学術集会・講演会

第357回東京女子医科大学学会例会

第357回東京女子医科大学学会例会
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日時:平成30年2月24日(土)13時~17時40分
会場:総合外来センター5階 大会議室

開会の辞 司会(幹事)橋本悦子
挨拶     (会長)吉岡俊正

平成29年度研究奨励賞授与式 13時2分~13時15分

選考経過報告(学長)吉岡俊正
佐竹高子研究奨励賞(第26回)

  1. 新規血管新生抑制因子LYPD1の機能部位の同定
    (先端生命医科学研究所助教)青木信奈子
  2. 血中uromodulinの臨床的意義に関する研究
    (八千代医療センター腎臓内科准講師)臼井亮介

中山恒明研究奨励賞(第4回)

  1. ハイブリッド型人工神経による新しい顔面神経再建手術法の確立
    (形成外科学講師)松峯 元

平成28年度受賞者研究発表 13時15分~14時15分

座長(幹事)橋本悦子
山川寿子研究奨励賞(第29回)

  1. 日本人2型糖尿病患者の個別化治療におけるインスリン療法に関する研究
    (内科学(第三))大屋純子

佐竹高子研究奨励賞(第25回)

  1. ヘルパーT細胞の分化を運命づける樹状細胞の機能分子の探索
    (微生物学免疫学)大森深雪

中山恒明研究奨励賞(第3回)

  1. 転移前ニッチ形成を標的とした新規がん治療への展開
    (薬理学)出口敦子・丸 義朗
  2. 再生医療のための移植用心筋組織内残存未分化iPS細胞除去手法開発
    (先端生命医科学研究所、循環器内科学)松浦勝久

一般演題 14時15~14時25分

座長(幹事)橋本悦子

  1. 一般内科初診外来における愁訴と傷病名に関する多施設共同研究
    (保健管理センター学生健康管理室、女性医療人キャリア形成センター女性医師再研修部門)横田仁子

第12回研修医症例報告会 14時40分~

〔発表7分、質疑応答3分/○発表者、◎指導医〕

開始の挨拶(卒後臨床研修センター長)川名正敏

Block 1 14時45分~15時40分
 座長(産婦人科)中林 章・(救命センター)武田宗和

  1. 全身麻酔導入後、高度の徐脈を来し、手術が延期になった1症例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3内科)
     ○杉山瑞恵1・◎市川順子2・諏訪邦明3・西山圭子2・小高光晴2・小森万希子2
  2. 左腎摘出後、嘔気・頭痛が続いたvon Hippel-Lindau病の1例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2脳神経外科)
     ○中尾千恵1・◎糟谷英俊2・山崎 圭2
  3. 交通外傷による右心耳破裂の1救命例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2救急医療科)
     ○川口憲治1・◎庄古知久2・出口善純2
  4. 胃癌による穿孔が疑われたが、最終的にS状結腸癌にて手術を行った1例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2外科)
     ○横川英之1・水口知子1・下嶋優紀夫2・宮澤美季2・◎山口健太郎2・碓井健文2・横溝 肇2・塩澤俊一2・島川 武2・勝部隆男2・成高義彦2
  5. 副腎皮質癌と鑑別を要し、胃原発神経鞘腫に類似した組織像を持つ後腹膜神経鞘腫の1例
    1卒後臨床研修センター、2乳腺・内分泌外科、3病理診断科)
     ○林 怡嫻1・羽二生賢人2・永井絵林2・◎尾身葉子2・堀内喜代美2・山本智子3・岡本高宏2

Block 2 15時40分~16時25分
 座長(小児科)平澤恭子・(東医療センター小児科)本間 哲

  1. 右大腿蜂窩織炎で受診し、詳細な問診から早期診断に至った小児1型糖尿病の1例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2小児科)
     ○高橋侑利1・◎星加将吾2・安田祐希2・松岡尚史2・杉原茂孝2
  2. 右膝の腫脹を主訴に入院し、関節型若年性特発性関節炎と診断した1歳女児例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2小児科、3膠原病リウマチ痛風センター)
     ○岩本隼輔1・◎東 範彦2・星加将吾2・根木瑠美子2・安田祐希2・宮前多佳子3・杉原茂孝2
  3. 退形成性上衣腫の多発転移に急性リンパ性白血病を合併した女児例
    1卒後臨床研修センター、2小児科、3脳神経外科)
     ○岡野まり子1・◎金子裕貴2・鶴田敏久2・千葉幸英2・木原祐希2・藍原康雄3・林 基弘3・川俣貴一3・永田 智2
  4. 乳児期後期に進行を認めた出血後水頭症2例
    1卒後臨床研修センター、2小児科)
     ○森島直子1・◎佐藤友哉2・竹下暁子2・平澤恭子2・永田 智2

