お知らせ
2023年06月20日 【プレスリリース】本邦初!インスブルック医科大学方式による下顎骨関節突起骨折の新治療法
本邦初!インスブルック医科大学方式による下顎骨関節突起骨折の新治療法
ー35症例の後方視的研究(検討)で好成績続出!術後の社会復帰が早期化。ー
ー35症例の後方視的研究(検討)で好成績続出!術後の社会復帰が早期化。ー
Point
下顎骨関節突起骨折治療において、本邦初の新しい低侵襲手術
(インスブルック医科大学方式)により顎間固定が不要(フリー)となり、
受傷患者さん術後の社会復帰が早期化されました。 1.耳垂直下の約2cmの皮膚切開からアプローチするため低侵襲で傷が目立ちません。 2.直視下の施術で正確な整復固定が可能となり、術後の顎間固定が不要となりました。 従来型治療法の課題「術後顔面神経麻痺の出現リスク」の大幅な減少が見込まれます。 3.術後3~5日での退院が可能となり、低侵襲でかつ術後顎間固定の必要がないため早期の仕事復帰や スポーツもできるようになります。 |
Ⅰ 研究の背景と経緯
下顎骨関節突起骨折は、顎関節の骨折で、転倒などによって起こる最も多い顔面骨骨折の一つです1。受傷すると、噛み合わせがずれ口が開かなくなります。さらに食事も「噛めない」という状態となります。
関節突起骨折の治療における関連手術は極めて難易度が高く、顔面神経麻痺が出現するリスクを鑑み、顎のギブスである顎間固定による保存的治療が選択されるケースが少なくないとされていました。
しかしこの保存的治療における顎間固定が受傷患者さんの課題となり、負担となっておりました。それは術後に必要とされる相応の回復期間(養生)に時間がかかり、それが社会復帰への支障となっていたのです。
そこで本件の課題解決に向け東京女子医科大学の佐々木 亮講師(歯科口腔外科学講座)は、オーストリア共和国・インスブルック医科大学(Medizinische Universität Innsbruck)(注1)に研究留学し、低侵襲手術で顎間固定を必要としない本術式を修得しました2。さらに日本人仕様に改良し、本邦初の「関節突起骨折の新手術療法」を開発して、東京女子医大病院(東京都新宿区)および東京警察病院(東京都中野区)の両医療機関にて実施してまいりました。
相応の治療実績を重ね、主要研究課題として治療経過、合併症について後方視的研究(検討)をし、その結果をこのたび発表するに至りました。
図1.顎間固定事例(従来型)
Ⅱ 研究の内容
2016年5月~2020年3月(3年10カ月)において、東京女子医科大学歯科口腔外科および東京警察病院形成外科で「新手術療法」(インスブルック医科大学方式)による観血的整復固定術を行った患者さんの関節突起骨折症例35症例39関節を対象とした後方視的研究(検討)を行いました。
結果として35症例中34症例において、明らかな噛み合わせの改善がみられました。
また平均最大開口量は49 ± 1.3 mmと極めて良好な所見を示しておりました。加えて開口時の痛みなどの顎関節症状は全症例で認められませんでした。
なお術後患者さんの顔面神経麻痺の出現は3関節に認められましたが、 術後3カ月で全症例が本復いたしました。そして創部の肥厚性瘢痕は1症例に認められました。
以上のような、術後の課題が従来より大幅に最小化したという好成績から、本手術(「新手術療法」(インスブルック医科大学方式))は、合併症も少なく低侵襲で術後の顎間固定の必要がない、結果として本復までの期間(養生)が短縮されることが立証されました。従来型治療で課題とされた患者さんの負担が軽減し、早期の仕事復帰やスポーツへの復帰3が可能となったわけです。
図2.インスブルック医科大学方式による治療(手術)
Ⅲ 今後の展開
下顎骨関節突起骨折における治療(手術)の低侵襲アプローチは可能となりましたが、未だに内側に転位・脱臼している骨折についての手術難易度が高いという課題が残されています。したがって我々は臨床においてさらなる研究を重ね、産学連携等も含めて、患者さんの負担をなくしていけるような手術デバイスの開発に励み、課題解決に向けた術式を日々アップデートしていく所存です。
Ⅳ 参考文献
(注1)インスブルック医科大学:
同大学病院は、オーストリア チロル州の州都インスブルックに位置し、レベルⅠ(最高レベル)のトラウマ(外傷)センターとして近隣の州からも事故で搬送されてくる患者が絶えません。とりわけ頭蓋顎顔面口腔外科は、年間1,000件の顎顔面外傷の入院症例があると伺っています。
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
佐々木 亮(ササキ リョウ)
東京女子医科大学 医学部 歯科口腔外科学講座
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel&Fax:03-3353-8111
E-mail: sasaki.ryo@twmu.ac.jp
<報道担当>
東京女子医科大学 総務部広報室
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-3353-6793
E-mail: kouhou.bm@twmu.ac.jp
【プレス情報】
1.掲載誌名:Plastic and Reconstructive Surgery -Global Open
2.論文タイトル:Innsbruck-style retromandibular anterior trans-parotid approach for
condylar fractures: A retrospective review of 39 fractures
3.著者名:佐々木亮*、渡辺頼勝、宮本範子、阿川かおり、岡本俊宏
4.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo) :2023年6月21日
下顎骨関節突起骨折における治療(手術)の低侵襲アプローチは可能となりましたが、未だに内側に転位・脱臼している骨折についての手術難易度が高いという課題が残されています。したがって我々は臨床においてさらなる研究を重ね、産学連携等も含めて、患者さんの負担をなくしていけるような手術デバイスの開発に励み、課題解決に向けた術式を日々アップデートしていく所存です。
Ⅳ 参考文献
