学術集会・講演会

第355回東京女子医科大学学会例会

第355回東京女子医科大学学会例会
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日時:平成29年2月25日(土)13時~18時10分
会場:総合外来センター5階 大会議室

開会の辞 司会(幹事)尾崎 眞
挨拶     (会長)吉岡俊正

平成28年度研究奨励賞授与式 13時3分~13時15分

選考経過報告 (学長)吉岡俊正
山川寿子研究奨励賞(第29回)

  1. 日本人2型糖尿病患者の個別化治療におけるインスリン療法に関する研究
     (内科学(第三)助教)大屋純子

佐竹高子研究奨励賞(第25回)

  1. ヘルパーT細胞の分化を運命づける樹状細胞の機能分子の探索
     (微生物学免疫学 助教)大森深雪

中山恒明研究奨励賞(第3回)

  1. 転移前ニッチ形成を標的とした新規がん治療への展開
     (薬理学 助教)出口敦子
  2. 再生医療のための移植用心筋組織内残存未分化iPS細胞除去手法開発
     (先端生命医科学研究所 准教授)松浦勝久

平成27年度受賞者研究発表 13時15分~14時30分

山川寿子研究奨励賞(第28回)
 座長(幹事)尾崎 眞

  1. ヒトiPS細胞由来甲状腺細胞による再生医療を目指して
     (先端生命医科学研究所)荒内 歩
  2. カドミウムによる肺癌の悪性転化機構の解明
     (衛生学公衆衛生学(二))藤木恒太

佐竹高子研究奨励賞(第24回)
 座長(幹事)尾崎 眞

  1. 肥満合併2型糖尿病に関する研究:DIACETデータから
     (内科学(第三))中神朋子

中山恒明研究奨励賞(第2回)
 座長(幹事)尾崎 眞

  1. 肝細胞癌に対する安全な高難度肝臓手術の確立
     (消化器外科学)有泉俊一・小寺由人・高橋 豊・大森亜紀子・山下信吾・根本 慧・片桐 聡・
     江川裕人・山本雅一
  2. ヒト糸球体内皮細胞におけるカベオラを介すアルブミンの新通過経路と排出経路
     (内科学(第四))森山能仁・唐澤一徳・佐々木佳代・内田啓子・新田孝作

第11回研修医症例報告会 14時40分~18時10分

〔○発表者、◎指導医〕

開始の挨拶 (卒後臨床研修センター長)川名正敏

Block 1 14時45分~15時35分
 座長(消化器・一般外科)小寺由人・(小児科)平澤恭子

  1. 重症筋無力症とIsaacs症候群に合併した後天性血友病A
     (1卒後臨床研修センター、2神経内科、3血液内科)
     ○金野 史1・◎武田貴裕2・鈴木美紀2・清水優子2・飯嶋 睦2・田中淳司3・北川一夫2
  2. 診断が困難であった関節リウマチの1例
     (東医療センター1卒後臨床センター、2内科)
     ○荒井誠大1・◎高木香恵2・小川哲也2・佐倉 宏2
  3. 肺腺癌化学療法中に皮膚転移と小腸転移をきたし小腸穿孔を起こした1例
     (1卒後臨床研修センター、2内科学(第一)、3病理診断科、4皮膚科、5外科学(第二))
     ○土屋海士郎1・◎有村 健2・山本智子3・武山 廉2・多賀谷悦子2・近藤光子2・川島 眞4
     岡本高宏5・長嶋洋治3・玉置 淳2
  4. 上行結腸angioectasiaからの出血を同定し得た慢性腎不全合併2型糖尿病の1例
     (1卒後臨床研修センター、2糖尿病センター内科)
     ○清水美佳1・◎吉田宣子2・花井 豪2・内潟安子2
  5. 脳幹型PRES、血栓性微小血管障害症を呈した悪性高血圧の1例
     (東医療センター1卒後臨床研修センター、2内科)
     ○板倉卓司1・小川哲也2・樋口千恵子2・◎興野 藍2・佐倉 宏2

Block 2 15時35分~16時15分
 座長(皮膚科)石黒直子・(腎臓内科)井野文美

  1. 全身麻酔中にアナフィラキシー様反応を引き起こした1例
     (東医療センター1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3耳鼻咽喉科)
     ○長田宜子1・◎市川順子2・丸渕貴仁2・貞安 令3・西山圭子2・◎小森万希子2
  2. 劇症型心筋炎を2度発症し救命し得た1例
     (東医療センター1卒後臨床研修センター、2内科、3心臓血管診療部、4病理診断科)
     ○小泉元彦1・松居一悠2・◎中嶋 俊2・中岡隆志2・河村俊治4・佐倉 宏2・布田伸一3
  3. 経皮的卵円孔閉鎖術により著明な改善が得られたplatypnea-orthodeoxia症候群の1例
     (1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3循環器小児科)
     ○生形 盟1・◎小暮智仁2・杉山 央3・関口治樹2・鈴木 敦2・芹澤直紀2・鈴木 豪2
     志賀 剛2・朴 仁三3・萩原誠久2
  4. 抗酸菌による繰り返すペースメーカ感染の加療中に血小板減少症を併発した1例
     (1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3心臓血管外科、4感染症科、5血液内科)
     ○大川拓也1・◎菊池規子2・庄田守男2・谷野紗恵2・鈴木 敦2・芹澤直紀2・志賀 剛2
     萩原誠久2・斎藤 聡3・山崎健二3・菊池 賢4・篠原明仁5・田中淳司5

