学術集会・講演会

第359回東京女子医科大学学会例会

第359回東京女子医科大学学会例会
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日時 2019年2月23日(土曜日) 13:00~17:40
会場 総合外来センター5階 大会議室

開会の辞 司会(幹事)佐藤麻子
挨  拶   (会長)吉岡俊正

平成30年度研究奨励賞授与式 13:02~13:15

選考経過報告(学長)吉岡俊正
山川寿子研究奨励賞(第31回)

  1. ステロイド依存性頻回再発型微小変化型ネフローゼ症候群における
    小児期発症と成人期発症によるリツキシマブ治療効果の相違についての検討
    (腎臓内科学)中谷裕子

佐竹高子研究奨励賞(第27回)

  1. 1型糖尿病における遺伝子多型の研究
    (糖尿病・代謝内科)三浦順之助

中山恒明研究奨励賞(第5回)

  1. 糖鎖分子マーカーを用いた胆道癌の高感度診断システムの開発
    (消化器外科学)樋口亮太

平成29年度受賞者研究発表 13:15~14:00

座長(幹事)清水京子
佐竹高子研究奨励賞(第26回)

  1. 新規血管新生抑制因子LYPD1の機能部位の同定
    (先端生命医科学研究所) 青木信奈子
  2. 血中uromodulinの臨床的意義に関する研究
    (八千代医療センター腎臓内科) 臼井亮介

中山恒明研究奨励賞(第4回)

  1. ハイブリッド型人工神経による新しい顔面神経再建手術法の確立
    (形成外科学)松峯 元・亀井 航・櫻井裕之

一般演題 14:00~14:10

座長(幹事)清水京子

  1. 肛門周囲Paget病の1例
    (東医療センター外科) 水口知子・山田泰史・横溝 肇・成高義彦

<休  憩>

第13回研修医症例報告会 14:20~17:40

〔発表7分、質疑応答3分/○発表者、◎指導医〕

司会(幹事)小森万希子

開始の挨拶(卒後臨床研修センター長)川名正敏

Block 1 14:25~15:15
座長(東医療センター外科)岡山幸代・(小児外科)山口隆介

  1. Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)様組織変化を示した胃癌肺転移の1例
    1八千代医療センター卒後臨床研修センター、2病理診断科、3呼吸器外科、4消化器・一般外科、 5脳神経内科、6画像診断・核医学科)
    ○原田桜子1・◎山本智子2・神崎正人3・山本雅一4・北川一夫5・坂井修二6・長嶋洋治2
  2. 反復する誤嚥性肺炎の精査で過去の気管切開に関連すると考えられた気管食道瘻の1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3形成外科、4外科)
    ○横山智穂1・◎岡村圭子2・西山圭子2・市川順子2・小髙光晴2・中尾 崇3・島川 武4・小森万希子2
  3. 巨大脾腫を契機に診断に至ったサルコイドーシスの1例
    1卒後臨床研修センター、2消化器内科)
    ○山梨裕希1・◎児玉和久2・田原純子2
  4. 胆管癌異時性S状結腸転移の1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2外科、3検査科)
    ○秋元佑介1・◎山田泰史2・横溝 肇2・中安靖代2・久原浩太郎2・浅香晋一2・碓井健文2・塩澤俊一2・吉松和彦2・島川 武2・勝部隆男2・加藤博之3・成高義彦2
  5. 胸部大動脈瘤食道穿破と鑑別を要した食道潰瘍の1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2救急医療科)
    ○内山まり子1・◎庄古知久2

Block 2 15:15~16:15
座長(東医療センター内科)石川元直・(八千代医療センター小児救急科)武藤順子

  1. 腸閉塞によるショックで救急搬送され、救命できなかった乳児症例1剖検
    (八千代医療センター 1卒後臨床研修センター、2小児救急科、3小児科、4小児外科)
    ○川口朋子1・◎武藤順子2・濱田洋通3・幸地克憲4・高梨潤一3
  2. セルトラリン(SSRI)が奏功した重度の月経前不快気分障害(PMDD)の1症例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2精神科)
    ○川口憲治1・◎大坪天平2
  3. 左手を挙げ笑いだす10歳男児
    1卒後臨床研修センター、2小児科)
    ○村田紗貴子1・◎西川愛子2・伊藤 進2・佐藤友哉2・石黒久美子2・平澤恭子2・永田 智2
  4. 低カリウムが唯一の所見であった甲状腺中毒症性周期性四肢麻痺の1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2内科)
    ○久保田哲嗣1・マーシャル祥子2・◎石川元直2・佐倉 宏2
  5. 18病日に冠動脈病変を認めた川崎病の1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2小児科)
    ○米川知里1・◎本間 哲2・長谷川茉莉2・志田洋子2・杉原茂孝2
  6. 左副腎皮質髄質混合腫瘍の1例
    1卒後臨床研修センター、2乳腺・内分泌外科、3病理診断科)
    ○大石 愛1・◎吉田有策2・羽二生賢人2・安川ちひろ2・永井絵林2・藤本美樹子2・尾身葉子2・堀内喜代美2・山本智子3・長嶋洋治3・岡本高宏2

