学術集会・講演会

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第86回東京女子医科大学学会総会

第86回東京女子医科大学学会総会
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日時:2020年9月26日(土曜日)13:00~15:00
会場:オンライン会場〔Zoomウェビナー〕
対象:会員・本学教職員・一般
評議員会、総会、シンポジウムの開催方法変更のお知らせ
*総会は書面開催となりました。

シンポジウム「ロボット手術の最前線」13:00~15:00

座長:田邉一成(東京女子医科大学病院 病院長)

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  1. AI×ロボットの実装を目指す高機能版スマート治療室Hyper SCOT
    村垣善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
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  1. 泌尿器科領域におけるロボット手術の現状
    高木敏男(東京女子医科大学 泌尿器科)
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  1. 産婦人科領域におけるロボット支援下手術の現況
    舟本 寛(東京女子医科大学 産婦人科)
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  1. 呼吸器外科ロボット手術の現状
    神崎正人(東京女子医科大学 呼吸器外科)
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  1. 消化器外科におけるロボット手術の最前線
    宇山一朗(藤田医科大学 総合消化器外科)
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  1. ロボット支援下心臓手術の最前線
    中村喜次(東京女子医科大学 心臓血管外科、千葉西総合病院 心臓血管外科)

シンポジウム「ロボット手術の最前線」13:00~15:00

高機能版スマート治療室(Hyper SCOT)におけるロボット手術への展開

村垣善浩1,2、岡本淳1、正宗賢1、田村学1,2、斎藤太一1,2、新田雅之1,2、川俣貴一2
(東京女子医科大学 1先端生命医科学研究所 先端工学外科、2脳神経外科)

 手術エラー原因として、必要な機器や器具が揃ってない37%、組み合わせや設定ミスが43%との報告がある。そこで我々は、滅菌空間を提供する従来手術室と異なり、部屋自体が単体医療機器として治療を遂行するスマート治療室(Smart Cyber Operating Theater: SCOT)を5大学12企業と日本医療機器研究開発機構の支援下で開発中した。
 術中MRI装置含めた基本機器をパッケージ化し、産業用ミドルウェアORiNにより手術室の全機器をネットワーク化(OpeLiNK)する。可視化したデータを統合表示し術中意思決定を支援し、AI化とロボット化による精密誘導治療を目標としている。パッケージ化することでリスクを低減し、ネットワーク化によりデータの時間同期と入出力を行い、各種情報を統合することで効果向上を目指す。更に、現実空間と臨床データベースを参照できるサイバー空間をIoT によって結ぶことで、治療結果を予測できるナビゲーションが現実となり、将来はAI予測を可能とする。基本版Basic SCOTを広島大学に、20機器を接続したStandard SCOTを信州大学に、高機能版hyper SCOTを本学に導入し、3タイプで計100例以上の手術を施行した。ロボット手術台やロボット顕微鏡、手台ロボットのプロトタイプを開発しており、将来国産手術ロボットや集束超音波治療用ロボットが活躍できる手術室にしたい。

泌尿器科領域におけるロボット手術の現状

高木敏男(東京女子医科大学泌尿器科)

