研修体験報告

コンピタンシー評価小論文

自分自身の研修を振り返って、何ができたか、何を学んだか、将来どんな医師になりたいか

初期臨床研修医 第10期生

 研修生活も残りわずかとなり、今までの研修を振り返ると、本当に色々なことを体験した日々でした。
研修医になったばかりの頃は、仕事内容や流れに慣れるのに精一杯でした。学生とは異なり、仕事をしつつ患者さんと向き合う大変さを知りました。仕事に慣れた頃、患者さんに信頼されるような関係になりたい、一緒に頑張っていける医師になりたいと思うようになりました。 そのために必要なことは何かと考えながら仕事をしていた時に、ある先生の一言がとても胸に響きました。それは、「私は、自分がどんなに忙しくても、辛くても、患者さんはもっと辛くて頑張っているのだから、どんな言葉も優しく笑顔で受けとめてあげるように心がけているよ。」という言葉でした。
実際に、体感した症例があります。その患者さんは癌の末期で治療にも限界があり、疼痛コントロール目的の入院で、私にできることは何かと毎日考えていました。その時に、心に残った先生の言葉を思い出し、できる限り時間のある時には患者さんの病室に行き、できるだけ笑顔で訴えを受け入れたり、話を聞いたり、相談に乗ったりすることに専念していました。何週間か経過して、班回診でその患者さんの部屋を訪れた時「先生、回診が終わったら来てください。」と声をかけられ、回診後に訪れた時に「先生、明日から違う診療科に行くんですよね、毎日毎日忙しいのに私の話を一生懸命聞いてくれてありがとう。先生の笑顔に救われていました。明日から寂しいです。」と言われました。そう言われた時、私の心はとても温かくなり、疲れも忘れるくらいでした。私は研修医であり、治療のことも勉強不足でまだまだ分かっていないこともたくさんあります。しかし、この日をきっかけに研修医という立場だからこそ、色々な立場の気持ちになれると感じました。たくさんの人の気持ちを考えてその人にとって心の支えに少しでもなれたらと思い、仕事をする時は常に、その人のおかれた立場、気持ちを考え、頑張っていこうと決めました。
4月から私は、救急救命センターに入局を希望しています。忙しい科だとは思いますが、患者さんの心を常に考えて行動し、信頼されるような医師を目指して、これからも頑張っていけたらと思います。

初期臨床研修医 第10期生

 研修医になって一番強く感じたことは、患者さんの担当医となって、病状やどのような検査・治療を行うかを説明し、日々のコミュニケーションで信頼関係を築き、感謝されることの嬉しさである。もちろん、信頼関係を築くのに時間を要した患者さんもいた。しかし、一生懸命にその患者さんと向き合うことで、徐々に心を開いてもらうことができた。また、このように信頼関係を築くには、いかに知識が必要かを知った。学生の頃、できるだけ教科書を読むように心がけていたが、「あの時、手を抜かずに勉強しておいてよかった。」と思う反面、「まだまだ勉強することはたくさんあって、それは決して限界がない。」とも感じた。研修中に学んだことは多く、書ききれないほどである。臨床面では、自分の志望科だけでなく、いかに他の診療科の知識も必要であるのかということ。鑑別を挙げ、その鑑別疾患を除外することの難しさを学んだ。また、学生時代は疾患別に学んでいたが、実際は様々な疾患がいくつも合併しており、病態は決して単純ではないということ。ガイドラインに沿った治療ばかりが大切なのではなく、患者さんが納得した治療を受けることが、その患者さんにとって一番の幸福であること。そして、自分自身の健康管理が何より大切なことだ。
 研修中には、今後の臨床に対する適切な姿勢も学ぶことができたように思う。学生の頃は、積極性がない自分であったが、何事も「私にやらせてください!」と積極性を持つことで、できることがみるみる増えた。自分には無理だと決して思わず、スムーズに行えなくても、ここまではできたと評価することが大切であると感じた。初期研修を修了してからも、初めてのことは山ほど待っている。それをいかにチャンスとして自分から積極的につかんでいくかが自分の経験値向上に繋がるのだと思う。
 将来は、内分泌代謝内科を希望しており、大学4年で講義を受けた時から決めていた。もっとたくさんの症例を経験して専門医を目指しつつ、基礎研究にも興味があるので、大学院への道も考えている。あと5カ月もしたら、診療科に所属することとなり、臨床をやっていくことを非常に心待ちに思っている。この2年間の研修で学んだことを活かせるよう、残りの研修も積極的に取り組みたいと思う。