Block 3 16時30分~17時20分
 座長(麻酔科)深田智子・(救命救急センター)武田宗和

  1. Thyroid-like follicular renal cell carcinoma(TLF-RCC)の1例
     (1卒後臨床研修センター、2病理診断科、3泌尿器科)
     ○木村美和1・山本智子2・高木敏男3・近藤恒徳3・◎長嶋洋治2
  2. 腎腫瘍の画像を呈した右傍腎盂に発生した後腹膜神経鞘腫と多発神経鞘腫の既往からSchwannomatosisと診断した症例
     (1卒後臨床研修センター、2泌尿器科)
     ○越智満久1・◎近藤恒徳2・田邉一成2
  3. 過剰腺に生じた縦隔副甲状腺腫の1例
     (1卒後臨床研修センター、2外科学(第二))
     ○橋口浩実1・◎野口英一郎2
  4. 外科手術に至った高齢発症の憩室性大腸炎が疑われた1例
     (1卒後臨床研修センター、2消化器内科、3消化器外科)
     ○高鹿美姫1・任芝 杏1・柏木宏幸2・伊藤亜由美2・米沢麻利亜2・大森鉄平2・◎高山敬子2
     飯塚文瑛2・中村真一2・徳重克年2・大木岳志3・井上雄志3・山本雅一3
  5. 進行胃癌に対し審査腹腔鏡が有用であった1例
     (1卒後臨床研修センター、2消化器外科)
     ○藤川秀爾1・◎山田卓司2・谷口清章2・瀬下明良2・三宅邦智2・天野久仁彦2・山本雅一2

Block 4 17時20分~18時
 座長(血液内科)吉永健太郎・(神経内科)白井優香

  1. 小児各科の協力にてターミナルケアを行ったDuchenne型筋ジストロフィーの成人男性
     (1卒後臨床研修センター、2小児科、3循環器小児科、4腎臓小児科)
     ○新井里子1・松丸重人2・佐藤孝俊2・七字美延2・石黒久美子2・村上てるみ2・立川恵美子2
     工藤恵道3・稲井 慶3・石塚喜世伸4・◎石垣景子2・永田 智2
  2. 未熟児網膜症スクリーニング時に発見された先天網膜分離症の1例
     (1卒後臨床研修センター、2眼科、3新生児医学科)
     ○輪島 京1・◎丸子一朗2・古泉英貴2・飯田知弘2・内山 温3・楠田 聡3
  3. 胆汁性嘔吐、心筋炎を呈し、診断に難渋した好酸球増多症候群の11歳女子例
     (1卒後臨床研修センター、2小児科、3腎臓小児科)
     ○山村恭一1・◎鏑木陽一郎2・千葉幸英2・鶴田敏久2・服部元史3・永田 智2
  4. てんかんに似た発作性症状を呈した生体腎移植後のナルコレプシーの1女子例
     (1卒後臨床研修センター、2小児科、3腎臓小児科)
     ○岡橋昌己1・◎伊藤 進2・柳下友映2・大谷ゆい2・衛藤 薫2・竹下暁子2・平澤恭子2
     小国弘量2・石塚喜世伸3・服部元史3・永田 智2

初期臨床研修医現況報告
(循環器内科)志賀 剛

ベストプレゼンテーション賞表彰式

閉会の辞
司会(幹事)小森万希子

〔平成27年度山川寿子研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.ヒトiPS細胞由来甲状腺細胞による再生医療を目指して
 (先端生命医科学研究所)荒内 歩

 原発性、自己免疫性、医原性など様々な病因に由来する甲状腺機能低下症に対し、甲状腺ホルモン補充療法を必要とする患者数は少なくない。しかし、内服継続によるQOLの低下や生理的機能との齟齬などの問題点が挙げられる。我々は、以前、細胞シート工学を用いて培養した甲状腺細胞シートにより、甲状腺機能低下症モデルの甲状腺機能を回復することに成功した。本研究では、細胞ソースとしての甲状腺細胞の獲得という点に着目し、ヒトiPS細胞の分化誘導により回収した甲状腺濾胞上皮細胞から、甲状腺組織を再生することを目標とした。まずActivin Aを主とした刺激により、definitive endodermへ誘導し、内胚葉分化マーカーであるsox17・FOXA2について、RT-PCR、フローサイトメトリー、免疫染色により解析した。いずれの遺伝子発現についても誘導後、有意に上昇しているのを確認することができ、共陽性細胞が増加しているのを認めることができた。その後、TSHを始めとする種々の因子を添加した培地にて培養を継続し、甲状腺濾胞上皮細胞への分化に必須と考えられている、転写因子Pax8・Nkx2-1、さらに、甲状腺に特異的な、Na-IトランスポーターやTSHレセプター、サイログロブリンについて、遺伝子・タンパク質の発現を確認することができた。また、培養上清中に甲状腺ホルモンを同定することができた。これらの結果は、ヒトiPS細胞由来甲状腺細胞を用いた組織再生を実現し、甲状腺機能低下症の新たな治療となる可能性を示していた。

2.カドミウムによる肺癌の悪性転化機構の解明
 (衛生学公衆衛生学(二))藤木恒太

 タバコ煙中に含まれる発癌物質カドミウム(Cd)の肺癌発生への関与が実験的および疫学的に示唆されている。しかしながら、肺癌細胞の悪性化に及ぼすCd曝露の詳細な作用機構は明らかではない。我々は、HK-2ヒト近位尿細管由来上皮細胞において、Cdが転写因子Notch1シグナル伝達系活性化を介した細胞毒性を惹起することを見出した。そこで、本研究は、Cd曝露の肺癌細胞に対する慢性影響とNotch1活性化の重要性を明らかにすることを目的とした。その結果、Cdを曝露したA549ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞では、EMTの惹起、ストレスファイバーの形成、細胞移動能の上昇、抗癌剤に対する抵抗性が認められた。また、Notch familyのうちNotch1のみCd曝露によりその発現量が上昇し、Notch1活性化型であるNotch1-ICDの発現量、Notch1のターゲット因子である転写因子SnailおよびSlugの発現量が上昇した。さらに、Notch1をsiRNAにより機能阻害すると、上記のCd曝露による影響が部分的にすべて抑制された。また、慢性Cd曝露によって獲得したA549細胞の形質変化は、Cdを細胞内外から完全に除去しても、維持されることが示された。以上の結果から、カドミウム曝露によって、Notch1経路が活性化することが、肺癌の悪性化に関わると考えられた。

〔平成27年度佐竹高子研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.肥満合併2型糖尿病に関する研究:DIACETデータから
 (内科学(第三))中神朋子

