学術集会・講演会

第85回東京女子医科大学学会総会

第85回東京女子医科大学学会総会
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日時:2019年9月28日(土曜日)13:00~16:30
会場:東京女子医科大学 弥生記念講堂
対象:会員・本学教職員・一般

総会 13:00~13:20

挨拶(会長)丸  義朗
庶務報告(庶務担当幹事)内田 啓子
会計報告(会計担当幹事)杉下 智彦

平成28年度吉岡博人記念総合医学研究奨励賞受賞グループ研究発表 13:20~14:00

  1. 間葉系幹細胞を用いた顔面神経不全麻痺に対する新しい手術法の開発
    代表(形成外科学)松峯 元
  2. 積極的摘出を施行した神経膠芽腫に関する早期の再発例の網羅的遺伝子解析と臨床病理学的検討
    代表(先端生命医科学研究所先端工学外科学)郡山峻一

シンポジウム「輝く女性が未来を創る 女性医療の最前線」 14:00~16:30

座長(東京女子医科大学 眼科、女性センター眼科)高村悦子

今回のシンポジウムは「輝く女性が未来を創る 女性医療の最前線」がテーマです。本学がめざす女性医療を探るべく、本学の女性センターの先生方と、本学の女性センターではまだ行われていない、特色のある他施設の女性医療ご専門の先生方をお招きし、これからの女性医療、女性が輝ける未来を創造する医療について考えます。
シンポジウムは会員以外の方も聴講できます。是非多くの方のご参加をお待ちしております。

本学が行っている女性医療
  1. 男性と異なる女性への診療:性差医療
    (東京女子医科大学 総合診療科、女性センター女性内科)片井みゆき
  2. 女性特有の臓器-女性に多い疾患:乳がん-
    (東京女子医科大学 乳腺・内分泌外科、女性センター乳腺外科)神尾孝子
他施設の女性医療
  1. 華麗なる加齢のために~女性の生涯にわたるQOLの維持・向上を志向した女性医学とは~
    (東京歯科大学 市川総合病院 産婦人科、慶應義塾大学 医学部客員教授(産婦人科学))髙松 潔
  2. 女性アスリートの医学的サポート―無月経への対策と月経周期調節法―
    (東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科)能瀬さやか

平成28年度吉岡博人記念総合医学研究奨励賞受賞グループ研究発表

1. 間葉系幹細胞を用いた顔面神経不全麻痺に新しい手術療法の開発

松峯 元1)、佐々木亮2)、尾崎弘展3)、伊東 大1)、宮田麻理子3)、櫻井裕之1)

1)東京女子医科大学 形成外科
2)東京女子医科大学 口腔外科
3)東京女子医科大学 生理学(神経生理学分野)

ベル麻痺、ハント症候群に代表される顔面神経不全麻痺は突然健常人に発症し、さらに急性期に保存的治療にて寛解の得られない症例は重篤な後遺障害を残して罹患者のQOLを著しく損なう。この顔面神経不全麻痺に対して、顔面神経本幹と舌下神経との間に自家神経を用いて端側縫合にて架橋するinterpositonal jump graft(IPJG)は既に確立された術式として諸家により多くの報告がなされている。しかしながら自家神経移植片のドナー部には神経障害、術後瘢痕等の不可避な合併症が生じる。一方、本邦では生体吸収性の人工神経が臨床使用可能となっているが、顔面神経不全麻痺症例に対して自家神経移植の代わりに人工神経を用いたIPJGを施行したとの報告は未だ存在しない。我々の研究チームではラット顔面神経不全麻痺モデルを用いて顔面(舌下)神経-人工神経間の端側神経縫合法を確立し、人工神経によるIPJGが動物実験レベルで可能であることを世界で初めて報告した。そしてさらに現在臨床使用されているPGA製人工神経と皮下脂肪組織を酵素処理、継代培養して作成した脂肪由来幹細胞(ADSCs)を組み合わせた「ADSCsハイブリッド型人工神経」を用いたIPJGをラット顔面神経不全麻痺モデルで行った。またその治療効果を自家神経移植によるIPJGと組織学的、生理学的に比較検討し、臨床応用可能な顔面神経不全麻痺治療となり得るかを評価したので報告する。

