出展します

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催する展示会「大学見本市2026~イノベーション・ジャパン」において、医学部病理学 教授 倉田 厚先生の研究シーズの出展が決定いたしました。
本展示会は、全国の大学・研究機関が有する最先端の技術シーズを一堂に集め、産学連携・共同研究の促進を目的として開催されるものです。
ご関心をお持ちの皆さまにおかれましては、ぜひ会場にお越しいただき、本学の研究内容に直接触れていただければ幸いです。
■ 開催概要
展示会名:大学見本市2026~イノベーション・ジャパン
開催日:2026年8月27日(木)、28日(金)
会場:東京ビッグサイト 南展示棟 南1ホール(東京都江東区有明)
【展示内容】
出展分野:健康・医療
出展タイトル:梅毒トレポネーマ培養成功、診断洗練やワクチン開発へ
代表研究者:倉田 厚(医学部病理学 教授)
代表研究者:倉田 厚(医学部病理学 教授)
ブース番号:H-084
※開催1日目の11:49からピッチステージBにて、ショートプレゼンテーション(5分)も行います。
※展示会の公式サイトは、7月中旬にオープン予定です。
※展示会の公式サイトは、7月中旬にオープン予定です。
生理学
学校法人 東京女子医科大学
末梢神経損傷後の視床ニューロンの過興奮を遠隔性に調節する
ミクログリアと抑制性メカニズムの解明
| Point
● 末梢神経の切断後、視床ニューロンは過興奮しやすい状態に変わっていました。この変化には膜電位の過分極化、入力抵抗の減少、HCNチャネルの機能低下が関与していました。
● この視床ニューロンの状態変化には、末梢神経切断後の視床ニューロンにおける持続性抑制性入力の増強が必要でした。 ● 末梢神経切断は視床へ感覚情報を送る脳幹領域でミクログリア凝集を引き起こしますが、このミクログリアは視床ニューロンの発火特性変化だけでなく、視床の持続性抑制の増強にも必要でした。 ● よって、末梢神経切断は、(1)損傷神経が入力する脳幹領域でのミクログリア凝集・活性化、(2)視床ニューロンでの持続性抑制増強、(3)視床ニューロンの膜特性の変化を介して、視床ニューロンが過興奮となりやすい状態に変えることが示唆されました。 ● 末梢神経損傷に伴うこの連鎖的な変化は、直接損傷を受けない脳神経回路機能の可塑的変化を引き起こし、神経障害性疼痛の発現に関わる感覚伝導路の過興奮に寄与すると考えられます。 |
末梢神経損傷後のアロディニア(通常は痛みとならない程度の弱い刺激が痛みとなる)や、四肢切断後に高頻度で生じる幻肢痛のような神経障害性疼痛は、末梢部が治癒した後も長く持続される難治性の慢性疼痛です。罹患率は数%が見込まれており、本邦でも数百万人規模の患者がいると推定されています。痛みの発現には末梢の損傷で誘導される中枢神経回路や機能の可塑的変化が関与します。その一つとして、脳や脊髄の過興奮によって痛みの信号が増強される中枢性感作と呼ばれる変化があります。これまで、国内外で脊髄の中枢性感作や、それを引き起こすメカニズムについての研究が盛んに進められてきました。一方、脊髄の研究と比較すると、より上位の中枢神経系である脳における中枢性感作のメカニズムは不明な点が多く残されています。特に、末梢部での変化が、どのようなメカニズムで直接損傷を受けない中枢神経系に変化をもたらすのかはまだよくわかっていませんでした。
末梢神経損傷のモデルとして、ヒゲ感覚を支配する眼窩下神経(三叉神経の枝)を切断したマウスを用いました。マウスのヒゲ感覚は眼窩下神経→脳幹→視床→大脳皮質の順番に伝達されます。この中で、視床は脳幹からの入力を大脳皮質に中継する役割を持ちます。視床ニューロンは持続的かつリズミックな活動電位の発生となるトニック発火と、短い間に高頻度の活動電位が連発するバースト発火の二つの発火モードの遷移によって大脳皮質への出力を調整しています。発火モードの遷移には膜電位が関係しており、視床ニューロンの膜電位が脱分極側に移行するとトニック発火が、過分極側に移行するとバースト発火が表れやすくなることが知られています。また、視床ニューロンでバースト発火が増強すると、大脳皮質により強い興奮を引き起こすと考えられています。