<休  憩>

Block 3 16:25~17:25
座長(東医療センター産婦人科)長野浩明・(血液内科)吉永健太郎

  1. 術前の子宮動脈塞栓術が有効であった、巨大頸部筋腫の1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2産婦人科、3放射線科)
    ○松崎貴成1・◎一戸晶元2・髙瀬瑠璃子1・古川由理2・立花康成2・赤澤宗俊2・橋本和法2・長野浩明2・村岡光恵2・髙木耕一郎2・片田芳明3・鈴木 滋3
  2. 肝細胞癌術前に偶発的に発見された左房粘液腫の1例
    1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3病理診断科、4消化器・一般外科、5心臓血管外科)
    ○尹 星恵1・◎齋藤千紘2・鈴木 敦2・新井光太郎2・板垣裕子3・小寺由人4・齋藤 聡5・新浪博士5・山本雅一4・萩原誠久2
  3. 妊娠中の腎盂腎炎に対して尿管ステントを留置した1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2救急医療科)
    ○濱崎樹里亜1・◎庄古知久2
  4. 著明な体重減少のみを主訴に受診し、複数の診断モダリティーを使用し診断し得た左房粘液腫の1例
    1卒後臨床研修センター、2循環器内科)
    ○紀川朋子1・◎服部英敏2・菊池規子2・鈴木 敦2・志賀 剛2・萩原誠久2
  5. 多診療科の集学的加療により治療し得たフルニエ壊疽の1症例
    1卒後臨床研修センター、2救命救急センター、3消化器・一般外科、4形成外科、5泌尿器科)
    ○若生 翔1・齋藤眞樹子2・◎久保田英2・武田宗和2・矢口有乃2・大森亜紀子3・小寺由人3・櫻井裕之4・池田敬至5
  6. 肝尾状葉に浸潤した副腎皮質癌に対し外科的切除を施行した1例
    (東医療センター 1卒後臨床研修センター、2泌尿器科)
    ○本間俊佑1・◎近藤恒徳2

総評
(卒後臨床研修センター長)川名正敏

ベストプレゼンテーション賞表彰式

記念撮影

〔平成29年度佐竹高子研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.新規血管新生抑制因子LYPD1の機能部位の同定
(先端生命医科学研究所)青木信奈子

 心臓を構成する細胞として最多細胞数を占める線維芽細胞は、拡張障害や線維化などへの関連が示されているがいまだその特性についての理解は十分でない。
発表者は組織工学的に心筋組織を構築する過程で心臓線維芽細胞が血管内皮細胞のネットワーク形成を抑制することを新たに見出し、その責任分子として新規血管新生抑制因子LY6/PLAUR domain containing 1(LYPD1)を同定した。LYPD1はglycosylphosphatidylinositol (GPI)アンカー型の膜結合型タンパク質として主に脳神経系での発現が報告され、ノックアウトマウスを用いた研究では不安行動との関連が報告されているが直接的に血管新生に関連した報告は殆どないことに加え、その機能や相互作用分子などに関する詳細な報告は現状極めて少ない。心臓線維芽細胞が血管新生抑制的に働くことやその責任分子がLYPD1であるというコンセプトは発表者によって初めて提唱されたものである。そこでLYPD1による血管新生抑制の作用機序を明らかにすることは、心臓線維芽細胞の特性を理解し、心臓間質の関わる生理、病理的現象を解明する新たなアプローチとなると考え、LYPD1の機能部位の同定を目的としてLYPD1変異型リコンビナントタンパク質を調整し、その血管新生抑制効果を評価する研究を行った。

〔平成29年度中山恒明研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.ハイブリッド型人工神経による新しい顔面神経再建手術法の確立
(形成外科学)松峯 元・亀井 航・櫻井裕之

Bell麻痺に代表される顔面神経不全麻痺は突然健常人に発症し、さらに急性期に保存的治療にて寛解の得られない症例は重篤な後遺障害を残して罹患者のquality of life (QOL)を著しく損なう。この顔面神経不全麻痺に対して、顔面神経本幹と舌下神経との間に自家神経を用いて端側縫合にて架橋するinterpositonal jump graft(IPJG)は既に確立された術式として諸家により多くの報告がなされている。しかしながら移植片として腓腹神経などの自家移植神経の採取が必須であり、ドナー部に生じる神経障害、術後瘢痕等の不可避な合併症が生じる。一方、本邦では2013年より生体吸収性の神経再生誘導チューブが臨床使用可能となっているが、顔面神経不全麻痺症例に対して自家神経移植の代わりに生体吸収性チューブを用いたIPJGを施行したとの報告は未だ存在しない。我々の研究チームでは過去にラット顔面神経不全麻痺モデルを用いて顔面(舌下)神経-人工神経誘導管間の端側神経縫合法を確立し、神経再生誘導チューブによるIPJGが動物実験レベルで可能であることを世界で初めて報告した。そして今回、現在臨床使用されているポリグリコール酸(PGA)製生体分解性チューブと皮下脂肪組織を酵素処理、継代培養して作成した脂肪由来幹細胞(ADSCs)を組み合わせた「ADSCsハイブリッド型人工神経」を用いたIPJGをラット顔面神経不全麻痺モデルで行った。またその治療効果を自家神経移植によるIPJGと組織学的、生理学的に比較検討し、臨床応用可能な顔面神経不全麻痺治療となり得るか否かを評価した。

