2025年6月25日
東京女子医科大学病院
院長 西村勝治
東京女子医科大学病院で実施された特定臨床研究における重大な不適合事案について、経緯と再発防止策についてご報告いたします。
記
実施計画番号(jRCT番号)jRCTs031240345
研究名称 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌患者を対象とした腫瘍減量手術時および試験開腹術時におけるアミノレブリン酸塩酸塩を用いた光線力学診断の有効性と安全性を検討する特定臨床研究
内容:併用禁止薬(降圧剤)の使用
本研究では、研究薬投与前日から研究薬投与日の手術開始前まで、降圧剤の使用が原則禁止されている(医師が休薬困難と判断した場合に限り、研究薬投与前日の使用は許容)。しかしながら研究対象者において、降圧剤である”バルサルタン錠80mg「サワイ」“及び”アダラートCR 錠20mg”が2025年3月17日6:00(研究薬投与日の手術開始前)に投与されたことがカルテ上に記録されていた。2025年3月24日に治験コーディネーターが研究データーを収集した際にカルテ記録に気が付き、担当医師に確認したところ併用禁止薬を内服していた事実が判明した。
発生した理由
- 2025年3月4日、研究対象者へは患者説明書を見せ降圧薬が併用禁止薬であることを説明し、理解して頂いたと思われたが、結果的には説明が不十分であった。また、カルテの「患者指示」欄に手術時には降圧薬を服薬させないようにとの記載はなかった。
- 内服薬のチェックは入院決定時と入院時の2回行っている。入院決定時の内服薬のチェックは2025年3月4日に入退院支援室で薬剤師により行われ、バルサルタン錠及びアダラートCR錠の内服が確認されたが、この時点では本臨床研究に対する同意がまだ得られておらず、併用禁止薬であることがチェックされていなかった。
- 2025年3月14日、薬剤師による内服薬のチェックが行われた際も、バルサルタン錠及びアダラートCR錠の内服を行っていることが確認されたが、この時の薬剤師に対しては、担当医からアラグリオ臨床試験で併用禁忌薬があることが説明されておらず、降圧剤が併用禁忌薬であることの理解が得られていなかった。また、担当医(グループ制の中の一人の担当医)による入院時の内服薬のチェックが行われたが、降圧薬が併用禁忌になっていることが十分理解されていなかった。また、外来で説明した担当医は、手術時の降圧薬の内服禁止をカルテに入力していなかったため、このようなことが起こったものと思われる。
- 降圧剤管理を研究対象者本人管理としていた。
対応
研究薬投与後からの手術中・術後を含め、経時的バイタルサインに異常な変動はなく研究対象者への影響は認められなかったことを確認した。
本件について、2025年4月16日付で「重大な不適合報告書」を作成し、当院内の報告とともに、認定臨床研究審査委員会へ報告した。
また、4月25日に本研究の全参加医療機関の関係者へ、重大な不適合の発生ついて、情報提供を行うとともに、注意喚起を行った。
その後、5月12日の認定臨床研究審査委員会の意見として、「重大な不適合報告書」により詳細な記載を追記するように指示があり、5月27日付で再度「重大な不適合報告書」を提出し、6月2日付で承認された。
再発防止策
- 降圧剤などの併用禁止薬の服薬を行っている場合には、同意取得時にカルテの「患者指示」欄に「普段からアラグリオとの併用禁止薬があり、術前日・術日の服薬は禁止」であるとの記載を行う。この記載は、カルテ掲示板内2箇所で併用禁止薬についての記載を行う。
- 本特定臨床研究に関わるすべての担当医、病棟薬剤師、病棟看護師に本特定臨床研究の件について、特に、併用禁止薬について、病棟カンファレンス(2025年3月27日、参加者;医師、看護師、薬剤師)、婦人科医師カンファレンス(2025年3月27日、4月3日、参加者;医師のみ)にて周知徹底を行った。
- 入院後に「普段からアラグリオとの併用禁止薬があり、術前日・術日の服薬は禁止」の記載を認めた場合には、研究対象者に伝え理解したことを確認しカルテに記載する。
- 該当薬剤に対し、内服中止の指示オーダーを出し、医師と看護師で確認する。
- 研究対象者への説明を徹底する。
- 降圧剤などの併用禁止薬は、入院時より、研究対象者本人管理ではなく病棟管理にする。
以上