お知らせ
2026年06月29日 【プレスリリース】尿蛋白の減少が末期腎不全リスク低下と関連することを明らかに
国立大学法人 福井大学
公立大学法人 名古屋市立大学
兵庫県立西宮病院
学校法人 昭和医科大学
学校法人 東京女子医科大学
国立大学法人 大阪大学
国立大学法人 金沢大学
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
東海大学
一般社団法人日本腎臓学会
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尿蛋白の減少が末期腎不全リスク低下と関連することを明らかに
| Point
● 慢性腎臓病(CKD)患者において、2年間で尿蛋白が30%減少することが、末期腎不全(透析・腎移植を要する状態)への進行リスク低下と関連することを、日本人大規模コホートで明らかにした。
● 尿蛋白の変化は、従来の指標である尿アルブミンの変化と同等の関連を示し、日常診療で簡便・安価に使えるサロゲートマーカー(注1)となり得る。 ● ただしeGFR(注2)<15mL/min/1.73 m²の進行例では、尿蛋白の変化と末期腎不全リスクとの関連が弱まる傾向があるため、尿アルブミンの変化を併用することが望ましい。 |
【概要】
国立大学法人福井大学 学術研究院医学系部門(医学領域)腎臓病態内科学分野の遠山直志教授らの研究グループは、日本腎臓学会、協和キリン株式会社との共同研究である日本CKDコホート研究(CKD-JAC)のデータを用いて、尿蛋白クレアチニン比(UPCR)(注3)の2年間の30%減少が、尿アルブミンクレアチニン比(UACR)(注3)の30%減少と同等に、末期腎不全(透析や腎移植が必要な状態)(注4)への進行リスク低下と関連することを示しました。
尿アルブミンはCKD進行評価の確立したバイオマーカーであり、その普及・活用は引き続き重要な課題です。一方、日本では簡便かつ安価な尿蛋白測定が広く用いられています。本研究は中等度から進行したCKD患者を対象とし、このような段階において尿蛋白の変化が尿アルブミンの変化と同等に将来の腎不全リスクと関連することを、日本人大規模コホートで初めて体系的に示したものであり、CKDの臨床試験のサロゲートエンドポイント設計や、日常診療での予後評価への応用が期待されます。
本研究成果は、令和8年6月29日(日本時間)に、国際学術誌「Nephrology Dialysis Transplantation」に掲載されました。
Ⅰ 研究の背景と経緯 尿アルブミンはCKD進行評価の確立したバイオマーカーであり、その普及・活用は引き続き重要な課題です。一方、日本では簡便かつ安価な尿蛋白測定が広く用いられています。本研究は中等度から進行したCKD患者を対象とし、このような段階において尿蛋白の変化が尿アルブミンの変化と同等に将来の腎不全リスクと関連することを、日本人大規模コホートで初めて体系的に示したものであり、CKDの臨床試験のサロゲートエンドポイント設計や、日常診療での予後評価への応用が期待されます。
本研究成果は、令和8年6月29日(日本時間)に、国際学術誌「Nephrology Dialysis Transplantation」に掲載されました。
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease: CKD)は日本人成人の約5人に1人が罹患するとされる国民的疾患であり、進行すると透析や腎移植が必要な末期腎不全に至ります。末期腎不全に至るまでには長期間を要することから、CKDの臨床試験や観察研究では、末期腎不全の「代わり」となるサロゲートマーカーが重要視されています。
これまでに、尿アルブミンクレアチニン比(UACR)の短期間の変化が、将来の末期腎不全の発生と強く関連することが示され、国際的な臨床試験でサロゲートマーカーとして採用されてきました。一方、日本をはじめアジア・欧州の一部の国では、日常診療においてアルブミン尿ではなく尿蛋白(UPCR)の測定が広く行われています。これは、尿蛋白測定のほうが簡便かつ安価であることや、保険診療上の制約があることなどによります。
しかし、同一集団においてUPCRとUACRを直接比較し、短期間の変化が末期腎不全リスクと同等に関連するかを検討した研究は限られていました。
本研究では、日本CKDコホート研究(CKD-JAC)の参加者のうち、ベースラインおよび2年後の尿アルブミン・尿蛋白のデータが揃っていた603名を解析対象としました。平均年齢は60歳、平均eGFRは29 mL/min/1.73 m²、UPCR中央値は0.81 g/gCr、UACR中央値は601 mg/gCrでした。中央値4.9年の追跡期間中に、245名(40.6%)が末期腎不全へ進行しました。
