お知らせ

2024年04月24日 「MedtecJapan」にモバイルSCOTを出展しました

 

 2024年4月17日(水)~19日(金)、東京ビッグサイトで開催された「MedtecJapan」にて、学校法人東京女子医科大学先端生命医科学研究所先端工学外科分野(FATS)の取り組みである車両型移動式治療ユニット「モバイルSCOTⓇ」を展示しました。
 期間中は毎日午前10:30からリバーフィールド株式会社の手術支援ロボットSaroaサージカルシステムを用いた完全遠隔模擬手術を、午後14:00からはモバイル戦略デスクを用いた専門医による遠隔手術支援を行いました。また協力企業とともにモバイルSCOTに関わる様々な治療・診断ソリューションやロボットを車両内で展示しました。
 マスメディアからの注目度も高く、非常に盛り上がりを見せたブースとなりました。


【SCOTⓇについて】
「SCOTⓇ」はSmart Cyber Operating Theaterの略で、東京女子医科大学先端生命医科学研究所が取り組んでいる「スマート治療室」です。IoTを活用して各種医療機器・設備を接続・連携させ、手術の進行や患者の状況を統合把握する「戦略デスク」の導入により、手術の精度と安全性の向上を目指します。モバイルSCOTは車両型のスマート治療室です。
 
【協力企業】(順不同)
株式会社NTTドコモ、エルピクセル株式会社、株式会社CROSS SYNC、SWCC株式会社、リバーフィールド株式会社、全農畜産サービス株式会社、THK株式会社
 
 
 

 




2024年04月24日 【プレスリリース】ウィリアムズ症候群に合併する末梢性肺動脈狭窄症の重症化の原因を同定

北海道大学病院
学校法人東京女子医科大学

ウィリアムズ症候群に合併する末梢性肺動脈狭窄症の重症化の原因を同定
~ 治療ターゲットとしてのPTGIS遺伝子の可能性 ~


 
 
Point
ウィリアムズ症候群に合併した重症末梢性肺動脈狭窄症の患者さん2名において、PTGIS遺伝子の レアバリアントを同定しました。
PTGIS遺伝子のレアバリアントは、末梢性肺動脈狭窄症の発症メカニズムに関与しています。
PTGIS遺伝子は、末梢性肺動脈狭窄症の有効な治療ターゲットとなる可能性があります。


【概要】 
                                                                          
 北海道大学病院小児科の永井礼子特任助教、武田充人准教授、真部淳特任教授、東京女子医科大学総合医科学研究所の赤川浩之准教授、東京女子医科大学循環器小児・成人先天性心疾患科の稲井慶准教授、広東省医学科学院広東省人民医院循環器内科(中華人民共和国)の荆志成主任教授らの研究グループは、ウィリアムズ症候群に合併した重症末梢性肺動脈狭窄症における、末梢性肺動脈狭窄症の増悪因子として、2名の患者さんでPTGIS遺伝子*のレアバリアント**を同定しました。
 
 
【背景】

 末梢性肺動脈狭窄症は、主肺動脈から分岐した右肺動脈および左肺動脈、そしてそれらの末梢にまで及ぶ血管狭窄による疾患です。先天性心疾患を持つ患者さんの中での、末梢性肺動脈狭窄症の発生率は2〜3%です。一部の軽度の末梢性肺動脈狭窄症は、治療しなくとも自然に改善することがあります。特にウィリアムズ症候群(特徴的な顔貌、精神発達遅延、特徴的な性格などをもつ先天性遺伝性疾患)に合併した末梢性肺動脈狭窄症ではこの傾向が強くみられます。しかし、中等度の末梢性肺動脈狭窄症では、心臓カテーテルによるバルーン血管拡張術や外科的手術がしばしば行われ、それらが複数回必要となることもあります。さらに、重度の末梢性肺動脈狭窄症の場合、これらの治療は困難です。特に、肺の中にある末梢性肺動脈狭窄症は手術で治療することができないことから治療が非常に困難であり、命にかかわることもあります。

 
【研究方法】

 最初に、ウィリアムズ症候群および重度の末梢性肺動脈狭窄症を持つ小児患者さんにおいて、遺伝学的検査と機能解析を行いました。次に、最初の解析結果に基づいて、ウィリアムズ症候群および軽度から重度の末梢性肺動脈狭窄症を持つ患者さん12名、末梢性肺動脈狭窄症を持たないウィリアムズ症候群の患者さん50名、重度の末梢性肺動脈狭窄症のみを有する患者さん21名においても遺伝学的検査を実施しました。


