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2019年06月01日女子中高生の理系進路選択支援プログラム
めざせ! リケジョ ~女子中高生の理系進路選択支援プログラム~

 東京女子医科大学では毎年、理系女子いわゆる“リケジョ”をめざす女子中高生を応援するさまざまなイベントを開催している。その参加者の生き生きとした姿を追う。
※下記は2017年の内容です。本年度(2019年度)はこちらから>>

■医療・看護シミュレーションを体験
 リケジョをめざす女子中高生を対象に、「未来のいのちと健康を支えるのは“あなた”」と題して行われている理系進路選択支援プログラム。2017年は以下の8つのプログラムが組まれた。



各プログラムとも、女子中学1年生(一部2年生)から高校2年生までそれぞれ20~40人が参加。夏休み後に実施されたプログラムにも、首都圏以外の遠方からの参加者が少なくなかった。これらのプログラムのいくつかをレポートしよう。
 プログラムの第一弾、7月24日に行われた「親子でチャレンジ 医療・看護体験」には、“親子で”と銘打ったこともあって生徒と保護者それぞれ約40人ずつが参加した。女子医大の吉岡俊正学長が、「医療とはどういうものか参考にしていただけたら幸いです」と挨拶してプログラムがスタート。救命救急センター・矢口有乃所長と看護学部・日沼千尋部長の講演のあと、参加者は臨床技能研修室(スキルスラボ)へ移動してさまざまな医療・看護のシミュレーションを体験した。
 縫合手術を体験した高校生は、「テレビドラマに出てくるようなシーンを味わって、医師への憧れが強くなりました」と話す。呼吸音聴診を体験した中学生は、「タバコを吸っている人の呼吸音がいかに異常であるかが分かりました」といい、傍らの父親に禁煙を促していた。人気だったのが採血体験コーナー。「とても緊張しましたが、実際に人の腕だったらもっとビクビクするでしょうね」といった感想が多かった。
 心臓蘇生法の胸骨圧迫のコーナーでは、アシストの看護学部生が口ずさむ“アンパンマンのマーチ”に合わせて楽しそうに体験する姿がほほえましかった。
 
プログラム開催の挨拶をする吉岡俊正学長 採血体験
“アンパンマンのマーチ”に合わせて胸骨圧迫を体験 縫合手術を体験

■実験を通して科学者気分を味わう
 8月7・8の両日に行われた「私も未来の科学者」では、化学、物理学、生物学、微生物学免疫学、衛生学公衆衛生学、法医学の各教室にそれぞれ数人ずつ分散して実験に取り組み、2日目の午後にそれらの発表会を行った。
 化学教室ではオレンジやグレープフルーツ、ラベンダーを使ってアロマの実験を行い、「原料と抽出した精油の香りの差が大きい」、「ラベンダーからは精油が少ししか取れず、アロマの値段が高いのに納得」などと発表。物理学教室ではUVカットの実験を行い、「地面からの光の照り返しにも紫外線があるので要注意」、「UVメガネやUV手袋などのUVグッズは効果的」などの指摘があった。
 ニワトリの発生過程を追跡した生物学教室では、一見無構造な小さな存在が、ヒヨコのからだへと変化していく様子を顕微鏡で観察。マウスとの違いも確認した。参加者は全員中学生だったが、解剖にひるむ生徒は一人もいなかった。
 微生物学免疫学教室では身近な細菌を調べ、「次亜塩素酸水は石けんより殺菌効果が高いスーパー消毒液」、「ふとんは乾燥機より外に干したほうが効果的」といった“気づき”を発表。遺伝子を調べてお酒が飲める体質かどうかというユニークな実験をしたのが、衛生学公衆衛生学教室。その結果、「どっちつかずの体質で、ちょっとは飲めるかも」といった発表が笑いを誘った。
 法医学教室では、ハンバーグから抽出されたDNAの増幅や、ハンバーグが何の肉でできているかを判定する実習などを行った。そして、「ビーフ100%というハンバーグに、実は違う肉が入っていることが確認できました。人を識別することも可能です」と興味深い発表をした。
衛生学公衆衛生学教室での実験風景 化学教室での実験風景
微生物学免疫学教室での実習風景 法医学教室で実習した生徒らによる発表

■細胞シートと再生医療に興味津々
 9月30日には、女子医大と早稲田大学の連携施設であるTWIns(先端生命医科学センター)を舞台に、「命を救う最先端研究を知ろう」というプログラムが行われた。まず、早稲田大学の梅津光生教授が「TWInsの生い立ちとバイオエンジニアの貢献」と題して講演。続いて女子医大の清水達也教授が「再生医療の新展開」をテーマに講演を行った。
 講演会のあとは、参加者が3つのグループに分かれて女子医大エリア・早大エリアそれぞれの研究室を順に見て回った。女子医大エリアでは、細胞シートを培養・研究している「細胞解析室」、早大エリアでは人工臓器や手術手技トレーニングシミュレーターなどの開発・研究を行っている「総合機械工学研究室」が大きな見どころだった。
 参加者の声をいくつか紹介しよう。「医学と工学はそれぞれ独立しているものと思っていましたが、両者が一体となって課題解決に取り組んでいるのが印象的でした」、「温度の変化を利用して細胞シートをきれいに剥がすことができるシャーレの開発技術がすごいと思いました」、「研究室はとても新鮮でした」、「いつか私もTWInsで研究してみたいですね」、「細胞シートや再生医療など最先端の技術にとても興味がわきました」。
 初めてプログラムに参加したという中学2年生の母親は、「進路に迷っていた娘がTWInsを見学して、どうやらやりたいことが見つかったようです」と、ホッとした表情で語ってくれた。
 
培養された細胞シートを覗き込む 早稲田大学エリアの研究室を見学

■チーム医療への理解が深まる
 10月28日の「女子医大祭を覗いてみよう」は、文字どおり女子医大祭を見学し、医学部の学生と交流するというプログラムである。参加者はまず、弥生記念講堂でBallroom Dancing部による社交ダンスの発表会を見学した。中学生の1人は、「ショーを見ているようで圧巻でした。大学にはこんな部活もあるんですね」と
感嘆していた。
 交流会では参加者が4つのグループに分かれ、それぞれ1人の学生を囲んで和気あいあいと歓談した。あるグループの声を拾ってみよう。「解剖実習もやるんですよね?」、「他大学では男子がやると思うけど、うちは女子だけなので自分たちでやるしかありません」、「女子医大のいいところは?」、「女性の先生も多く、女性が働くことに理解があるところかな。カレシができにくいというのが玉にきずですが…」。
 11月11日に実施された「チームで支える病院の仕事」では、参加者が女子医大病院の中央放射線部、眼科外来、救命救急センターの看護部、薬剤部、栄養管理部などを見て回った。この間、保護者を対象に「女子医大病院について」と題する講演と交流会も行われた。
 病院内を見学した生徒たちからは、「救命救急センターではリアルな医療の現場を体験することができました」、「医師以外のさまざまな職種の人たちも患者さんを支えていることが分かりました」、「チーム医療とはどういうことなのかを理解できたような気がします」といった声が聞かれた。
 2017年のプログラムは、12月16日に行われた「サイエンスカフェ」をもって無事終了。参加した多くの女子中高生が、次代を担う“リケジョ”として活躍してくれるに違いない。
 
救命救急センターの看護師の説明を聞く 栄養管理部の役割に耳を傾ける
 
眼科外来で検査機器を体験する 医学部学生と歓談する参加者


「Sincere(シンシア)」9号(2018年1月発行)