研修体験報告

コンピタンシー評価小論文

コンピタンシー評価:初期臨床研修中に出会った医師について

ロールモデルとして学ぶこと

初期臨床研修医 第9期生

これまで13診療科で研修を行い、患者に対する姿勢や態度、医療従事者同士のコミュニケーションの取り方など、真似をしていきたいと思うことが数多くあった。中でも、消化器外科を研修したときのH医師から学んだことは、それだけではなかった。

消化器病学会関東支部例会で発表する機会をいただき、指導医と相談しながらスライドを作成した。その後、H先生にチェックを依頼したところ、一緒に何百枚もの画像を見返してもう一度画像を選び直した。私が予定していた枚数以上の写真を選び、発表の制限時間にはとても納まりきらない量となった。さらには、今まで経験したことのないマッピングという作業を教えていただき、術前検査で得た画像から、病変部を含む全体像を紙に写した。その絵をパソコンに取り込み、手術で摘出した標本の割面を記し、さらには病理所見によって色分けを行うことで、病変の分布が分かりやすいシェーマとなった。病理所見についても、スライドを見ながら病理医と2度にわたって相談する時間をいただいた。考察を含めスライドが30枚以上となったが、内容を掘り下げたことにより理解が深まった。本番では内容を大幅にカットしたが、入念な検討を行ったことで、症例のみならず疾患について深く知ることができ、ますます多くの人に知ってもらいたいという気持ちが大きくなった。その気持ちが人前で話すことに抵抗のある私にとって大きな勇気に変わった。忙しい中でも、手間を惜しまず力となっていただき、知識と、さらには発表への自信をもたらせていただいた。

また、H先生は専門とする分野についての啓発活動も行っており、糖尿病センターで講演する機会があった。膵癌は糖尿病の悪化を契機に発見されることも少なくないため、糖尿病の先生方に膵癌について知っていただくことが、早期発見につながるからだ。また、先生は膵癌の啓発イベントにも参加している。膵癌で亡くなった家族や、膵癌からのsurvivor、医療関係者が集まり、膵癌について世間に知ってもらい、希望を与えるイベントだ。休日に膵チーム全員でチャリティーTシャツを着て新宿を6㎞歩いた。

このように、日々真剣に診療にあたり、また啓発活動も行う姿を見て、私も真似していきたいと思った。

コンピタンシー評価:初期臨床研修中に出会った医師について

ロールモデルとして学ぶこと

初期臨床研修医 第9期生

私は小児科医を目指し、小児重点コースでの研修を行っている。

1年10か月の初期研修期間を経て、多くの尊敬できる指導医・上級医の先生に出会うことができた。どの診療科の研修でも学ぶ事は非常に多く、それぞれの診療科に魅力があり、日々刺激を受けている。その中で感じたことは、個人差はあるが小児科の先生方と成人科の先生方では、患者さんとの接し方に大きな差があるということであった。小児科の先生方は患児のことはもちろん、両親、家庭環境を含めて児のことをよく理解しており、患者さんとの距離感が近く、信頼関係も深いように感じた。

ある時、『昔からよく病院にお世話になっていたけど、先生とはあまり会わなかったから、看護師さんが病気を治してくれたと思っていた』と話す患者さんに出会った。とても残念な気持ちになったと同時に、どんなに業務が忙しくてもコミュニケーションを取ることを怠ってはいけないと強く感じさせられた出来事であった。コミュニケーションを増やし、良好な医師‐患者関係を築くことは医師としての基本であり、病気を治すのではなく、患者さんを治すその気持ちを忘れずにいたいと感じた。自身では症状を訴えられない幼い児を診る際には、日々の表情・様子・少しの変化を見逃さないようにすることが必要である。また、親から得られる情報も重要であり、退院後の児にとっては親が全てで、親の理解・協力が非常に大切となる。そのため自ずと患児や家族とのコミュニケーションが増え、信頼関係も深まっているように感じた。

