研修体験報告

コンピタンシー評価小論文

自分自身の研修を振り返って、何ができたか、何を学んだか、将来どんな医師になりたいか

初期臨床研修医 第15期生

 初期臨床研修を振り返り、良い医師となるために本当に必要なものとは何かを考えさせられた。医師免許証を手にするには、大学医学部受験、六年間の医学部生活、そして国家試験の合格が必要となるが、逆に言えば、それさえできれば医師になれるということである。しかし、医師になるために学ばなければならないものと、患者が医師に必要としているものは、必ずしも同じではなかった。

 患者により良い医療を提供するには、当然医療知識や経験、実力が必要である。そして、それを最大限に発揮するには、同じ環境で働く人々との協力が不可欠であった。他の医師や看護師、検査技師はもちろん、事務職や清掃員等、ありとあらゆる人々と友好な関係を築くことが、良い医療を提供する第一歩のように感じた。医師が何らかの壁を作ることで、他の人々が声をかけづらい状況ができ上がると、業務全体の進行が遅れて、職場の雰囲気は暗くなり、結果的に患者により良い医療を提供することができなくなっている現場を見たことがあった。医師としてのプライドを高く保つのも時に必要ではあるが、プライドを捨てて他者に歩み寄ることもまた必要なことであり、頼り頼られてこそ信頼関係が生まれるものだと、研修を通して実感させられた。

  朝の快活な挨拶から始まり、指示を出すときも丁寧に行い、電話の受け答えも礼儀正しくきちんと行う。当たり前のことのようではあるが、実際に継続し続けるのは難しい。これを続けて、職場の空気が明るくなれば、自然と人も集まってくるだろう。こうした地道な毎日が、やがて患者にとってより良い医療を提供することに繋がるはずである。

 医師として自己研鑽し、医療に必要な知識や手技を習得し、また社会人として、挨拶や礼儀、感謝など、当たり前のことを当たり前にやる難しさを痛感させられた2年間であった。私は、患者の病を治すだけの役職をただ全うするような医師ではなく、ありとあらゆる人々に感謝され必要とされるような、心の優しい医師になりたい。

初期臨床研修医 第15期生

 私は、当初「これでやっと医師としてなんでもできる」という気持ちで研修をスタートさせましたが、実際に医師として働き始めて、「自分一人では何もできない」と分かったことが、一番大きな学びであったと感じています。患者さんのことを診察し、治療方針を立てるにあたって中心となるのが医師ですが、現病歴を最も詳細に把握しているのは往々にして患者本人であり、患者さんの協力なくしては医療そのものが成り立ちません。入院患者に限って考えても、身の回りのことをサポートする看護師さんをはじめとした薬剤師や技師、ヘルパーや事務員など多くの方の関わりがあって、やっと1人の患者さんの医療が成り立つことを知りました。医師として働いていると、医師だけで治療を行っている錯覚に陥ることが少なからずあります。その時は初心に戻って、多くの人と関わりがあることで自分が医師としての仕事ができていることを再確認することが、とても大切であると感じました。

  また、たくさんの患者さんと出会う中で、時折「先生が担当でよかったです」と言ってもらえることがありました。日々の業務に追われていると、担当している患者さん一人ひとりとゆっくり時間をかけて話をすることが難しいと感じる時もありますが、忙しい中でも時間を作って訪室し、時間の許す限り困っていることを聞いたり、現状の説明を行うと、その後の患者さんの反応に違いがみられ、こちらに対して心を開いて治療に協力的になってくれました。やむを得ない事情で入院が長引いてしまったり、追加で患者さんに負担のかかる検査をしなければいけなくなったりした場合でも、心を開いてくれた患者さんだと、私たち医療者の話を聞いて、治療に協力してくれることが多いです。医師と患者の関係である前に、まず人間同士のやり取りであることは当たり前のことですが、医師として働いているとそのことを失念し、医療を遂行することにとらわれがちです。私が患者ならば、入院はとても心細いと思うし、少しでも早く自宅に帰りたいと思うのは当然の感情です。その中で、どういう医師が担当であれば、入院生活を頑張ろうと思ってくれるのかを考えながら患者と関わるのは大切なことであると学びました。私も完全には実践できてはいないと思いますが、常にそのことを忘れずにいたいと思います。

