研修体験報告

コンピタンシー評価小論文

自分自身の研修を振り返って、何ができたか、何を学んだか、将来どんな医師になりたいか

初期臨床研修医 第13期生

 もうすぐ貴重な2年間の臨床研修が終わろうとしている。どのような医師になりたいか、同じ内容の小論文を初期臨床研修のための入職試験でも書いた気がするが、どんなことを書いたのかは覚えていない。実際に臨床の場に加わり働く中で、学生の身分で書いた内容など、どこかに消えてしまった。研修生活を振り返りながら考え直して行きたいと思う。

  私は、小児科の医師になることを目標に、当院の初期研修プログラムである小児科専門コースへ応募して、見事同コースでの研修を開始することが出来た。最初の3か月は小児科での研修であった。東京女子医科大学病院の小児科は神経、筋疾患の権威達を多く輩出しており、一般大学病院よりもさらに専門性の高い筋ジストロフィーや難治性てんかんなど慢性疾患の子供を多く治療している。国家試験で学んだことなどまったく役に立たない実際の医療現場に加え、見たこともない多くの疾患に戸惑った。原因のわかっていない疾患、治療法の確立されていない疾患などを多く目の当たりにし、心が折れかけたというのが正直な感想であった。そのまま成人科をいくつか研修し、成人領域にまったく興味はなかったが、各科の先生方の指導は丁寧であり、有意義な研修生活を送ることが出来た。

  そして、再び小児科での研修へ戻ることとなった。約9か月ぶりに戻った小児科では日常業務へ慣れていたこともあってか、より専門性のある疾患への興味がわいた。町医者に憧れ、専門性の高い疾患への興味がまったくなかった自分に訪れた変化に驚くと共に、在宅医療への移行や慢性疾患の子供たちの成人領域への移行の難しさを知った。

  自分はどんな医者になり、生涯を何に捧げていこう。
 いくつもの研修を終えたが小児科医になりたいという思いはまったく変わることはなかった。私自身は体が強いわけではなかったが、幸いにも大きな病気にかかることなく、好きな学校へ行き、好きな部活に入り、夢の一つであった医者になることができた。そんな私とは異なり、気管支喘息で運動の制限がある子供、進行性の筋力低下で運動すらできない子供、先天的に発達の遅れがある子供など、多くの制限がある子供達がいる。そんな子供達に当たり前の、自身が歩んできたような何気ない子供時代を過ごしてほしい。漠然としているが、そんな子供達を救う事のできる医師になりたいと考える。具体的な目標は定まらないままだが、当院で医師として働く中で、生涯をかけて取り組みたい目標に出会えると信じている。初心を忘れず、これからも働いていきたいと考える。

初期臨床研修医 第13期生

 学生を卒業し、社会人として働き始め2年が過ぎようとしている。母校での研修ということもあり、環境は変わらないように思えたが、やはり全くの別物であると実感した。

 初期研修医といえども、担当患者さんにとっては自分の命を預けている医師であるという自覚をしなければならない。鑑別疾患を挙げ、検査を選択し、その結果をどう解釈し、治療法を選択していくという一連の流れは、机上で何度も繰り返し行っていた。しかし、実際に現場に立つと机上のみで推し進めず、患者の状況を理解しなければならないことを学んだ。例え、医療者の側から見て検査・治療を追加した方がよいと思われても、患者さん自身が希望しない限り施行することはできない。また、患者さんに寄り添い、家族へのケアも大事な医療行為であることを、身をもって痛感させられた。

 研修の中で経験した心に残っているエピソードの中で、特に考えさせられたのは、本院の泌尿器科をローテーションしていた時のことである。手術件数も多く、入院患者数も多く、日々バタバタとしていた。外科ということもあり、担当医制度ではなくチーム制であり、私自身余裕があまり無く、患者さん一人一人に寄り添えていたかは少し疑問が残る様な状態であった。そんな中、腎癌のターミナルの男性患者が入院してきた。すでに全身に転移しており、治療は対症療法のみ行っていたが、今回は血尿が止まらないという主訴であった。その患者さんは夫婦仲が良く、妻が毎日面会時間いっぱいまで病室にいた。研修医は基本的に病棟管理を任されていたため、その患者さんともご家族とも関わる機会が多かった。毎日主訴・症状が変化していき、脳への転移もあるせいか、毎日性格も変わっているように見えた。そんな中病棟の廊下を歩いていると、その患者さんの妻に呼び止められた。最初は、今はどの様な状況なのか、今後は退院できるのか等の会話であり、自分なりに精一杯の説明と傾聴をしていた。段々と妻の感情がこもっていき、最終的に涙しながら性格が日々違う夫を見ることが辛い、夫をどうにかして助けてほしいという訴えになった。