Block 3 16時35分~17時25分
 座長(循環器内科)志賀 剛・(血液内科)吉永健太郎

  1. ニボルマブ関連大腸炎に対してステロイドが有効であった転移性腎細胞癌の1例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2泌尿器科)
     ○木下翔太郎1・◎近藤恒徳2
  2. 胃ランタン沈着症-6例の臨床病理学的検討
    1卒後臨床研修センター、2病理診断科、3消化器内視鏡科)
     ○小林茉弥1・◎長嶋洋治2・◎中村真一3
  3. 周術期低血糖が遷延した1型糖尿病の症例
    1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3糖尿病内科、4乳腺・内分泌外科)
     ○林 怡嫻1・深田智子2・井出理沙3・神尾孝子4・◎尾﨑 眞2・◎野村 実2
  4. 顔面神経麻痺の治療後に多発脳神経障害を繰り返し、診断に至った特発性肥厚性硬膜炎の1例
    (東医療センター1卒後臨床研修センター、2内科、3耳鼻咽喉科)
     ○鈴木綾子1・興野 藍2・金子富美恵3・◎西村芳子2・柴田興一2・佐倉 宏2
  5. Multi-detector computed tomography(MDCT)を用いた稀少疾患であるcalcified amorphous tumor(CAT)の定量的評価
    1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3画像診断・核医学科、4病理学(第二))
     ○福島 博1・◎関口治樹2・鈴木 敦2・芹澤直紀2・新井光太郎2・芦原京美2・村崎かがり2・萩原誠久2・福島賢慈3・長尾充展3・宇都健太4

初期臨床研修現況報告
(循環器内科准教授)志賀 剛

ベストプレゼンテーション賞表彰式

閉会の辞
司会(幹事)小森万希子

〔平成28年度山川寿子研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.日本人2型糖尿病患者の個別化治療におけるインスリン療法に関する研究
 (内科学(第三))大屋純子

 〔目的〕基礎インスリンをデグルデク(IDeg)かグラルギン300U/ml(IGla300)に変更6か月後の有効性を比較した。〔対象と方法〕対象は当院で2015年11月~2017年5月に基礎インスリンをIDegまたはIGla300に変更された2型糖尿病患者151名。変更前後のHbA1c、BMI、インスリン変化量をIDeg群とIGla300群で比較した。〔結果〕変更前に比し変更後のHbA1cは有意に低下、BMIは不変で、いずれの変化量も両群で差はなかった。基礎インスリン投与量は変更前後で不変だが、IDeg群ではIGla300群に比べ追加インスリン量が有意に減少していた(IDeg-0.1 vs IGla300 0.7u、p<0.05)。〔結論〕IDeg、IGla300はいずれも体重を増加させずHbA1cを改善する傾向があった。以上の結果をふまえ、持効型溶解インスリン(IDegまたはIGla300)に、①ナトリウム・グルコース共役輸送体阻害薬、②グルカゴン様ペプチド1受容体作動薬、③超速効型インスリン1回打ち、の3パターンの併用療法による48週間の介入試験を行い、有効性と安全性について比較する予定である。現在、①7例、②6例、③6例が登録されている。

〔平成28年度佐竹高子研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.ヘルパーT細胞の分化を運命づける樹状細胞の機能分子の探索
 (微生物学免疫学教室)大森深雪

 近年増加傾向にあるアレルギー疾患はTh2サイトカインの産生亢進を共通の特徴とする。Th2サイトカインの産生はalarminである表皮由来サイトカインによって誘導されることが知られているが、そのメカニズムには未知な点が多い。そこで私たちは、Th2サイトカインの主たる産生細胞であるヘルパーT(Th)細胞に主眼をおいて、「特定の樹状細胞サブセットがTh2サイトカインを産生するTh(Th2)細胞への分化を調節する」という仮説のもとに、alarminのひとつであるthymic stromal lymphopoietin(TSLP)に応答する樹状細胞の同定に着手した。その結果、3つの樹状細胞サブセットが皮膚でのTSLP発現に応答してリンパ節に集積することを発見した。次に、セルソーターによりそれぞれの樹状細胞サブセットを純化し、ナイーヴTh細胞と抗原存在下で一定期間共培養した。そのTh細胞を回収し、再活性化した際の機能性サイトカインの産生能を評価した。その結果、共培養に用いた樹状細胞サブセットによって、Th2サイトカインおよびinterleukin(IL)-9を高産生する細胞、IL-10を高産生する細胞、IL-17Aを高産生する細胞が分化し、特定の樹状細胞サブセットがTh細胞の分化調節に関与している可能性が示唆された。以上の結果を受けて、Th2サイトカインおよびIL-9を高産生させる樹状細胞サブセットについて、TSLPで刺激した時に発現するシグナル分子の網羅的解析を行ったので、その結果について報告する。

〔平成28年度中山恒明研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.転移前ニッチ形成を標的とした新規がん治療への展開
 (薬理学)出口敦子・丸 義朗

