学術集会・講演会

第84回東京女子医科大学学会総会

第84回東京女子医科大学学会総会
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日時:2018年9月29日(土曜日)13時10分~16時
会場:東京女子医科大学 弥生記念講堂
総合司会:(副会長)清水 京子

*参加者には日本医師会生涯教育参加証(2単位)を交付いたします。

総会 13時15分~13時30分

挨拶(会長)吉岡 俊正
庶務報告(庶務担当幹事)内田 啓子
会計報告(会計担当幹事)杉下 智彦

平成30年度吉岡博人記念総合医学研究奨励賞授与式 13時30分~13時40分

シンポジウム「ここまで来た!心臓血管外科治療の最前線」 13時50分~16時

座長:新浪 博(東京女子医科大学医学部心臓血管外科学 教授・講座主任)

  1. 重症心不全のFuturability
    澤 芳樹(大阪大学大学院心臓血管外科 教授)
  2. 植込型補助人工心臓治療の最前線
    山崎 健二(北海道循環器病院先進医療研究所 所長)
  3. 心臓移植の贈り物
    布田 伸一(東京女子医科大学大学院重症心不全制御学分野 教授)
  4. 低侵襲カテーテル治療の最前線 ―TAVIの現状と未来―
    鳥飼 慶(獨協医科大学埼玉医療センター心臓血管外科 准教授)
  5. ロボット支援心臓手術
    下川 智樹(帝京大学医学部心臓血管外科 主任教授)

シンポジウム「ここまで来た!心臓血管外科治療の最前線」

1.重症心不全のFuturability

 澤 芳樹(大阪大学大学院心臓血管外科 教授)

 循環器医療の進歩にかかわらず、重症心不全に対する治療体系は未だ確立されていない。我々は、心臓移植、人工心臓そして再生医療の発展と普及にむけて種々の研究及び臨床を推進し、あらゆる重症心不全患者に応じた普遍的な治療法を確立してきた。心臓移植は、脳死心臓移植第一例目を当科で1999年2月に実施以後、症例数がなかなか増えない中、2011年7月の脳死法案が改正された。以後、ようやく症例数は年間50例前後と増加しつつあるが、未だ解消し得ないドナー不足に対して引き続き社会的活動が重要である。補助人工心臓(LVAD)は、とくに近年の小型化された植込型LVADの各機種による治療成績の向上が著しい。心臓移植の普及が未だ難しい中、LVADが重症心不全治療の中心的役割を果たすべく、本邦初の永久使用目的(DT)の高齢者LVASを行いDT治療の治験を推進している。心筋再生治療法では、自己骨格筋芽細胞シート移植を発明するとともに、その心筋再生治療効果を実験的に証明し、これまで50例を越える重症心不全患者に移植し、企業治験もすでに終了し実用化の段階に入っている。また現在、iPS細胞由来心筋細胞を用いた再生医療法の開発も、レギュラトリーサイエンスを構築しながら開発していく形で進んでおり、世界に先駆けて移植医療に代わる心筋再生治療の実現もそう遠くない。
 このように重症心不全患者に対して、植込型補助人工心臓や心臓移植はもとより細胞を使って心機能を改善しうる心筋再生治療法を確立しつつあり、将来の展開が期待される。

2.植込型補助人工心臓治療の最前線

 山崎 健二(北海道循環器病院先進医療研究所 所長)

 米国では年間約3000例の新規植込みがあるが、LVAD適応はBTT25.7%、BTC 27.9%、DT 45.4%と心臓移植を前提としないDestination Therapy 目的が最も多い治療カテゴリとなっている。適応別生存率は、BTT: 1年84.7%、2年76.7%、DT: 1年76.6%、2年64.3%と約10%程度DTで劣っていた。磁気浮上型遠心ポンプHeartMate IIIの多施設治験 MOMENTUM 3 の植込み結果が報告され、6ヶ月時点で生存率92%、有害事象は出血38%、感染症36%、脳神経障害12%、右心不全10%であったが、装置故障、デバイス血栓症、溶血は無かった。
本邦においては総計700例を超える植込型LVADが装着された。1年生存率93%、2年生存率89%と良好な成績を上げている。HeartMate IIを用いたDT治験も進行中である。また小型化されたEVAHEART II が薬事承認・臨床導入され、Wedge thrombusを根絶する新たなチップレス インフローカニューラも承認審査中である。小型遠心ポンプであるHVADも近々承認の見込みである。
 VAD治療においては、感染症、心不全、装置故障、デバイス血栓、溶血、不整脈、他臓器不全、脳神経障害、等従来の合併症の他、消化管出血、大動脈弁逆流のように連続流LVAD特有の合併症が問題となっている。これらの有害事象の改善が、補助人工心臓の真の普及、DT治療の本格的導入を前に求められている。