〔一般演題〕

肛門周囲Paget病の1例
(東医療センター外科)水口知子・山田泰史・横溝 肇・成高義彦

〔はじめに〕Paget病は大型の淡明細胞であるPaget細胞が表皮内で増殖する疾患である。発生部位により乳房Paget病と乳房外Paget病に分けられる。一方、Paget病と臨床症状や病理組織所見が酷似したPaget現象がある。直腸肛門癌など皮膚に隣接する内臓癌が皮膚に進展し、表皮内癌の所見を呈するものである。今回、Paget現象と鑑別困難であった肛門周囲Paget病の1例を経験したので文献的考察を加え報告する。
〔症例〕67歳女性。2017年より肛門周囲の掻痒感を伴う発疹を自覚していた。近医で外用剤療法を受けていたが改善せず、2018年7月に当院皮膚科を受診した。皮膚生検を施行し分布や免疫染色の結果から内臓癌によるPaget現象が疑われ、2018年8月に手術治療目的に当科を紹介受診した。術前精査で隣接臓器癌は認めなかったが、直腸診で3時方向に小さな腫瘤を触れ、直腸肛門癌からのPaget現象と考え2018年9月に腹腔鏡下直腸切断術を施行した。切除標本内に明らかな内臓癌はなく、病理学的診断は肛門周囲Paget病であった。
〔結語〕Paget病とPaget現象の鑑別は困難であり、治療法の選択および予後が著しく異なるため、診断において両者の鑑別は重要である。術前に免疫組織化学検査を含めた十分な検査をする必要があると考えられる。今後、鑑別方法としてさらに精度の高い検査が望まれる。

〔第13回研修医症例報告会〕

1.Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)様組織変化を示した胃癌肺転移の1例
1八千代医療センター卒後臨床研修センター、2病理診断科、3呼吸器外科、4消化器・一般外科、5脳神経内科、6画像診断・核医学科)
○原田桜子1・◎山本智子2・神崎正人3・山本雅一4・北川一夫5・坂井修二6・長嶋洋治2

〔はじめに〕Pulmonary tumor thrombotic microangiopathy(PTTM)は、肺転移した癌細胞由来の液性因子により、肺血管に内膜肥厚、内腔狭小化が生じ、急性肺高血圧や呼吸不全を呈する病態である。今回は、転移巣周囲にPTTM様変化を生じた胃癌症例を提示する。〔症例〕50歳代の男性。胃癌に対し、(X-2)年11月に胃亜全摘を施行された(pT3N0MX)。X年4月のCTで右肺上葉結節影を認め、呼吸器外科へ紹介となった。CT上、右肺S3内側に13x12x10mm大の、不整形充実性結節を認めた。原発または転移性肺癌を疑われ、X年8月に右肺上葉切除が施行された。〔病理学的所見〕切除肺には灰白色充実性腫瘍を認めた。組織学的には、低分化腺癌で、既往標本との組織所見が一致したため、胃癌転移と診断した。周囲肺血管には、内膜肥厚や癌細胞を含む血栓性閉塞が見られた。癌細胞はtissue factor(TF)陽性で、PTTM様変化をきたしていると考えた。〔考案〕PTTMは急激な経過を取る致死的な病態で、胃癌の転移例に多い。胃癌患者で、急性呼吸不全症状を見た際は鑑別に含めるべきである。報告の多くは病理解剖例で、生前診断例は少ない。発生には、癌に由来するvascular endothelial growth factor(VEGF)やTFが関与する。本症例でも癌細胞でTFの発現を確認した。本症例では、PTTM様所見が転移近傍で見られたため、今後広範なPTTMの発症が憂慮される。臨床経過には細心の注意を払う必要がある。

2.反復する誤嚥性肺炎の精査で過去の気管切開に関連すると考えられた気管食道瘻の1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3形成外科、4外科)
○横山智穂1・◎岡村圭子2・西山圭子2・市川順子2・小髙光晴2・中尾 崇3・島川 武4・小森万希子2

〔背景〕気管食道瘻は食道癌など悪性腫瘍の合併症の1つであるが、稀に気管切開管理による局所の壊死から瘻孔が形成されることもある。今回、過去の気管切開の合併症と考えられる食道気管瘻を経験したので報告する。
〔症例〕47歳男性。7年前に他院で肺結核合併気胸に対して右肺部分切除術が施行された。術後気管切開を要したが呼吸状態は改善し、気管切開口は閉鎖された。閉鎖後も水分摂取でむせ込みがあり誤嚥性肺炎を繰り返していた。内視鏡にて食道入口部より17cmの気管膜様部に3mm大の瘻孔を認めた。今回瘻孔部食道閉鎖と大胸筋皮弁を用いた気管再建術が予定された。
〔手術〕麻酔はプロポフォールとロクロニウムで迅速導入を行い、シングルルーメンチューブを声門下まで挿管後、気管支ファイバー下にチューブのカフを瘻孔より末梢側に留置した。気管再建中はカフ損傷を回避するために気管支ファイバーによる観察を行った。その後は安定した経過で手術を終了し、術後は気管充填部の安静のためにICUにて2日間人工呼吸管理を行った。
〔考察〕気管チューブ、気管切開カニューレが原因とされる気管食道瘻では、危険因子としてカフ圧が重要視される。他院での人工呼吸管理であったので、詳細は不明であったが、瘻孔部位と病歴により以前の人工呼吸管理に関連して形成されたと考えられた。人工呼吸管理の際には気管食道瘻のリスクも念頭に置き、カフ圧にも注意する必要がある。