実際の実験では、眼窩下神経を切断したマウスの脳スライス標本を作製し、細胞が生きている状態で単一の視床ニューロンからホールセル・パッチクランプ法により電気応答を記録しました。神経切断2/3日後から1週間後にかけ、体性感覚視床ヒゲ領域のニューロンの静止膜電位は過分極側に移行し、入力抵抗は低下していました。この状態のニューロンは、活動電位が発生する閾値まで膜電位が脱分極するのに強い入力が必要になります。ニューロンに長い(1秒)の持続した脱分極電流を注入すると、正常マウスに比べ、神経切断マウスのニューロンではバースト発火が生じる確率が増えました。バースト発火の後は活動電位が発生しにくくなるため、神経切断マウスでは、1秒間の脱分極刺激の間に発生する活動電位の頻度も低下し、リズミックな活動電位が生じにくくなっていました(図1)。
実際の実験では、眼窩下神経を切断したマウスの脳スライス標本を作製し、細胞が生きている状態で単一の視床ニューロンからホールセル・パッチクランプ法により電気応答を記録しました。神経切断2/3日後から1週間後にかけ、体性感覚視床ヒゲ領域のニューロンの静止膜電位は過分極側に移行し、入力抵抗は低下していました。この状態のニューロンは、活動電位が発生する閾値まで膜電位が脱分極するのに強い入力が必要になります。ニューロンに長い(1秒)の持続した脱分極電流を注入すると、正常マウスに比べ、神経切断マウスのニューロンではバースト発火が生じる確率が増えました。バースト発火の後は活動電位が発生しにくくなるため、神経切断マウスでは、1秒間の脱分極刺激の間に発生する活動電位の頻度も低下し、リズミックな活動電位が生じにくくなっていました(図1)。

図1.眼窩下神経切断後の視床ニューロンの膜・発火特性の変化
視床ニューロンのバースト発火には複数のイオンチャネルの関与が知られています。代表例として、伝依存性カルシウムチャネルがありますが、眼窩下神経切断後も、その電流自体には大きな変化はありませんでした。活動電位が発生すると、その後で膜電位の再分極、過分極に続いて再度の脱分極に移行することで、リズミックな活動電位が持続します。この過程には、過分極で開口し、陽イオン(ナトリウムイオンやカリウムイオン)を細胞内に通すことで脱分極を促進するHCNチャネル(*)が関与します。実験的には、ニューロンに過分極電流を注入した際、膜電位が脱分極側に振れる応答から、HCNチャネルの働きを推定できます。眼窩下神経切断後、視床ニューロンでは過分極電流注入によるHCNチャネルの応答が小さくなっていました。また、膜電位固定法により直接HCNチャネル電流を計測すると、眼窩下神経切断後の視床ニューロンでは、膜電位がより過分極側に移行しないとHCNチャネルが開口しにくくなっているHCNチャネルの機能低下が認められました。眼窩下神経切断後のニューロンでは膜電位が過分極化します。これは、低閾値活性型(T型)の電位依存性カルシウムチャネルの脱不活性化に必要で、そこから膜電位が脱分極側に移行すると開口し、脱分極をブーストすることでバースト発火を引き起こすことができます。ただ、HCNチャネルの機能低下のため、活動電位後の再分極、過分極から脱分極への揺り戻しが損なわれ、リズミックに持続する活動電位が生じにくい状態になっていると考えられました。
我々は以前に眼窩下神経切断後の視床ではシナプスの外側に局在するGABAA受容体を介した持続性抑制が増強すること(Nagumo et al, Cell Rep, 2020)、一方、視床に感覚情報を送る脳幹領域では脳の免疫細胞であるミクログリア(グリア細胞の一種)が凝集することを報告していました(Ueta and Miyata, Cell Rep, 2021)。持続性抑制は持続的な細胞内への塩化物イオン流入を引き起こし、膜電位を過分極化させるため、視床ニューロンの膜・発火特性の変化に寄与している可能性が考えられました。そこで、シナプス外GABAA受容体発現を視床ニューロンから取り除く遺伝子改変マウスを用いて調べたところ、このマウスでは眼窩下神経切断による視床ニューロンの膜・発火特性の変化は起こりませんでした。次に、ミクログリアの増殖シグナルを阻害する薬剤をマウスに与え、脳全体からミクログリアを除去した状態でも、眼窩下神経切断による視床ニューロンの膜・発火特性の変化は生じなくなっていました。