 私は、医師を志したときに、「手当てのできる医師になりたい」と考えていました。手当てとは、何かしらの医療的な処置を行うという意味もありますが、文字通り手を当てるという意味も込めています。忙しい中でも、患者さんの体に手を当てて、今日もよろしくお願いします、という気持ちで接するだけで、医療は温かみを帯びると確信しています。私の考える手当てをこれからも続け、患者さんにとってこの人ならば頼りたいと思われるような医師になりたいと考えています。

初期臨床研修医 第15期生

 社会人1年目、白衣に腕を通し、医師になれた喜びとともに不安いっぱいで病棟に向かった日のことを今でも覚えています。

  最初は、電子カルテも満足に使えず、何にもできない自分の無力さに落ち込みました。そして、今まで勉強してきた知識では到底足りず、当たり前ですが教科書通りの患者さんはいませんでした。基本的な知識があるのは当前のことで、自分で方針を考え、カンファレンスで相談し、上級医の多くの経験・知識を借りて一人ひとりの患者さんに合わせてベストな方針が決定していくことを知りました。

  私がこの2年間で大きく変わったことは、患者さんに対する態度だと思います。それはEmDでの数多くの問診の経験や、実際にターミナルの患者さんの主治医になった時、そして緩和ケア研修会の中で、特に学ぶことができました。

  初めてターミナルの患者さんの主治医になった時、患者さん本人や家族は、研修医の私が主治医であることに相当不安があったのか、凄く厳しい態度でいらっしゃいました。私はどのように話していいのか分からず、頻繁に患者さんの部屋を訪ねて困っていることはないか聞いたり、他愛のない話をしたりしていました。診療科のローテーション最終日に、患者さんから「毎日朝、先生の顔を見るのが本当に楽しみで頑張れた」と感謝された時、涙が出そうなぐらい嬉しかったです。患者さんの家族からは信頼を得ることが出来なかったかもしれませんが、日々の忙しい業務を理由に患者とその家族に寄り添うという基本的なこと、大事なことを忘れてはいけないと思いました。

 「患者さんの話を傾聴する」という姿勢は当たり前のようで、いざ臨床現場に立ってみると余裕がなく、本当に難しいものでした。

  私は、この2年間で上級医に本当に救われました。とても指導的で、何もできない私に呆れることもなく、丁寧に色々なことを教えてくれました。そして、大学病院にも関わらず、実際にたくさんの手技を経験させてもらえた事も感謝しています。

 患者さんからの「ありがとう」という言葉や、先輩医師やメディカルスタッフの方々のご指導、そして同期の支えがあったからこそ、乗り越えることができた2年間だったと思います。全ての出会い、経験に感謝し、自分自身が上級医になった時に下の学年に伝えていきたいと思います。心よりありがとうございました。