3.心臓移植の贈り物

 布田 伸一(東京女子医科大学大学院重症心不全制御学分野 教授)

 1967年に南アフリカ共和国で心臓移植がヒトで初めて行われてから昨年12月で50年を迎えた。当初の成績は惨憺たるものであり、心臓移植実施が激しく非難された時期もあったが、スタンフォード大学のシャムウェイ医師を中心に弛まぬ努力の結果、今日の心臓移植の興隆がもたらされた。そこには大きく寄与した三事項があるが、第一は今野草二博士(東京女子医科大学心臓血管外科)が開発した心内膜心筋生検法である。この鉗子にて心筋組織の採取が可能になり、拒絶反応の病理組織診断基準がスタンフォード大学のビリンガム博士により作成された。そして免疫抑制薬であるシクロスポリンが1980年代に開発、使用されるようになり、治療法が確立してきた。わが国では欧米に遅れること約30年の2010年に改正臓器移植法が施行され、今では年間60例前後の心臓移植が行われている。
 心臓移植により、移植前の長年に亘る心不全状態から良好なQOLが得られるが、そのQOLを維持するためには免疫抑制下の感染症はじめ全身管理が重要であり、そのための他分野、多職種との協調ある管理体制が必要となる。
 心臓移植の発展は、医学面では移植以外の様々な分野に大きく寄与しているばかりでなく、21世紀の総合的な医療体制づくりのきっかけにもなっている。現在、心臓移植実施例の10倍以上の600人を超える方々が待機中であるが、一人でも多くの重症心不全の方々がドナーからの贈り物を受容でき、健康な毎日を過ごせるような医療体制が望まれる。
 心臓移植の発展は、今後の医療そのものの試金石になる。

4.低侵襲カテーテル治療の最前線 ―TAVIの現状と未来―

 鳥飼 慶(獨協医科大学埼玉医療センター心臓血管外科 准教授)

高齢化がすすむ先進諸国において、医療の現場でも患者への負担が少ない低侵襲治療の必要性が論じられてきた。加齢とともに発症の増加をみる大動脈弁狭窄症は症状発現後予後不良な疾患として知られるが、年齢や合併症を理由に開心術の適応が困難であった患者に対する低侵襲治療としてTAVI (経カテーテル的大動脈弁植込み術、別名TAVR)が登場した。種々のrandomized controlled studyによりその有効性および安全性のエビデンスが示され、世界的に急速に普及することとなった。その後、適応の拡大がすすみ、中等度リスクの患者や二尖弁、また弁置換術後生体弁機能不全の患者でもその有効性が示されるようになった。
国内では2013年にバルーン拡張型のTAVIデバイスが保険償還され、その後自己拡張型デバイスも市場に参入した。TAVI関連学会協議会が認定する実施施設においてのみTAVIは施行可能で、2018年7月8日現在、その施設数は141となっている。国内でも徐々に普及がすすみ、2017年のTAVI実施数は5000件を超えた。これは全大動脈弁手術数の30%に相当する。
導入当初は術中合併症や脳神経系合併症、弁周囲逆流等が課題としてあげられていたTAVIだが、イメージングの進歩、デバイスの進化、learning curveなどの影響でそれらは解決の方向に向かった。一方、依然残された課題として、弁の耐久性、血栓弁、刺激伝導系障害が挙げられる。また、比較的高額な治療であることから費用対効果の面からもTAVIの“価値”が評価されようとしている。
カテーテル治療の余波は大動脈弁のみならず、他の心臓弁にも広がりを見せている。今、弁膜症の治療体系は大きな変革期を迎えている。

5.ロボット支援心臓手術

 下川 智樹(帝京大学医学部心臓血管外科 主任教授)

 本邦では内視鏡手術支援ロボットであるda Vinciが、2009年11月に薬事承認され、2012年に前立腺悪性腫瘍手術、2016年に腎癌・腎部分切除術が保険収載された。さらに今春より保険適応も大きく拡充された。現在、日本でのda Vinciの導入は300台を超え、更には国産を含めて様々な手術支援ロボットが開発されている。今後、ロボット支援手術は熟練外科医が行う精密で確実な手術へ普及していく可能性がある。
 このような背景の中、米国ではロボット支援心臓手術数が増加している。近年の報告では、その術式として冠状動脈バイパス術、僧帽弁形成術、心房中隔欠損症がほとんどであり、多くは単施設からのロボット手術の安全性と実行性を論じたものであるが、1000例をこえる報告や遠隔成績の報告も散見されるようになっている。
 今回、これまでのロボット手術のエビデンスと自験例について報告する。

図
STSデータベースからのロボット支援冠状動脈バイパス術(RA-CABG)の年次推移 Ann Thorac Surg 2016;102:140–6

図
米国におけるロボット支援僧帽弁手術の年次推移
Ann Cardiothorac Surg 2017;6(1):1-8

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