唾液管内視鏡について

当科で行っている唾液管内視鏡検査・治療 sialendoscopeについてご紹介します。 唾液腺の病気のうち、唾液の導管の太い部分(主導管)の狭窄・拡張の検査や、管内の結石(唾石)の摘出術などに用います。

唾液腺の働きと構造

唾液腺と唾液腺管の模式図

唾液腺は唾液を作る組織で、大唾液腺と小唾液腺に分けられます。大唾液腺には耳下腺と顎下腺、舌下腺があります(右図)。
唾液は腺細胞で作られて小導管に入り、小導管が集まった主導管を通って、主導管の開口部から口腔へ分泌されます。
耳下腺の主導管を別名ステノン管、顎下腺の主導管をワルトン管と呼びます。ステノン管の開口部は頬粘膜にあり、ワルトン管の開口部は口腔底にあります。

唾石とは? 唾石の治療法は?

唾石の部位と手術法

唾石はステノン管やワルトン管内にできる結石で、ワルトン管に多くできます(顎下腺唾石)。主な症状は、石で唾液の流出が妨げられる事による唾液腺の腫れや痛みです。食事のあとの唾液が増えたときに腫れを繰り返すことが多いです。ときには細菌感染を併発して抗菌薬を投与したり、切開・排膿が必要になります。
唾石の治療は摘出術です。手術法は唾石のある部位で変わります(右図)。ワルトン管の開口部の近くにある小さな唾石の摘出は比較的簡単で、外来で局所麻酔のうえ口腔底を切開して取り出します。
一方で、管の深部にある唾石は口腔底切開で取り出すことが難しく、全身麻酔をかけることが多くなります。顎下腺内の唾石は顎下腺ごと摘出します。耳下腺唾石は、ステノン管開口部に近いものは口内から小さい切開で摘出し、深部のものは、頬部や耳下部の皮膚を切開して摘出します。
唾石の手術については、「顔周りの皮膚を切る」ということから手術に踏み切れない患者さんも多いのです

内視鏡で摘出できる唾石

唾液管内視鏡で多発唾石を摘出した症例

内視鏡で取れる唾石は、ステノン管唾石とワルトン管深部の唾石のうち大きさが5mm程度までのものです。内視鏡手術では、口の中から、管の開口部を小さく切開して広げた上で、管内に内視鏡を挿入します。従って皮膚には創を残しません。
麻酔は原則として全身麻酔で行い、数日間の入院が必要です。 この点は従来の方法と同じです。

2009年8月~2016年5月の顎下腺唾石42症例61個について、内視鏡のみで摘出可能かを唾石の大きさ、部位などから術前に評価できるかの検討を行ったところ、内視鏡のみでの摘出率は、全症例では42.6%でしたが、ワルトン管内では52.6%、移行部では26.1%で、ワルトン管内唾石は移行部よりも摘出率が高くなりました。
ワルトン管内唾石が内視鏡のみで取れるかどうかは石のサイズとは必ずしも関連せず、取れなかった理由で多かったのは管の狭窄でした。
移行部の唾石は、短径が小さいもののほうが内視鏡のみで摘出できた傾向があり、取れなかった理由で多かったものは癒着でした。

*参考文献
(1) Norio Kondo , Toshio Yoshihara et al. Treatment outcomes of sialendoscopy for submandibular gland sialolithiasis: the minor axis of the sialolith is a regulative factor for the removal of sialoliths in the hilum of the submandibular gland using sialendoscopy alone. Auris nasusu larynx, 2018 Aug;45(4):772-776. 他

唾液管内視鏡手術の実際

内視鏡

当科で用いている唾液管内視鏡装置は、Storz社のMarchal式 Miniature Endoscopesです(右図)。観察・診断用と治療用の2種があり、どちらも内径は1.3mmと極細です。治療用は鉗子類を挿入するための側管がついており、外径もやや太くなっています。

管内の唾石
唾液管内視鏡による唾石摘出術の様子です。まずステノン管やワルトン管の開口部を小さく切開して管内に内視鏡を挿入し、内部を観察します。主導管の分岐部までみることができます。
唾石を確認したら専用の鉗子で把持したり、砕いて摘出します。

唾液管内視鏡手術の合併症

合併症は、海外の報告例も含めると次のようなものがあります。

術中または術後すぐに起こるもの
* 口内の浮腫,唾液腺炎
* 内視鏡本体や鉗子により唾液管に孔があく
* レーザーを使った場合は、レーザーによる唾液管穿孔,皮膚瘻孔(ステノン管の場合)

術後しばらくしてから起こるもの
* 唾液管,管開口部の狭窄
* がま腫の発生(顎下腺唾石の場合)etc.

当科の手術例でも術後の唾液腺炎や唾液管穿孔・がま腫の発生例はあります。いずれも抗菌薬投与や硬化療法などの処置で回復しています。

唾液管内視鏡手術をお考えなら

唾液管内視鏡での治療が良いかどうかを判断するには、ご本人の診察とCTなどの画像診断が必要です。
このため、メールやお電話でのご相談は受けておりません。
治療をご希望の方は先ずお近くの耳鼻咽喉科へご相談いただき、紹介状をお持ちの上で受診をお願いします。