2. 積極的摘出を施行した神経膠芽腫に関する早期再発例の網羅的遺伝子解析と臨床病理学的検討

代表(先端生命医科学研究所先端工学外科学)郡山峻一

神経膠芽腫は、WHO(世界保健機関)が定めた判定基準で最も悪性度が高いグレード4に分類され、集学的治療にも関わらず未だ予後の悪い脳腫瘍である。近年、様々な悪性新生物における遺伝子異常の理解が進み、これを受けて2016年の改訂WHO脳腫瘍病理分類では既知の遺伝子異常に基づく分子遺伝学的分類が大きく取り入れられることとなった。遺伝子解析技術の進歩により、今後さらに、予後や治療反応性等に係る分子基盤についての知見が深まることが期待されている。本研究では、本学にて積極的摘出を施行した神経膠芽腫患者を対象に網羅的遺伝子解析を行い、早期再発例あるいは長期生存例を特徴付けるような分子遺伝学的プロファイルの検索を行った。本学にて2006年9月から2012年8月の間に摘出術を施行した18歳以上の神経膠芽腫患者のうち、術前後のMRI画像解析により95%以上の摘出率であった患者31例を対象とし、SNPアレイによるゲノムワイドなコピー数異常解析を行った。さらに、良質な核酸が抽出できたものについては、次世代シーケンサーによるRNAシーケンシング解析、全エクソームあるいは主要な癌関連遺伝子についてのターゲット・リシーケンシング解析も実施した。これらの網羅的データを統合解析することにより、神経膠芽腫をいくつかの階層に分類することができた。臨床像との相関についての検証も加えたのでデータとともに供覧する。

シンポジウム「輝く女性が未来を創る 女性医療の最前線」

1. 男性とは異なる女性への診療:性差医療が果たす役割

東京女子医科大学 総合診療科、女性センター 女性内科
片井みゆき

 性差医学・医療(Gender Medicine)は、生殖器系のみならず男女共通の疾患でも、病態や治療法において生物学的・社会的な性差を考慮する医学・医療である。日本では1999年に概念が広く紹介され、2001年に性差医学に基づく女性専用(専門)外来が誕生した。
 東京女子医大は2007年に日本初の「性差医療部」を東医療センターに開設し、「女性専門外来」として女性の様々な愁訴に対応するため13専門分野の女性医師が連携し各専門性を活かした診療を行って来た。全国400箇所以上に開設された女性専門外来の中で、東京女子医大の女性専門外来は医師数・受診者数共に最大規模で、多数のメディア報道も影響し、全国各地や海外からも受診者が訪れた。その後、2017年からは本院に統合、2018年には女性科が発足し、2019年には女性センターとして新たな形の発展を遂げている。
 性差医学の進歩により、女性では生活習慣病を含めさまざまな全身疾患の発症に、ライフステージに伴う女性ホルモン分泌の劇的な変化が関与することがわかって来た。女性医療においても、性差を考慮した対応、診療科の垣根を越えた総合的な診療には国民からのニーズが高く、近年は内閣府や都道府県の女性の健康増進計画に「性差医療」、「女性の健康の包括的支援」という文言が明記され、その実現は国家レベルでの今後の目標とされている1)2)
 東京女子医大は今日まで全国に先駆けて女性の包括的診療をリードして来た存在であり、モデルケースとして、これまでの経験を従来の医療や今後の国の施策へ還元していくことが望ましいと考える。国が掲げる女性の健康の包括的支援は、各分野において全国で最多の女性専門医が在職する本学だからこそ、本学のアドバンテージが最大限に活きる取り組みと言える。本シンポジウムで、本学の性差医療で得られた知見の一部を紹介させて頂きたい。

  1. 内閣府男女共同参画局「性差に応じた健康支援の推進」 男女共同参画白書 平成25年
    http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h25/zentai/html/honpen/b2_s11_04.html
  2. 東京都: 生涯を通じた男女の健康支援.「男女平等参画推進総合計画 I 東京都女性活躍推進計画 平成29年3月」pp.143-154
    http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/danjo/danjobyodo/files/0000000929/jokatsu_full.pdf
2. 女性特有の臓器―女性に多い疾患:乳がん