 【研究成果】

 全エクソーム解析により、ウィリアムズ症候群および重度の末梢性肺動脈狭窄症を持つ小児患者さんにおいて、PTGIS遺伝子のレアバリアントが同定されました。この患者さんの肺動脈内皮ではPTGISタンパクの発現量が低下しており、また、尿中プロスタサイクリン***代謝物の量が低下していました。
 ヒト肺動脈平滑筋細胞および内皮細胞を用いた機能解析実験では、このレアバリアント構造体を導入した細胞においては、正常PTGIS構造体を導入された細胞と比較して、PTGISタンパク発現量が有意に低下し、細胞増殖および移動率が有意に増加していました。また、このPTGISレアバリアント構造体はヒト肺動脈内皮細胞による管腔形成能力をも低下させました。
 さらに、別のウィリアムズ症候群および重度の末梢性肺動脈狭窄症を持つ患者さん1名からも、PTGIS遺伝子において別のレアバリアントを同定しました。


  【今後の展望】

 PTGIS遺伝子は、プロスタサイクリン合成酵素を作り出しています。プロスタサイクリンには血管拡張作用があることから、PTGIS遺伝子に異常があると、プロスタサイクリンによって血管を拡張させることができず、結果として血管が狭窄する可能性があると予測されます。
PTGIS遺伝子は、肺動脈性肺高血圧症の原因遺伝子としても報告されています。このPTGISレアバリアントを有する肺動脈性肺高血圧症の患者さんに対してプロスタサイクリン類似化合物の吸入薬を使用したところ、病態が改善したとの報告があります。この報告に基づくと、PTGIS遺伝子レアバリアントを持つ末梢性肺動脈狭窄症の患者さんにおいても、プロスタサイクリン製剤が治療効果をもたらす可能性があると考えられます。
この研究成果は、重症末梢性肺動脈狭窄症と肺動脈性肺高血圧症の発症メカニズムが類似している可能性を示唆しており、さらには、重症末梢性肺動脈狭窄症の新たな治療戦略の開発に役立つことが期待されます。
 

 

 この研究の成果は日本時間 2024年4月19日(金)公開の米国心臓協会誌 Journal of the American Heart Association 誌にオンライン掲載されました。


【謝辞】

 この研究は、第7回Miyata Foundation Award日本小児循環器学会研究奨励賞、中国医学科学院イノベーション基金[2021-I2M-1-018]、中国国家重点研究開発計画 [2022YFC2703902]、中国国家高水準医療機関臨床研究支援 [2022-PUMCH-B-099]、中国国家自然科学基金プロジェクト [82241020]による支援のもとで行われました。


【用語解説】

PTGIS*:プロスタサイクリン合成酵素。プロスタグランジンH2をプロスタサイクリンに変化する
働きを持っています。
レアバリアント**:一般集団の中での発生頻度が、極めて低い遺伝子の変化のことです。レアバリ
アントは特定の病気の発症の原因になっていることがあります。
プロスタサイクリン***:血管を拡げる働きと、血小板の活性化を抑える働きをもつ生理活性物質です。


【論文情報】
論文名: 
Identification of PTGIS rare variants in patients with Williams syndrome and severe peripheral pulmonary stenosis
著者名:永井礼子1,2、赤川浩之3、澤井彩織1、马悦佼4、八鍬聡5、宗内淳6、安田和志7、山澤弘州1、山本俊至8、高桑恵美9、外丸詩野9、古谷喜幸2、加藤達哉10、原田元2、稲井慶2、中西敏雄2、真部淳1、武田充人1、荆志成11
(1 北海道大学病院小児科、2 東京女子医科大学循環器小児・成人先天性心疾患科、3 東京女子医科大学、4 中国医学科学院北京協和医院[中華人民共和国]、5 JA北海道厚生連帯広厚生病院小児科、6 独立行政法人地域医療機能推進機構九州病院小児科、7 あいち小児保健医療総合センター循環器科、8 東京女子医科大学病院ゲノム診療科、9 北海道大学病院病理診断科、10 北海道大学病院呼吸器外科、11 広東省医学科学院広東省人民医院)
掲載誌: Journal of the American Heart Association(循環器病学の専門誌)
DOI: 10.1161/JAHA.123.032872
公表日:2024年4月19日(日本時間)