 がんによる死因の多くは、がんが原発巣から離脱した後、遠隔臓器への転移によるものと考えられている。このような転移性がんに対する治療が臨床上重要な課題となっているが、現在までに、完治が望める有効な化学療法は確立されていない。そのため、転移性がんにおける早期予測や治療法の開発は急務である。
 がんの進展には、がん細胞自身の遺伝子レベル上の変異に加えて、炎症に惹起されたがん周辺部に存在する微小環境(ニッチ)の存在が明らかとなった。薬理学教室では、がんが原発巣にとどまっている段階において、将来の転移先となる肺にToll様受容体4(TLR4)内因性リガンドを介した転移前ニッチ形成を誘導していることを見出しており(Hiratsuka et al: Nat Commun, 2013)、がん周辺部に存在するがん微小環境に加えて、がんを呼び寄せる環境(転移前微小環境)の存在が示唆されるようになった。さらに我々は、TLR4阻害薬の肺転移に対する効果を担がんマウスにおいて検証したところ、TLR4内因性リガンドS100A8阻害は骨髄由来免疫抑制細胞や腫瘍随伴マクロファージの機能を抑制し、転移前肺ニッチ形成と腫瘍内における腫瘍血管新生を抑制することから抗腫瘍作用を発揮していることを見いだした(Deguchi et al: Oncogene, 2015)。
 転移能を持つがんは、ある程度の臓器指向性を持つことが知られており、転移を促進する転移前ニッチ形成にも、組織特異性が存在する可能性が考えられる。我々は、これまでに、大腸癌転移前肝ニッチ形成に関わる候補因子をcDNAマイクロアレイ法により同定した。マイクロアレイ解析により候補因子としてヒットした分子は肺転移モデルマウスで得られた転移前肺ニッチ形成候補因子とは相異なる因子が多く含まれていたが、S100A8は共通因子としてヒットしたことから、S100A8が全身性転移に関与している可能性が示唆された。本研究では、S100A8中和抗体が転移先臓器に依存せず、転移抑制可能であるかを明らかにするため、大腸癌同所移植モデルマウスを用いてS100A8中和抗体による肝転移に対する効果と抑制機序を検証した。

2.再生医療のための移植用心筋組織内残存未分化iPS細胞除去手法開発
 (先端生命医科学研究所、循環器内科)松浦勝久

 種々の心疾患に伴う障害を端緒とし、心臓組織のリモデリングと引き続いて生じる心不全の要因として、心臓の自己再生能の著しい欠如が負うところは大きく、根本的治療には障害によって失われた心筋組織を補塡する手段が必要となる。近年、従来の薬物治療や外科的治療では根治できない難治性疾患、組織・臓器の傷害や欠損に対する新たな治療法として「再生医療」が世界的に注目されている。特に人工多能性幹(iPS)細胞など治療に使用する細胞ソースの開発および組織工学を用いた再生組織構築技術の発展が、再生医療への期待をさらに高いものとしている。我々は、東京女子医科大学発の3次元浮遊攪拌懸濁培養技術および細胞シート技術により、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の量産化およびヒト心筋組織構築に成功し、心筋組織置換型の再生医療開発および疾患・創薬研究への応用を進めている。一方、無限増殖能と多分化能を有する多能性幹細胞の利用においては、移植組織内の未分化細胞の残存に伴う腫瘍化リスクが懸念される。特に109スケールの移植細胞数が想定される心筋再生医療では、未分化細胞の残存リスクも相対的に大きくなるため、より効率的な残存未分化細胞の除去手法が不可欠である。最近我々は、メチオニン非含有培地、42℃培養、cyclin-dependent kinase(CDK)1/9阻害剤がそれぞれ異なる機序でiPS細胞のアポトーシスを誘導する一方、心筋細胞機能には影響しないことを見出し、心筋組織内残存iPS細胞除去への応用を進めている。これらの手法の組み合わせやin vitroでのiPS細胞残存リスク評価系およびモデル動物への移植における造腫瘍性試験により、腫瘍化リスクのない心筋再生医療の実現に寄与できるものと考える。

〔一般演題〕

1.一般内科初診外来における愁訴と傷病名に関する多施設共同研究
 (保健管理センター学生健康管理室、女性医療人キャリア形成センター女性医師再研修部門)横田仁子

 〔目的〕離職した女性医師が地域医療施設で一般内科初診外来を担当するために最初に修得すべき頻度の多い愁訴、傷病名の実態調査を行う。〔方法〕問診票と診療録による観察的縦断研究。東京近郊の無床~400床規模の医療施設(千葉県立東金病院、聖隷横浜病院、東葛病院、埼玉協同病院、北本共済病院、あさお診療所)に、2011年6月15日~7月15日(夏期)、2012年1月16日~2月15日(冬期)の間に内科外来初診者で問診票を記入した4,424名を対象とした。愁訴はICPC-2でコード化した。4施設で診療録(冬期1,573例)を用いてその後の転帰、傷病名(ICD-10分類)の追跡調査を行った。〔結果〕夏冬ともに、病院の規模に関わりなく主訴では頻度順に、咳、発熱、咽頭の症状、頭痛の順で多かった。傷病名では呼吸器疾患、消化器疾患、循環器疾患、感染症・寄生虫症の順で多かった。再診なしは45%であった。〔考察〕一般内科初診外来における愁訴に関するデータベースを作成することが出来、追跡調査も4つの施設で行った。頻度の高い愁訴および傷病名は施設によって変わりはなかった。一般内科で復職を希望する女性医師にとって習得すべき愁訴と傷病名が実態調査により明らかになった。

〔第12回研修医症例報告会〕

1.全身麻酔導入後、高度の徐脈を来し、手術が延期になった1症例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3内科)
 ○杉山瑞恵1・◎市川順子2・諏訪邦明3・西山圭子2・小高光晴2・小森万希子2