 近年、肥満を合併した糖尿病患者が急速に増加しているが、糖尿病の発症のみならず、発症後の合併症予防の点から体重管理の重要性が指摘されている。そこで、糖尿病センターに通院中の2型糖尿病患者の肥満度からみた療養状況を横断的に分析した。大規模コホート研究DIACET参加者のうち、療養実態調査に参加した2型糖尿病患者で生活習慣に関する質問票に返答した6,518名(平均年齢65.6±11.8歳、男4,096名)のBMIを5分割(<20、20~24、25~29、30~34、35kg/m2)し男女別に検討。平均BMIは男24.4±3.9kg/m2、女24.4±4.7kg/m2。BMI≧25kg/m2:男36.9%、女38.2%。以下、BMIとの関連を述べる。男女とも、年齢、糖尿病罹病期間、HDL-Cと負の、HbA1c、中性脂肪、LDL-C、睡眠時無呼吸症候群、多汗の有病率、鬱症状の気分(物事への興味、落ち込み、寝つきの悪さ、疲労感他)に関連したスコアと正の相関(p<0.05)、DTSQの各項目とは負の相関を示した(すべてp<0.001)。また、肥満度と喫煙率には関連なく、飲酒率と負の相関(p<0.001)、低レベルの運動の比率(p<0.001)、朝食の欠食率と22時以降の夕食摂食率とは正の相関を示し(p<0.05)、睡眠時間は負の相関(p<0.001)を示した。DIACETの2型糖尿病患者は4割が肥満を呈しており、肥満度は推定糖尿病発症年齢、QOL、治療満足度と負の相関、心血管危険因子や食・運動習慣の悪化、治療薬数と正の相関を示した。糖尿病発症以前の小児期からの肥満阻止を意識した啓発とともに、糖尿病発症後は減量を意識した療養指導や薬剤選択が急務と思われた。

〔平成27年度中山恒明研究奨励賞受賞者研究発表〕

1.肝細胞癌に対する安全な高難度肝臓手術の確立
 (消化器外科学)
 有泉俊一・小寺由人・高橋 豊・大森亜紀子・山下信吾・根本 慧・片桐 聡・
 江川裕人・山本雅一

 〔目的〕肝細胞癌(HCC)には系統的肝切除が推奨されている。しかし系統的肝切除は高難度手術に分類され術死(2%)や在院死(4%)が多い。高難度肝臓手術の合併症、術死について年代毎に検討した。〔方法〕1985年から2014年までに、HCCに対し高難度肝臓手術を行った1250例の合併症と術死について5年毎の年代別に検討した。高難度肝臓手術は、三区域切除、右または左肝切除、区域切除とした。合併症はClavien-Dindo分類GradeIII以上とした。肝切除手技(グリソン鞘一括処理)は1980年代に確立した。出血コントロールは、1990年代はプリングル法で行い、2000年代はプリングル法に肝下部IVCクランプを併用し、2010年代は低CVP麻酔(頭位挙上体位、低換気量、輸液量制限など)を併用した。〔結果〕手術時間は年代別に差は無く4時間(中央値)であった。出血量(中央値)は年代とともに低下した(85~89年2L、90~94年1.4L、95~99年1.6L、00~04年1.2L、05~09年0.9L、10~14年0.7L)。合併症も減少し(85~89年47%、90~94年26%、95~99年30%、00~04年18%、05~09年19%、10~14年15%)、術死も低下した(85~89年5.3%、90~94年4.4%、95~99年2.6%、00~04年1.7%、05~09年0.5%、10~14年0.6%)。〔結語〕HCCに対する高難度肝臓手術は、様々な工夫により安全に行われている。

2.ヒト糸球体内皮細胞におけるカベオラを介すアルブミンの新通過経路と排出経路
 (内科学(第四))森山能仁・唐澤一徳・佐々木佳代・内田啓子・新田孝作

 〔背景〕我々はヒト糸球体内皮細胞表面(hGEC)に存在するカベオラを介しアルブミンが細胞内に取り込まれることを発見し、フェネストラに加えてアルブミンの通過経路となりアルブミン尿の新機序となり得る可能性を報告した(J Cell Biochem 2015)。さらにアルブミンのカベオラ進入経路に続く細胞内の通過・排出経路を調べた。〔方法・結果〕hGECに緑色標識アルブミンを2時間培養後、エンドソーム、ゴルジ体、小胞体、リソソーム、プロテオソーム、微小管、アクチンのマーカーと二重染色を行い共焦点顕微鏡にて観察したところ、エンドソーム以外どのマーカーとも二重染色されず、アクチンや微小管などの細胞骨格を介さずに細胞内を移動しエンドソームに到達し、エンドソームでゴルジ体や小胞体、リソソーム、プロテオソームなどはバイパスし、細胞の反対側より排出されるよう選別される可能性が示唆された。またTranswells plateを用いた細胞実験にてカベオラ阻害剤によりアルブミン透過が抑制され、ネフローゼ症候群モデルマウスを用いた動物実験でアルブミン尿の減少が得られたことより、このカベオラ経路は新たなアルブミン尿発現の原因経路として示唆された。〔結語〕アルブミンはカベオラに被包され、エンドソームに到達後、各オルガネラ、細胞骨格と独立し細胞内を移動し直接反対側に排泄され、新たなアルブミン尿の原因として可能性をもつカベオラ経路として考えられた。

〔第11回研修医症例報告会〕

1.重症筋無力症とIsaacs症候群に合併した後天性血友病A
 (1卒後臨床研修センター、2神経内科、3血液内科)
 ○金野 史1・◎武田貴裕2・鈴木美紀2・清水優子2・飯嶋 睦2・田中淳司3・北川一夫2

 〔症例〕69歳男性。〔主訴〕全身の紫斑、皮下血腫。〔現病歴〕2014年初め(67歳時)より四肢筋力低下を自覚し近医を受診。筋電図にて疲労現象を認め、抗アセチルコリン受容体抗体陽性が判明し重症筋無力症と診断。当院当科に転院しプレドニゾロン(PSL)20mg/日で開始、免疫グロブリン大量療法、免疫吸着療法が施行され症状は改善した。しかしその数ヵ月後より四肢筋のこむら返りが頻繁に出現。針筋電図で豊富なミオキミア放電、筋線維束収縮電位を認め、抗VGKC抗体が陽性と判明しIsaacs症候群と診断。PSLを30mg/日へ増量、免疫グロブリン大量療法、免疫吸着療法を再度施行し症状は改善した。その約1年後(69歳時)、四肢体幹の皮下血腫、鼻出血が出現した。当院血液内科を受診し活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長、第VIII因子活性低下、第VIII因子インヒビター高値の所見から後天性血友病Aと診断。PSL 70mg/日へ増量とし経過観察したところ、その後インヒビターの低下、APTTの正常化、出血症状の消退を認めた。〔考察〕後天性血友病Aは稀な疾患であるが、高齢者、自己免疫疾患、悪性腫瘍を有する患者に合併して発症しやすいことが知られている。本例は重症筋無力症およびIsaacs症候群が先行し、その約2年後に後天性血友病Aを発症した。これらを合併した後天性血友病Aの例は調べた範囲では報告がなく、非常に稀と考えられた。

