頻尿の増悪
  • 尿失禁(尿が漏れる)
  • 水腎症(癌が尿管を押しつぶしてしまうと尿がうまく流れなくなって腎臓が腫れる)
  • 血精液症(癌が精嚢に広がると精液に血が混じることがある)
  • 背部痛・腰痛、骨折

癌が骨に転移を起こすとその部位に痛みを生じることがあり、背部痛や腰痛として感じられたり、手が痺れたりすることもあります。転移をした部分の骨が脆くなると骨折をしやすくなります。