 〔症例〕43歳男性、身長173cm、体重88kg。急性胆囊炎に対し、腹腔鏡下胆囊摘出術が予定された。既往歴に心房中隔欠損症、35歳時に心不全を伴う僧帽弁逆流症を指摘され僧帽弁形成術、心房中隔欠損閉鎖術が施行された。術前から心不全治療目的にて、β遮断薬、抗アルドステロン拮抗薬、利尿薬が処方され、術後に発作性心房細動になったため、抗凝固薬が導入された。今回、胆囊摘出術の術前にβ遮断薬のみ内服した。入室時の心拍数(HR)48bpm、血圧122/74mmHgであった。プロポフォール100mg、セボフルラン2.0%、フェンタニル100μg、レミフェンタニル0.3μg/kg/分、ロクロニウム60mgで麻酔を導入し、気管挿管を行った。気管挿管の刺激により一時HR61bpmまで上昇したが、麻酔導入10分後にHR30bpm台前半まで低下し、35分後に5秒間の心静止があった。徐脈に対し、硫酸アトロピン計1mg、エフェドリン計12mgを投与したがHR30bpm台が持続したため、ドブタミンを持続静注しHR70~80bpmまで上昇した。経皮ペーシングを行い、最大強度にしても経胸壁心臓エコー上、ペーシングによる有効な心収縮がみられず、ペーシングが機能しなかったため手術は延期になった。術後にカテコラミン未投与でHR40bpm台の徐脈が継続したため、前回の全身麻酔から5日後に経静脈ペーシング(VVI、HR60bpm)を使用して全身麻酔下で腹腔鏡下胆囊摘出術を行ったが、周術期の循環・呼吸動態に問題はなかった。術後にHR50bpm台の自己脈があったため、経静脈ペーシングは中止、抜去した。〔考察〕麻酔導入後に高度の徐脈に至る原因として、循環器作動薬などの常用薬の影響、麻酔薬自身の副作用、脊椎麻酔、硬膜外麻酔などの影響、循環器疾患の関与などを考えるが、本症例では、継続投与されたβ遮断薬による房室伝導抑制作用と麻酔導入時による薬剤との相互作用で生じたと考えた。房室伝導を亢進させる硫酸アトロピンが無効であったことは、もともとの洞機能不全や2枝ブロック(左脚前枝ブロック、完全右脚ブロック)の存在による影響を考えた。経皮ペーシングも無効であったことは、心肥大や体格の影響を考えた。〔結語〕麻酔導入後に高度徐脈になり、抗コリン薬や交感神経刺激薬、経皮ペーシングが無効であったため手術が延期になり、経静脈ペーシングを用いて手術を行った症例を経験した。

2.左腎摘出後、嘔気・頭痛が続いたvon Hippel-Lindau病の1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2脳神経外科)
 ○中尾千恵1・◎糟谷英俊2・山崎 圭2

 21歳時頭痛精査で小脳血管芽腫が見つかり後頭下開頭にて4か所の腫瘍摘出術を受けた。26歳時、右腎がんの摘出術。その後、小脳腫瘍が大きくなってきたため、27歳で7か所の小脳腫瘍にガンマナイフの照射を受けた。その6か月後、小脳の照射されなかったのう胞性腫瘍が大きくなったため腫瘍摘出術を受けた。35歳で腎がんのため左腎摘出術(複数個あり腎の温存が困難と判断)。その退院前後から、嘔気・頭痛が続いた。退院20日後、脳神経外科の定期検診で、小脳腫瘍の増大が新たに見つかり入院となった。家族歴として父がvon Hippel-Lindau病で、腎がんの頸椎転移で死亡。入院時MRIでは、左小脳から延髄にかけてのう胞が延髄を圧迫、のう胞内小脳正中に13mmの腫瘍を認め、均一に造影された。それ以外に約20か所に造影される5mm以下の腫瘍を認めた。2016年のMRIで、小脳下部にあった当時最も大きかった7mmの腫瘍が、のう胞を伴って増大したと考えられた。腹部CTでは、膵のう胞を認めるが、眼底は異常ない。血液検査所見では、クレアチニンが1.37mg/dlと高値以外に異常は認めなかった。手術は腹臥位とし、後頭下開頭を行い、のう胞を開放し、腫瘍を同定して全摘出した。病理所見は血管芽腫であった。術後9日で、症状改善し退院した。今後は腎がんと小脳血管芽腫の綿密な経過観察と、腫瘍が大きくなった場合にはガンマナイフ治療を行う予定としている。多科にまたがるvon Hippel-Lindau病では、全身の状態をよく理解しておく必要がある。

3.交通外傷による右心耳破裂の1救命例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2救急医療科)
 ○川口憲治1・◎庄古知久2・出口善純2

 〔はじめに〕鈍的心外傷は近年救命例が増えつつあるが、心外傷のなかでも心破裂は来院時にすでに心肺機能停止に近い状態であることが多く、最も重篤かつ致命的な損傷であり、迅速な患者対応と適切な緊急手術でのみ救命することが可能となる。〔症例〕25歳男性。都内で首都高速を運転走行中に単独自損事故を起こし受傷。救急隊現場到着時、収縮期血圧76mmHg、脈拍102回/分のショック状態、JCS II-30の意識障害で当救命救急センターに搬送された。左前胸部に打撲痕あり。初療でのFAST(focused assessment with sonography for trauma)にて心タンポナーデと診断。心窩部より心囊ドレーンを留置し、間欠的に暗赤色の血液を吸引することで血圧を維持させた。造影CT検査にて右心耳破裂と診断。バイタルサインは安定していたので手術室の準備を待って入室。救急医療科医師の執刀にてクラムシェル開胸。心囊切開すると大量の血液が噴出、右心耳に3か所の破裂部を確認しサテンスキー鉗子で把持し止血。それぞれ縫合修復を行い救命に至った。術後経過は良好で、十二誘導心電図も問題なく不整脈も認めなかった。術後4日目にはドレーンを抜去しICUを退室。術後15日目に退院し、後遺症なく社会復帰となった。今回行ったクラムシェル開胸は胸骨縦切開よりも迅速でかつ低侵襲であり、特殊な手術器械も必要としない。重症胸部外傷の出血制御には非常に有効なアプローチ法である。適切な心囊ドレナージと術前CTにて診断し救命し得た症例を経験したため文献的考察を加え報告する。

