研究テーマ

研究の紹介 (歯科口腔外科学)

歯科口腔外科では、先端生命医科学研究所との共同研究、細胞シートを応用した新規治療法の開発、歯髄細胞を使用した神経細胞の再生など基礎的研究から、新しい診断器具の開発、応用、口腔ケアリンスの開発など臨床的な研究も行っています。

1. 歯根膜細胞シートを用いた歯周組織の再建

歯科口腔外科では先端生命医科学研究所と共同で細胞シートの臨床研究を実施してきました。歯周病に対して2011年より10例の移植が完了し、これまでにその安全性と治療効果の長期的な安定性を確認しており本治療法の有効性を確認しています。しかし、自己細胞移植である都合上、細胞源として患者自身の不働歯を一本抜去しなければなリません。この問題点を克服するために私共は他家細胞移植に戦略をシフトし、現在臨床研究を開始すべく準備を進めています。
大型動物を用いた研究では他家細胞シートによる免疫拒絶などの副作用は観察されず、有効性を確認することが出来ました(Biores Open Access. 5:22-36.)。我々の用いている歯根膜細胞は間葉系幹細胞(MSC)の一種と考えられており、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現が低く共刺激分子を発現していないことに加え、自身の有する免疫調節作用により患者の同種免疫応答を抑制して免疫拒絶を遅延または回避させる作用を有することが知られています。実際、本邦においても日本ケミカルリサーチ(株)が同種MSCの再生医療等製品「テムセル®HS注」について、急性GvHDを適応症として製造販売承認を取得しております。
本年度よりAMEDの「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業(再生医療等の産業化に向けた評価手法等の開発)」として採択されたので、来年度末には医師主導治験を開始したいと考えています。

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2. 間葉系幹細胞シートによるビスフォスフォネート関連顎骨壊死の治療

ビスフォスフォネート製剤を投与されている患者に顎骨壊死が発症し、歯科口腔外科では対応に苦慮していますが、発症機序、予防法、処置法に未だ明確なものはありません。近年、間葉系幹細胞(MSC)の静脈投与により症状が改善することが報告されてきましたが、肺塞栓を引き起こすなどの問題点がみられます。そこで本研究ではMSCシートの局所投与による新規治療法を検討致しました。ラットモデルを作製しMSCシートを移植したところ、移植群では有意に骨露出の治癒がみられました。また、破骨細胞数の改善や血管新生の促進も確認されました。現在、臨床応用に向けて、ビーグル犬によるモデル作製及び細胞シート移植実験を行っております。

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3. 歯髄細胞を用いた末梢神経再生

現在、外傷や腫瘍切除に伴う末梢神経欠損には自家神経移植が主に行われています。われわれは、2004年からSchwann細胞や神経前駆細胞を含んでいる「歯髄」を細胞ソースとした末梢神経再生研究を行っています。ラットやブタの歯髄細胞を組み込んだハイブリッド型の人工神経を作製し、ラットおよびブタの顔面神経欠損に移植を行いその再生について研究しています。

4. 口腔顔面痛診断のための新しい感覚検査器の開発

顔面領域の感覚変化や神経障害、痛みの評価に有用な定量的感覚検査(QST)を口腔内にも適応できるように新しい検査器を開発しました。健康な被験者に対し良好な再現性を報告しており、今後は口腔顔面痛患者の痛みや感覚変化の程度を検査、評価し、診断や治療効果判定に利用します。

5. ダーモスコピーの口腔粘膜疾患への応用

無侵襲で色素性皮膚病変を観察するルーペであるダーモスコープを使用し 扁平苔癬、天疱瘡、黒毛舌、またメラノーマを含む口腔内色素斑などの口腔粘膜病変、白板症、紅板症などの前癌病変、初期扁平上皮癌の所見に関しての研究を行っています(東医療センター皮膚科との共同研究)。

6. オーラルリンスの開発

がん化学放射線治療の口腔有害事象に口腔粘膜炎がありますが、発症すると経口摂取が困難となり治療の完墜もできなくなることもあります。口腔粘膜炎は治療開始前から口腔管理を行うことで発症を防ぐことはできますが、一度発症してしまうと疼痛のために口腔ケアも困難となります。そこで当教室ではこのような患者さんにも使用できる、低刺激で抗菌効果のあるオーラルリンスの開発研究を行っています。