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2024年02月06日  【プレスリリース】難病「巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)」の腎移植後再発の病因に新たな発見!
難病「巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)」の腎移植後再発の病因に新たな発見!
 
東京女子医科大学腎臓小児科の服部元史教授らのグループは、北海道大学病院泌尿器科の堀田記世彦講師らの研究グループ、東邦大学医学部腎臓学講座の濱崎祐子教授らの研究グループと共同で、抗ネフリン抗体が巣状分節性糸球体硬化症の腎移植後再発の病因である可能性を解明しました。 
 
Point
・難治性ネフローゼ症候群である巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の腎移植後再発の病因としては、1972年に報告されて以来、患者血液中の蛋白尿惹起液性因子(液性因子)の可能性が推定されてきました。そして現在までの間、その液性因子は不明、同定されていない状態でした。
・しかしこの度の共同研究により、患者血液中の抗ネフリン抗体が液性因子の候補である可能性が明らかにされました。ここに当該課題を解明するために進めてきた研究の成果を発表いたします。     


Ⅰ 研究の背景と目的

 難治性ネフローゼ症候群である巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulo-sclerosis:以下 FSGS) は、ステロイドが奏功せずに末期の腎不全に進行します。そして腎移植後にも高い確率で再発し移植腎機能廃絶に至るという希少難病です。腎移植後再発の病因として患者血液中に存在する蛋白尿惹起液性因子(液性因子)の可能性が推定されていましたが(Lancet, 1972)、現在まで液性因子は同定されていません。
 
 ネフローゼ症候群は、糸球体濾過障壁を構成するポドサイトの異常により発症しますが、ステロイド反応性ネフローゼ症候群の一部でポドサイトの足突起間に存在するスリット膜(図1)を構成する蛋白であるネフリンに対する自己抗体の関与が報告されました(J Am Soc Nephrol, 2022)。

 我々研究グループは、腎移植後FSGS再発を呈した1症例の血液中に抗ネフリン抗体を証明し、移植腎の血流再開後1時間の生検組織(1h生検)でネフリンと共局在するIgG(抗ネフリン抗体)の沈着を認め(図2)、抗ネフリン抗体が液性因子である可能性を示しました(Hattori M, Shirai Y, et al. Am J Transplant, 2022)。そこで、上記の抗ネフリン抗体が液性因子である可能性を検証するために、血液中の抗ネフリン抗体を定量的に測定するELISAシステムを確立し、多施設研究で腎移植を施行した小児FSGS患者を対象として解析を行いました。


Ⅱ 研究の内容

対象:1986年から2022年までに、東京女子医科大学腎臓小児科、北海道大学病院泌尿器科、東邦大学医療センター大森病院腎センターで、109例の日本人の小児期発症のFSGSにより末期腎不全にいたった患者さんが腎移植を受けられました。その中から、二次性FSGSと遺伝子解析を行っていない患者さんを除き、移植前または移植後再発中の血液と移植腎生検検体を保存してあった患者さん(移植後FSGS再発 11例、移植後FSGS非再発 3例、遺伝性FSGS 9例)を対象として解析を行いました。

方法:解析した項目は、ELISAによる血液中の抗ネフリン抗体価と、二重蛍光免疫染色による移植腎生検組織の観察です。二重蛍光免疫染色では、IgGとネフリン、リン酸化ネフリン、リン酸化ネフリンのアダプター蛋白でエンドサイトーシスに関わる分子であるSrc homology and collagen homology A (ShcA)を観察しました。全ての二重蛍光免疫染色は、超解像顕微鏡(two-dimensional structured illumination microscopy, SIM)で観察しました。
 
結果:
1) 抗ネフリン抗体価は、移植後FSGS再発例の全例でカットオフ値(231 U/mL, 健常コントロール13例、 疾患コントロール:膜性腎症 13例, ループス腎炎 4例の最高値)より高値(中央値(四分位範囲) 899 (831, 1292) U/mL)でしたが、移植後FSGS非再発例と遺伝性FSGSは全例カットオフ値以下(陰性)でした(図3)。