東京女子医科大学乳腺・内分泌外科、女性センター乳腺外科
神尾孝子

 乳がんは、日本女性における癌罹患率の第1位を占め、近年一貫してさらに増加する傾向を示している。2014年の国立がん研究センターがん対策情報センターの統計では、罹患率は116.5人/10万人で、罹患者数は年間76.257人と報告されている。
 東京女子医科大学女性センター外来では、女性特有の臓器や女性に多い疾患、女性医師を希望する患者(女性)をスペシャリストの女性医師・技師が診療する体制を構築している。
 女性センター乳腺外来では、乳がんをはじめとする乳腺腫瘍の診察のほか、早期乳がんの発見や乳がんの精密検査に必須である超音波検査や針組織生検、乳頭分泌液の細胞採取や分泌液中の腫瘍マーカーの測定、乳管内視鏡検査などの検査はすべて女性センターのある外来棟の同一のフロアーで熟練した女性医師・技師が行っている。また、乳がんの治療に不可欠な化学療法や緩和ケアについても化学療法・緩和ケア科の女性専門医が女性センターでの専門外来を担当し適格な治療を行っている。近年乳がん領域においても遺伝子検査や、遺伝子に基づいた治療選択肢の重要性が増大しており、女性センター遺伝子外来において乳がんの遺伝について相談ができる体制を設けている。
 今後、関連各科と連携し、さらに充実した診療体制を作っていきたいと考えている。

3. 華麗なる加齢のために~女性の生涯にわたるQOLの維持・向上を志向した女性医学とは~

東京歯科大学市川総合病院産婦人科 、慶應義塾大学 医学部客員教授(産婦人科学)
髙松 潔

日本人女性は世界トップクラスの長寿であるが、幸福度では決して上位ではない。また、長寿も数年で韓国に追い抜かれるという推計もあり、日本における女性のトータルヘルスケアは喫緊の課題である。
これに対し、女性のQOLの維持・向上を志向して、近年、周産期医学・生殖内分泌学・婦人科腫瘍学に次いで確立された産婦人科の4番目のサブスペシャリティが女性医学である。女性に特有な心身にまつわる疾患を主として予防医学の観点から取り扱うことを目的とすると定義されているが、これまでの医療は目の前の疾患・病態に囚われて、背景にある過去と起こりうる将来にまで配慮してはこなかった。例えば、多嚢胞性卵巣症候群では将来のメタボリック症候群の発症リスクが2倍になることや子宮内膜症に関連した不妊の既往がある女性では閉経が早いことを知っていれば、何らかの対応も可能となる。
実際の対応としては、ホルモン療法、特にエストロゲンを中心とした女性ホルモン投与が有用である。性成熟期の経口避妊薬(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)、閉経後のホルモン補充療法(HRT)などには、癌予防やアンチエイジングとしての効果も報告されており、日本においても製剤の選択肢が増えてきた。また、女性におけるエストロゲンレベルの変化はメンタルヘルスに関連することから、心身医学的なアプローチも重要である。
女性医学は各診療科を結ぶハブのような役目をしており、女性の診療には欠かせない視点である。本講演では、華麗に輝く女性が一人でも多くなることを期待して、女性医学の基礎知識から実際の対応までをお話してみたい。

4. 女性アスリートの医学的サポート―無月経への対策と月経周期調節法―

東京大学医学部附属病院女性診療科・産科 女性アスリート外来
能瀬さやか

 女性アスリートに多い健康問題として「視床下部性無月経」、「low energy availability(LEA)」、「骨粗鬆症」が挙げられ、これらは『女性アスリートの三主徴』と定義されている。この三主徴を認めるアスリートでは、疲労骨折のリスクが高まることも明らかになっており、三主徴に対する医学的介入は障害予防の点からも重要となる。また、国際オリンピック委員会でも、Relative Energy Deficiency in Sport(RED-S)の概念を提唱し、男性アスリートも含む全てのアスリートにおいて、運動によるエネルギー消費量に見合った食事からのエネルギー摂取量の重要性について警鐘を鳴らしている。LEAによる無月経に対する治療は、ホルモン療法が第一選択ではなくエネルギーバランスを改善することが重要な治療となる。
 また、月経が規則的にきているアスリートにおいては、月経困難症や月経前症候群等の月経随伴症状への対策がコンディショニングを考える上で重要となる。近年、月経対策において(超)低用量ピル服用を希望するアスリートは増えつつあるが、ホルモン剤に対する誤解や副作用への懸念等もまだまだ多い現状にある。
 本講演では、これまで実施してきた調査結果をもとに、女性アスリート特有の問題に対する現状とその対策法について紹介する。

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