病気や治療への理解が得られにくい子供たちにとっては、慣れない病院での闘病生活は辛い時間であると思う。その時間に私たち医療者がどう関わり、子供たちがどう捉えるかによって、児の将来に大きな影響を与えるかもしれない。『何かおみやげを持って帰らせてあげよう』と、ある上級医に指導していただいたことも印象的であった。入院した原因となった疾患を治療するだけでなく、育児で抱えている不安に対する相談に乗るなど、どんな些細なことでもいいから、何か得ることができた、入院してプラスになったと思えるものをあげられたらいいということであった。治療のことしか考えていなかった私にとって衝撃的で、感銘をうけた言葉であった。

また、ある小児科の先生が『担当していた児が退院後から毎年、写真付きのはがきを送ってくれて、幼稚園、小学校と元気に成長していく姿を見せてくれる。そこに小児科にしかない醍醐味を感じる』と話して下さったことをよく覚えている。その信頼関係の深さに驚かされ、私の理想とする全てがそこにあると感じた。

コンピタンシー評価:初期臨床研修中に出会った医師について

ロールモデルとして学ぶこと

初期臨床研修医 第9期生

研修医として働き、研修期間も残すところあと半年となった。この1年半の中でさまざまな医師や患者さんと出会い、さまざまな経験をしてきた。実際に働いてみると、学生の頃に抱いていた理想の医師像と現実はかけ離れており、その溝を埋めるための日々だった。そのような中で出会った医師Aの言葉を紹介したいと思う。

医師Aはある外科の講師の先生で、手術や外来で忙しい中、自分が執刀した患者さんの所へ毎日のように足を運び、日々の変化を気にする医師であった。そんな医師Aの口癖は「考えろ。そして自分なりに頭の中で答えを出せ。」であった。一見当たり前のことにも思えるが、日々の病棟業務に追われる中で、一つ一つの事柄に対してアセスメントし、答えを出すことはそれなりに大変であり、この過程をスキップして上級医に相談することが多々あった。医師Aはこれを非常に嫌い、時には叱責されることもあった。この「考える」という過程の繰り返しこそが、医師としての知識を成長させる最善の、そして唯一の方法であると伝えたかったのである。

また、医師Aは次のようなことも何度となく言っていた。「できるだけ上級医のI.C.に立ち会うように」。この言葉の裏には、患者さんに手術等の説明を行うためには、その患者さんの病気・治療・手術・合併症・予後など、全てを知っていなければならず、患者さんの背景を理解した上で行われる上級医の説明を聞くことも勉強になるという意味が込められている。実際に私が立ち会った医師AのI.C.では、患者さんの背景を考慮した上で治療方針を提案し、患者さん側も医師Aと築き上げてきた関係性のもと、その方針を受け入れており、非常に勉強となった。

研修医の段階で医師Aに出会い、医師Aの患者さんに対する振る舞いに触れ、このような言葉をもらえたことは、今後の医師人生にとって大きな糧であり、この言葉こそが理想と現実の溝を埋めるための助けになるはずである。これからもこの言葉を胸に、精進していきたい。

コンピタンシー評価:初期臨床研修中に出会った医師について

ロールモデルとして学ぶこと

初期臨床研修医 第9期生

女子医大病院での研修が始まり、二年が経とうとしている。大学病院の魅力は先端医療や症例数の多さといった病院自体の性質であったが、一番良かったことは素晴らしい先生方に出会えたことだ。

ルート、血ガス、CVといった基本的手技を身につけること、初診患者の問診・検査・診断・治療を自分の頭で考えること、入院患者の病態を把握し適切に対応すること、器材の使い方、カルテの書き方、書類の書き方、業務に慣れることなど、全て重要だと思うが、最初は何も出来ず、非常に不安だった。

