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2026年08月10日  【プレスリリース】透析中の「腎臓リハビリ」で生存率が向上
学校法人 東京女子医科大学
 

透析中の「腎臓リハビリ」で生存率が向上
~全国708人を3年間追跡、東京女子医大の研究グループが解明(REVEAL-D研究)~
 

 多くの患者が週に何度も受ける人工透析。その「透析中の時間」を活用したリハビリテーション運動が、患者の生存率を高めることが分かりました。
 東京女子医科大学医学部内科学講座腎臓内科学分野の星野純一教授、小林静佳助教らの研究グループ*は、全国多施設共同研究として維持血液透析患者708人を3年間追跡調査し、透析中の腎臓リハビリテーションを受けた患者では、受けなかった患者に比べて良好な生命予後と関連することを明らかにしました。本研究成果は、米国の国際医学誌Clinical Journal of the American Society of Nephrology(CJASN)に2026年7月10日付でオンライン掲載されました。
 
Point
1. 腎臓リハビリテーションは、フレイル・サルコペニアを有する慢性腎臓病患者に対して、運動療法、栄養療法、看護ケアなど多面的治療によって患者の身体的・精神的・社会的障害を回復させるプログラムです。2018年に世界初の診療ガイドラインが公表され、身体機能・QOL向上などの治療効果が明らかになり、2022年には透析時運動指導等加算が保険収載されました。一方、生命予後などを長期間観察した研究は存在しませんでした。
2. 全国10施設**の維持血液透析患者2471名のうち、透析中の腎臓リハビリテーション実施群228名と患者背景を合わせた480名の合計708人を3年間追跡調査し、実施群で3年生存率が84.6%と、非実施群75.6%に比べて有意に良好であることを明らかにしました。様々な因子を調整した解析でも、実施群の死亡リスクが低いことが分かりました(調整ハザード比0.66、95%信頼区間0.44-1.00)。
3. 運動習慣(週2回以上、30分以上を1年間以上)を有する患者群においても、同様に、運動習慣を有さない患者群に比べて生命予後は良好でした(調整ハザード比 0.66、95%信頼区間 0.37-0.96)。
 
Ⅰ 研究の背景と経緯                                                                          
 維持血液透析患者では、加齢、慢性炎症、低栄養、尿毒症、身体活動量の低下などが重なり、筋力や運動耐容能が低下するフレイル・サルコペニアが高頻度にみられます。現在、送迎や介護を要する透析患者が多いことが社会問題になっており、これらは医療資源の観点のみならず、生活の質の低下、入院、要介護化、死亡と密接に関連するため、身体機能と生活機能を維持する対策が重要です。
 腎臓リハビリテーションは、単なる運動療法ではなく、運動療法、食事・水分管理、薬物療法、患者教育、心理・社会的支援を多職種で組み合わせ、腎臓病患者の身体的・心理的影響を軽減し、社会生活への復帰と長期予後の改善を目指す包括的プログラムです。日本腎臓リハビリテーション学会は2018年に世界初の腎臓リハビリテーション診療ガイドラインを公表し、2022年には日本で世界に先駆けて透析中運動指導等加算が保険収載され、国際的にも注目されています。
 これまでの研究から、透析患者に対する運動療法は運動耐容能、筋力、身体機能、生活の質などを改善することが示されてきました。一方、透析中の腎臓リハビリテーションが、長期的な生命予後とどのように関連するかは十分に分かっていませんでした。そこで研究グループは、日本腎臓リハビリテーション学会の学術研究の一環として、3年間の後ろ向き調査および5年間の前向き調査を組み合わせたREVEAL-D研究を実施し、透析患者に対する腎臓リハビリテーションの有用性を検討しました。

 
Ⅱ 研究の内容
 1.研究デザイン
 
2021年1月時点で全国10施設**に通院していた成人の維持血液透析患者2471名のうち、透析中の腎臓リハビリテーション実施群228名と患者背景を合わせた480名の合計708人の診療情報を3年間追跡調査しました。対象者の平均年齢は69.8歳、男性59%、糖尿病44%、心血管疾患の既往39%で、重度フレイル(Clinical Frailty Scale 6以上)は13%でした。