【お問い合わせ先】
北海道大学病院小児科 特任助教 永井 礼子(ながい あやこ)
TEL 011-706-5954  FAX 011-706-7898  メール ayakonagai@med.hokudai.ac.jp
東京女子医科大学総合医科学研究所/メディカルAIセンター 准教授 赤川 浩之(あかがわ ひろゆき)
TEL 03-3353-8111 FAX 03-5367-9948  メール akagawa.hiroyuki@twmu.ac.jp
 
 
【配信元】
北海道大学病院総務課総務係(〒060-8648 札幌市北区北14条西5丁目)
TEL 011-706-7631  FAX 011-706-7627  メール pr_office@huhp.hokudai.ac.jp
東京女子医科大学総務部広報室(〒162-8666 新宿区河田町8-1)
TEL 03-3353-8111  FAX 03-3353-6793  メール kouhou.bm@twmu.ac.jp

2024年04月19日 共同研究および受託研究における間接経費の見直しについて

令和6年4月19日
 
共同研究および受託研究における間接経費の見直しについて
 
東京女子医科大学
学長 丸 義朗
 
 平素より、本学の産学連携の推進に格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、この度、東京女子医科大学では、共同研究および受託研究における間接経費(いわゆる管理費)の取り扱いを改定させていただくことになりましたので、よろしくお願い申し上げます。

 文部科学省及び経済産業省が策定した「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」(平成 28 年 11 月 30 日)をはじめとする政府方針等において、費用負担の適正化による資金の好循環が求められているところです。また、競争的資金事業の間接経費は、関係府省の申し合わせにより直接経費の30%とされており、同趣旨の間接経費であっても相違が生じております。
 間接経費は、本学が持続的・発展的に企業様との共同研究および企業様からの受託研究を実施できるよう、本学の研究機関全体としての機能向上及び研究者の研究開発環境の改善・支援に活用させていただいております。
 本学は、今後、さらなる産官学連携活動を推進・充実させ、イノベーション創出による新たな社会的価値を生み出し、地域及び社会に貢献して参りますので、ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 
1.改定内容
  共同研究、受託研究(学術指導を含む)の間接経費率
    改定前:直接経費の10%に相当する額
    改定後:直接経費の30%に相当する額

2.適用開始時期および運用(基準日:令和6年6月1日) 
  ①令和6年6月1日以降に、研究推進センターにお申込みをされた研究。
  ②令和6年5月31日付で契約が一旦終了し、6月1日付で契約を更新する研究。
   なお、令和6年6月1日より前に契約(研究開始)をしている研究については、契約期間の間は、
   改訂前の間接経費率を適用させていただきます。


【本件に関するお問い合わせ先】
 東京女子医科大学 研究推進センター 知財管理・産学連携・利益相反管理室
 E-mail:sangaku.bm@twmu.ac.jp
 

2024年04月19日 第三者委員会の設置について

 本学は、令和6年4月10日開催の理事会にて、出向者に対する二重給与その他不正支出の有無等の事案の調査等を目的として、大学法人ガバナンス及び不正調査について高い知見を有する本学から独立した立場の複数の第三者による第三者委員会を設置することを決議し、このたび、第三者委員会の構成が決まりましたので公表いたします(詳細につきましては、PDFをご参照ください)。
 今後、上記第三者委員会において、客観的かつ徹底的な調査が行われることとなりますが、本学として第三者委員会の調査に全面的かつ真摯に協力いたします。本学は、第三者委員会による調査結果を踏まえ、再発防止策を講じるとともに、管理運営体制の再構築を含む改善計画を策定し、健全な法人運営に努める所存です。

■  委員構成
委 員 長  山 上 秀 明 (元最高検察庁次長検事、弁護士)
副委員長 竹 内   朗 (弁護士・公認不正検査士)
委  員 三 木 義 一 (元青山学院大学学長、弁護士)
委  員 清 水 真一郎 (弁護士・公認不正検査士)

■第三者委員会の設置について 【詳細PDF

2024年04月11日 【プレスリリース】皮膚筋炎の致死的間質性肺炎の治療標的候補はインターロイキンー6である

国立大学法人東京医科歯科大学
学校法人東京女子医科大学
国立大学法人大阪大学
国立大学法人筑波大学

「皮膚筋炎の致死的間質性肺炎の治療標的候補はインターロイキンー6である」
― 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎関連間質性肺炎の新規モデルマウスの解析 ―


