取り扱う主な疾患

鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは小児外科で最も多い疾患です。お腹の中に納まっている臓器が鼠径部(足のつけ根)に脱出してしまう病気で、「脱腸」と呼ばれることもあります。脱出する臓器は腸管、卵巣、卵管、大網、虫垂など様々です。また、臓器ではなく腹水のみが脱出することもあります。(陰嚢水腫、ヌック水腫)鼠径ヘルニアは放置しておくと「嵌頓(かんとん)」といって、脱出臓器がもとに戻らない状態になることがあり、これは臓器の血流障害をきたし、腸管や卵巣が壊死してしまう危険な状態です。嵌頓させないためにも、鼠径ヘルニアは診断がついたら、はやめに手術を計画するのが一般的です。残念ながら鼠径ヘルニアには手術以外の治療法はありません。手術は「高位結紮法」といって、突出した腹膜の袋(ヘルニア嚢)をその根元で縛る方法です。傷は1cm程の小さなものです。手術時間は標準的に30分から1時間程度で終わります。また、当科では腹腔鏡による鼠径ヘルニアの手術も行っており、治療法に関してはいつでもご相談下さい。

臍ヘルニア

臍ヘルニアとはお臍に腸が脱出して膨らんでしまう状態です。多くの臍ヘルニアは1歳6ヵ月頃までに自然消退することが多く、治療を必要としないことがしばしばあります。しかし、2歳を越えても臍ヘルニアが残っていたり、臍の皮膚が余ってしまった場合は,手術を検討しなければなりません。お臍の形態がおかしいと思ったら、いつでもご相談ください。

停留精巣・遊走(移動性)精巣

精巣は胎生期にお腹に発生し、出生までに徐々に陰嚢まで下降してくる臓器です。その生理的な下降が途中で止まってしまった状態を停留精巣と呼びます。(また、陰嚢まで下降したものの、そこに精巣が固定されず可動性を伴っている状態を遊走精巣と呼びます。)停留精巣の多くは、精巣が陰嚢内に触れないことで気づかれます。停留精巣を放置すると、精巣は正常な働きができず不妊の原因になったり、また成人になってから癌化することも報告されていて、1歳までに手術が必要です。治療法は精巣を本来の陰嚢内に固定することです。術式はいくつかの方法があり、陰嚢側からアプローチする方法、鼠径部からアプローチする方法、腹腔鏡を併用する方法などがあります。症例に応じて適切な術式を選択いたします。

虫垂炎

急性虫垂炎は右下腹部にある虫垂という臓器に炎症が起こる疾患で、小児の腹痛の原因として頻度の高い病気です。全年齢層に発症しますが、学童期に多く認めます。症状は、腹痛、嘔吐、発熱が三主徴と言われ、特に右下腹部の疼痛は特徴的な所見です。診断には超音波検査や腹部CTなど画像検査を行って虫垂の腫脹を確認するのが一般的です。虫垂炎は進行すると、痛みが腹部全体に広がり重篤な腹膜炎を引き起こすことがあり、早期に治療を開始することが大切です。治療は、手術を行わない保存的治療(内科的治療)と手術を行う外科的治療に大別され、病状に応じて選択します。外科的治療は虫垂切除術という術式になり、当科では侵襲の少ない小さな傷で行える腹腔鏡下虫垂切除術を標準術式としています。

胆道閉鎖症

肝臓から出る消化液、「胆汁」の流れが悪くなる疾患です。多くは生まれたときは問題がなく生後、しばらくたってから徴候がみられるようになってきます。白目や皮膚が黄色くなる黄疸があったり、うんちの色がうす黄色や白っぽい色になったりする場合はこの病気により胆道(胆汁の通り道)が停滞し、肝臓自体が硬くなる「肝硬変」となっている可能性があります。手術は開腹や腹腔鏡により胆汁が腸管に流れやすくする経路を作ります。術後に黄疸がなくなり肝臓の機能も正常化する場合や、胆汁のうっ滞が続いたり肝機能が改善しないことで肝臓の移植が必要となったりすることがあります。個人差がありますが、継続した通院が必要となります。

胆道拡張症

食事から栄養を消化吸収するためには、胆汁や膵液が重要です。胆汁は肝臓で作られ、肝臓から肝臓の外の胆道(肝外胆管)を通って十二指腸に流れます。膵液は膵臓の中の膵管を通って十二指腸に流れます。胆管と膵管は十二指腸に流れるすぐ手前で合流します。
先天性胆道拡張症は、言葉のとおり肝外胆管が部分的に拡張しています。胆管が拡張しているため、胆汁の流れが悪くなり、黄疸や白っぽい便がみられることがあります。また、胆管と膵管の合流部が通常と異なることが多く、そのために胆管の中に膵液が流れ込み、胆管炎を起こします。胆管炎が起こると、腹痛や発熱、吐き気や嘔吐がみられます。
超音波検査やCTで診断します。内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)や磁器共鳴胆管膵管撮影(MRCP)を行うこともあります。血液検査で肝臓や膵臓の機能をみることも必要です。
この病気は、放置すると症状を繰り返すだけでなく、胆管や胆嚢に癌が発生する確率が高いため、外科治療が必要です。手術では、拡張した肝外胆管を切除し、そこに小腸を持ってきて胆汁を小腸に流し、胆汁と膵液の流れを分ける手術を行います。最近では、腹腔鏡を用いることで傷を小さくすることができます。
手術後は、一般的に経過は良好です。手術後5年以上経ってから肝臓や膵臓に石(肝内結石・膵石)ができたり、胆管と腸のつなぎ目が狭くなる(吻合部狭窄)ことがあり、定期検診が必要です。

横隔膜ヘルニア

お腹と胸を分けている「横隔膜」に穴が開いていることで、お腹の中の臓器が胸に入り込む病気です。先天性の場合と後天性の場合がありますが、いずれも呼吸障害などが生じ生命に関わるため手術が必要です。小児外科では、多くは先天性つまり生まれつき欠損として穴が開いているお子さんに対して、穴を修復し胸に入り込んだ臓器を腹腔内に戻す手術を行います。新生児のお子さんでも侵襲を軽減させる目的で胸腔鏡を用いた手術も行っています。
この疾患の術後はとくに支障なく生活できるお子さんも多いですが、肺の発育や欠損の程度、併存する疾患によって経過はさまざまです。

先天性食道閉鎖

ただいま準備中です。

ヒルシュスプルング病

腸の動きを調節する神経節細胞が生まれつきないために、便秘や腹部膨満、嘔吐、重症腸炎、などの症状がみられます。おしりから連続した病変なので、病変の長さによって、症状の程度や病気が見つかる年齢に違いがあります。
おしりから造影剤を入れて腸の形態をみる注腸検査、おしりに圧センサーとバルーンを入れて便を出す機能をみる直腸肛門内圧測定検査、組織をとってきて顕微鏡で神経節細胞の有無をみる直腸生検検査、などで診断をします。
ほとんどの場合は、神経節細胞がない腸を切り取って、くち側の正常な腸とおしりをつなげる手術を必要とします。手術後は、便秘や便漏れで困らないように定期的に外来通院をして頂き、長期的に経過をみていきます。

鎖肛

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