また、このミクログリアが除去された状態では、眼窩下神経切断による視床ニューロンでの持続性抑制増強は起こりませんでした。ミクログリアは神経活動を制御する役割を持ちます。一方、眼窩下神経切断後のミクログリア凝集は脳幹領域特異的に起こります。そこで、視床または脳幹局所的にミクログリアのアポトーシスを誘導したところ、視床ではなく、脳幹のミクログリア除去で眼窩下神経切断後の視床の持続性抑制増強を抑えることができました。これらの結果から、眼窩下神経切断は、損傷神経が入力する脳幹領域でミクログリアを活性化し、その影響が視床の持続性抑制増強を介して視床ニューロンの内在的特性を変え、視床ニューロンでバースト発火が生じやすい状態を作り出していると考えられます(図2)。

図2.体性感覚経路上のミクログリアと抑制性入力の連鎖的な変化による視床ニューロン発火の制御
Ⅲ 今後の展開
今回、脳幹領域のミクログリアが遠隔性に視床ニューロンの発火モード遷移を引き起こすメカニズムを明らかにしました。末梢神経損傷後の中枢性感作を制御するには、ミクログリア、シナプス外GABAA受容体、HCNチャネルなどの細胞や分子が治療標的となる可能性があります。特にミクログリアの活動を制御できれば、脳幹より上位の変化を抑えることができる可能性があります。これまで多くの国内外の様々な急性疼痛および慢性疼痛の研究で、ミクログリアは脊髄や脳の中枢性感作など、可塑的変化を制御する因子として注目され、実験動物レベルでは再現性良く疼痛を抑える標的細胞であることが報告されています。しかし、ミクログリアは非常に多面的な性質を持ち、神経系の様々な調節に関与するため、ミクログリア自体をなくしてしまうアプローチは、実際の患者への治療としては難しい側面があります。今回の研究でも、脳幹のミクログリア依存的な視床の持続性抑制調節が重要であることはわかりましたが、ミクログリアと持続性抑制の変化を繋ぐメカニズムは不明のままです。今後、ミクログリアと神経系の機能連関を担うより限局した分子メカニズムを明らかにすることで、より限局した分子標的治療を実現できる可能性があると考えています。
今回、脳幹領域のミクログリアが遠隔性に視床ニューロンの発火モード遷移を引き起こすメカニズムを明らかにしました。末梢神経損傷後の中枢性感作を制御するには、ミクログリア、シナプス外GABAA受容体、HCNチャネルなどの細胞や分子が治療標的となる可能性があります。特にミクログリアの活動を制御できれば、脳幹より上位の変化を抑えることができる可能性があります。これまで多くの国内外の様々な急性疼痛および慢性疼痛の研究で、ミクログリアは脊髄や脳の中枢性感作など、可塑的変化を制御する因子として注目され、実験動物レベルでは再現性良く疼痛を抑える標的細胞であることが報告されています。しかし、ミクログリアは非常に多面的な性質を持ち、神経系の様々な調節に関与するため、ミクログリア自体をなくしてしまうアプローチは、実際の患者への治療としては難しい側面があります。今回の研究でも、脳幹のミクログリア依存的な視床の持続性抑制調節が重要であることはわかりましたが、ミクログリアと持続性抑制の変化を繋ぐメカニズムは不明のままです。今後、ミクログリアと神経系の機能連関を担うより限局した分子メカニズムを明らかにすることで、より限局した分子標的治療を実現できる可能性があると考えています。
Ⅳ 謝辞
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費:20H05916, 21K06444, 23H02592, 25K09856)、およびブレインサイエンス振興財団、武田科学振興財団、金原一郎記念医学医療振興財団、住友財団、中冨健康科学振興財団の支援を受けて実施されました。
【お問い合わせ先】
本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費:20H05916, 21K06444, 23H02592, 25K09856)、およびブレインサイエンス振興財団、武田科学振興財団、金原一郎記念医学医療振興財団、住友財団、中冨健康科学振興財団の支援を受けて実施されました。