4.胃癌による穿孔が疑われたが、最終的にS状結腸癌にて手術を行った1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2外科)
 ○横川英之1・水口知子1・下嶋優紀夫2・宮澤美季2・◎山口健太郎2・碓井健文2・横溝 肇2・塩澤俊一2・島川 武2・勝部隆男2・成高義彦2

 〔症例〕83歳男性。陳旧性肺結核、肺線維症にて当院呼吸器外科にてフォローアップされていた。上腹部痛にて救急外来受診。上腹部にfree airを認め上部消化管穿孔の診断で入院。上腹部の圧痛のみで筋性防御なく、絶食および経鼻胃管による減圧で保存的に治療する方針とした。その後症状は改善したため、入院から1週間後に上部消化管内視鏡検査を施行。胃角部小弯に深掘れの潰瘍を認め、襞の集中、癒合を認め3型胃癌が疑われた。また、腫瘍マーカー値もCEAが22.7ng/mlと高値であり、胃癌による穿孔と診断し術前精査を進める方針とした。しかし、胃の病変からは悪性所見が出ずGroup 1の所見であった。腹部CT所見を見直すとS状結腸の壁が肥厚していたため、下部消化管内視鏡検査を施行した結果、S状結腸に1型病変があり、生検でGroup 5が検出された。胃病変は再度内視鏡検査を施行し、生検も行ったが悪性所見なく胃潰瘍の診断であった。後日、S状結腸癌に対してS状結腸切除予定としたが、肺機能が著明に低下していたため、腰椎および硬膜外麻酔での手術方針とし、手術を施行した(手術時間1時間24分)。術後は麻痺性イレウス、誤嚥性肺炎などを併発したが、徐々に回復し無事退院となった。〔結語〕上部消化管穿孔という疾患に目を奪われ、S状結腸癌の発見にやや時間がかかってしまった症例を経験した。広い視野であらゆる可能性を考えた診断が必要であると改めて考えさせられた症例であった。

5.副腎皮質癌と鑑別を要し、胃原発神経鞘腫に類似した組織像を持つ後腹膜神経鞘腫の1例
 (1卒後臨床研修センター、2乳腺・内分泌外科、3病理診断科)
 ○林 怡嫻1・羽二生賢人2・永井絵林2・◎尾身葉子2・堀内喜代美2・山本智子3・岡本高宏2

 後腹膜腫瘍は比較的稀で、しばしば副腎腫瘍との鑑別を要す。今回我々は、副腎皮質癌との鑑別を要し、胃に発生する神経鞘腫に類似した組織像を呈した後腹膜神経鞘腫を経験したので報告する。症例は51歳女性。人間ドックの際に施行した腹部超音波検査で右副腎偶発腫を指摘された。内分泌検査所見上は非機能性腫瘍であった。造影CT検査で、右副腎に5cmの造影効果を伴う石灰化した円形腫瘤を認めた。MRI検査では明らかな脂肪成分は含まれなかった。PET-CT検査でSUVmax8.59と高値であった。画像所見から副腎皮質癌または神経原性腫瘍が疑われ、診断的治療目的に手術をする方針となった。周囲組織への明らかな浸潤は認めなかったため、腹腔鏡下副腎摘出術を行った。術中所見では、副腎との連続性はないようであったが、悪性の可能性を考慮し、副腎も合併切除した。組織学的には、副腎外病変で、S-100陽性の紡錘形細胞が錯綜して増殖し、核分像やKi67陽性細胞が少数であることから、後腹膜原発神経鞘腫と診断された。原発性後腹膜腫瘍の中で神経鞘腫は6.9%と稀である。画像所見は副腎癌と似た特徴を有するため鑑別が重要となる。また本症例の病理所見は被膜を持たず、辺縁にリンパ組織を伴い、これは胃に発生する神経鞘腫の特徴であった。

6.右大腿蜂窩織炎で受診し、詳細な問診から早期診断に至った小児1型糖尿病の1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2小児科)
 ○高橋侑利1・◎星加将吾2・安田祐希2・松岡尚史2・杉原茂孝2

 症例は7歳女児。入院1か月前から伝染性膿痂疹を繰り返していた。X-2日から右大腿後面の疼痛が出現。X-1日に症状増悪し当院救急外来を紹介受診した。右大腿後面に約5cm大の紅斑と少量の排膿を認めた。CRP0.7、WBC9400と軽度上昇のみにて抗菌薬を処方され帰宅した。翌日再診時、全身状態は良好であったが、疼痛増悪し蜂窩織炎の診断で入院となった。入院時の問診で、母親より1か月程前から児の多飲多尿の出現と父親が1型糖尿病であることを聴取した。血糖値476mg/dL、ケトン1.6mmol/Lであり、精査にてHbA1c13.7%、アシドーシスはなし、GAD抗体陽性、Cペプチド0.4ng/mL。1型糖尿病と診断しインスリン療法を開始した。その後CSIIを導入した。蜂窩織炎に関しては切開排膿を行い、培養からはStaphylococcus aureusが検出され、CEZ100mg/kg/dayを約2週間投与し軽快した。初発の小児1型糖尿病では、診断時に糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を発症している率が高い。発症から診断までの時間が重症化に影響する。非典型的主訴で受診する場合は診断が遅れる可能性があり、丁寧な問診が重要である。多飲多尿は90%以上、体重減少は50%が小児1型糖尿病で認められるため問診項目として診断の一助となり得る。今回は詳細な問診から早期診断に至り、DKA発症前に治療を開始することができた。

