平成21年度 二松学舎大学「図書館サービス論」レポート
二松学舎大学3年 Ａさん
東京女子医科大学病院「からだ情報館」における医療情報サービスは患者サービス部門の一つであり、一般人に体について・病気について知ってもらうためのものである。
先述したように、からだ情報館は一般人が体について・病気について勉強するための専門図書館であるため読み物の所蔵はなく、わかりやすいものを選書基準としているという。蔵書は医学史や看護学のような看護学部生用から、一般用の雑誌や家庭の医学まで様々であり、一般用は糖尿病のような生活習慣病に関するものが多いように感じた。
パソコンも備えられており、書架で調べきれないものはインターネットを利用することで調査可能となっている。わかりやすいものであることが重要であり、それは多く取り揃えられているAV資料も同じで、一般人にわかりやすいもの、動画のほうがわかりやすい病気のものを選んでおり、手術や体操についてのビデオも所蔵している。パンフレットも多種多様に所蔵しており、病気ごとに作成したもの、薬剤一覧など部署ごとに作成したもの、製薬会社が作成したもの、病気への注意を喚起しているもの、病気が原因で髪が抜けてしまった人のためのカツラの案内などがあり、それらのパンフレットは内容がコンパクトにまとめられているためわかりやすい。気軽に手に取りやすく、持ち帰りも自由である。本来会員でないと見ることのできない患者会の会報も豊富に取り揃えられており、いろいろな情報を得られるようになっている。室内には病気の原因、検査の仕組みやその重要さを提起するポスターも貼られており、病気克服のための関連施設やセンター案内の資料も豊富である。
所蔵しているそれら全てに共通していることは情報の多さであり、それは“病気を克服するにあたってその病気を知ることが一番大切である”という、からだ情報館の病気に対する考えがあるからである。そのため、館内で勉強してもらいたい、皆に利用できるようにしたいという考えから貸出は不可であり、他館への貸出も不可となっている
次に私が居住する地域の公共図書館である都内狛江市の狛江市立中央図書館と、からだ情報館との医療情報サービスについて比較してみたいと思う。
まずからだ情報館にも公共図書館にも共通して思ったことは、一般人が病気について知るための蔵書構成であり、専門書よりも比較的わかりやすい図書を多く所蔵しているということだった。その上でさらに感じたことは、公共図書館はからだ情報館以上に地域に密着した蔵書構成だということだ。なぜなら、知ることが最重要であるからだ情報館とは反して、公共図書館はエッセイなど実際に病気を克服した体験記をよく目にしたからである。
対して2つの図書館で異なると感じたのは、からだ情報館は大学病院内にある図書館であるため、もちろん看護学部生用の専門書も所蔵していたし、生活習慣病に関する書籍が比較的多いと感じた蔵書構成であっても、それ以外の病気に関する資料も豊富であったことであった。しかし公共図書館において専門書は必要とされることがほとんどないため、所蔵していないのも頷けることではあった。また先述した通り、エッセイなどの読み物が公共図書館にのみ所蔵されていることも異なる点の一つである。
重要視している事項がからだ情報館と公共図書館では異なるため、蔵書構成も異なって当然なのだが、体験記を読むことで親近感が湧き、前向きに治療に取り組むことができるようになる人も多いのではないかと思った。また公共図書館は家庭の医学や糖尿病などの生活習慣病に関する書籍はもとより、近年よく耳にするようになったうつ病に関する書籍も多かったことから、より地域密着型であるように感じた。
患者図書館であれ公共図書館であれ、どのような図書館であろうと医療情報サービスはしっかりとなされているのが理想的であると私は思う。特に公共図書館はしっかりなされているべきだと思う。なぜなら、日々の生活の中でいつどんな病気を患うかは誰にもわからないもので、そんな中誰もが気軽に利用できる公共図書館でこそ、病気に対して多くの情報が提供されれば、病気を知り治療法を知ることで治療に立ち向かう力となり得ると思うからである。しかし、いくら公共図書館の医療情報サービスが充実したとしても、それには公共図書館であるが故の限界があり、だからこそ患者図書館のような医療情報サービスに特化した図書館が必要であると考える。だが選択肢が増加した分、多く存在する情報の中から利用する側が必要な情報を選別・判断し、その上で利用する図書館を決定する必要が出てくるだろう。そのために利用者はあらゆる調査方法を知り、時時に合わせて使いこなせるようになっていなければならないのだろうと思う。