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
植田 禎史(ウエタ ヨシフミ)
東京女子医科大学 医学部 生理学講座細胞生理学部門 講師
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel&Fax:03-3353-8112
E-mail: yueta@twmu.ac.jp
宮田 麻理子(ミヤタ マリコ)
東京女子医科大学 医学部 生理学講座神経生理学分野 教授
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel&Fax:03-3353-8112
E-mail: mmiyata@twmu.ac.jp
<報道担当>
東京女子医科大学 広報課
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-3353-6793
E-mail: kouhou.bm@twmu.ac.jp
【プレス情報】
1.掲載誌名: Progress in Neurobiology
2.論文タイトル: Peripheral nerve injury increases the probability of thalamocortical burst firing remotely via microglia-dependent enhancement of tonic inhibition
3.著者名: Yoshifumi Ueta*, Mariko Miyata*
(*はcorresponding author、アンダーラインは本学所属の著者)
4.DOIコード: 10.1016/j.pneurobio.2026.102923
5.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo): 2026年5月5日
植田 禎史(ウエタ ヨシフミ)
東京女子医科大学 医学部 生理学講座細胞生理学部門 講師
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【プレス情報】
1.掲載誌名: Progress in Neurobiology
2.論文タイトル: Peripheral nerve injury increases the probability of thalamocortical burst firing remotely via microglia-dependent enhancement of tonic inhibition
3.著者名: Yoshifumi Ueta*, Mariko Miyata*
(*はcorresponding author、アンダーラインは本学所属の著者)
4.DOIコード: 10.1016/j.pneurobio.2026.102923
5.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo): 2026年5月5日
こちら
呼吸器内科
九州大学病院
東京女子医科大学
東京女子医科大学
重症喘息の治療薬「テゼペルマブ」で約3分の1の患者が臨床的寛解を達成
―世界初の前向き多施設共同介入試験 (TERESA試験) ―
九州大学の岡本勇教授(大学院医学研究院呼吸器内科学分野)、東京女子医科大学の神尾敬子講師(内科学講座呼吸器内科学分野)らの研究グループは, コントロール不良な重症喘息患者を対象に, 生物学的製剤テゼペルマブ(商品名:テゼスパイア)による「臨床的寛解」の達成率を, 世界で初めて前向きに検証した医師主導多施設共同介入試験(TERESA試験)を実施しました.
その結果, テゼペルマブ投与52週後に34.6%の患者が臨床的寛解を達成しました.また, 生物学的製剤未使用であること, および血中好酸球数が高いことが, 臨床的寛解達成の独立した予測因子であることが明らかになりました.
本成果は, American Academy of Allergy, Asthma & Immunologyの機関誌であるThe Journal of Allergy and Clinical Immunologyに2026年5月20日にオンライン掲載されました.
