好酸球性副鼻腔炎について

one airway one disease

好酸球性副鼻腔炎は近年増加している難治性の副鼻腔炎で、鼻茸(鼻腔ポリープ)や副鼻腔粘膜への顕著な好酸球浸潤を特徴とします。
好酸球性副鼻腔炎は喘息との関わりが強く、one airway one disease(喘息と好酸球性副鼻腔炎は気道に生じた同じ炎症病態)とも言われます。当科では当院呼吸器センタ-と協力して気道全体のトータルケアを行い、治療成績が向上しています。

この頁では、好酸球性副鼻腔炎の症状・発症原因に関する当科メンバーらによる研究成果、当科の治療方針について解説します。

副鼻腔炎とは?

副鼻腔の模式図〔左〕と鼻茸〔右〕

鼻腔につながる顔面骨の空洞を副鼻腔といい、副鼻腔の炎症を副鼻腔炎と呼びます。
副鼻腔炎は急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に分けられます。急性副鼻腔炎は細菌やウイルス感染などによって副鼻腔に起こる急性の炎症で、膿性鼻汁、頭痛や顔面痛を生じ、通常は1~2週間で治ります。
副鼻腔の炎症症状が3ヵ月以上続くものを慢性副鼻腔炎と呼びます。慢性副鼻腔炎では持続性の膿性・粘性鼻汁、鼻つまり、頭痛・顔面痛、嗅覚障害などを生じます。
鼻茸(はなたけ)は、粘膜が慢性炎症によって腫れて、見た目がキノコのようになったもので、ポリープとも呼びます。鼻茸は大きくなると鼻づまりの原因となり、鼻腔をふさいで副鼻腔の換気を妨げ、副鼻腔炎を長引かせる原因となります。

好酸球性副鼻腔炎の症状と所見

好酸球性副鼻腔炎症例のCT

好酸球性副鼻腔炎の症状は他の型の副鼻腔炎と同じく、膿性・粘性鼻汁や鼻閉が見られますが、特に嗅覚障害が強いのが特徴です。合併症として、喘息、特にアスピリン喘息がしばしばみられるほか、好酸球性中耳炎を合併することもあります。
好酸球性副鼻腔炎の鼻内をみると多発性の鼻茸が生じており、CTでは副鼻腔の病変(粘膜浮腫・ポリープ)は主に篩骨洞、嗅裂に生じています。

慢性副鼻腔炎の標準的な治療はマクロライド少量長期投与を主体とした薬物療法と、内視鏡下副鼻腔手術の組み合わせです。しかし好酸球性副鼻腔炎は手術を行っても再発しやすく、難治性です。

好酸球性副鼻腔炎と喘息の関係 -One airway, one disease-

Th2炎症の機序
Th2炎症の発症機序

好酸球性副鼻腔炎の病態は喘息と密接にかかわっており、アレルギ-性鼻炎と喘息の関係のようにone airway, one diseaseとも呼ばれます。

成人喘息の病態は、可逆性気道狭窄と気道過敏性の亢進をともなう気道の慢性炎症です。喘息における気道慢性炎症の病態はTh2炎症とも呼ばれるアレルギー性炎症で、CD4陽性T細胞(いわゆるヘルパーT細胞)の亜群であるTh2細胞が主体となります。

気道におけるTh2炎症発症のメカニズムは、気道上皮細胞からTh2型炎症を誘導するサイトカイン (Th2サイトカイン: TSLP、IL-25、IL-33など) が産生され,IL-5の産生亢進を含む何らかの機序 で骨髄において好酸球が産生され,血中に遊走し,その後気道粘膜に浸潤して発症すると考えられます。好酸球性副鼻腔炎ではTh2サイトカインと共にシステイニルロイコトリエン (CysLTs) の発現亢進も伴います。

アレルギ-性鼻炎と喘息の関係については,上気道(鼻)と下気道(気管支)の炎症は血液中の細胞を介して互いに影響しあっています。アレルギー性鼻炎患者の鼻粘膜で抗原誘発試験を行うと喀痰に好酸球が上昇し,逆に気管支に抗原誘発試験を行うと鼻粘膜の好酸球浸潤と血中の好酸球が増加します。また喘息合併のアレルギ-性鼻炎患者が副腎皮質ステロイド鼻噴霧薬を使用すると喘息の症状が改善すること,花粉症患者が下気道にステロイドの吸入療法を行うと,鼻症状も改善して鼻好酸球浸潤と血中好酸球が減少することもわかっています。

副鼻腔炎と喘息の関係については、喘息患者の40%~73%に慢性鼻副鼻腔炎を合併し、逆に慢性副鼻腔炎患者の約20%は喘息に罹患しているといわれます。また喘息を合併する慢性鼻副鼻腔炎の副鼻腔陰影の程度をCTでスコア化し重症度分類すると、CTスコアと血中の好酸球数、CTスコアと喀痰中好酸球とは正の相関があります。喀痰中の好酸球数は、喘息重症度の良い指標となります。つまり、慢性鼻副鼻腔炎の程度がひどいほど喘息も重症といえます。
これらのことは副鼻腔炎と喘息もone airway, one diseaseであることを示しています。