2.診断が困難であった関節リウマチの1例
 (東医療センター1卒後臨床センター、2内科)
 ○荒井誠大1・◎高木香恵2・小川哲也2・佐倉 宏2

 〔症例〕31歳Sotos症候群の男性。〔主訴〕両上肢のしびれと握痛、体動困難、左足の疼痛。〔現病歴〕入院4ヵ月前より左第2指MP関節の腫脹出現。近医整形外科を受診したが診断得られず経過観察となった。しかし徐々に両肩関節の可動域制限、握力低下、歩行困難が加わったため再度同医を受診しXP、血液検査を施行されたが診断得られず神経疾患を疑われ当院内科を紹介受診となった。〔現症〕両肩関節の可動域制限、両第2、3、4MP関節の腫脹・圧痛あり。MMTは頸筋、前鋸筋、三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋で4/5と低下を認めたが再現性は不良であった。〔検査結果〕血液検査ではCRP1.3mg/ml、RF陽性、抗CCP抗体陽性。XPでは特記すべき所見なし。MRI検査で大腿筋に炎症所見、針筋電図検査で三角筋、上腕二頭筋に神経原性変化を軽度認めた。〔経過〕関節リウマチと診断しメトトレキサート内服開始後症状、炎症所見の改善を認めた。〔考察〕Sotos症候群は常染色体優性遺伝の過成長症候群の一つである。過成長、大頭症、発達遅延を特徴とするが、骨成長に筋肉の発達が伴わないため全身の筋緊張が低下し筋力低下を認めることがある。同症例も全身の筋力低下があり、その上、関節の腫脹、疼痛が加わったため関節症状より筋症状が主となったこと、さらに精神遅滞のため正確な情報を得難かったことが診断を困難にさせた原因と考える。種々の鑑別・考察を必要とした貴重な症例であった。

3.肺腺癌化学療法中に皮膚転移と小腸転移をきたし小腸穿孔を起こした1例
 (1卒後臨床研修センター、2内科学(第一)、3病理診断科、4皮膚科、5外科学(第二))
 ○土屋海士郎1・◎有村 健2・山本智子3・武山 廉2・多賀谷悦子2・近藤光子2・川島 眞4
 岡本高宏5・長嶋洋治3・玉置 淳2

 近年、肺癌に対する集学的治療の進歩により比較的長期生存例も増えていることから、稀な臓器への転移も散見されるようになっている。今回、我々は肺腺癌化学療法中に皮膚転移と小腸転移をきたし小腸穿孔を起こした稀な症例を経験したため報告する。症例は67歳男性。関節リウマチで加療中、2015年5月頃より右季肋部痛が出現したため同年8月に前医でPET/CT施行され、右肺底部の浸潤影および右肺門部リンパ節、胸膜直下にFDG集積を認めた。同年10月、精査目的に当科で気管支鏡検査施行し、肺腺癌cT3N2M1a stageIV(EGFR遺伝子変異陰性、ALK転座陰性)と診断した。同年11月よりCDDP+PEM+BEV2コース施行し、2016年1月、同化学療法3コース目施行目的に当科入院した。入院時施行した胸部単純CTで左肺上葉のすりガラス影の増悪を認め、血液検査でKL-6 548U/ml、SP-D 130ng/mlと上昇していたため、間質性肺炎の増悪を疑い気管支鏡検査施行した。気管支肺胞洗浄と組織学的評価より関節リウマチの増悪や薬剤性肺障害の可能性が示唆されたため、プレドニゾロン投与と化学療法をCBDCA+nab-PTXに変更した。2日後には頭部皮下結節の皮膚生検を施行した。5日後に腹膜刺激症状である板状硬、反跳痛が出現したため腹部CTを施行したところ、消化管穿孔が疑われたため当院外科で緊急手術を施行した。頭皮、小腸それぞれの採取組織から腺癌を検出し、免疫組織化学評価により肺由来と判明した。肺癌の皮膚転移は2.8%、小腸転移は1.7%とされる。さらに転移後の小腸穿孔は0.1%程度とされ、1年生存率は2~9%と予後不良である。本症例は稀な2つの転移を組織学的に証明でき、小腸穿孔後も救命できた点で貴重な症例と考えられた。

4.上行結腸angioectasiaからの出血を同定し得た慢性腎不全合併2型糖尿病の1例
 (1卒後臨床研修センター、2糖尿病センター内科)
 ○清水美佳1・◎吉田宣子2・花井 豪2・内潟安子2

 大腸angioectasiaは易出血性であり、慢性腎不全など全身性疾患に合併することが多いとされている。しかし、出血は間欠的かつ小病変であることから内視鏡検査施行時には止血していることが多く、出血源の特定に至ることは少ない。今回、慢性腎不全を有する2型糖尿病患者において活動性出血を伴う大腸angioectasiaを下部消化管内視鏡検査で同定し得た1例を経験したため報告する。〔症例〕80歳男性。〔主訴〕ふらつき。〔既往歴〕陳旧性心筋梗塞、冠動脈バイパス術後(アスピリン、ワルファリン内服)。〔現病歴〕63歳時に2型糖尿病と診断され、78歳頃よりeGFR 30ml/min/1.73m2未満の慢性腎不全となった。2016年5月より便中ヘモグロビン陽性となり、同年7月27日にはHb 6.4g/dlと著明な貧血を認めたため、精査目的に当科入院となった。〔現症〕意識清明、血圧115/52mmHg、脈拍69回/分、眼瞼結膜蒼白。〔入院後経過〕入院後、鮮血便が持続し、下部消化管内視鏡検査を施行したところ、上行結腸にangioectasiaと同部位からの活動性出血を認めた。アルゴンプラズマ凝固法とクリッピングによる止血を行い、その後、鮮血便は消失した。鉄剤の内服を継続し、Hb 9.3g/dlまで貧血の改善を認め、それに伴い自覚症状も消失した。