 
 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の沖山奈緒子教授や、同非常勤講師かつ東京女子医科大学膠原病リウマチ内科学分野の市村裕輝助教の研究グループは、大阪大学大学院医学系研究科皮膚科学教室の藤本学教授、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの竹田潔教授・香山尚子准教授、筑波大学医学医療系皮膚科学の乃村俊史教授との共同研究で、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎患者さんの間質性肺炎を模した新規モデルマウスを確立し、この疾患が自己反応性CD4 ヘルパーT細胞で引き起こされていること、間質性肺炎成立には炎症性サイトカインのインターロイキン‐6が重要な働きをしており、特異的治療標的になりうることをつきとめました。この研究は文部科学省科学研究費補助金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、米国科学アカデミー機関誌である国際科学誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)に、2024年4月8日にオンライン版で発表されました。
 
Point
特徴的な皮膚症状と筋炎・筋力低下を来す皮膚筋炎は、膠原病の一つであり、中でも抗MDA5抗体陽性の患者さんは、時に間質性肺炎が死亡につながることがある重篤な疾患です。本研究では、世界ではじめて本疾患に適合する新規モデルマウスを確立しました。
本モデルマウスを解析し、発症にはI型インターフェロンが必須である一方、間質性肺炎の成立にはインターロイキン‐6が主要な働きをしており、適した治療標的となることを示す結果を得ています。
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎関連間質性肺炎に適したモデルマウスが確立され、病態が詳細に解明されることで、さらに特異的な新規治療法開発への応用が期待できます。


1.研究の背景 
                                                                          
 膠原病の一つである皮膚筋炎では、特徴的な皮疹と筋力低下を来す筋炎が主要な症状ですが、特異的自己抗体(筋炎特異的自己抗体)がいくつか同定されており、その筋炎特異的自己抗体ごとに臨床症状の特徴があることが分かってきて、診療方針を考えるうえで役立っています。例えば、抗TIF1γ抗体陽性皮膚筋炎の成人患者さんでは多くの方で悪性腫瘍が見付かり、癌治療と並行して行う皮膚筋炎の治療法選定が難しくなっていますが、我々の研究グループでは、この抗TIF1γ抗体陽性皮膚筋炎を模した筋炎モデルマウスを確立し、その解析を進めています(Okiyama N, Ichimura Y, et al. Ann Rheum Dis. 2021)。このTIF1γ誘導筋炎マウスモデルでは、CD8キラーT細胞が筋炎を引き起こしており、抗TIF1γ抗体そのものには病原性がないことが示されています。
 一方で、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎患者さんでは、内出血を伴う特徴的な皮疹を呈するため、専門医にとって診断は比較的容易であり、また、筋炎はないか軽度である一方、間質性肺炎を合併します。この間質性肺炎は、時に急速進行性で致死的である点が臨床的課題になっていますが、肺という臓器の特性上もあり、病態生理解明は十分に行われておらず、高用量ステロイド投与などの非特異的免疫抑制療法を集学的に行うことで救命率改善の努力が図られているところにとどまっています。MDA5は本来、細胞内ウイルスセンサーであり、2本鎖RNAウイルスを認識して自然免疫応答を誘導するための分子であるため、ウイルス性上気道感染症が発症契機になることが想定されていますが、多くの膠原病と同様に、発症機構は証明されていません。末梢血検体解析などより、I型インターフェロン(IFN)発現が上昇していることは示唆されており、また、抗MDA5抗体抗体価や炎症を示す血清フェリチン値が病勢に応じて上昇することが言われています。しかし、病態を形成する免疫機構の全貌や、抗MDA5抗体そのものに病原性があるのかなどは分かっておらず、その解明の一助となるモデル動物も確立していませんでした。
 
 

2.研究成果の概要

 本研究では、マウスMDA5全長タンパクを、構造や翻訳後修飾も哺乳類に近い形で精製し、免疫賦活剤※1と共にマウスへ投与して免疫を惹起することで、マウスMDA5への自己免疫が誘導しました。さらに、ウイルス感染症を模した免疫賦活剤※1を経鼻投与すると、1日で回復する肺傷害が惹起できますが、MDA5に対する自己免疫が成立しているマウスでは、肺間質での炎症が延長し、線維化を伴って、間質性肺炎を呈してくることを見出しました(図1)。