好酸球性副鼻腔炎の診断

好酸球性副鼻腔炎の術前診断

日本における好酸球性副鼻腔炎の術前診断基準は2013年に全国大規模疫学調査 (JESREC study) により作成されました。この診断基準でのスコアが11点以上で、術前に好酸球性副鼻腔炎の可能性が高いと診断されます。

好酸球性副鼻腔炎の確定診断は術後の鼻茸の病理組織検査で行います。鼻茸中の好酸球数が顕微鏡下に1視野(400倍)あたり70個以上あった場合に好酸球性副鼻腔炎と診断されます。

好酸球性副鼻腔炎の再発リスク診断

好酸球性副鼻腔炎の治療
好酸球性副鼻腔炎の再発リスク診断

好酸球性副鼻腔炎の治療に際しては、内視鏡下副鼻腔手術と病態に基づいた薬物治療の双方が重要です。


好酸球性副鼻腔炎の治療方針については、再発リスクに基づいたアルゴリズムが作成されており、再発性・難治性の度合いによって低リスク群,中等度リスク群,高リスク群の三群に分けて治療方針を決定します。。喘息の合併や血中好酸球数が多い場合は再発の高リスク群となります。

好酸球性副鼻腔炎の治療方針

好酸球性副鼻腔炎の治療に際しては、内視鏡下副鼻腔手術と病態に基づいた薬物治療の双方が重要です。

好酸球性副鼻腔炎の治療方針については、再発リスクに基づいたアルゴリズムが作成されており、再発性・難治性の度合いによって低リスク群,中等度リスク群,高リスク群の三群に分けて治療方針を決定します。喘息の合併や血中好酸球数が多い場合は再発の高リスク群となります。
薬物療法は、再発低リスク群ではステロイド鼻噴霧薬と抗ロイコトリエン薬の併用、喘息合併例では吸入療法の強化、高リスク群ではステロイド全身投与が考慮されます。

術後治療の有無と鼻茸の再発

内視鏡下副鼻腔手術
好酸球性副鼻腔炎は薬物治療により改善することもありますが、多くの場合は内視鏡下副鼻腔手術が必要です。内視鏡下鼻副鼻腔手術では鼻茸を切除するほかに、鼻副鼻腔の形態を換気が良くなるように修正します。

内視鏡下副鼻腔手術の有効性は言うまでもありませんが,病態に応じた薬物治療は再発予防としても大変重要です。右図は術後に喘息治療のステロイド吸入を行わなかった場合(上)と行った場合(下)を比較したものです。行わなかった場合には鼻茸が再発しています。

薬物治療

副腎皮質ステロイド鼻噴霧薬とモンテルカスト(抗ロイコトリエン薬)の併用
副腎皮質ステロイド薬は,好酸球性副鼻腔炎の病態形成に重要な因子であるTh2サイトカインの発現を比較的容易に抑制するため,薬物療法においては重要です。副腎皮質ステロイド鼻噴霧薬は,全身投与ほど有効ではないとされますが,副作用もなくある程度の効果が期待でき,好酸球性副鼻腔炎の基盤となる治療です。

抗ロイコトリエン薬のひとつであるモンテルカストは,好酸球性副鼻腔炎の病態形成に重要な因子であるCysLTsの作用を阻害する薬物で、副鼻腔炎の浮腫性粘膜(アルブミン存在下)においてもCysLT1レセプタ-への結合力が,同じ抗ロイコトリエン薬のプランルカスト水和物と比較して優れ,効果が期待できます。最近慢性鼻副鼻腔炎におけるモンテルカストに関するメタアナリシスが行われ,その有効性が報告されています。したがって好酸球性副鼻腔炎の軽症例には副腎皮質ステロイド鼻噴霧薬とモンテルカストの併用治療が推奨されます。

経口ステロイド薬
好酸球性副鼻腔炎に対する副腎皮質ステロイド薬の全身投与の有効性は,手術の有無に関わらず証明されており,推奨されています。全身投与により間脳-下垂体-副腎皮質系に影響を与え,クッシング症候群や副腎皮質機能低下をきたすなど重篤な副作用があり,使用には注意を要しますが,好酸球性副鼻腔炎の重症例や術後に限られた期間使用されています。たとえば,セレスタミンにおいては術後から1日2錠2週間,その後1日1錠2~4週間,さらに1錠を隔日投与し,約2か月投与する方法があります。


喘息の吸入治療強化により副鼻腔炎も改善

喘息の吸入治療強化(喘息を伴う好酸球性副鼻腔炎に考慮)
アレルギ-性鼻炎では喘息の治療を行うと鼻炎も改善します。好酸球性副鼻腔炎についても最近,喘息治療の強化すなわち、吸入ステロイド薬(ICS)と長期作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬(ICS/LABA)の有効性が報告されています。

当科では、副腎皮質ステロイド鼻噴霧薬とモンテルカストの併用効果が不十分な症例には,経口ステロイド薬を使用する前に呼吸器内科医と協議して,ICS/LABAを積極的に使用するようにしています。実際,喘息を合併する副鼻腔炎患者に,喘息に対する吸入治療をFP単独からICS/LABAに強化したところ,血中好酸球,鼻茸好酸球浸潤,CTスコアの改善がみられています。