2) 移植腎生検組織では、移植後FSGS再発例の全例で、1h生検及び再発中の移植腎生検検体でネフリンと共局在する点状のIgGの沈着を認めました(図4)。一方、腎移植後FSGS非再発例と遺伝性FSGSの移植腎生検検体では、IgGの沈着を認めませんでした。また、腎移植後FSGS再発症例の1h生検または再発中の移植腎生検検体で、リン酸化ネフリンとShcAの発現の亢進を認めました。

3) 腎移植後FSGS再発例において、FSGSが寛解した(蛋白尿が消失した)患者さんでは、寛解後の血清の抗ネフリン抗体価は再発中に比べて有意に減少していました(図5)。

4) 移植後FSGS再発例で寛解した症例の寛解後の移植腎生検では、IgGの沈着が消失し、リン酸化ネフリンやShcAの発現は寛解後に低下し、足突起も正常化していることを確認しました(図6)。
 

 
Ⅲ 今後の展開

 今回の研究により、抗ネフリン抗体が腎移植後FSGS再発の病因(液性因子)である可能性を見いだしました。
 これまでは治療のターゲットが不明という全くの暗闇状態と言える中、腎移植後FSGS再発に対する治療がなされてきたわけです。しかしこれからは、抗ネフリン抗体(自己抗体)をターゲットとした治療、すなわち、1)抗ネフリン抗体の除去(血漿交換療法や免疫吸着療法)と2) 抗ネフリン抗体の産生抑制(ステロイド、カルシニューリン阻害薬、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブなど)を、患者さん個々の抗ネフリン抗体レベルに応じて治療(予防的治療も含む)することが可能となりました。
 現在は更に、抗ネフリン抗体産生の背後にある免疫異常の解明に取り組んでいます。ここで免疫異常が解明されるとすれば新たな治療法の開発に繋がるものと医療界から大きな期待が寄せられています。



【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
東京女子医科大学 腎臓小児科 教授 服部元史(ハットリモトシ)
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel&Fax:03-3353-8111
E-mail: hattori.motoshi@twmu.ac.jp 

北海道大学病院 泌尿器科 講師 堀田記世彦(ホッタキヨヒコ)
〒060-8648 北海道札幌市北区北14条西5丁目
Tel: 011-706-5949
E-mail: urodomon@med.hokudai.ac.jp

東邦大学 医学部腎臓学講座 教授 濱崎祐子(ハマサキユウコ)
〒143-8540 東京都大田区大森西5-21-16
Tel:03-3762-4151
E-mail:yuhamasaki@med.toho-u.ac.jp

 
<報道担当>
東京女子医科大学 広報室
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-3353-6793
E-mail: kouhou.bm@twmu.ac.jp
 
北海道大学病院総務課総務係
〒060-8648 北海道札幌市北区北14条西5丁目
Tel: 011-706-7631 Fax: 011-706-7627  
E-mail: pr_office@huhp.hokudai.ac.jp

学校法人東邦大学 法人本部経営企画部
〒143-8540 東京都大田区大森西5-21-16
Tel: 03-5763-6583 Fax: 03-3768-0660
E-mail: press@toho-u.ac.jp


【プレス情報】
1.掲載誌名:Kidney International
2.論文タイトル:A multi-institutional study found a possible role of anti-nephrin antibodies in post-transplant focal segmental glomerulosclerosis recurrence.
3.著者名:Yoko Shirai, Kenichiro Miura, Kiyonobu Ishizuka, Taro Ando, Shoichiro Kanda, Junya Hashimoto, Yuko Hamasaki, Kiyohiko Hotta, Naoko Ito, Kazuho Honda, Kenji Tanabe, Tomoko Takano, Motoshi Hattori*
4.DOIコード: https://doi.org/10.1016/j.kint.2023.11.022
5.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo) :2023.12.16