5.脳幹型PRES、血栓性微小血管障害症を呈した悪性高血圧の1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2内科)
 ○板倉卓司1・小川哲也2・樋口千恵子2・◎興野 藍2・佐倉 宏2

 症例は44歳男性。43歳時の健康診断で初めて高血圧のみ指摘されたが無治療であった。44歳時に頭痛、夜間呼吸困難、起座呼吸を認め近医に救急搬送された。血圧205/130mmHg、肺水腫、胸水貯留、Cr 9.0mg/dlの腎障害を認め当院に初診転院となった。入院時、尿潜血3+、尿蛋白7.0g/g・Cr、顆粒円柱(5+)BUN 74.8mg/dl、Cr 9.4mg/dlおよび腎臓エコーで腎臓萎縮なく急性腎不全を呈していた。溶血性貧血(Hb 6.7g/dl、LDH 881U/L、ハプトグロビン≦10mg/dL、破砕赤血球+)、血小板減少(Plt 5.5万/μL)および急性腎不全より血栓性微小血管障害症(TMA)と診断した。頭部MRIにて左右対称性に橋の腫大、T2WI、FLAIR、ADC mapでのびまん性の信号上昇により脳幹型PRESを呈していた。さらに前医搬送時の拡張期血圧130mmHg、急性腎不全、高血圧脳症、眼底所見での軟性白斑、出血を認め悪性高血圧と診断した。TMAに対して第2病日から3回の血漿交換、降圧療法、輸血および透析療法を施行したところ第6病日には破砕赤血球の消失、血小板の上昇を認め血漿交換を中止とした。腎生検では、Onion skinLesionや血管壁のフィブリン析出、破砕赤血球など悪性高血圧による高度内皮細胞障害を呈しておりTMAの部分像と考えられた。下痢を認めず便培養陰性、ADAMTS 13活性(57%)著減なく、130mmHgへの降圧により速やかに溶血性貧血、血小板数の改善を認めたため悪性高血圧がTMAの原因と考えられた。脳幹型PRES、TMAを呈した悪性高血圧の1例を経験したので報告する。

6.全身麻酔中にアナフィラキシー様反応を引き起こした1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2麻酔科、3耳鼻咽喉科)
 ○長田宜子1・◎市川順子2・丸渕貴仁2・貞安 令3・西山圭子2・◎小森万希子2

 〔症例〕34歳男性、身長163cm、体重55kg。鼻中隔弯曲症に対し、鼻中隔矯正術、粘膜下下鼻甲介骨切除術が予定された。プロポフォール130mg、セボフルラン2.0%、フェンタニル100μg、レミフェンタニル0.3μg/kg/分で麻酔導入後、ロクロニウム50mgで筋弛緩を得て気管挿管を行った。術後感染予防目的のピペラシリン投与終了直後から急激な血圧低下および全身の皮膚発赤を認め、血圧低下に対しフェニレフリンの静脈内投与、晶質液の急速輸液、下肢挙上を行った。ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム500mgの静脈内投与後、徐々に血圧は改善し、皮膚発赤も消退した。ショック初期の血漿ヒスタミン濃度は5.11ng/ml、血漿トリプターゼ濃度は8.0ng/mlと上昇を認めた一方、非特異的IgE抗体価は68U/Lと正常範囲内、血清補体価は15.2U/Lと低値を示した。後日施行した精査によりピペラシリンアレルギーが判明し、本症例の原因と考えた。〔考察〕本症例は血液検査上、非特異的IgE抗体価正常、血清補体価低値、ヒスタミンおよびトリプターゼ高値を認めたことから、IgEを介さず補体活性化により脱顆粒が引き起こされるアナフィラキシー様反応と考えた。〔結語〕麻酔導入後に急激な血圧低下と皮膚発赤を生じた症例を経験し、血液検査からアナフィラキシー様反応と診断した。

7.劇症型心筋炎を2度発症し救命し得た1例
 (東医療センター1卒後臨床研修センター、2内科、3心臓血管診療部、4病理診断科)
 ○小泉元彦1・松居一悠2・◎中嶋 俊2・中岡隆志2・河村俊治4・佐倉 宏2・布田伸一3

 症例は45歳男性。36歳時に劇症型心筋炎を発症し他院で加療を受けた既往がある。当院入院の4日前から感冒様症状が出現していた。近医受診し、心電図で完全房室ブロック、ショック状態のため当院救命救急センターへ搬送された。搬送後より急性心筋炎の可能性を考えて大量ガンマグロブリン投与、IABP、PCPSを導入した。入院2日目に施行した心筋生検結果および臨床症状から劇症型心筋炎の再発と考えられた。循環動態は緩徐に改善し、第8病日にPCPS離脱し、第12病日にIABPから離脱した。第40病日に再施行した心筋生検では一部に線維化や慢性炎症細胞浸潤を認めたが、急性期の所見は改善していた。その後全身の状態安定を認めたため心臓リハビリテーション施行目的に第57病日に転院した。劇症型心筋炎は稀な疾患であり、かつ再発例で救命に成功した例は非常に稀である。本症例に対し臨床所見や病理所見を踏まえ、文献的考察を含め報告する。

8.経皮的卵円孔閉鎖術により著明な改善が得られたplatypnea-orthodeoxia症候群の1例
 (1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3循環器小児科)
 ○生形 盟1・◎小暮智仁2・杉山 央3・関口治樹2・鈴木 敦2・芹澤直紀2・鈴木 豪2
 志賀 剛2・朴 仁三3・萩原誠久2