3.巨大脾腫を契機に診断に至ったサルコイドーシスの1例
1卒後臨床研修センター、2消化器内科)
○山梨裕希1・◎児玉和久2・田原純子2

〔症例〕22歳女性。〔主訴〕腹部膨満感。〔既往歴〕なし。〔家族歴〕父:ホジキンリンパ腫、多発性硬化症。〔現病歴〕19歳時より認めていた無月経、体重減少、倦怠感に対し、近医で施行した腹部エコー検査にて肝脾腫を指摘されていた。前医にて骨髄生検、positron emission tomography-computed tomography(PET-CT)、脾生検を施行したが、いずれも確定診断には至らなかった。門脈圧亢進症に伴う脾腫・脾機能亢進の可能性を指摘され、201X年X月に精査目的に当科入院となった。〔経過〕身体所見で肝腫大および腹部正中を越える巨大脾腫を触知した。左前頸部に無痛性、可動性良好な弾性軟の1cm大のリンパ節を触知し、両側の前腕・下腿に茶褐色のまだらな色素沈着を認めた。血液検査で汎血球減少と可溶性interleukin-2(IL-2)受容体5990 U/Lと高値を認め、胸部CTでは両肺にびまん性の粒状影を認めた。非特異的な身体症状とCT所見、可溶性IL-2受容体の異常高値よりサルコイドーシスを疑いangiotensin converting enzyme(ACE)、リゾチーム、gamma-globlin(ɤ-Glb)を測定したところいずれも高値であった。呼吸機能検査では拘束性障害も認めており、肝生検において境界明瞭で多核巨細胞を含む類上皮肉芽腫を門脈域と肝実質に認めた。以上より本症例をサルコイドーシスと診断した。一般的にサルコイドーシスにおける脾腫の割合は30%程であるが、肋骨下4cmを超える脾腫を呈する割合は4.7%との報告があり稀な病態である。今回、最大径24cmと著明な脾腫を契機にサルコイドーシスの診断に至った1例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。

4.胆管癌異時性S状結腸転移の1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2外科、3検査科)
○秋元佑介1・◎山田泰史2・横溝 肇2・中安靖代2・久原浩太郎2・浅香晋一2・碓井健文2・塩澤俊一2・吉松和彦2・島川 武2・勝部隆男2・加藤博之3・成高義彦2

〔緒言〕胆管癌が大腸転移をきたし治癒切除が可能となることは稀である。今回われわれは、胆管癌術後3年目に発症した胆管癌異時性S状結腸転移に対し、治癒切除を行った1例を経験したので報告する。〔症例〕53歳男性。2年10か月前に閉塞性黄疸を主訴とし当院受診。腹部造影CT(computed tomography)検査より下部胆管癌による閉塞性黄疸の診断となった。経皮胆管ドレナージによる減黄後に亜全胃温存膵頭十二指腸切除術および門脈合併切除再建術を施行した。病理診断では遠位胆管癌 tubular adenocarcinoma, moderately diff, T3aN0M0 StageⅡAであった。術後にテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムによる補助化学療法を1年間施行し経過観察していた。約2か月前から血清CA19-9値の上昇がみられるも、明らかな再発所見はなかった。今回、下腹部痛で当院受診。腹部造影CT検査を施行したところS状結腸に壁肥厚を認め、下部消化管内視鏡検査ではS状結腸に全周性の狭窄があるものの腫瘍は確認できなかった。血液検査所見ではCA19-9値40.2 U/mlと腫瘍マーカー値の上昇がみられた。狭窄が高度のため手術の方針とし、S状結腸切除術およびD3郭清を施行した。術後は合併症なく第9病日に退院した. 病理診断では粘膜から発生した病変ではなく腸管壁内に腺癌が増殖しており, 免疫染色でCX7+, CK20+, CDX2-のため遠位胆管癌異時性S状結腸転移の診断となった. 〔結語〕胆管癌異時性S状結腸転移の1例を経験した. 胆管癌の大腸転移は報告も少なく, 若干の考察を加え報告する.

5.胸部大動脈瘤食道穿破と鑑別を要した食道潰瘍の1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2救急医療科)
○内山まり子1・◎庄古知久2

〔背景〕胸部大動脈瘤による食道圧迫で生じた潰瘍は大動脈食道瘻を形成する可能性があり、瘤が食道に穿破した場合は大量出血により救命困難な状況になる。今回、胸部大動脈瘤に接した食道潰瘍からの出血のため、吐血ショックを生じた症例を経験したので報告する。〔症例〕68歳、男性。既往歴:高血圧、脳梗塞、心房細動にてクロピドグレル内服中。現病歴:当院来院約2週間前から暗赤色の逆流物が口腔内に見られるようになった。来院前日に職場で意識を失い救急病院に搬送された。胸部痛はなかった。下顎挫創と迷走神経反射の診断で帰宅となった。深夜に黒赤色の吐血が大量にあり、血圧48 mmHgのショック状態で当院3次救急搬送となった。造影CT(computed tomography)検査にて胸部下行大動脈に食道を著明に圧排する径6.5 cm嚢状動脈瘤を認めた。食道と接する瘤内には血腫が生じていた。上部消化管内視鏡検査では胸部中部食道に外側からの圧排による隆起とその中央に浅い潰瘍病変を認めた。潰瘍底からは血液の浸み出しがあり活動性出血は見られなかった。出血部位に対してトロンビン液とアルギン酸Na粉末を散布した。胸部下行大動脈瘤に対してはステント内挿術(TEVAR)にて治療をした。完全静脈栄養管理で絶食とし潰瘍の治療を行った。〔考察〕胸部大動脈瘤の食道圧排部位に一致した食道潰瘍からの出血であり、大動脈瘤の食道穿破との鑑別、食道抜去の追加治療が必要性か問題となった。CT画像所見と臨床所見から食道潰瘍と診断した。

