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2026年05月26日  【プレスリリース】再発性頚部内頚動脈攣縮症の原因遺伝子を発見!
東京女子医科大学

再発性頚部内頚動脈攣縮症の原因遺伝子を発見!
― 新たな治療標的PTGISを同定 ―

 
 
Point
1.  再発性頚部内頚動脈攣縮症は、冠動脈攣縮も合併する重篤な稀少疾患で、これまで有効な治療法がありませんでした。

2.  本疾患が常染色体潜性遺伝性疾患であることを、世界で初めて明らかにしました。

3.  血管拡張因子プロスタサイクリンの合成酵素をコードする PTGIS 遺伝子の両アリルに生じた機能喪失型変異が原因であることを突き止めました。これらの変異により血管内皮細胞でのプロスタサイクリン産生が障害され、動脈の異常攣縮が引き起こされます。本成果は、既存のプロスタサイクリン作動薬を含む新たな治療法開発の基盤となることが期待されます。


Ⅰ 研究の背景と経緯 
                                                                          
 再発性頚部内頚動脈攣縮症は、頭蓋外の頚部内頚動脈が攣縮することで、頭痛や片麻痺などの一過性脳虚血発作や脳梗塞を反復して生じる稀少疾患です。これまで世界でも少数の症例報告があるのみで、原因や治療法は明らかになっていませんでした。また、冠攣縮性狭心症を合併したり、片麻痺性片頭痛として誤って診断されてしまう例も報告されています。本疾患はこれまで遺伝性疾患として認識されていませんでしたが、家族性発症例を経験したことから、次世代シーケンシングを用いた網羅的遺伝子解析を実施し、原因遺伝子の同定を試みました。
 
 
Ⅱ 研究の内容
 
 本研究では、日本人の4つの患者家族を対象に5人の患者さんで遺伝子解析を行いました。いずれも頚部の内頚動脈に可逆性の血管攣縮を認め、頭痛や片麻痺などの神経症状を呈しました。2例の患者さんでは冠状動脈の攣縮も合併し、緊急のカテーテル処置が行われました(図1)。第1家系では兄妹で発症していたことから、ゲノム全域を対象とした網羅的遺伝子探索を実施し、残りの3家系で同定候補の検証を行いました。その結果、本疾患は常染色体潜性遺伝形式をとることが明らかとなり、血管平滑筋の弛緩因子であるプロスタサイクリンの合成酵素をコードするPTGIS遺伝子における両アリルの機能喪失型変異が原因であることを突き止めました。 ヒト頚動脈内皮細胞を用いた機能解析では、患者由来変異型PTGISを導入した細胞において、正常型PTGISを導入した細胞と比較してPTGISタンパク質の発現量が有意に低下していました(図2A)。さらに、この発現低下に伴い、プロスタサイクリン産生が著明に減少することが確認されました(図2B)。

 
 

  Ⅲ 今後の展開

 プロスタサイクリンには血管拡張作用に加えて、血管平滑筋の増殖を抑制する機能が知られています。これまでの我々の研究では、PTGIS遺伝子のヘテロ接合性機能喪失型変異が末梢性肺動脈狭窄症の重症化(Chida-Nagai A, Akagawa H, et al., JAHA, 2024)や、頭蓋内モヤモヤ血管症の発症に寄与することを明らかにしてきました(Nakamura A, Akagawa H, et al., Sci. Rep., 2024)。すなわち、ハプロ不全では動脈内腔の閉塞性病変が形成される一方、両アリルの機能喪失では動脈壁の異常攣縮が引き起こされることが示唆されます。これらの知見は、「プロスタサイクリン合成酵素欠乏症」という新たな疾患概念を提示するものであり、脳・循環器領域における多様な疾患群の病態に介入し得る有望な分子標的となる可能性を示しています。現在、Ptgis遺伝子をノックアウトしたラットモデルを作製し、病態メカニズムの詳細な解析を進めています。
 

Ⅳ 本研究のご協力について

 本研究はJSPS科研費23K08576の助成を受けたものです。


【プレス情報】
1.掲載誌名:International Journal of Stroke(世界脳卒中協会の公式ジャーナル)
2.論文タイトル: Biallelic loss-of-function variants in PTGIS cause recurrent cervical internal carotid artery vasospasm
3.著者名: *Hiroyuki Akagawa, Hideaki Onda, Yosuke Moteki, Takatoshi Sorimachi,
Ryoichi Saito, Atsuko Nihira, Takahiro Hori, Akikazu Nakamura, Makiko Terada, Takamura Nagasaka, Ayako Chida-Nagai, Tomohiro Aoki, Yuichi Kubota
4.DOIコード:10.1177/17474930261449005
5.論文のオンライン掲載日と報道解禁日(Embargo) :2026年5月15日



【お問い合わせ先】
<研究に関すること>
赤川浩之
東京女子医科大学 総合医科学研究所 副所長・准教授 
(足立医療センター脳神経外科・兼務)
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
Tel:03-3353-8111 Fax:03- 5269-7308
E-mail: akagawa.hiroyuki@twmu.ac.jp

 <報道に関すること>
東京女子医科大学 広報課
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
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E-mail: kouhou.bm@twmu.ac.jp