UPCRおよびUACRの2年間の30%減少と、その後の末期腎不全の発生リスクの関連をCox比例ハザードモデルで解析した結果、以下の点が示されました。
① 2年間のUPCRの30%減少は、末期腎不全の発生リスクの有意な低下と関連しました(ハザード比 0.52、95%信頼区間 0.38–0.71)。
② 2年間のUACRの30%減少も、同等のリスク低下と関連しました(ハザード比 0.58、95%信頼区間 0.41–0.82)。
③ サブグループ解析では、eGFR<15 mL/min/1.73 m²の進行例において、UPCRの変化と末期腎不全リスクとの関連がUACRの変化に比べて弱まる傾向がみられました。
さらに1年間のUPCRの30%減少も、その後の末期腎不全の発生リスクの低下と有意に関連することが示され、より短い観察期間でも尿蛋白の変化がサロゲートマーカーとして活用できる可能性が示されました。
UPCRおよびUACRの2年間の30%減少と、その後の末期腎不全の発生リスクの関連をCox比例ハザードモデルで解析した結果、以下の点が示されました。
① 2年間のUPCRの30%減少は、末期腎不全の発生リスクの有意な低下と関連しました(ハザード比 0.52、95%信頼区間 0.38–0.71)。
② 2年間のUACRの30%減少も、同等のリスク低下と関連しました(ハザード比 0.58、95%信頼区間 0.41–0.82)。
③ サブグループ解析では、eGFR<15 mL/min/1.73 m²の進行例において、UPCRの変化と末期腎不全リスクとの関連がUACRの変化に比べて弱まる傾向がみられました。
さらに1年間のUPCRの30%減少も、その後の末期腎不全の発生リスクの低下と有意に関連することが示され、より短い観察期間でも尿蛋白の変化がサロゲートマーカーとして活用できる可能性が示されました。
Ⅲ 今後の展開
本研究は、日常診療で広く測定されている尿蛋白の変化が、尿アルブミンの変化と同等にCKDの将来リスクと関連することを、日本人コホートを用いて初めて体系的に示したものです。日本では保険診療上の制約から尿蛋白測定が広く用いられている現状があり、本研究はそのような状況下でも尿蛋白の変化が有用なマーカーとなり得ることを示したものです。本研究成果は、今後のCKD臨床試験におけるエンドポイント設計や、日常診療における予後評価の実装に寄与することが期待されます。
一方で、本研究ではeGFR<15の進行例において、尿蛋白の変化と末期腎不全リスクとの関連が弱まる傾向が示されました。この集団では尿アルブミンの変化を用いる、あるいは両者を補完的に用いることが望ましい可能性があります。今後、より多様な人種・病態を含む国際コホートでの検証を通じて、UPCR変化のサロゲートマーカーとしての位置づけをさらに明確化することが期待されます。
本研究は、日常診療で広く測定されている尿蛋白の変化が、尿アルブミンの変化と同等にCKDの将来リスクと関連することを、日本人コホートを用いて初めて体系的に示したものです。日本では保険診療上の制約から尿蛋白測定が広く用いられている現状があり、本研究はそのような状況下でも尿蛋白の変化が有用なマーカーとなり得ることを示したものです。本研究成果は、今後のCKD臨床試験におけるエンドポイント設計や、日常診療における予後評価の実装に寄与することが期待されます。
一方で、本研究ではeGFR<15の進行例において、尿蛋白の変化と末期腎不全リスクとの関連が弱まる傾向が示されました。この集団では尿アルブミンの変化を用いる、あるいは両者を補完的に用いることが望ましい可能性があります。今後、より多様な人種・病態を含む国際コホートでの検証を通じて、UPCR変化のサロゲートマーカーとしての位置づけをさらに明確化することが期待されます。
【参考図】
図1:
図1:

【用語解説】
(注1)サロゲートマーカー
臨床試験等で本来の評価項目(真のエンドポイント、ここではKFRT)の代替として用いられる指標。長期間の観察が必要な疾患では、短期間で評価可能なサロゲートマーカーが重要視される。
(注2)eGFR(推算糸球体濾過量)
腎臓のろ過機能を年齢・性別・血清クレアチニン値から推算した指標。数値が小さいほど腎機能が低下していることを示す。
(注3)UACR(尿アルブミンクレアチニン比)・UPCR(尿蛋白クレアチニン比)
尿中のアルブミンまたは蛋白の濃度を尿中クレアチニン濃度で補正した指標。蓄尿を必要とせず、随時尿(スポット尿)で測定できる。
(注4)末期腎不全(KFRT: Kidney Failure Requiring Replacement Therapy)
腎機能が著しく低下し、血液透析・腹膜透析・腎移植のいずれかの腎代替療法が必要となる状態。