6.腸閉塞によるショックで救急搬送され、救命できなかった乳児症例1剖検
(八千代医療センター 1卒後臨床研修センター、2小児救急科、3小児科、4小児外科)
○川口朋子1・◎武藤順子2・濱田洋通3・幸地克憲4・高梨潤一3

〔症例〕9か月の女児。生来健康で出生歴、便秘歴ともに異常のない児。数日前から嘔気、腹痛があり、近医で経過観察していたが、当日呼びかけに反応がなく当院外来に救急搬送された。けいれん発作と判断して初療したが、その後心肺停止となった。蘇生中、徐々に腹部膨満をきたし、昇圧剤の使用や腸管内圧減圧目的の腸管穿刺を試行するも心拍再開せず死亡した。臨床診断は複雑性腸閉塞とし、原因としてHirschsprung's diseaseを疑い、腸管神経節細胞の評価などを目的に剖検を行った。〔剖検所見〕下行結腸下端でcaliber changeを認めたが、腸管捻転、バンド形成はなく、S状結腸にやや硬めの便塊を認めた。回腸、結腸粘膜は複雑性腸閉塞を示唆するような、うっ血、びらん、出血があった。〔病理学的所見〕直腸粘膜下の神経節細胞は数・大きさともに異常所見なく、Hirschsprung’s diseaseは否定的であった。〔考察〕生来健康な児の複雑性腸閉塞を経験した。死因の病態としては、便秘による腸閉塞で腸管内圧が上昇することで下大静脈が圧迫され閉塞性ショックに陥ったこと、bacterial translocationが起き敗血症性ショックをきたしたことが考えられる。加えて、初療時は呼吸循環の安定を最優先に加療すべきであった。診断がつかない場合もバイタルサインに留意し呼吸循環の安定化を第一に行うべきであるということを再認識させられる1例であり、教訓になる症例であった。

7.セルトラリン(SSRI)が奏功した重度の月経前不快気分障害(PMDD)の1症例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2精神科)
○川口憲治1・◎大坪天平2

月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder: PMDD)は、月経前症候群(premenstrual syndrome: PMS)の中の情動障害(極端な抑うつ、著しい情緒不安定など)が前景に立った重症型であり、月経前約2週間(黄体期)から始まり月経開始とともに軽快する精神身体症候群として有月経女性の3~8%に存在すると考えられている。今回、 セルトラリン(SSRI)が奏功した重度のPMDDと考えられる1症例を経験したので文献的考察を加え報告する。〔症例〕22歳、未婚・未経妊。主訴は月経前に繰り返す気分の落ち込み。同症状は以前(X-4年)にもあり、婦人科よりPMSの診断を受け卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤の投与により軽快したため休薬していた(X-2年)。X-1年7月頃より症状が再燃したため同剤を再開したが、症状改善に乏しく不正出血も出現したため内服を中止した。月経前7~10日から著しい気分の落ち込み、集中力の低下、易怒性、倦怠感、睡眠障害があるが月経開始後2日以内に軽快する。現在大学生であり試験勉強に支障があるとしてX年10月当院受診となった。精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)のPMDD診断基準よりPMDDと診断し、SSRIを黄体期のみに使用する間欠投与を開始したところ症状は大幅に改善した。現在も外来通院中で経過は良好である。PMDDは比較的新しい疾患概念であり、その発病には、月単位の性ホルモンの変動や、その過感受性はもちろん、ストレスとなる様々なライフイベントが関連することが指摘されている。また、反復性の大うつ病、双極性障害、境界性パーソナリティ障害などの併存が関連することも明らかとなっている。それらを念頭に入れた薬物治療を行うことが臨床上有用であると考えられる。

8.左手を挙げ笑いだす10歳男児
1卒後臨床研修センター、2小児科)
○村田紗貴子1・◎西川愛子2・伊藤 進2・佐藤友哉2・石黒久美子2・平澤恭子2・永田 智2

10歳男児。既往歴なし。2018年8月より、覚醒時に左上肢を挙上させ外反、右上肢は下方伸展させ内反、顔はにやにや笑う発作性症状が出現した。持続時間は数秒、発作時の意識は保たれていた。9月中旬から就寝前に発作頻度が増加したため前医を受診し、特異な発作性症状、発症する時間帯が比較的限定されていること、発作による外傷がないことから心因発作も疑われた。9月下旬に当院を初診した。体格は年齢相当、多動傾向ではあったが、明らかな神経学的所見の異常は認めなかった。原因不明の発作性症状に対して、てんかん発作、発作性ジストニア、心因発作、転換性障害などを鑑別に挙げ、精査を行った。長時間ビデオ脳波モニタリング検査で、発作間欠期にはてんかん波は認めなかったが、左上肢を伸展させ、それに続く笑う症状に一致して、右優位両側正中前頭中心部にてんかん性異常波を認めた。頭部MRI(magnetic resonance imaging)検査では異常所見を認めなかった。発作性症状と脳波所見から、右補足運動野を焦点とした前頭葉てんかん、非対称性強直発作と診断し、カルバマゼピン内服を開始したところ、発作は徐々に抑制された。前頭葉てんかんにおいて、非対称性強直発作は特徴的な発作型の1つであるが、その特異な発作型よりてんかん発作と診断されないこともある。原因不明の発作性症状の鑑別診断には詳細な問診、ビデオ脳波モニタリング検査は有用であり、文献的考察を加えて報告する。

9.低カリウムが唯一の所見であった甲状腺中毒症性周期性四肢麻痺の1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2内科)
○久保田哲嗣1・マーシャル祥子2・◎石川元直2・佐倉 宏2