全世界で推定3憶6,300万人が喘息に罹患しており, そのうち5~10%は吸入ステロイド薬などによる治療を行っても十分なコントロールが得られない重症喘息です. 近年, 重症喘息治療では, 増悪がなく, 症状が安定し, 経口ステロイド薬連用がなく, 呼吸機能が良好な状態を長期間維持する「臨床的寛解」の達成が新たな治療目標として注目されています. しかし, これまでの臨床的寛解に関する研究報告は, 後ろ向き解析や無作為化比較試験の事後解析に限られており, 生物学的製剤使用歴のある患者を含む実臨床を反映した前向き臨床研究は実施されていませんでした.
【研究内容】
TERESA試験(jRCTs071230026)は, 日本国内24施設で実施されたオープンラベル単群介入試験です.2023年6月から2024年1月までに登録された, コントロール不良な重症喘息患者107例(うち46.7%は生物学的製剤使用歴あり)を対象に, テゼペルマブ210mgを4週間ごとに52週間皮下投与し, 臨床的寛解達成率を前向きに評価しました.
【主な研究成果】
テゼペルマブ投与52週後, 34.6%(約3人に1人)の患者が臨床的寛解を達成しました.生物学的製剤未使用患者および血中好酸球数300 cells/μL以上の患者で, 臨床的寛解を達成しやすいことが示されました.一方、臨床的寛解に加え血中好酸球数かつ呼気一酸化窒素の炎症指標も正常化した「完全寛解」達成率は9.3%にとどまりました.この結果から, 症状や増悪の改善と, 血中好酸球を主体とした現在の炎症指標の正常化は必ずしも一致しない可能性が示唆されました.
テゼペルマブ投与52週後, 34.6%(約3人に1人)の患者が臨床的寛解を達成しました.生物学的製剤未使用患者および血中好酸球数300 cells/μL以上の患者で, 臨床的寛解を達成しやすいことが示されました.一方、臨床的寛解に加え血中好酸球数かつ呼気一酸化窒素の炎症指標も正常化した「完全寛解」達成率は9.3%にとどまりました.この結果から, 症状や増悪の改善と, 血中好酸球を主体とした現在の炎症指標の正常化は必ずしも一致しない可能性が示唆されました.
【用語解説】
生物学的製剤:特定の炎症性物質を標的とする抗体製剤
TERESA試験:Tezepelumab-induced Clinical Remission in Severe Asthma (TERESA) study
テゼペルマブ:上皮サイトカインTSLPに対するヒトモノクローナル抗体
オープンラベル単群介入試験:全参加者が公開された同じ薬剤の投与を受ける臨床試験
【研究参加施設】
九州大学病院, 東京女子医科大学病院, 慶應義塾大学病院, 国立病院機構東京病院, 昭和医科大学病院, 東海大学医学部付属病院, 国立病院機構福岡東医療センター, 国立病院機構沖縄病院, 鹿児島大学病院, 産業医科大学病院, 日本大学医学部附属板橋病院, 帝京大学医学部附属病院, 国立病院機構福岡病院, 長崎大学病院, 佐賀大学医学部附属病院, 名古屋大学医学部附属病院, 東京科学大学病院, 久留米大学病院, 福井大学医学部附属病院, 山口大学医学部附属病院, 北海道大学病院, 大阪大学医学部附属病院, 福岡青洲会病院, 国立国際医療センター
【謝辞】
本研究は, アストラゼネカ株式会社からの資金提供により実施しました.研究の実施にあたり, ご協力いただいた患者さんおよび研究協力者の皆様, 九州臨床研究支援センター(CReS九州)の皆様に深く感謝申し上げます.