ロボット支援手術は腹腔鏡手術の延長である。腹腔鏡手術の開腹手術を超える点として、体の深部存在する臓器に対する良好な視野の提供と、低侵襲性にある。ロボット支援手術はカメラと3本の操作アーム、つまり4本の手を一人の術者が操作することができ、ある程度術者の“思う通り”の手術ができる。さらに、それぞれのアームの操作性が良好であり、切除や縫合を伴う手術に正確性を担保している。このような点が、通常の腹腔鏡手術より優っている点である。ロボット支援手術として泌尿器科領域で保険適応となっている前立腺全摘除術、腎部分切除術、膀胱全摘除術、腎盂形成術、仙骨膣固定術は切除・縫合操作が必要であることから、ロボット支援手術の特長を最大限利用している。それぞれの手術の詳細は以下の通りである。保険点数については令和2年度の診療報酬である。
根治的前立腺全摘-2012年承認
保険点数:開腹 40,180点、腹腔鏡77,430点、ロボット支援95,280点
本邦ではロボットを保有している施設であれば、ほぼ全例をロボット支援手術で行なっている。限局性前立腺癌に対する治療方法は、放射線治療もあるが、ロボット支援手術の普及により、手術治療が増えている傾向がある。ハイリスク症例に対しては、リンパ節郭清を行なっている。
腎部分切除術-2016年承認
保険点数:開腹 42,770点、腹腔鏡 64,720点、ロボット支援 70,730点
T1腎癌(7cm以下の限局性腎癌)に対して保険適応となっている。当院では2019年度に320例施行している。全国的にみると、徐々に広まってはいるが、その適応については技術的な問題により施設によって異なるのが実情である。
根治的膀胱全摘除術-2018年承認
保険点数(回腸または結腸導管を利用して尿路変更を行うもの):開腹 107,800点、腹腔鏡 117,790点、ロボット支援 腹腔鏡と同じ点数
保険点数は腹腔鏡手術と同様である。ロボットを保有する病院の多くはロボット支援手術を行なっている。リンパ節郭清を伴う手術がほとんどである。尿路再建(回腸導管、代用膀胱)は、ロボット支援で体腔内(ICUD)、小切開にて体腔外(ECUFD)で行うかは施設によって異なる。
腎盂形成術-2020年承認
保険点数:開腹 33,120点、腹腔鏡 51,600点、ロボット支援 腹腔鏡と同じ
腎盂尿管移行部狭窄症に対して行われる手術である。悪性腫瘍と比較すると希な手術である。
仙骨固定術-2020年承認
保険点数:開腹 28,210点、腹腔鏡 48,240点、ロボット支援 腹腔鏡と同じ
子宮脱などの骨盤臓器脱に対する手術である。

海外では、泌尿器科領域の手術の多くがロボット支援手術で行われている。本邦においてもさらに適応が広がることが予測される。但し、保険点数については腹腔鏡手術から増額されることは難しいと思われる。

本邦における産婦人科領域でのロボット支援下手術の現状

舟本 寛(東京女子医科大学産婦人科)

 ロボット支援下手術は高解像度3Dによる立体視、カメラや鉗子のブレ防止機能、さらには多関節機能を利用した自由度の高い鉗子操作のため、婦人科悪性腫瘍に対するリンパ節郭清術などの精微な手術に有効である。現在、婦人科領域においては子宮筋腫などの良性疾患に対する子宮全摘術、初期子宮体癌に対する子宮悪性腫瘍手術、骨盤臓器脱に対する仙骨・膣固定術に対して保険適応がある。これらの手術の導入・実施にあたっては、日本産科婦人科学会の指針を遵守し、施設登録を行わなければならない。今後はその特性を利用し、子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術や子宮体癌に対する傍大動脈リンパ節郭清術など高難度手術にも応用され、適応範囲が拡大されることが期待される。しかし、開腹術や腹腔鏡手術にはない特有の合併症も存在する。ロボット支援下手術を安全に実施するためには、万一に備えて起こるべき偶発症を想定し、日頃よりそれらの対処法に精通し、十分なトレーニングをしておくことが必要である。

呼吸器外科ロボット手術の現状

神崎正人(東京女子医科大学 呼吸器外科)

