卒後臨床研修センターだより

さまざまな説明会やオリエンテーション、学会に参加する研修医たち。
貴重な体験報告や、臨場感あふれる行事の様子など月毎にお知らせします。

2016年2月号

自分自身の研修を振り返って、何ができたか、何を学んだか、将来どんな医師になりたいか

卒後臨床研修センター 2年次研修医 早川奈見

 2年間の研修生活が終わろうとする今、忘れられない患者さんが一人いる。2年目に入ったばかりの春、膠原病リウマチ内科をローテートした際担当した方だ。50代女性、礼節整い、夫は会社で上層部に勤め、自身は専業主婦として家庭を守りながら、趣味のゴルフに精を出していた。ゴルフの腕前はスコアこそ忘れたものの、プロに近いレベルとのこと。アメリカに暮らす娘夫婦と孫の帰国を楽しみにしていた。ある日、全身の皮膚がどんどん硬くなり、かかりつけの病院から当院に紹介され、くだされた診断は全身性強皮症であった。精査の結果、急速進行性の皮膚硬化と、多数の内臓疾患を合併していた。
 担当を伝えられ、この方と初めて会った時には、暗く、不安で頭がいっぱい、どうしてこんな風になったのか、これからどうなるのか、話しているといつも涙が溢れていた。研修医の私に何ができるだろうか。深刻な状況を把握すればする程、どう関わっていこうかと悩んだ。医師としての業務をこなすのは当然のことだが、それ以上に一人の人間として自分がどうしたいか。私が病気を代われる訳ではないし、24時間付き添う訳にもいかない。痛い、辛い、良くなりますか、という毎日の問いかけに、いつも曖昧な返事しかできず、自分自身にもどかしさを感じていた。

 そんな時、この病院でこの方と関わる医師の中では、私に一番時間がある。ならばできるだけ顔を合わせ、会話をしようと考えた。他科にコンサルトがある時は外来まで一緒に行き、付き添うことができる検査では中に入り、側にいた。それが、今の私にできることだと思った。極度に恐怖心が強い方だったので、検査や処置中は声をかけ、大丈夫ですよと肩をなでた。少しずつ打ち解けていく感じが自分でもした。

 この時気付いた。相手のことを考えれば、何をして欲しいか興味が湧き、アイデアが浮かんでくる。失敗することもあるが、上手くいくことの方が多かったように思う。そうしていくうちに、涙することも少なくなり、治療がひと段落して一時退院する際には「先生ありがとう。幸せになってね。」と笑顔で声をかけてくださった。こんな風に退院されていくとは、初めは想像もできなかった。

 自分が真摯に向き合えば、必ずその心は伝わると実感することができた。医師と患者関係といっても根本は人と人との関係である。一人の人間としての考え方や態度が、目の前の患者さんとの関係にとても大きな影響を与えると再認識した。

 今後は学年が上がり任されることも増え、今回と同じようにできるとは限らないが、この時感じた気持ちを忘れずに、人としての人格をもっと磨いていきたいと思う。そして、自分以外の「誰かのために」学び、行動できる医師になりたいと思う。

卒後臨床研修センター 2年次研修医 朴 栽完

 日本という新しい環境で、研修医となって働き1年半が経ちました。韓国で10年以上、1次診療の現場で医師として働いた経験がありましたが、外国でキャリアを新たにスタートすることに最初は心配と不安がありました。しかし、一日、二日ですべてが得られないことはよく分かっていることであり、最初からやり直す気持ちで挑戦することにしました。
 時間が経つにつれ、当院での新たな挑戦は徐々に自信へと変わっていきました。医学的な知識だけではなく、人としても、優れた指導医の先生たちと優秀な先輩・同期から一つ一つ指導やアドバイスを受け、働くことができたのは、私の人生の大きな幸運だと思います。
 医学は万国共通のものですが、医療現場で行われることは、その国の独特な文化・制度・環境的な側面が反映されているものだと思います。大学病院という日本の医療の最先端で、医療の仕事のプロセスを経験することで、実際の日本の医療を学ぶことができたと思います。
 すべての面で、チーム医療が経験できたのも大事なことです。町医者としての1次診療の視点とは異なる観点から、医療全般を考えることを学ぶ良い機会であって、医療は一人の力だけで行われることではないという点を、再度感じました。それを通じて、いつもどうすれば患者さんの為に、より価値のある医療が実践できるかを考えるようになったことが、私には大きな収穫です。
 救命救急センターの研修時、EmD夜勤で自分に突然発症した腰のヘルニアは、医療の現場を患者の立場でみるいい機会でした。生まれて初めて、急性の病気で病院を受診したことは一生忘れられません。医師として患者さんがどんな気持ちで診療室に訪ねてくるのか、いつも患者さんの気持ちを考えていたと思っていましたが勘違いでした。患者となった時に自分が感じた、その漠然とした不安感をどうすれば和らげることができるのかを考えながら、もっと患者さんの立場と背景を理解しようとしなければならないと思いました。単純に病気を診るだけではなく、人間の全方面のことを考えながら仕事をしていきたいと思います。
 来年は、救命救急センターへの入局を考えています。今までの経験と初期研修を通じて学んだことをもとに、いつでもどこでも通じることができる医療をもっと学んで実践しながら、医師としての医療の本質的な面はもちろん、社会人として、すべての人に笑顔と暖かさを伝えることができる医師になりたいです。
 初期研修中にお世話になった先生方、メディカルスタッフ、研修センターのスタッフの皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。一生懸命に努力し、精進することが恩返しへの一番の近道であると思いますので、これからの後期研修も、さらに頑張りたいと思います。

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