 人生で人に泣きつかれる経験は今までしたことがなく、それでなくともターミナル患者の家族に対して研修医である私がどのように話をして良いのか分からず、その時の私は「今やれることをしましょう。」としか言えなかった。妻は落ち着きを取り戻したが、その後もどんな説明すれば良かったのか自問自答を繰り返した。圧倒的な知識不足と経験不足であることを気付かされたと共に、日々の忙しい業務を理由に患者さんとそのご家族に寄り添うという基本的であり大事なことを忘れていたことを反省した。その後しばらくして患者さんは亡くなり、妻からは感謝の言葉を述べられたものの、後悔と反省の気持ちが消えなかった。研修医の私が治療をできた症例ではない。しかし、もっと患者さんとご家族に寄り添うことはできたはずであった。

 私は、来年からこの症例を経験させていただいた泌尿器科に進む。同じ様にバタバタと忙しく過ぎる日々でも、“人に寄り添う医療”を自分の軸としようと思う。

初期臨床研修医 第13期生

 初期研修医として東京女子医科大学病院で働き始めて、早くも1年半が経過しようとしている。私が入職する際に掲げた医師像は、「対話を大切にし、患者さんと向き合う医師」であった。いざ仕事が始まってみると、カルテの操作や聞きなれない単語・こなしても次から次に生じる研修医の業務に慣れるので精一杯であった。よく先輩方から国試の勉強と仕事は全く別という話は聞いていたが、実際にその通りであった。試験勉強はあくまで対自分・対問題。医療は対人なのである。分かっているつもりの疾患や薬に関しても、患者さんに細かく聞かれると、理解してもらえる説明が出来ない、思った以上に理解しきれていないと思う場面が多々あった。正直、患者さんの元への足取りが遠のきそうになった瞬間もあった。業務の忙しさ・疲労感は患者さんには全く関係なく、大変でも逃げずに真摯に向き合う事が今の自分には大切だと感じ、業務に慣れてきてからは患者さんに頻繁に会いに行った。「毎日会いに来てくれてありがとう。先生達は忙しそうだから、言いたい事を言えない時もあるけれど、会いに来てくれると言い出せるようになる。」と患者さんに言われ、自分の目指している医師像はここにあるのだな、と強く胸に突き刺さったのを覚えている。同時に、直接自分の目で確かめ、話を聞き出す事で学べる事も多くあると感じた。

  また、私にはもう1つ大切にしていた事がある。それは積極性である。多くの事を吸収できる研修医のうちに、経験出来る事は1つでも多く経験し、身に付けたかったからだ。研修医だからこそ与えられる機会もあるだろう。そのチャンスを少しでも逃したくないという積極性は一貫して持続することができたと思う。先生方のサポートの元、様々な手技を経験出来た点は、大学病院のメリットであったと感じている。

  医師になってあっという間に研修医の時期は過ぎてしまったが、まだ約2年しか経っていない。知識も技術もまだまだ乏しいが、研修医時代に感じた純粋な気持ち、初めて味わう医療の凄さや恐怖心などは決して忘れてはならないだろう。慣れた頃にヒューマンエラーは起こりやすく、医療ではそれは決して許されない。常に緊張感を持ち続け、初心を忘れずに今後の医師生活を歩んでいきたい。
 最後に、初期研修で多くの方にご指導いただき、医師としての基盤となる2年間を終えられる事に感謝したいと思う。

初期臨床研修医 第13期生

 私は二年間の初期研修を通して、様々な経験をし、学び、考えることが出来ました。
 医師になって右も左も分からない中で、毎日が新鮮で働くことの楽しさを感じ、必要な知識を身に付けることで仕事を任され、やりがいを感じました。

  研修を行っていく中で、元気に退院していく患者さんを見送る一方、命を終える瞬間に立ち会うことも何度もありました。笑顔で退院する患者さんの喜びも、亡くなった患者さんのご家族の悲しみも自分のやる気に変えて、その度に何が良かったのか、もっとできたことはないのかと、考える日々を過ごしました。

  様々な診療科で、手技や処方など数えきれないほど学んだことはありますが、何より勉強になったのは、患者さんとの良好な人間関係を構築している上級医の姿でした。患者さんとそのご家族と和やかに話し、時に厳しい内容の告知を一緒に悲しむ上級医の姿は、学生の頃の疾患ばかりを見て、周りが見えていなかった私が恥ずかしいと思う程、温かく人間らしさに溢れるものでした。もちろん、適切な処置を行うためには知識を持っていることは必須ですし、安全に行える技術も必要です。 必要な医療資源がなければ十分な処置もできないでしょう。しかし、それを踏まえて良い医療とは、先進的な医療でも高度な技術でもなく、患者さんに寄り添い、できる限りの治療を行う姿そのものだと思います。

  大学受験時の面接官の言葉が思い出されます。「あなたが患者になったとして、手術の腕は良いが病棟で会うことがない医師と、手術の腕は平凡だが病棟で会話できる医師のどちらに手術をして欲しいか。」当時は答えるのに悩んでしまった質問でしたが、初期研修を終えた今、はっきりと答えることが出来ます。