7.右膝の腫脹を主訴に入院し、関節型若年性特発性関節炎と診断した1歳女児例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2小児科、3膠原病リウマチ痛風センター)
 ○岩本隼輔1・◎東 範彦2・星加将吾2・根木瑠美子2・安田祐希2・宮前多佳子3・杉原茂孝2

 〔緒言〕関節型若年性特発性関節炎(JIA)は、訴えの乏しい年少児では四肢関節の疼痛や腫脹による歩行障害や動作発達の退行が診断の契機となることがある。今回、右膝の腫脹を主訴に関節型JIAと診断した1歳児を経験したため報告する。〔症例〕1歳5か月の女児。1歳時に歩行開始し、成長発達は年齢相当であった。受診の2日前に保育園で跛行を指摘され、近医受診し、右膝関節の腫脹を認めたため当科を紹介受診した。現症:体温36.5度、胸腹部に異常認めず、右優位の膝関節腫脹・膝蓋跳動・伸展制限を認めた、皮膚に発疹・紫斑なし。検査所見:WBC11,900/μl、CRP1.56mg/dl、血沈60分値45mm、FDP17.4μg/ml、D-dimer10.8μg/ml、膝関節X線所見にて異常は認めなかった。入院後経過:安静にて経過観察とした。入院4日目になっても膝関節の腫脹は持続しており、関節型JIAを疑った。リウマトイド因子・抗CCP抗体は陰性であったが、MMP-3が579.5ng/mlと高値であった。入院5日目に施行した膝関節MRIでSTIRにて膝関節に高信号を認めた。入院8日目に膠原病リウマチ痛風センターにて施行した関節エコーにて5関節以上に及ぶ滑膜炎所見を認め、リウマトイド陰性多関節型JIAと診断した。メトトレキサート、プレドニゾロンにて治療を開始した。〔考察・結語〕年少児で関節腫脹を認める場合にはJIAの鑑別が必須だと考えられた。文献的考察を加えて報告する。

8.退形成性上衣腫の多発転移に急性リンパ性白血病を合併した女児例
 (1卒後臨床研修センター、2小児科、3脳神経外科)
 ○岡野まり子1・◎金子裕貴2・鶴田敏久2・千葉幸英2・木原祐希2・藍原康雄3・林 基弘3・川俣貴一3・永田 智2

 〔はじめに〕長期に及ぶ脳腫瘍の治療中に急性リンパ性白血病を併発した例に対して、Gamma Knife®治療にて脳腫瘍をコントロールしつつ、白血病の治療を完遂した小児例を経験したので報告する。〔症例〕10歳女子。3歳時に小脳部退形成性上衣腫を発症した。全脳全脊椎照射(CSI)30Gyを含めた放射線治療と、エトポシドを含む化学療法が施行されたが、再発と治療を繰り返し、頻回の腫瘍摘出術を繰り返していた。10歳時に、急性リンパ性白血病(初発時白血球数63,000/μL、芽球97%、B前駆細胞性、CRLF2+)を発症した。CSIおよび化学療法後の発症で、初期ステロイド不応でもあり、マーカー的にも非常に予後不良群と考えられた。幸い二度の大量シタラビン療法により完全寛解が得られ、3回の強化療法の後、自己末梢血幹細胞移植術併用大量化学療法を施行し白血病治療は終了した。脳腫瘍に対しては、麻酔科によるデクスメデトミジンを用いた二度の非挿管による非侵襲的呼吸管理下でのGamma Knife®治療を行い、腫瘍量のコントロールを行った。〔考案〕本症例は脳腫瘍と白血病を合併した非常に高リスク例であり、当初、best supporting careを選択すべきという意見もあったが、治療継続のご家族の熱意は強かった。脳神経外科、小児科の連携に加え麻酔科、小児外科、輸血・細胞プロセシング部、薬剤部の援助を得て白血病治療を完遂できた。このような高リスクの症例の治療では普段からの各部署との連携が重要であることを認識した。