初期臨床研修医 第15期生

 2年間の初期研修のうち1年半を終えた今、これまでの研修を振り返ると、医師として、また人として学びの多い日々を過ごすことができた。

 研修が始まった当初は、様々な検査結果を解釈し治療計画を考えることだけで精一杯であり、患者さんの退院後の生活まで思い描くことができていなかった。退院後どんな生活を送りたいのか、また自宅でも無理なく確実に継続できる治療法なのかなど、自分で考え計画できるようになると、それまで自分がいかに患者さんとのコミュニケーションがとれていなかったのか、身体のことばかりに気を取られ患者さん自身のことを知ろうとしていなかったのかに気が付いた。患者さんによって職業や家庭環境は異なり、それに伴って生活も全く違う。自宅では普段2食しか食べない患者さんに、各食後に内服するよう薬を出しても正確に内服できず、想定した治療効果が得られない。こういった事態は容易に想像できるにも関わらず、研修が始まった当初はそこまで考えることができていなかった。患者さんとの何気ない雑談の中にも普段の生活の様子を垣間見ることができ、いかに患者さん自身のことを知ることができるかを、この1年半の研修の中で学ぶことができた。できるかぎり患者さんと疾患以外の話もしようと心に決めて行動したところ、信頼関係も構築しやすくなった。入院中、自宅での生活に合わせた内服薬の組み合わせに苦慮した患者さんから「自宅でも無理なく薬を服用できるようになり、体調もよく過ごせている。先生と相談できてよかった。」と退院後に伺ったときは、非常に嬉しかった。患者さんにとって話しやすい医師であること、そして必ずしも患者さんの希望通りにできないこともあるが、できる限り希望に寄り添い、どうしても難しい場合には、その理由を正確に説明することが、研修中に私ができたことだと思う。

  研修に学んだことは数多くあるが、実際に医師として勤務を開始して、チーム医療というものを実感し、医療者間でのコミュニケーションの大切さを学んだ。日常業務ではもちろんだが、患者さんが転院する際や自宅療養を検討する際には、非常に多くの情報共有と調整が必要となる。私が意識して行っていたことは、できるだけ名前を覚えて名前で呼ぶことである。私自身、「先生」ではなく「○○先生」と名前で呼ばれた方が、信頼を得られているように感じる。医療者間で密な連携が求められる今、相手に敬意を払い、信頼していることを示すこと、顔と名前が一致した上で話しかけ相手の壁を取り払うこと、それらを実践することでコミュニケーションを円滑にすることができると考えており、今後も実践していきたい。

 私は、医師を志した頃から、患者さんの気持ちに寄り添い、信頼を得られる医師になりたいと考えており、今もその気持ちは変わらない。研修中に得られた経験を活かし、さらに自己研鑽に励んでいきたい。

初期臨床研修医 第15期生

 初期臨床研修では、各診療科の先生方との繋がりや患者さんとそのご家族、メディカルスタッフの方達との関りが非常に大切であることを実感しました。患者さんへの診療内容の説明や、医療スタッフとの情報伝達を密に行うことの重要性を、今後も意識していきたいと思います。

 様々な場面でこうしたことを実感しましたが、特に印象に残っているエピソードとしては、糖尿病・代謝内科で糖尿病腎症の患者さんを受け持たせていただいた時のことです。物静かな患者さんで、検査結果を説明している時も病識に乏しいのかどこか上の空で、栄養指導への関心も薄いようでした。検査の結果、腎機能の持続的な低下を認めたため、今後腎代替療法は避けられないことを伝える必要がありました。指導医の先生からは、病識の乏しい患者さんへは比較的早い段階で血液透析等について説明した方が良いと教えていただきました。血液透析を導入する場合、週3回の維持透析が必要になるなど、患者さんのライフスタイルに大きく影響します。患者さんが自身の腎機能の状態を把握せずに、差し迫って腎代替療法の選択を迫られた場合、現実を受け止めきれずに鬱状態となったり、治療を拒否したりする患者さんが多いとのことでした。

 そこで、私は毎日空いた時間を見つけては、患者さんのベッドサイドへ行き、傾聴と腎代替療法の説明を繰り返し行いました。2週間ほどの短い入院期間でしたが、退院が近付く頃には、患者さんから栄養指導を受けなおしたいと申し出があったり、血液浄化療法のパンフレットを読んだりする行動変容が見られました。この様な変化を目の当たりにして、私自身も大変嬉しく、医師としての説明責任を実感できた症例となりました。

 これから大勢の患者さんを診ていく中で、毎日患者さんのお話を聞き、自分の目で状態を確認することこそ一番大切だということを忘れずにいようと強く思いました。そして、患者さんの気持ちを汲み取りつつ、検査や治療の説明を的確に行えるよう、日々精進して参りたいと思います。