 症例は86歳女性。2005年(75歳時)に大動脈弁閉鎖不全症、胸部大動脈瘤に対して大動脈弁置換術、上行大動脈置換術を施行された。術後経過は良好であったが2010年頃から労作時呼吸困難感が出現し、SpO2 90%と低酸素血症を認めた。精査を施行したが、原因不明であり在宅酸素療法導入で外来経過観察となった。2016年5月頃から症状増悪し体動困難となったため精査加療目的に再入院となった。臥位と比較して座位でSpO2 80%と低酸素血症増悪し、経食道心臓超音波検査で卵円孔開存が確認され、マイクロバブルテストでは座位で増悪する右左短絡を確認し、platypnea-orthodeoxia症候群と診断した。低酸素血症を有する卵円孔開存例であり、閉鎖適応と考え経皮的卵円孔閉鎖術を施行した。術直後から酸素化の改善を認め、酸素投与中止となり、杖歩行も可能な状態まで改善した。platypnea-orthodeoxia症候群は卵円孔開存を有する症例が加齢等による胸郭内構造の変化から座位、立位により右左短絡を生じ、著明な低酸素血症を生じる比較的稀な疾患である。卵円孔開存は約20%と頻度の高い心疾患であり、近年高齢者の低酸素血症、呼吸困難感の原因として注目されているが、これまで症例報告はわずかである。今回、経皮的卵円孔閉鎖術により著明な低酸素血症と自覚症状の改善が得られた1例を経験したため文献的考察を加え報告する。

9.抗酸菌による繰り返すペースメーカ感染の加療中に血小板減少症を併発した1例
 (1卒後臨床研修センター、2循環器内科、3心臓血管外科、4感染症科、5血液内科)
 ○大川拓也1・◎菊池規子2・庄田守男2・谷野紗恵2・鈴木 敦2・芹澤直紀2・志賀 剛2
 萩原誠久2・斎藤 聡3・山崎健二3・菊池 賢4・篠原明仁5・田中淳司5

 症例は78歳男性。2003年10月(65歳)、完全房室ブロックに対して恒久的ペースメーカ植え込み術を施行した。これまで2004年7月、9月、2007年1月、6月にペースメーカポケット感染を併発し、姑息的手術を施行した。2007年の術中抗酸菌培養よりMycobacterium chelonaeが検出され、クラリスロマイシンの長期内服を行った。しかし、2016年7月にポケット感染が再燃した。血液培養は陰性だった。とくに症状はなかったが、術前精査中に突然血小板数が2.3万/μlまで低下し、その後4千/μlまで低下し、特発性血小板減少症(ITP)の診断に至った。約1ヵ月のステロイド治療を行い、血小板数が10万/μl以上になった時点で、開胸・開心下ペースメーカ全抜去術を行った。術中の創部培養、ペースメーカリードから多剤耐性のMycobacterium chelonaeが検出された。術後はステロイドを中止したが、血小板数は10万/μl以上で経過した。現在、デバイス関連感染症においてはシステム全抜去が推奨されており、姑息的手術では炎症源を残すため、本症例のようにITPなどの全身炎症性疾患の原因となる可能性があると考えられる。ペースメーカ感染の起炎菌として抗酸菌は珍しく、ITPを併発した報告はこれまでないため、今回症例を提示する。

10.Thyroid-like follicular renal cell carcinoma(TLF-RCC)の1例
 (1卒後臨床研修センター、2病理診断科、3泌尿器科)
 ○木村美和1・山本智子2・高木敏男3・近藤恒徳3・◎長嶋洋治2

 〔はじめに〕TLF-RCCは腎細胞癌新規組織型で、コロイド状物質を囲む甲状腺様濾胞状組織からなる。現在までの報告は27例のみである。われわれはTLF-RCCの1例を経験したので、報告する。〔症例〕55歳女性。〔既往歴〕膵IPMN(当院消化器内科で経過観察中)。〔家族歴〕特記事項なし。〔現病歴〕17年前に当院で、7年前に他院で右腎腫瘍を指摘されていた(詳細不明)。(X-1)年、IPMNフォロー中の腹部超音波検査で腎腫瘍を指摘され、当院泌尿器科に紹介された。X年4月の造影CTで、右腎中央に石灰化を伴う腫瘍を認めた。増大傾向を示したため、腎細胞癌との診断のもと、X年7月、腎部分切除術が施行された。術後、追加治療なく外来フォロー中である。〔病理学的所見〕切除検体は52×30×13mm大、境界明瞭、乳白色腫瘍を含んでいた。一部に、硝子化隔壁に囲まれた部分があった。組織学的には、乳頭、管状構造を取る腫瘍細胞が浸潤性に増殖していた。核は空胞状、すりガラス状で、溝を認めた。免疫染色で、cytokeratin(CK)7、TTF1、PAX8陽性;CK20、CDX2、thyroglobulin、α-methyl acyl CoA racemase(AMACR)陰性であった。甲状腺乳頭癌の転移が疑われたが、甲状腺を含む他臓器に原発を示唆する所見を認めなかった。特徴的な核所見とTTF1、CK7陽性である点がこれまでの報告と異なるが、TLF-RCCと診断された。〔結語〕核所見と免疫組織化学的性格の一部が、これまでの報告と異なるTLF-RCCを経験した。

11.腎腫瘍の画像を呈した右傍腎盂に発生した後腹膜神経鞘腫と多発神経鞘腫の既往からSchwannomatosisと診断した症例
 (1卒後臨床研修センター、2泌尿器科)
 ○越智満久1・◎近藤恒徳2・田邉一成2

 症例は49歳女性。2016年3月に他院にて子宮筋腫摘出術。術後発熱精査の単純CTにて径89mmの右傍腎盂囊胞を指摘された。造影CT、造影MRIにて囊胞内に造影効果を伴う50×40mm大の充実性構造を認め、囊胞性腎腫瘍が疑われた。前医では根治的右腎摘除術を奨められた。しかし患者が腎温存手術を希望したため当科紹介となった。技術的に腎部分切除は可能と判断し2016年10月に開腹右腎部分切除術を施行した。囊胞は腎門部から中極にかけて癒着しており腎動脈を巻き込んでいた。右腎動脈の前枝の1本を切断する必要があったが、腎盂、腎実質とは剥離は可能であり腫瘍摘除術を完了することが可能であった。摘出標本は80×60×40mm大の結節性病変で病理組織は淡好酸性の胞体を有する紡錘型細胞が増生しており、部分的に核の大小不同はみられたが細胞密度は疎で、核分裂像もほとんど認めなかった。免疫染色ではS-100蛋白陽性でKi-67陽性細胞は5%以下でSchwannomaと診断した。後腹膜に発生するSchwannomaは全体の0.7%と稀であり、さらに既往歴からSchwannomatosisが疑われたため若干の文献的考察を加えて報告する。

