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2024年05月27日 髙野加壽惠名誉教授が瑞宝小綬章を受章
髙野加壽惠名誉教授が瑞宝小綬章を受章
令和6年春の叙勲において、本学名誉教授の髙野加壽惠先生が瑞宝小綬章を授与されました。
瑞宝章は、国家又は公共に対し功労のある方および公務等に長年にわたり従事し、成績を挙げた方に授与される勲章で、その中で瑞宝小綬章は、社会の様々な分野における功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた人に対し授与されるものです。
髙野先生(以下同教授)は、永年にわたり内科学(内分泌学)分野の教育・研究に努め、平成22年4月に東京女子医科大学名誉教授になり今日に至っています。
教育面では、長きにわたり、内科学(内分泌学)の卒前教育ならびに卒後教育に熱心に取り組み、学位指導、専門医育成に尽力し、数多くの後進を育成しました。また国際交流にも熱心に取り組み、学生の国際交流委員会の委員として、学生の国際的交流の推進に尽力するとともに、国際的に通用する研究者の育成に努めました。さらに、初期研修医制度が始まった際に卒後臨床研究センター長として強いリーダーシップを発揮し、研修プログラムの作成、研修医教育、指導医教育に尽力しました。このように、長きにわたり良質で高度な医学知識を持つ医師を育成することに邁進し、今や同教授の薫陶を受けた医師が日本全国津々浦々でレベルの高い地域医療、専門医療を展開しています。
研究面では、同教授は大学院時代に成長ホルモン(GH) の仲介物質である現在のインスリン様成長因子(IGF) の研究に着手し、その研究をさらに発展させるためスウェーデンのカロリンスカ研究所に留学し、ノーベル賞の選考委員長を務められたLuft教授ならびにHall教授のもとでIGFの研究を精力的に行い、2年間でスウェーデンの学位(PhD)を取得しました。帰国後はこの分野のパイオニアとして活躍し、我が国のGH-IGF研究および臨床応用に多大な貢献をしました。主なIGFの研究としてスウェーデン留学中に確立した血中IGF-I測定法を用い、種々の病態における血中IGF-I測定とその意義について検討し、血中IGF-I値はGH分泌能を反映するのみならず、その他に肝機能障害、低栄養、コントロール不良の糖尿病で低下することを報告し、さらに、遺伝子工学で作成されたIGF-Iの治療薬の承認に尽力しました。また、低血糖を呈する膵外腫瘍において、大分子量IGF-Ⅱ が低血糖を引き起こす原因の一つであることを明らかにしました。これらを含め、IGF研究における多大な貢献が認められ、第4回国際IGF学会会長に推挙され、平成9年11月に学会を東京にて開催し成功裡におさめました。また、GHの臨床研究に関してはGH分泌不全性低身長症、ターナー症候群、成人GH分泌不全症への治療薬としてGH製剤の承認取得に関して中心的役割を担い、さらに成人におけるGHの役割について明らかにしました。また、GH分泌過剰である先端巨大症についても多数の症例を解析し、糖・脂質代謝異常、高血圧、腫瘍性疾患が多く見られることを報告し、この先端巨大症に対する新たな治療薬の承認に関しても中心的な役割を担いました。
主任教授就任後は内分泌学すべての領域の臨床研究に力を注ぎ、日本内分泌学会では理事、監事、幹事を務め、第17回臨床内分泌代謝Update会長を務めました。また、平成21年に創設された同会の女性医師専門医育成・再教育委員会の初代委員長として当時の同会において約1/4を占める女性会員の地位向上を目指し、女性医師が抱える諸問題を解決し、誇りと自信を持って専門医として生涯活躍出来る方策を立案し実行するプロジェクトの立ち上げに貢献しました。これらの内分泌学分野の多大な貢献に対して、日本内分泌学会DEA(Distinguished Endocrinologist Award:最優秀指導者賞)を受賞しました。
その他に、日本間脳下垂体腫瘍学会、日本神経内分泌学会、日本内分泌病理学会の理事を務め、日本学術会議内分泌学研究連絡委員会委員、厚労省中央薬事審議会委員、厚労省薬事・食品衛生審議専門委員などの要職を務めました。
以上のように、同教授は東京女子医科大学において一貫して卒前、卒後教育に強い熱意を持って専念し、特に女性医師の地位向上に尽力し、今日でも良きロールモデルとなっています。またIGF の研究では日本の第一人者として国際的にも高く評価され、国際的に通用する研究者の育成にも努められました。
~髙野加壽惠(たかの・かずえ)名誉教授の略歴~
(学歴・職歴)
【昭和44年】 東京女子医科大学卒業
【昭和48年】 東京女子医科大学大学院博士課程修了
【昭和48年】 東京女子医科大学第2内科学教室 助手
【昭和48年】 スウェーデン カロリンスカ研究所 客員研究員(昭和50年8月31日まで)
(スウェーデン国招聘留学生 スウェーデン国医学博士取得)
【昭和50年】 東京女子医科大学第2内科帰局 助手
【昭和54年】 東京女子医科大学第2内科学教室 講師
【昭和56年】 東京女子医科大学第2内科学教室 助教授
【平成 6年】 東京女子医科大学第2内科学教室 教授
【平成11年】 東京女子医科大学第2内科学講座 主任教授
【平成17年】 東京女子医科大学 卒後臨床研修センター センター長
【平成18年】 東京女子医科大学 臨床研修教育部門担当 副院長
【平成22年】 東京女子医科大学 名誉教授(現在)
(法人歴)
【平成13年】学校法人東京女子医科大学 評議員(平成22年3月まで)
【平成15年】学校法人東京女子医科大学 理事(平成22年3月まで)
【平成元年】財団法人成長科学協会 理事(平成20年3月まで)
(学会歴)
【平成15年】 日本内分泌学会 監事(平成17年3月)
【平成17年】 日本内分泌学会 理事(平成19年3月まで)
【平成19年】 日本内分泌学会 第17回日本内分泌学会臨床内分泌代謝Update会長
【平成21年】 日本内分泌学会 幹事(平成23年3月まで)
【平成21年】 日本内分泌学会女性医師専門医育成・再教育委員会委員長(平成23年3月まで)
【平成26年】 日本内分泌学会 名誉会員(現在)
【平成18年】 日本神経内分泌学会 理事(平成20年3月まで)
【平成26年】 日本神経内分泌学会 名誉会員(現在)
【平成18年】 日本間脳下垂体腫瘍学会 理事(平成23年3月まで)
【平成14年】 日本臨床内分泌病理学会 監事(平成20年3月まで)
【平成20年】 日本臨床内分泌病理学会 理事(平成22年3月まで)
【平成16年】 東京女子医科大学学会 副会長(平成22年3月まで)