初めてローテートした内科では、40代の美しい女医さんが指導医だった。「せっかく来たのだから一つでも多くのことを」といつも笑顔で言ってくださった。しかし、最初は何をするにも右も左も分からない状態であり、慣れるまで何度も先生に相談をした。その都度、診療の手を止めさせてしまったにも関わらず、嫌な顔一つせず丁寧に教えていただいた。このように教育熱心な姿に触れ、私はこの環境で学びたいと決心した。一時期、失敗を恐れていた私は、思ったように身動きがとれずにいたことがあった。それに気付いた先生から「あとは勇気だけだぞ。理屈のあることをやって結果として間違っていたのであれば、どれだけでも助けてやる」と声を掛けていただき、強く私の心の中に残る言葉となった。出産や育児、家庭との両立などを迎える女性医師は、なかなか少ないのが日本の現状であるが、先生はそのうちの成功者の一人である。「母親失格には絶対にならない」と言いながら、ご家族の写真を見せてくださったことがあり、母親としての優しさが見えたエピソードを聞き、とても心が温かくなった。また、仕事や新しい医学進展などの勉強といった忙しい環境の中で、母親として家族の面倒をみるのは、どんなに大変だろうか、ととても感動した。

多くの期待と不安を抱えながら始めた初期研修がもうすぐ修了する。医師の厳しさを身にしみて経験したが、一方で研修医の責任の所在も明確になっているため、重要な場面では必ず指導医のサポートやアドバイスが入る。充実した日々を送ることができ、指導医の先生方には感謝している。

コンピタンシー評価:初期臨床研修中に出会った医師について

ロールモデルとして学ぶこと

初期臨床研修医 第9期生

「学校は楽しい?試合は勝ったの?」緊張した面持ちで診察室に入ってくる患者さんに対して、久しぶりに再会した友人相手のように、話しかける。場は和み、患者さんは笑顔になる。時には、母親のように親身になって厳しく指導する。心の距離が近づくことで、診療はスムーズに進み、次回の診察へと繋がる。糖尿病・代謝内科U先生の外来は、3分診療といわれている殺伐とした外来のイメージとは程遠いものであった。

「パッチアダムス」という実在の人物を描いた映画は、医師という職業に興味を持つきっかけとなった作品である。パッチは赤い鼻を付けピエロとなり、患者さんを笑わせる。愛とユーモアを治療の根底におき、人に優しい医療を行う彼に憧れていたが、医師となった今、実践することは容易ではないと感じていた。しかし、U先生は家族のような温かさに満ちた診療を行っており、まさに理想の医師像であった。

研修生活を通して色々な診療科の医師との出会いがあったが、ロールモデルとして目標にしたい医師と多く出会えたことは、何よりの財産となった。もちろん、先輩医師だけでなく、同期や後輩からも学ぶことは多かった。消化器内科で研修していた際、末期癌患者であるIさんが緩和治療を目的に入院された。前主治医であり、同期生でもあるN先生に連絡をすると、すぐに病棟に駆けつけ、再会できた喜びを分かち合った後、泣きながら苦痛を訴えるIさんの話をじっくり聞いていた。患者さんに寄り添い、安心感を与えるN先生は頼もしく、また同期生として誇らしく感じられた。他にも、積極的に論文を執筆する者、資格を取得する者など、モチベーションの高い同期の存在は良い刺激となった。また、患者へのひたむきさや、あらゆることに好奇心を持つ1年生の姿を見て、初心にかえることができた。

最後に、仕事だけでなく趣味を楽しむことの大事さを教えてくださった、整形外科のK先生について記したい。幸いな事に、私も共通の趣味を有しており、全国から同じ趣味を持つ医師の集まる勉強会に参加させて頂いた。日々の雑務に追われ、十分な勉強もできず、仕事へのモチベーションが低下していた頃であった。「最高だろ。こうやって同じ趣味の医者が集まる。こういう楽しみがあると、仕事も楽しくなるんだよ。」と、話す表情は少年のように輝いていた。K先生は常に全力で走り続けているにも関わらず、疲労を感じさせる様子はない。情熱と好奇心に溢れ、楽しそうに仕事をするK先生の姿を見て、医師が生き生きと仕事をしていれば、自然と病棟は明るい雰囲気となることを実感した。

専門科を決めた今こそ、人生の新たなスタート地点と考え、患者さんやスタッフに信頼され、仕事を心から楽しむことのできる医師となれるよう仲間と共に切磋琢磨し、日々精進していきたい。

