医療関係者さまへ

腎デナベーション
~腎交感神経除神経術[renal sympathetic denervation(RDN)]について~

1.高血圧における交感神経活動

高血圧の大半を占める本態性高血圧の成因は様々ですが、中でも交感神経活動の亢進が重要とされます。交感神経活動の中枢である頭側延髄腹外側野(rostral ventrolateral medulla、RVLM)のニューロンが興奮すると、末梢交感神経活動が亢進します。その結果心臓のβ受容体刺激による心拍出量の増加・血管のα受容体刺激による収縮により血圧を上昇させます。また腎臓に対しても、傍糸球体細胞のβ受容体刺激によるレニン分泌およびそれに基づくアンジオテンシン IIやアルドステロン産生の亢進、尿細管細胞のα受容体刺激によるNa再吸収亢進、細動脈のα受容体刺激による収縮をもたらし血圧を上昇させます。このような作用の結果もたらされる腎虚血、低酸素、腎実質障害により求心性腎神経が亢進し、にその情報が伝わります。脳内では最終的にRVLMニューロンを活性化させるような変化が起こるため交感神経がまた亢進します。本態性高血圧患者の中には、このような機序による交感神経活動の持続亢進を示す症例が少なからずいると考えられています。

2.高血圧に対するRDN

交感神経活動の亢進は高血圧のみならず、様々な臓器障害の原因となるためその制御が重要です。それに対し、高血圧自然発症ラット(SHR)など数多くの高血圧モデルにおいて、RDNにより交感神経活動の抑制や降圧が得られることが報告されてきました(Dibona, GF. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2005)。すわなち、RDNは上記の脳-交感神経-求心性腎神経回路の悪循環を断ち切ることができると考えられます。そのような理論的背景のもと、近年開発・臨床応用され注目されているのがカテーテルを用いて遠心性腎交感神経・求心性腎神経を同時に焼灼して除神経するCatheter-based RDN(以下RDN)です。以下に現在行われているRDNについて解説します。

a. RDNの効果について

治療抵抗性高血圧において、交感神経活動が抑制され(Schlaich, et al. N Engl J Med. 2009)、2年以上にわたり著明な降圧が見られること(Henry Krum, et al. Hypertension. 2011、図2)が報告されました。さらに、心肥大の退縮(Brandt, et al. J Am Coll Cardiol. 2012)や糖代謝・インスリン抵抗性の改善(Felix Mahfoud, et al.Circulation. 2011)が報告されています。このように、RDNは長期的な降圧のみならず、臓器保護・代謝改善効果をもたらすと期待されています。

b. RDNの手技について

ガイディングカテーテルを経皮的に大腿動脈から挿入して腎動脈まで進めます。次に、ガイディングカテーテルを通して通電用の電極カテーテル(図3)を腎動脈の末梢部まで進め、最高8wの高周波エネルギーを腎動脈内から2分間通電することにより遠心性腎交感神経・求心性腎神経を同時に焼灼します(図4)。続いて電極カテーテルを90°回転させ、5mm中枢側で通電する、という作業を繰り返し行います(通電は両側の腎動脈に対して行いますが、通電回数は片側で4~6回です)。

c. RDNの合併症について

通電時に腹痛を認めることが多いため、鎮静薬や鎮痛薬が使用されます。しかし、通常術後も疼痛が持続することはありません。ごくまれに腎動脈解離やシース挿入部における仮性動脈瘤や血腫を認めたとの報告がありますが、その発生率は通常のカテーテル検査(腎動脈造影検査など)と同等です。通電により腎動脈の高度狭窄や閉塞を来したという報告例はありません。従って、RDNは安全に施行できる治療法と考えられます。