【論文情報】
掲載誌:The Journal of Allergy and Clinical Immunology
論文名:One-Year Clinical Remission with Tezepelumab in Severe Asthma: TERESA Single-Arm Prospective Study
著者名:Keiko Kan-o*, Hiroko Watanabe, Kenji Chibana, Maho Suzukawa, Akihiko Tanaka, Katsunori Masaki, Shin Ohta, Hiroki Kabata, Koichiro Asano, Reiko Ito, Hiromasa Inoue, Takako Nakano, Hideki Kanda, Takafumi Yamashita, Yasushi Obase, Konomi Kobayashi, Naoya Sugimoto, Yoko Ito, Hiroaki Ogata, Koichi Takagi, Nobuharu Ohshima, Takashi Kinoshita, Hiroki Tashiro, Koichiro Takahashi, Keiji Oishi, Tsunahiko Hirano, Hideki Sakakibara, Konomi Sennari, Yukihiro Sugimoto, Takayuki Shiroyama, Susumu Fukahori, Tsuyoshi Oguma, Katsuyoshi Tomomatsu, Sho Shimada, Mitsuko Kondo, Tomohiro Akaba, Michihiro Yoshimi, Yuki Moriuchi, Mari Ujike, Miho Mitsui, Kaoruko Shimizu, Yuichiro Shindo, Seiko Takasawa, Keiko Wakahara, Tomoki Uno, Jun Miyata, Akane Ishida, Mayoko Tsuji, Akikazu Shimada, Isamu Okamoto.
DOI:10.1016/j.jaci.2026.05.006

| 研究者からひとこと:
TERESA試験の名称は, 治癒が難しい病気を抱える人々に寄り添い続けたマザー・テレサ (Mother Teresa)に由来し研究者が命名しました.喘息は「治らない病気」と考えられてきましたが, 生物学的製剤の登場により, 寛解や治癒を目指せる時代になりつつあります.
本研究では, テゼペルマブがどのような患者さんに対して特に高い効果を発揮するかを明らかにしました.一方で, 複数の生物学的製剤や経口ステロイド薬を使用しても寛解の達成が難しい患者さんが一定数存在することも示されました. こうした患者さんへの新たな治療法の開発に向けて, 治療効果を予測できる炎症指標の探索や、ゲノム(遺伝子)・エピゲノム(遺伝子の働きを調節する仕組み)解析を通じた病態の解明が, 今後の重要な課題と考えられます. 東京女子医科大学 神尾 敬子
|
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
東京女子医科大学内科学講座呼吸器内科学分野 講師 神尾敬子
〒162-8666 新宿区河田町 8-1
Tel:03-3353-8112(内線28892)
E-mail: kano.keiko@twmu.ac.jp
<報道に関すること>
九州大学病院 企画広報室
〒812-8582 福岡市東区馬出 3-1-1
TEL:092-642-5205 FAX:092-642-5008
E-mail:ibskoho@jimu.kyushu-u.ac.jp
東京女子医科大学 広報課
〒162-8666 新宿区河田町 8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-3353-6793
E-mail:kouhou.bm@twmu.ac.jp
総合医科学研究所
東京女子医科大学
再発性頚部内頚動脈攣縮症の原因遺伝子を発見!