 この間質性肺炎を起こしたマウスの傍気管支領域には特にCD4ヘルパーT細胞が浸潤しており、さらに、間質性肺炎を起こしたマウスのCD4ヘルパーT細胞を健康なマウスに移入すると肺炎を再現することが出来ますが、CD8キラーT細胞や免疫グロブリンIgGの移入では再現できないということから、本疾患モデルは、CD4ヘルパーT細胞が病原性細胞である、自己免疫疾患であることが証明されました。実際に、CD4除去抗体治療でこの間質性肺炎発症が抑えられること、一方で、抗体を産生するB細胞系列を遺伝的に欠損しているマウスではこの間質性肺炎を発症出来る、つまりB細胞はこの間質性肺炎発症に必須ではないことも見出しています。
 さらに、間質性肺炎症惹起初期と完成時との肺組織を解析し、初期にはI型IFN反応性蛋白Mx1発現が上昇していて、I型IFN受容体を遺伝的に欠損しているマウスではこの肺炎を誘導できないものの、インターロイキン-6(IL-6)の発現は間質性肺炎成立まで一貫して上昇が顕著であること(図2)、さらにはIL-6標的療法である抗IL-6受容体抗体療法が間質性肺炎を治療できることを見出しています(表1)。
 
 
 これらの結果は、抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎関連間質性肺炎では、発症初期にはウイルス感染症や免疫賦活剤※1経鼻投与によって引き起こされる、I型IFN発現など自然免疫活性化が間質性肺炎の「土壌」として重要であり、MDA5特異的CD4ヘルパーT細胞が間質性肺炎の「種」として病態を形成しており、さらに線維化を伴う間質性肺炎成立にはIL-6が必要で、このIL-6は本疾患における治療標的のひとつであることを示唆されています(図3)。


 
3.研究成果の意義

 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の患者さんでは、間質性肺炎が命を脅かします。本モデルマウスが確立したことによって、肺局所を含めた詳細な免疫機構を解析することが可能になり、疾患に最適な新規治療ストラテジーの開発に結び付くことが期待されます。
 
 

【用語解説】
※1免疫賦活剤:成体における非特異的な自然免疫活性化を誘導する物質。本研究では、MDA5抗原を免疫するときに完全フロイントアジュバントと百日咳毒素を用い、急性肺炎症を起こすためには、2本鎖RNAウイルスを模したPoly (I:C)の経鼻投与を用いている。

【論文情報】
掲載誌: Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
論文タイトル: Autoimmunity against melanoma differentiation-associated gene 5 induces interstitial lung disease mimicking dermatomyositis in mice
DOI: https://doi.org/10.1073/pnas.2313070121

 
【研究者プロフィール】
沖山 奈緒子 (オキヤマ ナオコ) Okiyama Naoko
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野 教授
・研究領域
 皮膚免疫学、自己免疫





市村 裕輝 (イチムラ ユウキ) Ichimura Yuki
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野 非常勤講師
東京女子医科大学 膠原病リウマチ内科学分野 助教
・研究領域
 リウマチ学、免疫学





【問い合わせ先】
<研究に関すること>
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科
皮膚科学分野 沖山 奈緒子 (オキヤマ ナオコ)
E-mail:okiy.derm@tmd.ac.jp
 
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野
東京女子医科大学 膠原病リウマチ内科学分野
市村 裕輝 (イチムラ ユウキ)
E-mail:ichimura.yuki@twmu.ac.jp
 
 
<報道に関すること>
東京医科歯科大学 総務部総務秘書課広報係
〒113-8510 東京都文京区湯島1-5-45
TEL:03-5803-5833 FAX:03-5803-0272
E-mail:kouhou.adm@tmd.ac.jp
 
東京女子医科大学 広報室
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
TEL:03-3353-8111 FAX:03-3353-6793
E-mail:kouhou.bm@twmu.ac.jp
 
大阪大学 大学院医学系研究科 広報室
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2
TEL:06-6879-3387 
E-mail:medpr@office.med.osaka-u.ac.jp
 
筑波大学 広報局
〒305-8577 茨城県つくば市天王台1-1-1
TEL:029-853-2040 FAX:029-853-2014
E-mail:kohositu@un.tsukuba.ac.jp