脳神経疾患統合治療戦略に向かうガンマナイフの最先端

ガンマナイフは、ガンマ線を高精度0.1mm(100μm=髪の毛1本分)単位で脳幹や脳神経などの重要構造物を傷つけることなく、脳神経病変のみに照射し、メスを用いたように加療する極めて画期的な方法です。ガンマナイフは“切らずに治す治療”として必要不可欠な存在として広く知られ、侵襲も極めて少なく日帰り治療もおこなえます。

 

ガンマナイフ・アイコンシステム(Icon system)

東京女子医科大学病院では、1993年にガンマナイフ施設を開設、以来治療症例総数は8200件に達しました。2012年、当時全国大学病院で初となる超高精度照射システムであるパーフェクション機が導入。そして2021年には、アイコンシステムにアップグレード。具体的に、現存治療機器にコンビームCTスキャンが標準装備となり、疾患・病状にはよりますが、従来の痛みを伴うフレーム・ピン固定が不要となり、フェイスマスク固定での照射遂行が可能となりました。これにより、かなり患者さんの治療による負担が少なくなりました。また本システムの導入により、寡分割照射(3-5回ほど)が可能となり治療適応が拡大しました:数十個を数える超多発性転移性脳腫瘍、3センチを超える大きな腫瘍や原発性悪性腫瘍(グリオーマ)、そしてある程度の脳動静脈奇形に対しても本システムで治療が行えるようになりました。一方で、従来通りのフレーム・ピン固定を伴う治療において、その治療位置精度は0.05 mm(50μm)へとさらに進化し、聴神経腫瘍・頭蓋底髄膜腫・海綿静脈洞内腫瘍・下垂体腫瘍・頭蓋咽頭腫など、周囲に正常な脳神経が隣接する機能温存重視の良性脳腫瘍に対しても微小解剖学に沿った繊細な治療が可能となり、実際に現存神経機能温存率が向上しております。眼科・耳鼻咽喉科・頭頚部外科・口腔外科領域疾患や頸髄疾患の一部や、三叉神経痛・難治性疼痛・難治性てんかん・振戦などの脳機能性疾患も治療可能です*。さらに、2021年10月からはブレインラボ社製ソフトウエア・ヴァスキュラー エレメンツを国内医療施設として新導入に成功。以前までは治療当日の再検査が必要であった脳血管撮影(カテーテル検査)を、他院や以前に施行した脳血管撮影検査を治療計画コンピュータ内で直接活かせるようになりました。特に脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻などの血管障害疾患において必要検査を減らすことができ、症例によっては日帰り治療が実現しています。
*三叉神経痛を除く、他の脳機能性疾患においては自費診療となります。

ガンマナイフ・アイコンシステム
ガンマナイフ・アイコンシステム

図:ガンマナイフ・アイコンシステム

 

頭蓋底髄膜腫術前シミュレーション3D画像

多くのガンマナイフ治療経験と脳神経外科手術症例数を誇る当院では、ガンマナイフの詳細な解剖学的構造分析力を応用したシミュレーションを取り入れています。腫瘍や動脈瘤、周囲の脳神経や血管との解剖学的関係を詳細に把握し、これらを専用コンピュータにて3D化し、手術アプローチから実際の処置に至るまでを実際の手術時さながらに術前確認しています。あくまでも、患者さんのQOLを重視し、脳神経麻痺や血管損傷が完全に起きぬよう安全に手術を終え、腫瘍残存に関しては安全なガンマナイフ治療との組み合わせを実施しています。まさに“手術の完封リレー(統合治療戦略)”が目標です。

頭蓋底髄膜腫術前シミュレーション3D画像

 

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