初期臨床研修医 第10期生

 一度だけ、いつも優しい指導医が驚くほど厳しい表情をしているのを見ました。それは私ではなく、私の担当する患者さんに向けられたものでした。
 その患者さんは検診で異常を指摘されて当院を受診し、肺癌と診断された男性でした。転移があったため手術適応でなく、化学療法も効かず完治は不可能、余命は僅かであると考えられました。それでも、彼とその家族は「僅かな希望にかけて」さらに他の治療を継続することを望みました。私は担当の医師として、全身状態や病態の把握だけでなく一人ひとりの社会的な背景や気持ちの変化にも寄り添いたいと思っていました。そして、その時の彼と家族は治療を続けることに唯一の希望を見出しているように見えました。患者さんの望みを奪うことは生きる意欲を奪うことになるのではないか。しかし、体力の落ちた患者さんにリスクを伴う治療を続けてもいいのか。悩んだ私はその患者さんに何も言うことができず、状況を指導医に相談しました。その指導医は普段から患者さんにも研修医にも優しく、話す患者さんが笑顔になるような先生でした。それは先生の人柄が良いからだと思っていましたが、この相談をきっかけにそうではないことが分かりました。相談をするとすぐに患者さんとその家族を呼ぶように言われ、そのとき指導医が迷わず行ったICは「治療はもはや無意味であり、続けるべきではない」という内容でした。かなり厳しく完治の可能性の低さを語り、余命を病院ではなく自宅で過ごすことを勧めました。私はその間、ずっと横から普段の指導医からは想像できないような厳しい表情を見ていました。驚きとともに、自分は患者さんに寄り添っていたのではなく、患者さんの苦しさを受け入れることから逃げていただけなのだと気付きました。どの診療科の患者さんも病気と闘い、人生の辛い時期を病院で過ごしています。そんな患者さん達に寄り添い、一緒に病気と闘うのが医師という職業です。しかし、やはり第一に大切なのは、質の高い医療を正しく提供することであると感じました。涙を流す家族を前に淡々と語る指導医の厳しい表情の奥には、患者さんへの真摯な思いやりと医療者として正しい姿が見えました。
 泣きながら帰る日も多い2年間でした。毎日新しいことを学び、充実はしていても楽しい事ばかりではない研修生活だったと思います。私はこの2年間で得た経験を忘れません。必ずこの経験をこれからの専門分野に易化し、患者さんのための医療を行いたいと思います。ご指導下さった先生方、コメディカルの皆様、そして関わった患者さん方にお礼申し上げます。ありがとうございました。

初期臨床研修医 第10期生

 初期研修を振り返って、私にとって2年間での一番の収穫は、共に切磋琢磨できる友人と出会えたことです。
初期研修1年目。国家試験を終え、卒業旅行が終わって夢か現かの間に長いオリエンテーションが終わり、病棟で働く日になっても、なかなか実感が湧かないというのが正直なところでした。国家試験に向けて受験勉強していた時は、免許さえ取れば「デキレジ」として働けるようなイメージをしており、当然、現実とのギャップに戸惑いました。いざ患者さんを目前して何を聞けばいいのか分からず、何が分からないのかも分からない。ただひたすら、静脈ルートが上手な先輩に憧れる日々。電子カルテの操作に慣れた頃にやっと自分を振り返り、「何か」勉強しないとと焦るものの、「何か」が分からないためにやる気が続かず、先輩に勧められた本を買っては冒頭だけ読んで力尽き、本棚の肥やしにしていました。
 そんな状況が変わったのは、同期に恵まれたからだと思います。日々の診療についての疑問を気軽に話し合う相手に出会えたことで、自分の知りたいと思っていた漠然としたものが明確になり、よいモチベーションになりました。また、少人数有志で定期的に勉強会を始めてから、勉強におけるアウトプットの場の重要さを学びました。それまでは、自分が受け持つ症例について教科書や文献を調べて(インプットだけで)分かった気になっていることが多かったと思います。経験が少ないため、普段の臨床の場をいきなりアウトプットの場にする勇気はないけれど、勉強会というワンクッションがあることで更に勉強への意欲が湧き、良い循環になりました。
 女子医大は規模が大きく、同期、先輩や有名な医師も多くいて、自分の理想の医師像を確立するのにたくさん刺激を受けました。初期研修医の2年間は、周りの環境によって特に影響を受けやすい時期であり、その影響が自分にとって良いものになるか、悪いものになるかは、どの方向にアンテナを張るかどうかで大きく変えられると思います。各診療科を回り、色々な方に出会うことができたこの2年間で、医学においても人間関係においても大変勉強になりました。2年時の選択希望では東医療センターで研修させて頂き、普段とは異なった環境で研修できたことも大変よい経験でした。研修生活を有意義なものにしてくれた、今まで出会った多くの方々にとても感謝しています。
 今後いい方向にアンテナを張り続けて、広く興味を持ち、生涯学習を目標に精進していきたいと思います。

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