お知らせ

2018年06月12日  ビッグデータ解析により、皮膚科に関連する7つの特徴と関連の強い遺伝子領域を新たに発見!
約1万人データからビッグデータ解析により、まぶた、眉、肌、体毛、毛髪などに関連する7つの特徴と関連の強い遺伝子領域を新たに発見!

【本解析の要旨】
 「皮膚科領域に関連する7つの特徴と関連の強い遺伝子領域を新たに特定」
東京女子医科大学皮膚科、株式会社エムティーアイ、株式会社スタージェンは、ビッグデータ解析技術※1を用い、約1万人のゲノムと特徴のデータを解析した結果、皮膚科に関する7つの特徴(「シミのできやすさ」「ソバカスのできやすさ」「まぶたの一重二重」「眉毛の濃さ」「髪質」「毛深さ」「汗のかきやすさ」)と関連の強い遺伝子領域をそれぞれ発見しました。
ゲノムと特徴のデータは、株式会社エムティーアイの子会社である株式会社エバージーンの遺伝子解析サービスのプラットフォームを利用し、エムティーアイが運営する『ルナルナ』ユーザーの協力者約2万人を対象に、自宅で採取した唾液より抽出したDNAから約60万SNP※2の遺伝子情報を読み取り、その中から精度の高い検体およびSNPのみを抽出して得た11,311人、約54万SNPの遺伝子情報と体質に関するWEBアンケートの結果から得られたものです。
DOI番号: 10.1038/s41598-018-27145-2
アブストラクトURL: https://www.nature.com/articles/s41598-018-27145-2
 
本研究成果は、日本時間6月12日にScientific Reportsにて発表されます。
タイトル:Genome-wide association study in Japanese females identifies fifteen novel skin-related trait associations
 
【遺伝子情報と体質に関するWEBアンケートの結果】
 
1.シミ・ソバカスのできやすさ
 アンケートにて「シミができやすい」「ソバカスができやすい」と回答した人において、5番染色体および10番染色体に特徴的な遺伝型の組み合わせが存在することが明らかになり、それぞれPPARGC1B、RAB11FIP2と呼ばれる遺伝子領域でした。また、「ソバカスができやすい」と回答した人にのみ、9番染色体のBNC2、10番染色体のHSPA12A、また、17番染色体のAKAP1およびMSI2と呼ばれる遺伝子領域において、特徴的な遺伝型の組み合わせがあることも判明しました。これらの遺伝子は、メラニンの形成や蓄積などに何らかの関与をしている可能性が推測されます。



2.まぶたの一重二重
 アンケートにて自分に当てはまる身体的特徴として「二重まぶた」を選択した人に、10番染色体のEMX2と呼ばれる遺伝子領域に特徴的な遺伝型の組み合わせが存在することが明らかになりました。EMX2は骨や神経の発達に重要な遺伝子であることが知られており、頭蓋骨顔面の形成に関わっていることも報告されていることから、二重まぶたの形成に何らかの影響を及ぼしている可能性が推測されます。

 


3.髪質・眉毛の濃さ・毛深さ
 自分の髪質の特徴に関するアンケート項目にて「ストレート」を選んだ人と「くせ毛」を選んだ人の間で異なる遺伝型の組み合わせが、2番染色体のEDARという遺伝子領域に存在することが明らかになりました。また、身体的特徴として「眉毛が濃い」を選んだ人と、「体毛が毛深い」を選んだ人には同じ領域に特徴的な遺伝型の組み合わせが存在することがわかり、この遺伝子は、毛髪の太さに関連する遺伝子として既に報告されています。



さらに、「体毛が毛深い」を選んだ人にのみ特徴的な遺伝型の組み合わせが、1番染色体のTBX15、2番染色体のGCC2およびLIMS1、18番染色体のBCL2と呼ばれる遺伝子領域にあることがわかりました。BCL2は毛包(毛根周辺の細胞)の細胞死と成長のサイクルに関わる遺伝子であることが知られており、他の遺伝子も毛包の成長や毛の伸長などに何らかの関与をしている可能性が推測されます。
 

4.汗のかきやすさ
 アンケートにて自分に当てはまる身体的特徴として「汗をかきやすい」を選択した人に、2番染色体のPPP1CBおよびPLB1、16番染色体のABCC11と呼ばれる遺伝子領域に、特徴的な遺伝型の組み合わせが存在することが明らかになりました。PPP1CBおよびPLB1は、体液の分泌や汗腺の機能などに関わっている遺伝子であることが推測されます。また、ABCC11は過去の研究で耳垢のタイプ(乾型か湿型か)や腋臭に関連する遺伝子であることが報告されています。




※1ビッグデータ解析技術:膨大なデータをコンピュータとアルゴリズムを用いて解析する技術。ゲノム解析では様々な方法が用いられますが、今回は GWAS(ゲノムワイド関連解析)の技術を用いました。これは、全ゲノム上の遺伝子マーカー(SNPなど)を網羅的に調べ、表現型(疾患や体質などの特徴)との関連の強さを解析する統計的手法です。
※2 SNP : 単塩基多型。約30億のヒトゲノム配列の中の、個人ごとに異なる1箇所。
 
図の説明(すべての図に共通)
それぞれの図は、左から右へ、色分けされた1番から23番までの染色体上の約2万個の遺伝子と、その間の領域に分布する約54万個のSNP※2について、個々の特徴との関連の強さを高さで示したものです。高く伸びた場所ほど関連が強いことを示し、赤線より上まで伸びた場所のSNPは、関連する可能性が極めて強いと言えます。
 

【今回の発見の意義】
これまで医学を中心とした研究により、病気や検査値に関係する遺伝子が多数報告されています。そして、遺伝子の情報をもとに医薬品の開発などが進められています。本研究では必ずしも医学とは言えない、健康人にも表れる体質的な特徴に関係する遺伝子が多く見つかりました。まぶたの一重二重、眉毛の濃さ、毛深さ、しみやそばかすは病気とは直接関係しなくても一般の人々の関心事です。今回の研究にて得られた結果は、体質改善や個々の肌質に合わせた化粧品選びのサポートなど、一人ひとりに合った情報やアドバイスを提供できるサービスの開発などへの応用が期待できます。また、新たな美容技術、化粧品、皮膚科の外用薬などの開発に結びつくことも期待できます。

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