【論文タイトル】
"Urinary Protein vs Albumin for Assessing Kidney Failure Risk in Chronic Kidney Disease: Findings from the CKD-JAC Study"
(日本語タイトル:「慢性腎臓病における腎不全リスク評価のための尿蛋白と尿アルブミンの比較 ― CKD-JAC研究からの知見」)
【著者】
Tadashi Toyama, Takahiro Imaizumi, Takayuki Hamano, Hirotaka Komaba,
Naohiko Fujii, Takeshi Hasegawa, Masahiko Ando, Masaomi Nangaku, Kosaku Nitta,
Yoshitaka Isaka, Takashi Wada, Shoichi Maruyama, Masafumi Fukagawa
遠山 直志(福井大学学術研究院医学系部門(医学領域)腎臓病態内科学分野教授)
今泉 貴広(名古屋大学大学院医学系研究科講師)
濱野 高行(名古屋市立大学大学院医学研究科教授)
駒場 大峰(東海大学医学部医学科内科学系腎内分泌代謝内科学教授)
藤井 直彦(兵庫県立西宮病院医療安全部長兼診療部腎臓内科部長)
長谷川 毅(昭和医科大学臨床疫学研究所所長・教授)
安藤 昌彦(名古屋大学医学部附属病院病院教授)
南學 正臣(東京大学大学院医学系研究科教授)
新田 孝作(東京女子医科大学 腎臓内科学客員教授)
猪阪 善隆(大阪大学大学院医学系研究科教授)
和田 隆志(金沢大学長)
丸山 彰一(名古屋大学大学院医学系研究科教授)
深川 雅史(東海大学医学部客員教授)
【発表雑誌】
雑誌名「Nephrology Dialysis Transplantation」(ネフロロジー ダイアライシス トランスプランテーション)
(令和8年6月29日14時にオンライン掲載予定)
DOI番号:10.1093/ndt/gfag122
【配信先】
文部科学記者会、科学記者会、福井県教育・スポーツ記者クラブ、名古屋教育医療記者会、
大阪科学・大学記者クラブ、名古屋教育記者会、厚生日比谷クラブ、本町記者会、厚生労働記者会
【お問い合わせ先】
(研究に関すること)
遠山 直志(とおやま ただし)
国立大学法人福井大学 学術研究院医学系部門(医学領域)腎臓病態内科学分野
〒910-8507 福井市文京3丁目9番1号
TEL:0776-61-8478 E-mail:ttoyama@u-fukui.ac.jp
猪阪 善隆(いさか よしたか)
国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科 腎臓内科学
〒565-0871 吹田市山田丘2番2号
TEL:06-6879-3857 E-mail:isaka@kid.med.osaka-u.ac.jp
(報道担当)
国立大学法人福井大学 広報センター
〒910-8507 福井市文京3丁目9番1号
TEL:0776-27-9733 E-mail:sskoho-k@ad.u-fukui.ac.jp
名古屋市立大学 病院管理部経営課
〒467-8602愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1番地
TEL:052-858-7529
E-mail:hpkouhou@sec.nagoya-cu.ac.jp
学校法人昭和医科大学 総務部総務課 大学広報係
〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8
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〒162-8666 東京都新宿区河田町8番1号
TEL:03-3353-8111 E-mail:kouhou.bm@twmu.ac.jp
名古屋大学医学部・医学系研究科 総務課総務係
TEL:052-744-2228 FAX:052-744-2785
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〒259-1193 神奈川県伊勢原市下糟屋143
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遠山 直志(とおやま ただし)
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猪阪 善隆(いさか よしたか)
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