 2.腎臓リハビリテーションの定義
 
透析中に腎臓リハビリテーション指導士が行う監督下の運動指導に、栄養・生活指導を組み合わせ、週1回以上かつ1か月以上実施したものと定義しました。主要評価項目は全死亡とし、Cox比例ハザードモデルおよび傾向スコアマッチングを用いて、フレイル、併存疾患、検査値などの患者背景を調整しました。

 3.主要結果
 
追跡期間中の死亡は実施群14.9%、非実施群23.1%で、3年生存率はそれぞれ84.6%、75.6%でした(P<0.01)。未調整解析では、実施群の死亡ハザード比は0.59(95%信頼区間0.40-0.87)、フレイル、糖尿病、心血管疾患歴、喫煙などを調整した解析では0.66(95%信頼区間0.44-1.00)でした。傾向スコアマッチング後も方向性は同様でした(ハザード比0.65、95%信頼区間0.40-1.05)。




 
  腎リハ実施群(228名) 非実施群(480名) P値
死亡率 14.9% 23.1% <0.01
 
 
 Ⅲ  今後の展開
 本研究は、世界に先駆けて腎臓リハビリテーションを社会実装した日本から、透析中の包括的リハビリテーションと生命予後との関連を多施設データで示した点に意義があります。高齢化社会を迎えて、透析医療のみならず一般住民においても、フレイル予防、日常生活動作、生活の質、社会参加を支える診療の重要性がさらに高まります。
 現在、REVEAL-D研究の一環として、運動処方、栄養・生活指導、継続状況などを前向きに評価した多施設共同研究が同グループによって行われております。これらの研究を通じて、どのような患者に、どの内容を、どの程度実施すると最も効果的かを検証されていくことが期待されます。さらに、有害事象、入院、身体機能、生活の質、医療費・介護費を含む医療経済性も評価し、全国の透析施設で安全かつ継続可能な腎臓リハビリテーション体制の構築と、国際的な普及につなげることを目指します。
 
*共同研究機関:
聖マリアンナ医科大学薬理学講座 教授 木田圭亮
聖マリアンナ医科大学腎臓高血圧内科 教授 柴垣有吾、准教授 谷澤雅彦
国際医療福祉大学福岡保健医療学部 教授 河野健一
兵庫医科大学リハビリテーション学部理学療法科 准教授 松沢良太
昭和医科大学 臨床疫学研究所 所長・教授 長谷川毅
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 講師 音部雄平
青空クリニック 院長 大内雄太
株式会社フレキシブル 石原吉浩
**全国10施設:
秋葉原いずみクリニック、池田病院、池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック、井上病院、
岡村腎クリニック、川崎クリニック、古賀病院、常磐病院、諏訪の杜病院、つばさクリニック
 
【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
星野 純一 (ホシノ ジュンイチ)
東京女子医科大学 医学部 腎臓内科学分野 教授・基幹分野長
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel&Fax:03-3353-8112
E-mail: hoshino.junichi@twmu.ac.jp
 
<報道担当>
東京女子医科大学 広報課
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03-3353-6793
E-mail: kouhou.bm@twmu.ac.jp
 
【プレス情報】
1.掲載誌名:Clinical Journal of the American Society of Nephrology(CJASN)
2.論文タイトル:Intradialytic Renal Rehabilitation and Mortality: Results from the Registry of
Active Renal Rehabilitation in Dialysis Patients (REVEAL-D)
3.著者名:Junichi Hoshino*, Keisuke Kida, Shizuka Kobayashi, Kenichi Kono, Ryota Matsuzawa,
Yuhei Otobe, Keisei Kosaki, Masahiko Yazawa, Yohei Tsuchida, Toshiaki Usui, Yuta Ouchi, Hiroki Nishiwaki, Takeshi Hasegawa, Naohiko Fujii, Tadashi Sofue, Kunihiro Yamagata, Yugo Shibagaki, Ichiei Narita
(*責任著者、下線は東京女子医科大学所属)
4.DOIコード:10.2215/CJN.0000001133
https://doi.org/10.2215/CJN.0000001133
5.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo):
2026年7月10日オンライン掲載済み/報道解禁なし