〔症例〕28歳、男性。〔主訴〕四肢の脱力。〔現病歴〕起床時より両下肢の脱力を自覚していた。その後数時間の経過で脱力の増強および疼痛を認め、起立不能となる。同日当院救急搬送された。採血でK 2.0 mmol/lであり、病歴より低カリウム性周期性四肢麻痺が疑われたため精査加療目的で当科入院とした。〔臨床経過〕採血で低カリウムとCK高値以外に異常所見はなかった。心電図上QT延長とV2-V6でU波を認めた。点滴でK 30 mmol/l/日の補充を行い、来院14時間後にはK 5.1 mmol/lとなり下肢筋力は回復し歩行可能となった。入院後提出した甲状腺刺激ホルモン(TSH)および遊離サイイロキシン(FT4)が0.002 μU/mL以下、2.5 ng/dLであったが自覚症状および身体所見で甲状腺中毒症の所見はなかった。周期性四肢麻痺の発作予防のため、βブロッカーの内服を行い発作なく安定し第9病日に退院した。甲状腺エコーで実質の不均一があり、甲状腺シンチグラフィーで結節状高集積を認め、中毒性多結節性甲状腺腫疑いで治療目的に他院紹介とした。〔考察〕甲状腺中毒症を合併する低カリウム性周期性四肢麻痺はアジア人男性で比較的多いとされているが、甲状腺中毒症の症状を認めることが多い。本症例は甲状腺中毒症の症状がなく、周期性四肢麻痺の発症誘引も確認されなかった。低カリウム性周期性四肢麻痺の診断時には、甲状腺中毒症の症状を伴わない場合でも甲状腺機能の検査は必須である。

10.18病日に冠動脈病変を認めた川崎病の1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2小児科)
○米川知里1・◎本間 哲2・長谷川茉莉2・志田洋子2・杉原茂孝2

急性期の臨床症状が軽快した後に、遅れて冠動脈病変の出現を認めた川崎病の症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。症例は7か月の男児である。川崎病定型例のため6病日に入院加療となった。免疫グロブリン静注療法(IVIG)不応例予測スコア(群馬)は4点であった。ただちにIVIG(2g/㎏)とフルルビプロフェンによる標準的治療を開始した。IVIGは26時間かけて投与した。投与開始後、一旦は解熱したが、IVIG終了時に再発熱が認められ、IVIG不応例として9病日にIVIG再投与とプレドニゾロン静注、アセチルサリチル酸内服を併用した。10病日に解熱し主要症状は消褪した。12病日の心エコー図は正常範囲だった。その後も急性期症状の再発は認めず全身状態は良好であったが、回復期の所見である膜様落屑は認めなかった。18病日の心エコー図で両側冠動脈の拡大が初めて確認された。21病日に冠動脈の拡大が進展していたため抗凝固療法を開始し、発熱と炎症反応の軽度上昇もあり、IVIGの3回目の投与を行った。その後は再発熱なくプレドニゾロンは漸減中止し、32病日に退院した。退院時に左右冠動脈の拡大性変化が残存した(冠動脈内径Zスコアは、RCA#1:4.01SD、LMCA#5:3.66SD、LAD#6:7.02SD、LCX#11:1.86SD)。川崎病の冠動脈病変は、急性期症状が遷延した場合にのみ出現するのではないため、注意して経過を観察する必要がある。

11.左副腎皮質髄質混合腫瘍の1例
1卒後臨床研修センター、2乳腺・内分泌外科、3病理診断科)
○大石 愛1・◎吉田有策2・羽二生賢人2・安川ちひろ2・永井絵林2・藤本美樹子2・尾身葉子2・堀内喜代美2・山本智子3・長嶋洋治3・岡本高宏2

カテコールアミン、コルチゾール(f)、アルドステロン(Ald)の産生が疑われた左副腎皮質髄質混合腫瘍の1 例を経験したので報告する。70歳代、女性。3年前に左副腎の偶発腫瘍を指摘された。高血圧を認めるようになったことから精査を行ったところ、蓄尿メタネフリン(MN)値とノルメタネフリン ( NMN )値 は2.15、0.66 mg/dayと高値を示した。CT 検査では左副腎に造影される径26mm の腫瘤を認め、I-123MIBG シンチグラフィーで腫瘤に一致した集積を認めたことから褐色細胞腫と診断した。併せて行った副腎皮質系の検査ではACTH、f の基礎値はそれぞれ21.7 pg/mL、8.6 μg/ml と基準値内であったが、dexamethasone 1mg 内服後のf は8.6 μg/ml と抑制されず、23 時のf は5.2 μg/ml と日内変動も消失していた。血漿Ald 濃度は170 pg/mL、血漿レニン(PRA) 活性は0.3 ng/ml とアルドステロン症も疑われ、カプトプリル負荷試験は陽性であった。また、褐色細胞腫の存在は確定的であったため、他の機能確認試験や副腎静脈サンプリングはリスクがあると判断して施行しなかった。手術前のα 遮断薬(ドキサゾシンメシル酸塩)を12mg/日まで増量し、腹腔鏡下に左副腎摘出術を施行した。手術当日はハイドロコートン 300mg を投与して以後漸減し、第7 病日の迅速ACTH 試験で正常反応を確認のうえ、中止した。病理組織診断は副腎皮質髄質混合腫瘍であり、術後のMN、f、Ald はいずれも正常化した。

