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2019年08月14日看護学部1年生食のセルフケア
栄養バランスのとれた食事づくりにチャレンジ

静岡県掛川市で一人暮らしを始めた東京女子医科大学看護学部の1年生。
バランスのとれた食事を摂取することの大切さをテーマとしたユニークな授業を展開し、彼女たちに食に関する自己管理を促している。

※こちらは2017年7月の記事です。
2020年より看護学部は4年間新宿区河田町にて授業を行います。
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● 食事の管理がキャリア形成の第一歩
 病気や障がいのある人たちに寄り添って世話をする役割を担う看護職には、多くの経験を積み重ねながらキャリアアップを図っていくことが求められる。女子医大看護学部では、そうした自己のキャリアを考え続ける態度を身につけることを目的に、1年生から4年生までの学年縦断型カリキュラムとして「キャリア発達論」という授業科目を設けている。
 1年生ではまず、キャリア発達の基盤となる“セルフケア能力”を養うことを目標の一つとしている。その一環として組まれているのが、「食のセルフケア」というプログラムである。
看護学部の1年生は全員、静岡県掛川市の大東キャンパスで1年間を過ごす。このため親元を離れ、多くの学生が“一人暮らし”をすることになる。当然、食事は自炊が基本となる。
 「いうまでもなく食事は健康のもととなりますが、一人暮らしとなると、どうしても偏った食事になってしまいがちです。バランスのよい食事を摂ることがいかに重要であるかを実践的に理解し、健康に生活するための食事づくりの一助にしてもらうのが、『食のセルフケア』の大きな狙いです」と、キャリア発達論を担当している山口紀子助教がプログラムの趣旨について説明する。将来、看護職としてのキャリアを身につけていくためにも、日々の食事の自己管理こそが第一歩になるということだ。
 


● 簡単バランスクッキングにトライ!
 「食のセルフケア」は、掛川市の管理栄養士を講師として招き、まず座学形式の“講義”が行われる。今年は4月28日に実施された。次に学生をA・B・Cの3つの班に分け、5月11日にA班とB班、12日にC班がそれぞれ栄養実習室において“調理実習”に臨んだ。各班は5~6人ずつのグループに分けられ、グループごとに調理実習が進められる。
 そしてC班の調理実習が終わったあと、A班・B班も含めた学生全員がキャンパス内の図書館に集まり、グループごとに机を囲んで“献立づくり”に取り組んだ。「食のセルフケア」は、こうした“講義”“調理実習”“献立づくり”の3つのプログラムで構成されている。
 では、5月12日に行われたC班の調理実習をのぞいてみよう。午前9時、衛生キャップにエプロン姿の学生たちが食堂に集合。山口助教とともにキャリア発達論を担当している多久和善子助教が、「先日の管理栄養士さんによる講義の内容を踏まえ、これから実際に料理づくりにチャレンジします。簡単にできるバランスのとれたメニューですので、ぜひ覚えて食事づくりに役立ててください」とあいさつして授業が始まった。
 栄養実習室へ向かう前、山口助教が学生1人ひとりの手をチェック。マニキュアやネイルアートは料理をするうえでふさわしくないからだ。幸い全員がチェックをクリアすることができた。

● 野菜が豊富なヘルシーメニュー
 いよいよ調理実習開始。“簡単バランスクッキング”というキャッチフレーズのもと、「厚揚げのステーキ」「野菜レンジ蒸し」「ハムロール」の3品の料理づくりに挑戦する。まず、講師を務める2人の管理栄養士が、レシピを紹介しながら順番に3品の見本をつくっていく。その様子を学生たちが真剣な表情で見つめる。3品はほんの15分であっという間に出来上がった。なるほど、簡単である。
 9時20分過ぎ。今度は学生たちがつくる番だ。5つのグループに分かれた学生たちは、それぞれ備え付けのアイランドキッチンを取り囲み、誰が何を受け持つかを相談しながら料理づくりを進めていく。包丁さばきがぎこちない学生も散見されたが、みな実に楽しそうだ。「講義より断然おもしろい!」といった声も上がった。
 調理時間は9時50分まで予定されていたが、段取りのよいグループやチームワークのよいグループは、講師と同じように15分くらいで調理を完了。他のグループも9時45分までには料理をつくり終えた。それらを試食した学生たちからは、「できは完璧。とてもおいしいです」、「簡単につくれるのが大きな魅力。得意メニューが増えそうです」、「野菜が豊富でヘルシーなところがいいですね」などの感想が聞かれた。
 ちなみに、各料理の1人分のカロリーと塩分は次のとおりである。
 ● 厚揚げのステーキ:152kcal / 0.8g
 ● 野菜レンジ蒸し:89kcal / 0.8g
 ●ハムロール:63kcal / 0.4g

 ヘルシーで栄養バランスのとれた料理であることがよく理解できよう。

● 献立づくりで食のバランスを考える
 C班の調理実習は10時10分に終了。その後、前日に調理実習を行ったA班とB班も含め、学生たちが図書館に集合。10時25分から“献立づくり”が始まった。あらかじめ配付されていた献立記入表に、前日の夕飯に食べたメニューを書き込み、それを持ち寄ってグループで検討しながらよりバランスのとれた献立に仕上げようというものだ。
 山口助教は、「グループワークでは、主菜と副菜をどうすればバランスよく摂取できるかを話し合うことに主眼を置いています」という。
あるグループの声を拾ってみよう。「カレーを食べたけど、何が主菜かな?」、「やっぱ肉でしょ」、「ジャガイモは多いと主菜になっちゃう?」、「副菜だと思うな」、「私が食べたのはカルボナーラ。主菜は卵だよね」、「ベーコンかもよ」、「う~ん、どっちだろう?」、「果物は食べなかったんだ」、「バランスがよくないよね」。
 笑顔を見せながら話し合っている姿がほほえましい。ある学生は、「こんなに真剣に献立づくりを考えたのは初めて。「けっこう難しいですね」という。別の学生は、「あと1品加えればバランスのとれた食事になるという“気づき”がありました」、「食費を管理するのを優先していて栄養面にまで気が回りませんでしたが、食事のバランスにも気を遣わなければならないことを学びました」と、“献立づくり”の意義を語る。さらに、「食事を用意してくれていた母親の大変さがよく分かりました」といった声も。
 学生たちにとって“献立づくり”は、非常に有意義な授業だったようだ。