12.過剰腺に生じた縦隔副甲状腺腫の1例
 (1卒後臨床研修センター、2外科学(第二))
 ○橋口浩実1・◎野口英一郎2

 〔症例〕56歳男性。健診で高カルシウム血症(11.3mg/dL)を指摘され原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を疑われて、当科紹介受診となった。intactPTH 250pg/mLであり、多発内分泌腺腫瘍の家族歴はないことから、散発性PHPTと判断した。頸部超音波検査では部位診断がつかなかったが、MIBIシンチグラフィーのSPECT画像で胸骨裏面に集積を認め、CTでも同部位に造影効果を認める9×5mmの腫瘍像を疑った。手術ではまず頸部操作で同病変の摘出を試みたが到達できず、頸部両側検索を行って正常大の副甲状腺4腺を確認したのち、胸骨正中切開にて右胸部胸腺内の副甲状腺腫(12×106mm、333mg)を摘出した。術後intactPTH、血清カルシウム値は正常化、病理組織診断は副甲状腺腺腫であった。〔考察〕開縦隔の決断には部位診断の確からしさ、過剰腺の知識、そして頸部両側検索による確認が重要であることを学んだ。

13.外科手術に至った高齢発症の憩室性大腸炎が疑われた1例
 (1卒後臨床研修センター、2消化器内科、3消化器外科)
 ○高鹿美姫1・任芝 杏1・柏木宏幸2・伊藤亜由美2・米沢麻利亜2・大森鉄平2・◎高山敬子2
 飯塚文瑛2・中村真一2・徳重克年2・大木岳志3・井上雄志3・山本雅一3

 〔背景〕憩室性大腸炎(diverticular colitis)とは大腸憩室症に時に合併する区域性の慢性腸炎であり、内視鏡的にも組織学的にも潰瘍性大腸炎に類似した所見を呈する。今回、本症例が疑われた1例を経験したため報告する。〔症例〕81歳男性。慢性便秘症があり、約1週間前からの発熱、便秘、左下腹部痛を主訴に救急外来を受診された。炎症反応高値で腹部造影CTでS状結腸に腸管壁肥厚を認め、精査加療目的に緊急入院となった。第4病日の大腸内視鏡検査でS状結腸に多発憩室を認め、潰瘍を伴う腸管浮腫像も認めたことから、虚血性腸炎、憩室炎を疑い、絶食・補液・抗菌薬加療を行った。しかし、炎症反応の改善を認めず、下痢、血便も出現し、第18病日の大腸内視鏡検査では直腸まで炎症が波及しており、潰瘍性大腸炎も考えられた。5-ASA内服、G-CAPを開始したが、発熱、下痢、炎症反応の改善を認めず、第28病日の大腸内視鏡検査では直腸病変は消失していたが、S状結腸~横行結腸まで炎症が拡がっており、低栄養もあり、全身状態が悪化しており、第31病日に高位前方切除術を施行した。病理組織結果は潰瘍性大腸炎としては非典型的であり、慢性期の虚血性腸炎や憩室炎が疑われた。〔考察〕虚血性腸炎、憩室炎としては保存的加療で症状改善を認めず、潰瘍性大腸炎としては直腸からの連続性びまん性病変でないこと、病理所見では非典型的所見であった。経過よりdiverticular colitisが考えられた。文献的考察を加え報告する。

14.進行胃癌に対し審査腹腔鏡が有用であった1例
 (1卒後臨床研修センター、2消化器外科)
 ○藤川秀爾1・◎山田卓司2・谷口清章2・瀬下明良2・三宅邦智2・天野久仁彦2・山本雅一2

 進行胃癌に対する治療では外科的治療の選択肢は少ない上、REGATTA試験により胃癌の減量手術の有用性は否定された。
 また、SPIRITS試験により切除不能胃癌に対して全身化学療法を施行した症例では、予後が延長することも報告されている。現在、SP療法やその他新規抗癌剤の開発により、Stage IV症例での外科的介入による長期生存の報告も多くなってきている。進行胃癌の治療に際し、化学療法や手術といった治療法の選択のためには、より正確な病期診断を行う必要がある。当院では進行胃癌の病期確定のため審査腹腔鏡を施行している。食物通過障害を有する症例では、病期診断と同時に姑息手術も施行できるため、非常に有用である。今回、狭窄症状を有するStage IV胃癌に対し、審査腹腔鏡とバイパス術を同時に施行し良好な臨床経過であった症例を経験したので報告する。

15.小児各科の協力にてターミナルケアを行ったDuchenne型筋ジストロフィーの成人男性
 (1卒後臨床研修センター、2小児科、3循環器小児科、4腎臓小児科)
 ○新井里子1・松丸重人2・佐藤孝俊2・七字美延2・石黒久美子2・村上てるみ2・立川恵美子2
 工藤恵道3・稲井 慶3・石塚喜世伸4・◎石垣景子2・永田 智2

 37歳男性。5歳時に易転倒性にて当院小児科を受診し、Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)と確定診断を受けた。10歳頃より歩行不能、20歳頃より寝たきりとなった。23歳時より、進行性の呼吸不全に対しNPPV導入を行い、同時期より心筋症の増悪を認め、投薬を開始した。32歳時、食事中に気道閉塞を生じ、心肺停止となった。蘇生に成功したものの、低酸素性虚血性脳症を来し、気管切開下人工呼吸となった。34歳頃より感染を契機に胸水貯留、慢性腎不全が指摘された。家族が小児科でのターミナルケアを強く希望され、腎臓小児科、循環器小児科、小児科3科により、腎不全、心筋症、胸水に対して、入院加療と在宅療養を繰り返した。37歳時、腎不全増悪により小児科病棟にて永眠された。御本人が生前より原疾患の病態解明に対する熱意が強く、剖検の同意が得られた。近年、心不全、呼吸不全に続き、腎不全がDMDの第三の死因として注目され、進行期患者の3割に腎機能障害が報告されている。低心拍出状態の長期化に基づく循環動態の不安定性が原因とされるが、他の筋ジストロフィーでの報告は少なく、病態はまだ不明である。以前は、DMD患者は生涯を通して小児科による診療が行われていたが、対症療法の向上により寿命が20歳から30~40歳へと延長した。年齢相応の患者対応、小児科専門病棟の制限等の観点から、小児科の抱える内科移行の問題点も検討する。

