
診療部長 世川修
私は1988年に順天堂大学医学部を卒業し、現在の順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科の山高教授と共に、病棟医長として順天堂大学小児外科の一時代を築き上げてきました。2000年10月より東京女子医科大学での小児外科立ち上げのために異動となり、徐々に小児外科を発展させ、2015年4月より病院の標榜診療科として独立することができました。現在は乳腺・内分泌・小児外科学講座に属する独立した診療科として、病院での小児外科診療や医学部・看護学部での教育に携わっています。また、小児外科の診療部長とともに、2015年9月より2020年4月まで病院の医療安全部門・医療対話推進部門の副院長も担当していました。
東京女子医科大学小児外科は、都内でも有数の日本小児外科学会認定施設に認定されています。この認定施設とは、日本小児外科学会指導医の在籍、新生児手術数を含めた一定数の手術数、小児科医や麻酔科医の在籍などの厳しい施設基準を満たした施設のみが取得できる施設認定制度であり、高度な小児外科医療と小児外科専門医育成が行い得る施設です。
現在、東京女子医科大学小児外科では、年間250例以上の小児外科手術を行っています。対象疾患は、出生直後の新生児期から学童期(15歳未満)までの頭頚部・呼吸器・消化器・泌尿生殖器・内分泌臓器・小児腫瘍など、小児にみられる外科的疾患を広い範囲で取り扱っています。胎児診断された胎児を妊娠中のご両親に対して、出生後に予想される状況の説明も行います。先天性の疾患だけでなく、外傷や生後発現する疾患も同じように小児外科指導医・専門医が治療を行います。また、小児科、腎臓小児科、循環器小児科、母子総合医療センター新生児部門、脳神経外科小児グループとともに小児総合医療センターが設立されており、院内小児関連各科との密接な協力体制のもと、同センターにおける外科部門の中心的診療科として、高度な小児チーム医療を行っています。
また、東京女子医科大学東医療センターでの小児外科診療も担当しており、外来診療と手術を行っています。手術は、疾患に応じて女子医大本院での手術、または東医療センターでの手術を検討し決定しています。
東京女子医科大学小児外科の特徴として、日本内視鏡外科学会技術認定取得医(小児外科領域)による小児内視鏡(胸腔鏡、腹腔鏡)を用いた小児内視鏡診断・治療が上げられます。
私は順天堂小児外科在籍時代の1992年に、わが国初となる新生児に対する腹腔鏡手術を執刀する機会を得ました。1994年には、当時の小児内視鏡手術で世界的に有名であったメルボルン王立小児病院へ留学し、帰国後も小児内視鏡手術のパイオニアとして、常にわが国の小児内視鏡手術分野でリーダー的活動を行ってきました。現在も、東京女子医科大学での小児内視鏡診断・治療のみでなく、他院での手術指導や学会におけるセミナーの開催等、わが国全体の小児内視鏡手術のレベル向上と教育に多くの時間を費やしています。
また私は、医師になってすぐより消化器内視鏡に興味を持ち、小児外科と並行して成人の消化器内視鏡に携わってきました。現在でも、外勤先の病院では成人の消化器内視鏡を日常的に行っており、私のライフワークとなっています。
このように、小児内視鏡診断・治療、小児消化器内視鏡診断・治療には25年以上の実績があり、新生児も含めた多くの疾患に対する最先端の小児内視鏡診断・治療、小児消化器内視鏡診断・治療が低侵襲に行われています。東京女子医科大学病院の小児関連各科には重症例が非常に多く、それらに合併する小児外科疾患の診断・治療は極めて困難でありますが、このような重症例にこそ、こどもの将来を考えた低侵襲医療が必要であると考えています。
こどもは大人のミニチュアではなく、小児外科医療は高度な専門性をもった領域です。一方、小児外科医はこども専門の外科医ではなく、こどもを得意とする一般外科医であるべきとも考えます。こどもの身体にメスを入れることの意味を深く考え、常に謙虚な姿勢でこどもと家族に接し、こどもを愛し、家族に寄り添い、こどもの長い人生を考えた小児外科医療を行なうことが私の目標であり使命であります。
最後に、私が順天堂小児外科時代の恩師から頂き、その言葉に自分の想いを書き加えた言葉を書きます。
『小児外科医とは、神様が作り忘れたものを作り、作り間違えたものを作り直す。そして、自分のこどものように両親と共にこどもの心を育む。これを天職とする。』