9.乳児期後期に進行を認めた出血後水頭症2例
 (1卒後臨床研究センター、2小児科)
 ○森島直子1・◎佐藤友哉2・竹下暁子2・平澤恭子2・永田 智2

 極低出生体重児(VLBW)の救命率の改善の一方、軽微な発達障害の合併の増加などの問題も提起され、VLBWの“後遺症なき生存”には多くの課題がある。その中でも脳室内出血(IVH)は発達予後を左右する合併症であり、その後の水頭症(HC)に対する介入は予後の改善に重要である。今回我々はNICU退院後6か月以降にHCの特徴的な症状は呈さずに脳室拡大の進行を認め、外科手術を要した例を経験したので報告する。〔症例1〕24週6日973g、日齢2に左側IVH、日齢14にHCを発症し、日齢14から68までアセタゾラミドで治療された。修正1歳半時、痙性四肢麻痺やてんかん出現を認め、MRIで脳室の拡大の進行が確認され、直ちに外科手術が施行された。術後発達の促進やてんかん発作の改善が認められた。〔症例2〕26週5日665g双胎第2子、日齢3に両側IVH、日齢16にHCを発症し、日齢19から123までアセタゾラミドで治療された。乳児期早期より発達の遅れを認め、修正10か月時のMRIで脳室の拡大の進行などを認め、外科手術が必要と判断され、現在待機中である。〔考察〕出血後HCでは、急性期以降に治療を要することはまれである。上述の2例とも退院後明らかな頭蓋内圧亢進症状はなかったが、経過観察のMRIでHCの悪化を認めた。術後症例1では、児の反応性の改善や発達の促進を認めた。半年以上経過した後でもHCの進行を念頭にしたフォローアップが必要である。〔結論〕出血後HCを来したVLBWは乳児期後半以降もHCの進行がありうる。

10.ニボルマブ関連大腸炎に対してステロイドが有効であった転移性腎細胞癌の1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2泌尿器科)
 ○木下翔太郎1・◎近藤恒徳2

 〔緒言〕免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブが、2016年8月より腎細胞癌に対して保険適用となった。これまでの抗悪性腫瘍薬とは異なる作用機序の薬剤として注目を集めている一方、免疫関連の特有の有害事象も報告されている。今回我々はステロイドが有効であったニボルマブ関連大腸炎の症例を経験したので報告する。〔症例〕71歳女性、1989年左腎癌にて根治的左腎摘除術を施行した。2009年8月に肺転移を認め腹腔鏡下右中葉部分切除術施行、2012年2月に右副腎転移が出現し腹腔鏡下副腎部分切除術施行、2013年10月に再度肺転移を認め腹腔鏡下右上部部分切除術施行。2015年5月より肺転移の増大に対しソラフェニブ投与(17.5か月)を行ったが、嘔気強くなり2016年11月に中止した。しかし、副腎・肺転移増悪のため2017年3月より2週間毎にニボルマブの投与を開始した。7クール終了後のCT評価では標的病変が右副腎で46%減少、右肺下葉で33%減少と部分奏功であった。10クール投与後7日目より発熱とGrade3の下痢がみられ入院となったが、絶食補液による加療で一時軽快していた。退院翌日より39.7℃の発熱、食後の嘔吐・下痢が出現し、収縮期血圧の60台への低下を認めたため緊急入院となった。感染性腸炎・薬剤性腸炎・虚血性腸炎・炎症性腸疾患が否定的であり、CT上で腸管壁の肥厚も認められることからニボルマブ関連大腸炎として矛盾のない所見であり、ニボルマブの投与を中止し、プレドニゾロン2.5mg/kg/日の投与を開始した。投与開始後から全身状態は改善傾向となり、プレドニゾロンは漸減した。入院後第22病日で症状改善し退院となり、現在外来にてフォロー中である。

11.胃ランタン沈着症-6例の臨床病理学的検討
 (1卒後臨床研修センター、2病理診断科、3消化器内視鏡科)
 ○小林茉弥1・◎長嶋洋治2・◎中村真一3

 〔はじめに〕慢性腎臓病で生じる高リン血症に対して、炭酸ランタン服用患者の胃粘膜にランタン(以下、La)が沈着することが知られてきた。当院の上部消化管内視鏡検査と胃生検で診断した胃La沈着症6例について臨床病理学的検討を加え報告する。〔症例〕①54歳の女性。IgA腎症で、血液透析(以下、HD)後、腎移植。②46歳の男性。糖尿病性腎症で、HD継続中。③79歳の男性。膜性増殖性糸球体腎炎で、HD継続中。④63歳の女性。糖尿病性腎症で、腹膜透析施行後、腎移植。⑤77歳の男性。慢性糸球体腎炎に対し、HD継続中。⑥59歳の女性。糖尿病性腎症に対し、HD継続中。La服用期間は、②③⑥7年間、⑤5年間、①④不明である。③④⑤は経過中に胃癌あり。〔胃内視鏡所見〕全例で、乳白色微細顆粒状病変が多発していた。一部の症例で胃粘膜全体に白色の敷石状、ひび割れ様粘膜を認めた。〔病理学的所見〕粘膜固有層内に針状結晶物を貪食した組織球が集簇していた。同結晶はKossa染色陽性、PAS反応、鉄染色陰性であった。過去の文献の記載や画像を参照し、La沈着症と診断した。〔結語〕La沈着症は服用患者増加、服用長期化により今後の増加が見込まれる。乳白色の微細顆粒や白斑粘膜など特徴的な内視鏡所見や、低分化腺癌と紛らわしい病理組織像について知悉しておく必要があると考える。

12.周術期低血糖が遷延した1型糖尿病の症例
 (1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3糖尿病内科、4乳腺・内分泌外科)
 ○林 怡嫻1・深田智子2・井出理沙3・神尾孝子4・◎尾﨑 眞2・◎野村 実2