  電子技術が進み、AIに取って代わられる職業が出てこようとしている中で、人と人との関わりを大切にしていかなくてはならない、その最たるものが医療であると私は思います。 私は、今後産婦人科医として学び、医療を担っていく道を選びました。 人生の始まりから終わりまで、喜びや悲しみの輪の中で寄り添い、力を尽くし、学び続けることで、女子医大の理念である『至誠と愛』を、より良い医療を体現できる医師を目指していきます。

初期臨床研修医 第13期生

 2年間の研修では、知識も経験も足りず、毎日臨床医学の現場で学ぶことは多かった。同じ病名でも患者さんそれぞれで背景が異なるため、治療方針を組み立てる時の留意点も、どんな理由があっての選択なのかを1つ1つ熟考する機会が多くあった。だが、1年目の初めは日常の業務が自分のキャパシティーを超えそうになる事も多く、自分で考え上級医に上申・相談する前に指示が来てしまうことの方が圧倒的に多かった。自分で治療方針を組み立てるための時間が、知識と経験値と仕事をこなすスピードにかかっているのだ、と思い知らされた。

 徐々に業務に慣れてきて、患者の話を要点良く聞き、治療方針を上申して修正していただき、管理していく…という日々をこなすようになった頃、突発性難聴のステロイド大量療法の入院患者を担当した。ステロイド大量療法のプロトコルは学会で決まっているため、ステロイド内服による合併症に留意し管理を行うだけ、という考えをどこかで持ってしまっていた。患者は流暢な日本語を話す外国籍の方で、日本には友人も少なく、旦那さん以外のお見舞いは殆どなかった。また、他病棟にベッド借りしていたため、主治医である私以外の医師が毎日訪室できないことが多かった。治療も順調に進み退院直前となったある日、患者さんから呼び止められた。何を言われるのかと思っていたら、「毎日来てくれてありがとう。」と目に涙を浮かべて言われたのだ。急に発症する病気であるため、ただでさえ不安が強くなりやすい状況で孤独な入院生活を強いられていた患者さんにとって、1日に2度だけでも医師が来室して、訴えを聞いて説明してくれることがどれほど心強いのかを感じた。研修医が話すことが出来る病状説明はまだまだ不足が多く、不安になってしまうこともあるかもしれないが、初期臨床研修医は患者にとっては“研修医”ではなく“医師”であり、その医師が顔を見て直接診察することによる患者との信頼性は、医療にとってはとても大事なことだ。退院時に泣きながらハグしてくれる程信頼してもらえた事は大きな糧となった。

  また、信頼は看護師等のメディカルスタッフとの間でも、とても重要である。経験値から看護師の方がたくさんの知識を持っていることも多く、協力して医療を行える関係づくりは、患者さんへのより良い医療の提供に大きな力となると感じることも多かった。

 色々な研修先を回り、「若い女性」という理不尽な理由で態度が違ったり、失礼なことを言われたこともあったが、まだ信頼を得られていないことが大きいとも感じた。今後も、より一層患者・医療者とのコミュニケーションを密に取り、知識・経験値を身に付け、より信頼してもらえる医師になれるように後期研修も頑張ろうと思う。

初期臨床研修医 第13期生

 これまでの研修期間を振り返ると、非常に多くの経験をさせていただき、学ばせていただいた1年半でした。そしてそれは、医学的なことに限らず、一人の人として生きていく上で大切なことばかりでした。

 研修医1年目の4月、病棟に出て右も左もわからない状態であったことを思い出します。社会人として、一人の医師として働いていく上での責任感や、学生の頃の勉強とは違い、更に深く広く感じた医学の世界、そして、患者との、同業者との、人と人との関わり方など…医学的知識・技術以外に、実際に研修を経験しなければ知ることのなかったこと、学べなかったことが多くあります。そして、その中でも一番印象に残るものは、患者さんから学ばせていただいたことです。患者さんからは、医学的なこと以外にもたくさんの大切なことを教えていただきました。痛みが減るとどれだけ楽になるのか教えてくれた方、病気について何を心配しているのか教えてくれた方、食欲がなくても食べられる物を教えてくれた方、家族を思う気持ちを教えてくれた方、手術で症状が良くなった喜びを教えてくれた方、治らない病気とどう向き合っているのか教えてくれた方、家で生活できる喜びを教えてくれた方、子供の成長の喜びを教えてくれた方、病気の進行の辛さを教えてくれた方、思っていることを口に出せない辛さを教えてくれた方、命の尊さを教えてくれた方…。出会った全ての方々に感謝の気持ちで一杯です。私は、医師として患者さんと関わっていく中で、一人の人として、相手の気持ちや背景も含めて向き合うことを忘れない医師になりたいと思いました。そして学ぶことを怠らず、同じチーム医療を担う方々とも向き合って、今後の医師としての道を歩んでいきたいと考えています。

 研修の中では大変な経験や辛い経験もありましたが、患者さんからの「ありがとう」という言葉や、先輩医師やメディカルスタッフの方々のご指導、そして同期の支えがあったからこそ、乗り越えることができたと思います。この1年半の全ての出会い、経験に感謝し、今後の人生に活かしていきたいです。心より、ありがとうございました。