活動報告

プレスリリース/Press release

磁気刺激による脳のピンポイント機能診断法の開発~脳外科手術前の効率的な重要部位推定へ~

名古屋工業大学、東京女子医科大学、アールト大学の共同研究グループは、脳の部位ごとに有する機能をピンポイントで推定する技術の開発に成功しました。これは、患者個々人の医用画像に基づく計算人体モデルを用いた電気生理シミュレーションと、体外から患者の脳を磁気刺激した場合の実測情報、患者の応答を比較したもので、重要な機能を有する部位の位置推定を従来の技術よりも高精度に行うことが可能になり、臨床現場での応用が期待されます。なお、本成果は、Elsevier「NeuroImage」(電子版)に掲載されました(2018年5月号)。

名古屋工業大学、東京女子医科大学、アールト大学の共同研究グループは、脳の部位ごとに有する機能をピンポイントで推定する技術の開発に成功しました。これは、患者個々人の医用画像に基づく計算人体モデルを用いた電気生理シミュレーションと、体外から患者の脳を磁気刺激した場合の実測情報、患者の応答を比較したもので、重要な機能を有する部位の位置推定を従来の技術よりも高精度に行うことが可能になり、臨床現場での応用が期待されます。なお、本成果は、Elsevier「NeuroImage」(電子版)に掲載されました(2018年5月号)。

【背景】
人体外部から非侵襲(外科手術なし)に神経を刺激する方法として、コイルへ急激に電流を流した際に生じる磁場によって体内に誘導される電流を利用する磁気刺激法があります。脳への磁気刺激(経頭蓋磁気刺激法:TMS)は、脳外科手術前診断への応用が期待されており、刺激した時の患者の生体反応を観測することで、運動野や言語野といった重要機能を有する部位を事前に把握することが可能です。この診断を高精度に実現できれば、脳外科手術に要する時間を短縮できます。この他にもTMSは、運動機能のリハビリテーションや精神疾患の治療などに用いられています。しかしながら、脳の構造の複雑さにより、コイルから脳内に誘導される電流は均一ではなく、実際に刺激している部位がコイルの真下から数cmずれるという事例も報告されています。コイルの位置をナビゲーションし、刺激位置を推定する商用システムも存在しますが、その精度については十分わかっておらず、また、誤差を有することも報告されています。(国際会議アブストラクト.図2のナビゲーションシステム参照)ゆえに、経験のある医師の施術、判断が必要となります。

【研究成果】
名古屋工業大学の研究グループは、これまでに個々人の医用画像(MRI)に基づく情報から、20程度に及ぶ組織を識別した微小要素から構成される計算人体モデルを自動生成するアルゴリズムを開発しており、各組織に異なる電気定数を与えることで、計算機上で人体を電気的に再現する技術を有しています。特にこの人体モデルは1辺が0.5mmの微小立方体から構成(総計約6400万点)されており、高精度な電気生理シミュレーションが可能です(図1参照)。
この技術と、東京女子医科大学で行われた臨床研究(先端生命医科学研究所先端工学外科・脳神経外科 教授村垣善浩ら)を融合し、本リリースの推定技術が開発されました。はじめに、臨床研究のデータより、体外に配置した磁気刺激装置による多数のランダムな刺激に対して、指の筋電反応の強い刺激サンプルを複数選択し、この刺激サンプルごとに対応する脳内誘導電流をシミュレーションにより算出します。次に、その空間分布を重ね合わせる処理を行うことで、指の筋肉に相当する部位を推定しました。当該の推定領域は1cm2程度であり、脳外科手術中、脳表に直接電極を当てて脳機能を確認した位置(Direct Brain Mapping)とは5-7mmという高精度で合致することを確認しました(図2参照)。これにより、医師の経験に関係なく、脳のピンポイント機能診断が可能となりました。

図1 医用画像より個々人の計算人体モデルを生成

図2 臨床研究とシミュレーションを用いた位置推定の手続き.結果の一例

なお、高性能な計算機ワークステーションを用いてこのシミュレーションを実施することにより、1サンプルあたり数秒、処理に要する時間は60秒以内での算出が可能であるため、開発された技術は臨床現場での応用が期待されます。

【今後の展望】
開発した技術を用いることにより、オーダーメイド医療の一部として、患者ごとの最適刺激の決定が期待できます。また、標的神経のみを刺激することが可能となるため、磁気刺激に対する神経生理のさらなる解明につながります。さらに、脳への刺激もランダムで、計算で処理できることにより、機械による診断の自動化などへの展開も期待されます。

【謝辞】
本研究成果の一部は、科学研究費補助金新学術領域「医用画像に基づくオーダーメイド脳磁気刺激システムの開発」(代表者:平田晃正)および「標準脳機能アトラスの投影による未来予測手術の具現化」(代表者:田村学)の支援によるものです。

 

【本研究に関するお問い合わせ】
国立大学法人名古屋工業大学
大学院電気・機械工学専攻 教授 平田晃正
Tel: 052-735-7916 e-mail: ahirata@nitech.ac.jp

【広報に関するお問い合わせ】
国立大学法人名古屋工業大学
企画広報課 広報室
Tel: 052-735-5316 e-mail: pr@adm.nitech.ac.jp2018

 

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