本邦における呼吸器外科ロボット手術(RATS)は、2018年4月に肺悪性腫瘍、悪性縦隔腫瘍、良性縦隔腫瘍に対する手術が保険適応となった。RATSが長らく普及しなかった要因として、保険適応でなかったこと、呼吸器外科は切除手術で再建等の手技が少ない、胸腔内、縦隔は血流に富む血管が多い、手術操作の範囲が広いなどである。一方、開胸術、胸腔鏡下手術(VATS)など従来の術式と比較し、根治性、安全性は同等で、VATSに比べラーニングカーブが短いなどの報告があり、保険適応後、国内での呼吸器外科RATSは約3000例と急増した。さらに、今年度から新たな術式が追加収載され、症例数はさらに増加すると予想されている。
 当科では、胸腔鏡下手術(VATS)を長らく行なってきたが、VATSでの視野/手術器械操作の制限から、これらの問題点を改善すべくいち早くRATSを導入した。臨床研究として、2012年より縦隔腫瘍、2013年より原発性肺癌にRATSを行ってきた。VATSで切除可能と判断した症例は、全てRATSの適応とし拡大を図った。2020年2月までに、肺悪性腫瘍136例、縦隔腫瘍74例、肺悪性腫瘍+縦隔腫瘍4例と計214例にRATSを施行した。術式移行は縦隔腫瘍1例のみ、重篤な合併症はなく、RATSの手術成績は概ね良好であった。
 ロボット支援装置は既存技術に対する優位性が期待される医療技術であり、ロボット支援装置を活用した結果、RATSの有用性が実証されると思われる。

ダヴィンチ消化器

宇山一朗(藤田医科大学総合消化器外科)

 消化器外科領域におけるロボット支援手術は、2018年4月に食道切除、胃切除、直腸切除、さらに2020年4月には膵臓切除が保険収載となり、普及しつつある。しかし、厳格な施設・術者基準の設定、学会指針の遵守など、保険診療を行うにあたって多くの制限がある。
我々は、2009年より消化器疾患に対するロボット支援手術を開始し、現在までに1000例以上(胃切除:541、食道切除:127、大腸切除:224、肝臓切除:100、膵切除:45)施行してきたので、その手技と成績を供覧する。ロボット支援手術導入の目的は、“ 合併症の少ない、minimal access surgery ”をあらゆる領域において再現性をもって行うことにあった。胃癌においては、2014年から2017年にかけて施行した先進医療Bによるロボット手術と腹腔鏡手術の比較検討臨床試験において、統計学的有意差をもってロボット手術が合併症を減少させることを証明した。食道癌手術においても、自験例では術後反回神経麻痺はロボット手術において有意に減少した。多くの論文により、術後合併症、とくに膵液瘻、腹腔内膿瘍、肺炎など感染性合併症が癌手術の予後を悪化させることが示唆されている。よって、ロボット支援手術にて術後感染性合併症を軽減させることにより、癌治療の予後向上につながる可能性がある。

僧帽弁形成におけるロボット支援下手術の初期成績

中村喜次(東京女子医科大学 心臓血管外科、千葉西総合病院 心臓血管外科)

僧帽弁形成におけるロボット支援下手術の導入は1998年に最初の報告がされているが、その後、手技の煩雑性、高コストという理由で敬遠された時代が続いた。近年になり、泌尿器科領域を中心として、その有効性が認められ、かつロボットの改良が進んだことで、心臓外科領域でも再注目されるようになり、2018年4月にはロボット支援下僧帽弁形成術(RMVP)が保険収載された。しかしながらRMVPは人工心肺+心停止下という特殊な環境下での縫合を多用した再建手術であり、他領域のロボット支援下手術と異なる複雑性が存在する。本発表では我々が経験したRMVPの初期連続100例の手術成績、問題点を共有し議論する。

初期100例は平均年齢66歳。男性48例であった。導入の6例は1症例ごとに倫理委員会の審査・承認を受けた。またRMVPに参加する心臓外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学士でカンファレンスとレビューを行い、慎重に導入を進めた。手術死亡はなかったが、MRの再発による再手術が1例あった。その他の重篤な合併症はなく導入期成績としては良好であった。ただし通常の右小開胸MVPに比較すると心停止時間が延長しており、狭小のワーキングポートからの器械や糸針の出し入れに時間を要したことが原因と考えられた。

(まとめ)RMVPの導入期には心停止時間の延長があり注意を要するが、慎重な対応とチームエフォートにより初期100例の成績は良好であった。

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