コンピタンシー評価:初期臨床研修中に出会った医師について

ロールモデルとして学ぶこと

初期臨床研修医 第9期生

この初期臨床研修では、様々な診療科をローテートし、多くの症例を学び、貴重な経験を積んだ。振り返ってみると、辛かったこと、苦しかったこと、大変勉強になったこと、感銘を受けたことなど思い出せない程にあり、とても充実した二年間であった。どの診療科でも指導医・先輩方は熱心に指導してくださった。その中で最も印象を受けた医師は、内科で働く女性医師であった。

その診療科は死期を迎える患者さんが多く入院している科であり、それぞれの患者さんが長い闘病生活を送り、苦痛や悩みを抱えていた。そんな中、先生は時に強く励まし、時に患者さんと共に寄り添い、死への不安を共有していた。先生に支えられ、涙しながらも必死に病気と闘っている患者さんの姿があった。今までどの診療科を研修していても、私は死を迎える患者さんに対し、病状説明や告知などが苦痛であった。情をもって接してしまうと、私自身が辛くなってしまい、苦しかった。逆に感情なしで患者さんに接すると、医師の仕事を中途半端にしているようで辛かった。家族への対応も上手くできずにいた。医師である以上、可能な治療があれば患者さんの命を救いたい。患者さんの死に直面するのは、逃れられるなら逃れたいのが正直な気持ちである。

多忙な生活を送りながらも優しさと強さを持ち、患者一人ひとりへ丁寧に接する先生の姿に心を奪われた。積極的に病態について指導してくださり、大変勉強となった。自分が将来何科に進むかはまだ分からないが、先生のように患者さんと関わっていきたいと感じた。

また、医師に成りたての時に点滴や患者さんへの接し方を一から教えてくださった後期研修の内科医師や、外科で救急手術をもろともせずに働くガッツある女性医師など、自分にはない面を持ち合わせており見習いたい医師は全ての診療科にいた。それぞれの医師の良いところを吸収し、臨床的にも技術的にも優れた医師になりたい。

この2年間を振り返って、医師という仕事は想像以上に大変で、挫折もたくさんあり、自分の未熟さや限界を痛感することも多かった。しかし、様々な診療科を研修した経験を活かし、来年からの研修生活に役立てていきたいと思う。

コンピタンシー評価:初期臨床研修中に出会った医師について

ロールモデルとして学ぶこと

初期臨床研修医 第9期生

研修医は本当に忙しい。指示出しや点滴刺し、手術、時には術後の管理にいたるまで任されることは医療の現場においては稀ではない。そんな研修医である私が初期臨床研修中に出会った医師の中で、ロールモデルとして最も多くのことを学んだのは2年目、3ヶ月の外科研修をした際に出会った医師である。

初日からカルテ上での指示だし、点滴刺し、他科コンサルトなど、目の回るような忙しさで始まった毎日の中、私に余裕はほとんどなかった。しかし、私の直属の上司であった先生は、日々の診療の中で患者さんに対しての尊敬と思いやりを忘れることなく、またコメディカルに対しても常に教育的指導と連携を忘れることなく実践しており、大変驚いた。具体的に言えば、手術前で弱音をこぼす患者さんがいればベッドサイドに座って納得されるまで訴えを傾聴し、コメディカルに間違いがあれば、叱責することなく指導し、無駄なことはしない主義をもっていた。そして、なにより常に謙虚な姿勢で日々反省をしていたように感じた。ある程度の年数・経験を積み現場で働いていると、初心を忘れてしまうことはあると思う。だが先生は私の目から見てそのようなことはなく、不思議に思ったことを覚えている。医師としての理想像を目の当たりにしたように感じ、私も先生に習い日々の診療態度について深く考えるようになった。人間としても、医師としても、先生から学ぶことは非常に多く、研修期間中は外科的な手技を含む様々な症例を経験させていただいたこともあり、最も心に残った研修であった。

日々診療をしていると自分の態度が横暴になっていたり、接遇についてつい忘れてしまったりすることもある。5年後の自分が今と同じような気持ちで患者さんの前に立つことができるかなど、今後について少し不安に感じる部分はあるが、先生に出会ったことは自分の研修医生活において非常に重要なことであったと感じている。

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