- 1.Sasaki R, Ogiuchi H, Kumasaka A, Ando T, Nakamura K, Ueki T, Okada Y, Asanami S, Chigono Y, Ichinokawa Y, Satomi T, Matsuo A, Chiba H. Analysis of the pattern of maxillofacial fracture by five departments in Tokyo: A review of 674 cases. Oral Sci Int 6:1-7,2009
2.佐々木亮. マキシロフェイシャルサージャリー臨床留学―インスブルック編―.形成外科66(4):409-413,2023
3.Sasaki R, Tominaga K, Okamoto T. Mandibular Condylar Fracture in a Professional Soccer Goalkeeper: How to Achieve Early Return-to-Play—A Case Report. Craniomaxillofacial Trauma Reconstr Open. 2021. doi:10.1177/24727512211022595
(注1)インスブルック医科大学:
同大学病院は、オーストリア チロル州の州都インスブルックに位置し、レベルⅠ(最高レベル)のトラウマ(外傷)センターとして近隣の州からも事故で搬送されてくる患者が絶えません。とりわけ頭蓋顎顔面口腔外科は、年間1,000件の顎顔面外傷の入院症例があると伺っています。
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
佐々木 亮(ササキ リョウ)
東京女子医科大学 医学部 歯科口腔外科学講座
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel&Fax:03-3353-8111
E-mail: sasaki.ryo@twmu.ac.jp
<報道担当>
東京女子医科大学 総務部広報室
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-3353-6793
E-mail: kouhou.bm@twmu.ac.jp
【プレス情報】
1.掲載誌名:Plastic and Reconstructive Surgery -Global Open
2.論文タイトル:Innsbruck-style retromandibular anterior trans-parotid approach for
condylar fractures: A retrospective review of 39 fractures
3.著者名:佐々木亮*、渡辺頼勝、宮本範子、阿川かおり、岡本俊宏
4.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo) :2023年6月21日
・PRS Global Open is the official open access medical journal of the American Society of Plastic
Surgeons and is published by Wolters Kluwer Health.
・The American Society of Plastic Surgeons (ASPS) is the largest plastic surgery specialty organization in the world. Founded in 1931, the Society represents 93% of all board-certified plastic surgeons in the U.S., and more than eight thousand plastic surgeons worldwide, making ASPS a global institution and leading authority on cosmetic and reconstructive plastic surgery. Visit https://www.plasticsurgery.org/ for more information.
・Wolters Kluwer provides trusted clinical technology and evidence-based solutions that engage clinicians, patients, researchers and students in effective decision-making and outcomes across healthcare. We support clinical effectiveness, learning and research, clinical surveillance and compliance, as well as data solutions. For more information about our solutions, visit https://www.wolterskluwer.com/en/health and follow us on Twitter, Facebook, LinkedIn, and YouTube.
Surgeons and is published by Wolters Kluwer Health.
・The American Society of Plastic Surgeons (ASPS) is the largest plastic surgery specialty organization in the world. Founded in 1931, the Society represents 93% of all board-certified plastic surgeons in the U.S., and more than eight thousand plastic surgeons worldwide, making ASPS a global institution and leading authority on cosmetic and reconstructive plastic surgery. Visit https://www.plasticsurgery.org/ for more information.
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