 〔症例〕37歳女性。1型糖尿病で強化インスリン療法中。乳癌に対して、乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術が行われた。術当日朝、基礎インスリンとして時効型インスリン(トレシーバ®)20単位を皮下注射した。手術室入室直前(午後1時)の血糖値は99であった。手術開始2時間後の血糖値は26と低血糖でありブドウ糖を投与した。30分後は145、その後は80台を維持し手術を終了した。覚醒遅延はなかったが、抜管後にせん妄様の言動が見られた。その際の血糖値は98であったが、本人より「低血糖っぽい」と訴えがあったためさらにブドウ糖を投与したところ意識清明となった。病棟帰室後~翌朝食事再開まで低血糖が遷延し、頻回のブドウ糖投与が必要であった。〔考察〕1型糖尿病患者では、インスリンの基礎分泌および追加分泌をインスリンの皮下注射で補う強化インスリン療法が標準治療である。基礎インスリンは食事の有無にかかわらず一定量の投与が必要とされている。本症例も術前日21時から絶食としたうえで基礎インスリンを投与して手術に臨んだが、術中および術後の低血糖が遷延した。術中低血糖が持続した場合、覚醒遅延や不可逆的な脳障害を来すこともあり、低血糖の持続は回避しなければならない。今後、患者により良い医療を提供するために、絶飲食を伴う周術期における基礎インスリンの指示について医療安全推進部、糖尿病内科、当該外科系診療科、麻酔科間で協議が必要である。

13.顔面神経麻痺の治療後に多発脳神経障害を繰り返し、診断に至った特発性肥厚性硬膜炎の1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2内科、3耳鼻咽喉科)
 ○鈴木綾子1・興野 藍2・金子富美恵3・◎西村芳子2・柴田興一2・佐倉 宏2

 〔症例〕36歳、男性。〔主訴〕左側頭部痛、複視、難聴。〔既往歴〕13~22歳、右真珠腫性中耳炎で鼓室形成術を3回施行。31歳、左外転神経麻痺を発症し、半年で自然軽快。〔現病歴〕2017年6月中旬から左側頭部痛、1週後に左口角下垂がみられ、他院耳鼻科で顔面神経麻痺と診断。プレドニゾロン(PSL)・バラシクロビルが開始され、嚥下障害もみられたため当院耳鼻科に7月初旬入院。左聴力低下と左側への舌偏位が認められたが、5日後には改善がみられた。9月初旬から左上顎痛が持続。PSL再投与で効果なく、対症療法で経過観察。10月下旬から左難聴が出現、11月初旬に複視が出現し当院内科を受診し入院した。〔現症〕神経学的所見では、左側頭部痛と、左三叉神経第2・3枝領域の表在覚低下、左眼外転制限、難聴を認めた。〔臨床経過〕頭部造影MRIで、左側頭葉周囲から小脳テント部の硬膜肥厚と増強効果があり、髄液検査で単核球優位の軽度の細胞数増多がみられた。各種ウイルスPCR・培養などに異常はなく特発性肥厚性硬膜炎と診断した。ステロイドパルス療法1クールを施行し、症状は改善し、PSL維持療法で退院した。〔考察〕本例は、肥厚性硬膜炎に伴い顔面神経麻痺で発症し、経過中に同側のIV、V、VIII、XIIの多発脳神経障害を呈したのが特徴であった。頭痛とともに顔面神経麻痺がみられた時は、肥厚性硬膜炎を鑑別する必要がある。

14.Multi-detector computed tomography(MDCT)を用いた稀少疾患であるcalcified amorphous tumor(CAT)の定量的評価
 (1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3画像診断・核医学科、4病理学(第二))
 ○福島 博1・◎関口治樹2・鈴木 敦2・芹澤直紀2・新井光太郎2・芦原京美2・村崎かがり2・萩原誠久2・福島賢慈3・長尾充展3・宇都健太4

 〔背景〕Calcified amorphous tumor(CAT)は、石灰化を伴う極めて稀な非増殖性の腫瘤である。1997年に初めて報告され、心内腫瘤のうち変性した血性成分が慢性炎症性変化を背景として石灰化した非腫瘍性病変とされた。しかし、この疾患の原因や発生率なども不明で、本邦では10例程度の報告しかなく、CATを定量的に分析したレポートもない。我々は当科にてCATが疑われた患者に対しMDCTでの解析を試み、また手術症例に関しては病理組織の検討も行った。〔方法〕2015年から2017年にかけてCATと診断された5名の患者のMDCTを用い、Agaston法による石灰化の定量、径、平均CT値、石灰化病変の体積を算出した。〔結果〕患者の平均年齢は68歳(47~77歳)、3名が女性、末期腎臓病は3名であった。そして、全員が病変を左室に有し、そのうち僧帽弁に病変を有するのが4名で中隔に1名、また平均の腫瘍径は直径11mm~25mmであった。CTの結果は、多くの症例で低信号を示し(80%)、石灰化病変の体積は2575±894mm3、平均CT値は282±47HU、石灰化スコア(agaston score)は3512±1204であった。CATに対して手術したのは3名で、いずれも脳梗塞発症を手術の決定要因としており、術後の組織病理では、縮退した線維肉腫および限局性炎症が混在した石灰化非晶質の混合を示した。〔結論〕この検討はCATをMDCTにより定量的に評価した最初の報告で、他疾患と比較することで術前診断の助けとなる可能性がある。またCATは再発の報告があり、病理組織でCATと診断した症例は、再発を考慮した経過観察が必要である。

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