12.術前の子宮動脈塞栓術が有効であった、巨大頸部筋腫の1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2産婦人科、3放射線科)
○松崎貴成1・◎一戸晶元2・髙瀬瑠璃子1・古川由理2・立花康成2・赤澤宗俊2・橋本和法2・長野浩明2・村岡光恵2・髙木耕一郎2・片田芳明3・鈴木 滋3

〔緒言〕妊孕性温存の必要がない有症状の子宮筋腫に対する治療には、手術療法としての子宮全摘術、薬物療法、子宮動脈塞栓術(UAE)等がある。今回、出血性ショックで救急搬送された巨大頸部筋腫例にUAEを行い、安全に手術を施行し得た1例を報告する。〔症例〕46歳1妊1産、多量の性器出血を認めて近医産婦人科に救急搬送された。ショックバイタルとなり、当科へ救急搬送された。現症:体温35.7℃、血圧110/64mmHg、心拍数97bpm、呼吸数24回/分、腟鏡診では筋腫分娩は確認されず、外子宮口から多量の持続出血を認めた。採血でHb3.5g/dLと高度の貧血を認めた。ヨードホルムガーゼによる子宮内タンポナーデを行い、RBC(red blood cells) 8単位、FFP(fresh frozen plasma) 8単位を輸血した。骨盤MRI検査でT2強調像にて子宮体部前壁の粘膜下から子宮頸部筋層内に至る境界は明瞭で均一な低信号の腫瘤が骨盤腔を占め、頸部筋腫が疑われた。子宮出血はなおも持続していたため、同日、UAEを施行し、その3日後に腹式単純子宮全摘術および両側卵管摘出術を施行した。術中出血量は130gと少量であった。摘出標本の重量は686gで、病理診断はleiomyomaであった。〔結語〕難易度が高い巨大頸部筋腫の腹式単純子宮全摘術を施行する前にUAEを行うことで、早期に全身状態を安定させ、術中の出血リスクを軽減することが可能となり、安全に手術を完遂できた症例であった。若干の文献的考察を加えて報告する。

13.肝細胞癌術前に偶発的に発見された左房粘液腫の1例
1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3病理診断科、4消化器・一般外科、5心臓血管外科)
○尹 星恵1・◎齋藤千紘2・鈴木 敦2・新井光太郎2・板垣裕子3・小寺由人4・齋藤 聡5・新浪博士5・山本雅一4・萩原誠久2

75歳男性。健診で肝腫瘍を指摘され、当院消化器外科受診となった。造影CTで前区域に多発する最大41mmの肝細胞癌と診断され、手術適応と判断された。また、同時に施行した胸部CTで左房内腫瘤を認め、当科紹介受診となった。経胸壁心エコーでは、左房内心房中隔に付着する内部エコー不均一な大きさ26×21mmの腫瘤を認めた。経食道心エコーでは、腫瘤は有茎性で可動性を有し、内部に栄養血管を認めた。腫瘤による左室流入障害は認めず、心不全症状や塞栓症状は認めなかった。心臓腫瘍、血栓などが鑑別に挙がり、左房粘液腫の可能性が高く、塞栓症の危険もあるため本来は可及的速やかな外科的手術による摘出が考慮されたが、多発肝細胞癌の病期進行によっては今後手術困難になる可能性も示唆された。消化器外科、心臓血管外科、当科で協議の結果、心臓手術を先行させることとし、準緊急で左房内腫瘍切除術を施行した。術後の病理診断より粘液腫と診断された。術後、洞機能不全を認め、一時的ペースメーカーによる管理を必要としたが、その後洞調律に復帰し、経過良好のため術後22日に退院となった。肝細胞癌の著しい病期の進行は認めず、術後約3か月時に肝前区域切除術を施行した。肝癌術後1年経過時点ではいずれも再発は認めていない。担癌患者で偶発的に発見された心臓腫瘍に対して外科手術を施行し良好に経過している症例を経験したため報告する。

14.妊娠中の腎盂腎炎に対して尿管ステントを留置した1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2救急医療科)
○濱崎樹里亜1・◎庄古知久2

〔背景〕妊娠が進み子宮が骨盤腔を超えると膀胱や尿管が圧迫され腎盂腎炎をきたしやすくなる。これにはプロゲステロンの分泌が増大し尿路系平滑筋が弛緩する作用も影響する。妊娠中期に発症した急性腎盂腎炎による敗血症に対し、尿管ステント留置の治療で急激に改善した1例を経験したので報告する。〔症例〕特に既往のない妊娠16週の18歳女性。〔現病歴〕来院1週間前より右腰部痛が出現し嘔気のため食事摂取困難となり近医へ救急搬送され、その後当院3次救急に転送となった。排尿時痛と右腰部痛、腹部超音波検査で右腎盂の拡大、炎症反応の上昇を認め急性腎盂腎炎の診断で同日入院となった。〔入院後経過〕Ceftriaxone(CTRX) 1g/dayで加療開始したものの、入院後3日間は40.0℃の発熱が持続し炎症反応も改善なく、尿量も1000ml/day程度と少量となり敗血症を呈した。Magnetic resonance imaging(MRI)検査の結果、胎児成長に伴い子宮が増大、後屈し右尿管が閉塞されて腎盂腎炎に至っていると診断。泌尿器科が尿管ステントを挿入し左側臥位にて治療した。翌日より速やかに解熱し尿量も回復、炎症反応も改善した。〔考察〕妊娠の進行に伴う子宮の右回旋による傾斜と、妊娠中に怒張した右側卵巣静脈の圧迫による右尿管拡張のため、妊娠時の腎盂腎炎は右側に生じやすい。重症な腎盂腎炎により敗血症状態や高熱が続く場合は早産のリスク増大や胎児成長への影響が懸念されるため、MRI検査で診断し早期に尿管ステント留置することが必要である。