16.未熟児網膜症スクリーニング時に発見された先天網膜分離症の1例
 (1卒後臨床研修センター、2眼科、3新生児医学科)
 ○輪島 京1・◎丸子一朗2・古泉英貴2・飯田知弘2・内山 温3・楠田 聡3

 〔目的〕先天網膜分離症はX染色体のRS1遺伝子異常により網膜中層の分離が生じることで視機能障害を生じる疾患である。ただし先天性であるものの進行が緩徐であるため小児期まで発見されないことも多い。今回我々は生後1ヵ月で眼底所見から先天網膜分離症と診断された1例を報告する。〔症例〕生後1ヵ月男児。母体は狭心症合併妊娠。心不全症状増悪のため妊娠34週に帝王切開術で出生された。出生体重1676gの週数不当軽量児であり、生後新生児一過性多呼吸および無呼吸発作に対して、酸素投与を行ったことから日齢15に未熟児網膜症スクリーニングのため眼底検査を実施。眼底周辺部には血管の蛇行・拡張や網膜剥離所見はなかったが、黄斑部に網膜分離を疑わせる車軸状所見がみられた。全身的にも安定した日齢32の時点でも黄斑部所見に変化がみられなかったため、新生児科医師立会いの上、眼科外来で両眼の光干渉断層計検査を実施したところ黄斑部に囊胞様変化が確認された。日齢49の退院時まで車軸状所見に変化はみられなかった。新生児集中治療室入院中に発見されたことから、両親への説明を含めて早い段階から対応可能であった。〔結論〕本症は現時点で確実な治療法はなく、定期的な網膜剥離発症の有無の確認や弱視予防が重要であるが、生後早期に発見されたことから家族への説明もスムーズに行うことができた。生後早期から網膜分離所見を呈することを念頭に眼底検査を行う必要がある。

17.胆汁性嘔吐、心筋炎を呈し、診断に難渋した好酸球増多症候群の11歳女子例
 (1卒後臨床研修センター、2小児科、3腎臓小児科)
 ○山村恭一1・◎鏑木陽一郎2・千葉幸英2・鶴田敏久2・服部元史3・永田 智2

 ステロイド依存性ネフローゼ症候群に対し当院腎臓小児科で加療されていた11歳女子。胆汁性嘔吐を契機に入院となり、好酸球血症(3512/μL)と腹部超音波検査にて十二指腸水平部~空腸上部の浮腫状壁肥厚および腹水を認めた。好酸球性胃腸炎(EGE)が最も疑われ、好酸球増多症候群(HES)、IgA血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽種症などが鑑別に挙がった。プレドニゾロン(PSL)40mg/day点滴静脈注射で腹部症状は軽快したが入院8日目に末梢血好酸球は9095/μLまで一過性に増多を認めた。入院12日目にPSL 25mg隔日投与に減量し、腹部症状の増悪は認めなかった。骨髄液では好酸球の増加は認めるが幼若細胞の増殖はなく、FIP1L1-PDGFR転座は否定され、腫瘍性HESは否定的と考えた。上部消化管内視鏡所見では十二指腸の軽度浮腫・びらん以外は正常粘膜所見であった。一方、病理像では食道~十二指腸の好酸球浸潤は20/HF程度であり、EGEの病理所見像として非典型的であった。そのため、特発性HESに伴う消化管への好酸球浸潤を疑った。ご家族に脳神経系や循環器の障害が起こりうることを説明し、PSL 15mg連日内服にて、好酸球数は1500/μL以内に抑えられたが、PSL 15mg隔日に減量後、好酸球性心筋炎を発症し、最終的に特発性HESと診断した。当初はEGEが疑われたが、病理組織像より特発性HESが疑われた1例を経験した。

18.てんかんに似た発作性症状を呈した生体腎移植後のナルコレプシーの1女子例
 (1卒後臨床研修センター、2小児科、3腎臓小児科)
 ○岡橋昌己1・◎伊藤 進2・柳下友映2・大谷ゆい2・衛藤 薫2・竹下暁子2・平澤恭子2
 小国弘量2・石塚喜世伸3・服部元史3・永田 智2

 〔緒言〕ナルコレプシーは睡眠発作、脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚を四主徴とする睡眠障害の一型である。我々はてんかんとの鑑別、入院による薬剤調整を必要とした1例を経験した。〔症例〕地方在住の14歳女子。兄も無・低形成腎による生体腎移植後、父方叔母にてんかんあり。2013年7月に無・低形成腎により生体腎移植を実施、免疫抑制薬(タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、エベロリムス)を内服中。2016年8月より意識減損発作、転倒発作、上下肢“けいれん”発作が出現した。近医にて脳波検査ではてんかん波は認めなかったが、てんかんが疑われ当科紹介受診となった。受診後、過眠があること、転倒発作が強い笑いに誘発されること、脳波検査で入眠期REM睡眠を認めたことから、ナルコレプシーを疑い当科入院とした。入院後、長時間ビデオ脳波検査で“けいれん”は情動脱力発作の反復と確認し、また、反復睡眠潜時検査陽性、HLA DQB1*0602、髄液オレキシン感度未満より中核群と診断した。治療薬と免疫抑制薬との相互作用が予測困難であることから、入院継続、小児科および腎臓小児科併科、院内学級転籍の上で薬剤調整の方針とした。モダフィニル、クロミプラミンを開始漸増したところ症状は徐々に改善し、免疫抑制薬は微調整のみ必要であった。〔考察〕基礎疾患に腎疾患があったが、腎臓小児科との連携により安全に治療できた。さらに、長期入院が必要であったが、院内学級の利用により精神的ストレスを軽減することができた。〔結語〕ナルコレプシーはてんかんに類似し得るが、過眠や情動脱力などの特異症状が鑑別に重要である。

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