― 新たな治療標的PTGISを同定 ―
| Point
1. 再発性頚部内頚動脈攣縮症は、冠動脈攣縮も合併する重篤な稀少疾患で、これまで有効な治療法がありませんでした。
2. 本疾患が常染色体潜性遺伝性疾患であることを、世界で初めて明らかにしました。 3. 血管拡張因子プロスタサイクリンの合成酵素をコードする PTGIS 遺伝子の両アリルに生じた機能喪失型変異が原因であることを突き止めました。これらの変異により血管内皮細胞でのプロスタサイクリン産生が障害され、動脈の異常攣縮が引き起こされます。本成果は、既存のプロスタサイクリン作動薬を含む新たな治療法開発の基盤となることが期待されます。 |
Ⅰ 研究の背景と経緯
再発性頚部内頚動脈攣縮症は、頭蓋外の頚部内頚動脈が攣縮することで、頭痛や片麻痺などの一過性脳虚血発作や脳梗塞を反復して生じる稀少疾患です。これまで世界でも少数の症例報告があるのみで、原因や治療法は明らかになっていませんでした。また、冠攣縮性狭心症を合併したり、片麻痺性片頭痛として誤って診断されてしまう例も報告されています。本疾患はこれまで遺伝性疾患として認識されていませんでしたが、家族性発症例を経験したことから、次世代シーケンシングを用いた網羅的遺伝子解析を実施し、原因遺伝子の同定を試みました。
本研究では、日本人の4つの患者家族を対象に5人の患者さんで遺伝子解析を行いました。いずれも頚部の内頚動脈に可逆性の血管攣縮を認め、頭痛や片麻痺などの神経症状を呈しました。2例の患者さんでは冠状動脈の攣縮も合併し、緊急のカテーテル処置が行われました(図1)。第1家系では兄妹で発症していたことから、ゲノム全域を対象とした網羅的遺伝子探索を実施し、残りの3家系で同定候補の検証を行いました。その結果、本疾患は常染色体潜性遺伝形式をとることが明らかとなり、血管平滑筋の弛緩因子であるプロスタサイクリンの合成酵素をコードするPTGIS遺伝子における両アリルの機能喪失型変異が原因であることを突き止めました。 ヒト頚動脈内皮細胞を用いた機能解析では、患者由来変異型PTGISを導入した細胞において、正常型PTGISを導入した細胞と比較してPTGISタンパク質の発現量が有意に低下していました(図2A)。さらに、この発現低下に伴い、プロスタサイクリン産生が著明に減少することが確認されました(図2B)。.png)
Ⅲ 今後の展開
プロスタサイクリンには血管拡張作用に加えて、血管平滑筋の増殖を抑制する機能が知られています。これまでの我々の研究では、PTGIS遺伝子のヘテロ接合性機能喪失型変異が末梢性肺動脈狭窄症の重症化(Chida-Nagai A, Akagawa H, et al., JAHA, 2024)や、頭蓋内モヤモヤ血管症の発症に寄与することを明らかにしてきました(Nakamura A, Akagawa H, et al., Sci. Rep., 2024)。すなわち、ハプロ不全では動脈内腔の閉塞性病変が形成される一方、両アリルの機能喪失では動脈壁の異常攣縮が引き起こされることが示唆されます。これらの知見は、「プロスタサイクリン合成酵素欠乏症」という新たな疾患概念を提示するものであり、脳・循環器領域における多様な疾患群の病態に介入し得る有望な分子標的となる可能性を示しています。現在、Ptgis遺伝子をノックアウトしたラットモデルを作製し、病態メカニズムの詳細な解析を進めています。
Ⅳ 本研究のご協力について
本研究はJSPS科研費23K08576の助成を受けたものです。
【プレス情報】
1.掲載誌名:International Journal of Stroke(世界脳卒中協会の公式ジャーナル)
2.論文タイトル: Biallelic loss-of-function variants in PTGIS cause recurrent cervical internal carotid artery vasospasm
3.著者名: *Hiroyuki Akagawa, Hideaki Onda, Yosuke Moteki, Takatoshi Sorimachi,
Ryoichi Saito, Atsuko Nihira, Takahiro Hori, Akikazu Nakamura, Makiko Terada, Takamura Nagasaka, Ayako Chida-Nagai, Tomohiro Aoki, Yuichi Kubota
4.DOIコード:10.1177/17474930261449005
5.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo) :2026年5月15日
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
赤川浩之
東京女子医科大学 総合医科学研究所 副所長・准教授
(足立医療センター脳神経外科・兼務)
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03- 5269-7308
E-mail: akagawa.hiroyuki@twmu.ac.jp
<報道に関すること>
東京女子医科大学 広報課
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-3353-6793
E-mail: kouhou.bm@twmu.ac.jp
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