15.著明な体重減少のみを主訴に受診し、複数の診断モダリティーを使用し診断し得た左房粘液腫の1例
1卒後臨床研修センター、2循環器内科)
○紀川朋子1・◎服部英敏2・菊池規子2・鈴木 敦2・志賀 剛2・萩原誠久2

症例は70歳女性。主訴は体重減少。1年間で10kgの体重減少を主訴に前医受診。上下部消化管内視鏡検査や胸腹部造影CT(computed tomography)では異常所見なく、採血上IL-6上昇、心エコーで左房内に17×15mmの腫瘍を認め、左房粘液腫が疑われ、精査加療目的に当科紹介となった。悪性疾患否定のためPET(positron emission tomography)を施行したが、悪性疾患をはじめ炎症性疾患を疑う所見は認めなかった。また、心臓MRI(magnetic resonance imaging)の結果は粘液腫と考えられた。体重減少が持続しており、摘出の方針となり心臓血管外科にて腫瘍摘出術を行った。摘出標本の病理診断は粘液腫で、摘出後、IL-6は正常化、体重も増加傾向となっている。
左房粘液腫は体重減少のみを主訴に診断されることは稀である。悪性疾患の否定を複数のモダリティーで行った上で摘出した症例は少なく、ここに報告する。

16.多診療科の集学的加療により治療し得たフルニエ壊疽の1症例
1卒後臨床研修センター、2救命救急センター、3消化器・一般外科、4形成外科、5泌尿器科)
○若生 翔1・齋藤眞樹子2・◎久保田英2・武田宗和2・矢口有乃2・大森亜紀子3・小寺由人3・櫻井裕之4・池田敬至5

症例は73歳男性。来院1か月前より右鼠径部痛を認めていた。同部位の疼痛により体動困難となり、当院救急外来に救急搬送された。来院時、意識清明、体温38.7℃、脈拍96/分、血圧137/90 mmHg、呼吸数14/分であり、qSOFA(quick sequential organ failure assessment score) 0点であった。右下腹部の発赤と握雪感、陰嚢は黒色変化と自壊排膿があり、右上後腸骨棘に発赤、びらん、網状皮斑を認めた。白血球数245×103/μL、CRP 29 mg/dL、プロカルシトニン12.64 ng/mLであった。CT(computed tomography)検査では左右臀部、陰嚢から腹壁までの軟部組織の腫脹とガスを認めた。フルニエ壊疽との診断で、泌尿器科と形成外科合同で緊急デブリードマンと右精巣摘除術を施行。感染に対し広域スペクトラム抗菌薬3剤併用とし、エンドトキシン吸着療法を施行。連日創部洗浄を行い、術後13日目より陰圧閉鎖療法を行った。直腸診で肛門からBorrmann3型-4型病変を触知し、直腸生検にて肛門管癌の診断に至った。術後24日目に消化器外科にて人工肛門造設術、形成外科により皮弁再建術を施行した。
フルニエ壊疽は中高年の男性に好発し、急速に進行する壊死性筋膜炎である。診断治療が進歩した今日でさえ予後不良な疾患であり、死亡率は約16%である。今回、糖尿病、悪性腫瘍、色素異常症の基礎疾患を持ち、フルニエ壊疽を発症したが、多診療科の集学的加療により救命し得た1例を経験したので報告する。

17.肝尾状葉に浸潤した副腎皮質癌に対し外科的切除を施行した1例
(東医療センター 1卒後臨床研修センター、2泌尿器科)
○本間俊佑1・◎近藤恒徳2

背景 副腎皮質癌は1〜2人/100万人/年と非常に稀な癌であり、Stage Ⅰでも5年生存率は66%と予後は不良である。しかし経過には個人差が大きく、特に完全切除が行えたものでは長期生存が期待できることもある。今回、肝尾状葉に浸潤した副腎皮質癌に対し、外科的に完全切除し得た症例を経験したので文献的考察を含め報告する。
症例 37歳男性。2017年1月頃より繰り返す高熱、体重減少を自覚し、同年9月に近医受診した。右副腎に24 cmの腫瘤、肝尾状葉に8 mmの腫瘤を認め、針生検により副腎皮質癌、肝尾状葉転移と診断された。同年11月よりミトタン(内分泌療法)内服、EDP(エトポシド+ドキソルビシン+シスプラチン)療法4クールを施行し副腎内部の壊死像、肝転移巣の縮小を認めた。この段階で外科的切除が検討されたが腫瘍の下大静脈浸潤が疑われ、前医では対応困難との判断で手術加療目的に2018年4月当科紹介受診となった。4月27日開腹右副腎腫瘍切除術および肝尾状葉切除術を施行した。腫瘍の明らかな下大静脈浸潤はなく、腎臓上極との間も剥離可能であり、腎臓を温存し副腎のみを摘出した。肝尾状葉切除は消化器外科によって施行された。手術時間は4時間59分、出血量1382 mlであった。病理検査所見では副腎皮質癌・肝尾状葉転移、断端は陰性であった。術後経過は良好で第8病日に退院となった。その後、前医に戻り再発予防目的にミトタン内服が再開され、現在まで再発なく経過している。

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